バカとToLOVEる!   作:抹茶スイーツはお好きですか?

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「きゃあっ!?」

 

 目の前でヤミがコケる。ただコケるだけじゃない。何故か目の前にいた里紗の股間に突っ込んで……

 

「……ヤミちぃ……いくら明久が好きだからって真似しなくても……」

「ち、違うんです!わざとじゃありません!」

 

 こうなってしまったのには、理由があるわけで。話は今朝に遡る……

 

 

 ◆

 

 朝起きて目が覚めて、朝ご飯の準備。そんな時、ララが上機嫌でリビングにやってきた。何時もなら少し遅めのララが入ってきてどうして……

 

「出来た!まるまるチェンジくんV2!」

「持って帰りなさい」

 

 嫌な予感がしていた。一昨日の過去に戻される薬を見てる僕は既に嫌な予感しかしなかった。今日さえ行けば冬休みに入るんだ。僕としては問題なく終わりたい所なのだが……

 

「てかV2?バージョン2ってこと?」

「そう!これはね!相手の能力とか、スキルとか、癖とか入れ替えることが出来るの!」

「で、これをどうしようと?」

「これで明久のラキスケを直そうと思ってね」

 

 女神が居る。これで僕のラキスケもおさらば……あれ?

 

「入れ替えるってことは……入れ替わった相手に僕みたいなラキスケが?」

「わかんない」

「ちゃんと確認を重ねてきなさい!」

 

 そんなことを言っても結局ララの探究心には勝てなかった。とりあえず使ってみることに……対象はララにするとの事だが……ララにラキスケが移るんだろ?僕に何が来るんだ?天才的頭脳?

 

「まうー!」

「げぇ!セリーヌ!これは玩具じゃない!」

 

 セリーヌが僕の持ってるコードとは別の、相手を繋ぐコードを適当に投げてしまった。投げた先のを回収しようと扉に向かうが、その扉が開かれた。出てきたのは髪を梳いて、顔を洗ったヤミだった。

 

「おはようございます……おや?なんですかこれは」

「まうー!」

 

 僕の手とヤミの手に握られたコードを確認したかのようにスイッチを押したセリーヌ。僕とヤミの身体が光り出したかと思えば、急に光が消えた。

 

 特になにか変化が起きた訳でもない。よ、良かった。ヤミを巻き込むわけにもいかない。

 

「な、何も起きないじゃん!失敗だよ失敗!」

 

 そういうと機械が爆発した。え、なんで?一回限りなの?おかしくね?

 

「……なんの発明か知りませんが、私には……きゃっ」

 

 ヤミが何も無い所でコケる。そのままララの股間に向かって頭をダイブさせた。あ、あれ……これつい最近見たぞ。これって……

 

「……う、嘘だろ……」

「な、なんですかこれ……」

「や、ヤミちゃん喋っちゃダメぇ……!」

 

 ララが目の前で悶えているのを見て何とかしようとした矢先、僕の頭の髪の毛が変形した。僕の髪の毛は腕となり、ヤミを抱える。

 

「う、嘘……!?変身能力……!?」

「な、何してるんですかヤミさん……」

「お前……アキみたいなコケ方してるぞ……」

 

 ナナとモモがやってくる。そしてこっちを見るなり口を抑えてしまった。正確には僕の変身した髪の毛を。

 

「と、変身能力……!?なんで……!?」

「ララの発明で僕の癖とか能力とか……いや、ラキスケは能力じゃないけど……!ラキスケと変身能力が入れ替わったんだ!」

「う、嘘……じゃあヤミさんがラキスケを!?」

 

 ララの股から顔を出したヤミは僕にしがみついてしまう。

 

「わ、私がコケてしまうと良くないので今日は一緒にいてください!」

「授業はどうすんの!?」

「そ、それは……何とかします……!」

「ララは治す為のやつ作っといて!今日の夜までに!」

「分かったけど……学校行こ?」

 

 遂に来てしまった。僕が変な目で見られる瞬間。だがその視線は何故だかいつものような『またハーレム男よ』『ドS過ぎるわ……』とかの目じゃない。

 

 今感じている視線は『何あれ……』とか『なんでしがみついてんの?』と言った疑問のものである。

 

「ごめんヤミ……」

「……アキはいつも……こんな思いしてたんですね……」

「とにかく!気をつければ大丈夫だと思うから!……多分」

「んなっ……!あなたがそんな弱気でどうするんですか!」

「仕方ないだろ!?回数減ってきたとはいえたまにあぁなるんだから!」

 

 ヤミと別れてララと教室へ。何かあればメア、ナナ、モモが助けてくれるとのことで僕らも教室に入る。

 

「おーっす」

「おはよう」

「おはよー!」

 

 今日ものほほんとした一日が始まる……と思いきや。

 

「明久ー!!ちょっと来なさい!!」

 

 里紗を始めとしたAクラスの女子達に掴まれる。ついでにに雄二も呼ばれたらしく、何故か着いてきていた。

 

 Aクラスに辿り着くと、そこにはヤミと霧島さんがいた。ヤミも霧島さんも顔を赤くして俯いている。……え?嘘でしょ?

