バカとToLOVEる!   作:抹茶スイーツはお好きですか?

76 / 76
Christmas Eve

 

 色々あって十二月も末。もうすぐ大晦日って日に一大イベントが待っていた今日。リビングに行くと皆が何かドラマを見ている。

 

「なんのドラマ見てるの?」

「DV夫が複数の女と浮気したのを被害女性達が力を合わせて懲らしめる話」

「朝からなんてもの見てんだよ……」

 

 朝から昼ドラ内容の深夜ドラマを見てるんじゃあない。気不味くなるだろ。これから朝飯だってのにドロドロものを見せやがって……

 

「でも面白いわよ?傷の舐め合いで裸の付き合いする女同士も」

「子供のいる前でそんなの見ないでください……」

 

 あまりにも独特過ぎるシチュエーションのシーンをスルーして台所へ向かい、朝ご飯を作って食べながらそのドラマを眺める女の子達を見ていた。ちょくちょくドラマの方にも目を向けるが……あまりにもドロドロ過ぎる。てかDV夫もクズ過ぎるだろ。いくらフィクションとはいえ気分悪くなるな……てかよくよく考えたらこの世界にはこういう男がいるって事だろ?怖くて夜も眠れなくなるだろ。

 

「これに比べたら私達の男はねぇ」

「女の子にモテる全ての要素を兼ね備えていますね」

「明久がこんな事するはずないしね」

 

 僕の評価をしてくれているが、ドラマとはいえこんなのと比べられているのか?少し悲しい。

 

「そんな雄二みたいな事してないよ」

「坂本ってそんなDVしてたっけ?」

「霧島さんに首輪つけて全裸で犬の格好させてそうな奴だろ」

「それはDVじゃないよ、SMプレイだよ」

 

 精神的苦痛を背負わせるのはDVではないのか?難しいな……てかそんなことを話してる場合ではない。今日は12月22日。もうすぐお正月だし……イベントが目白押しなのだ。大掃除も沢山やらなきゃいけないし……

 

「そう言えば明久、もうそろそろ25日だねぇ?」

「……」

 