 

「……ヤミちぃが明久みたいなコケ方して翔子の股に突っ込んだんだけど!?」

「……ヤミちゃん、恥ずかしい」

「ち、違います!わざとではなくてですね……!」

「明久と似たコケ方したのか?不名誉だから直しとけよ」

「ふざけんなー!」

 

 そう叫ぶと髪が変形した。その紙は握り拳となり、雄二の頭を上からゲンコツ。クリーンヒットして雄二は地面に突っ伏してしまう。

 

「う、嘘……!?」

「な、何しやが……る……」

 

 雄二の視線は僕の髪の毛へ。いかん、今日隠そうとしていたこの能力が早々にバレてしまうとは。他の人間にも見られてるし。……て言うかこれ制御難し過ぎるんだよ。

 

「こ、これにはワケが……!あっ」

「きゃあ!」

 

 立ち上がったヤミが説明しようとすると、また何も無いところでコケる。そして最初に至る……

 

 

 ◆

 

 

 事情を話した。ララの作った発明品でこうなったこと。そして、直るのは今日の夜、ララが道具を作ってからとの事。

 

「……お前もマジで大変だな……」

「アキの気持ちがよくわかりました……」

「でも明久のラキスケをヤミちぃがねぇ……え、大丈夫?」

「……もう既に被害が3人も出てるからな」

 

 何とかしないといけないが、今日は体育のテストがあるとヤミが項垂れながら話す。……絶対一波乱あるに違いない。

 

「明久は髪の毛変形出来るんだろ?じゃあもうコケないのか?」

「うん、今日はまだコケてないね」

「コケない明久とか味のしないガムだろ」

「表出ろ、右から順にボコボコにしてやる」

「今のお前ならやりかねないからやめろ」

 

 人の不名誉をズケズケと。恥を知れ全く。てかヤミはどうするんだろう……僕のラキスケが無くなるのはいい事だとは思う。だけど人に押し付けてまで無くしたいとは思ってない。

 

「……懸念点がある」

「なんだ翔子」

「……吉井のラキスケ、された側は好きになってる」

「……じゃあコイツにラキスケされたら好きになるってことか?」

 

 冷や汗が止まらない。ラキスケにそこまでの効力があるとは思えないが……

 

「……明久、返しますから私の変身能力を返してください」

「今日の夜まで我慢して……」

 

 泣きそうにならないで欲しい。僕は君のその顔に弱いんだ。

 

「なんにせよ、明久の身体に憑依しとくでいいんじゃねぇの?」

「……今日はテストラッシュなので……それに変身能力が無いから私は今ただの女の子です」

「……驚いた、少し前まで明久殺る事以外頭になかった奴がここまで変わるとは……お前の経歴からしたら元に戻ったが正しいのか?」

「小さい頃のヤミの写真見せてもらったけど凄い可愛いよ」

 

 雄二に見せると写真と赤くなったヤミを見比べてみる。本当に本人か?と言わせるほどの破壊力。それがこの写真のヤミにはあった。因みに写真はティアーユ先生に貰った。

 

「とにかく、ヤミちゃんが明久君みたいになっちゃったなら対策は必要じゃないかな」

「……一応メアとナナとモモには伝えてあるけど……それでも不安だな……」

「お前のラキスケはネメシスと先生曰くもう天性のものと言われてるくらいだからな。対策したところで無駄だろ」

「……」

 

 突発性ハレンチ症候群なんてふざけた事を本気で言われた事がある。本気でもう一度引き篭ろうか考えた。ヤミには苦労をかけるけれど……

 

「明日から休みだ。テスト中は流石にコケる事はないにせよ、問題は体育だな……何限目?」

「一番最後です」

「わかった!私達で何とかカバーしよう!テスト終わったら私達はもう帰っていいし!」

 

 そうするしかあるまい。ヤミに甘いと言うが、これは流石に看過しておけん。だってヤミが抱えているものは元は僕のものだから。

 

「と、とにかく最初のテストに遅れるので私は行きますね」

「う、うん」

 

 見送ろうとしたが、やはりラキスケというものは起きてしまうもので。ヤミが躓いてしまい、教室に入ろうとしていた古手川さんの胸を掴んでしまう。

 

「本当に何も無いところで僕ってコケるんだ……」

「客観的に見て冷静に分析するな」

「や、ヤミさん!?」

「ご、ごめんなさいーっ!」

 

 走って逃げてしまうが、その先で悲鳴とかが聞こえてくる。古手川さんが僕を見つけるなりズカズカと歩いてくる。

 

「ちょっと!アレどういうことなの!?彼女、吉井君みたいな転び方していたけど!」

「……後々菓子折り包むから今は見逃してくれ……頼む……」

「な、泣きながら言われても……」

「簡単に言えば今日限定で明久がいつもやってるラキスケをヤミがやるようになっちまったんだ。ララの発明品で」

「なるほど……だからあんな事になってるのね」

 

 廊下を見ればそこはもうアウトな光景だった。制服をはだけさせて尻餅をつく生徒達が多数。てかもう乳首まで見えてしまっているのはアウトなのでは?男子達が凄いことになってるし。

 

「ご、ごめんなさいーッ!!」

 

 ヤミが珍しく叫びながら一年生のクラスまで走って行く。

 

「雄二、ララの発明品が直ったらラキスケ引き取ってくれない?」

「死んでもゴメンだバカ野郎、いつものお前とヤミを見てたら要らねぇってなる」

「……雄二がハーレムになるからダメ」

「いや、てか……僕って本当に何も無いところでコケるんだ……」

「まだ言ってやがる」

「靴紐踏むとかそういった次元じゃないものね……気がついたら転んでる印象」

「……それで女の股間に頭埋めるのもどうかと思うけど。そして極めつけは胸に手が行くように転ぶものね」

 

 あれ、涙が……なんか今グサッと刺さったし……おかしいな、どうして涙が出るんだ?

 

「そこまでにしてやれ。コイツだって真剣に悩んでるしな」

「産まれた瞬間に備わってるものをどうこう言っても仕方ないでしょ?……薬とかも無いらしいし」

「……ごめんなさい」

「ま、待て!その憐れむような目線をやめろ!その視線が一番痛いから!」

 

 結局ヤミの件は一旦保留にして僕らもテストを受ける事にした。

 

 

 ◆

 

 

「これでテストは終わりだ。気をつけて帰るように……む、吉井!?」

 

 昼休みに聞いてからあまりにも不安だったので荷物を持って走り出した。ティアーユ先生と御門先生に相談する前にモモやナナ、ルンさん迄もがヤミのラキスケの餌食となったと言う。

 

 取り敢えず現在は休憩時間。ヤミが避難している保健室へ。そこにはティアーユ先生と御門先生が待っていた。

 

「先生、ヤミは?」

「今は着替えてるわ。……にしても明久君のラキスケがヤミちゃんにまで……」

『……もう表を歩けません』

「良かったじゃない。明久君の気持ちもよく分かったでしょう?」

『……よくこれでアキは耐えてたなと……』

 

 なんか憐れまれてる?おかしい。こんなはずではなかったのに。

 

「ヤミ、テストは?」

『問題なく終わりました。……後は……体育です』

「そうか……ララは家に帰って発明品を直すよう伝えてあるからそれ待ちなんだけど……あと15分で始まるんだろ?」

『……アキはどうやって対策していたのですか?』

 

 ラキスケの対策……どうしてたっけ。諦めてたような……

 

「君に殺される危険性が何とか抑えてたのかもしれない」

『……じゃあ今度はアキが私を……』

「馬鹿なこと言うな。そうだな、秘策を使うか」

 

 仕方ないのでララを呼出す。自分の服を持ってくるように伝え、すぐにやって来てもらった。

 

「どうしたの?」

「ペケを借りたい」

『ワタクシですか?』

「僕がヤミに成りすます。そしてテストを乗り切る。ララはヤミをこっそり家に連れて帰ってあげて欲しい」

 

 ペケに頼み、外見をヤミにして貰う。そして変身能力がある。もうヤミのようなものだろ。

 

「出来ました。これで頑張ります」

「わ、私がいる……!」

「凄いわね……」

「ティア、行きましょう」

 

 後の事をララに任せてティアーユ先生と共に保健室を出る。その最中に約束事を幾つか課した。これに関しては僕がヤミのフリをしているのをばらさない、もしくはバレないようにすること。

 

 その為に僕が明久だとバレない為に先生にも協力してもらうこと。二人だけの秘密にすること。後でメアとかには話しとこう。何とか協力してくれそうだし。

 

「……大丈夫?」

「なんとか。……じゃ、行きますよ」

「えぇ!」

 

 僕はヤミと何度だって接してきた。その度にヤミの接し方は覚えている。大丈夫だ。自分を信じて……

 

 体育館の扉を開き、足を踏み入れた。

 

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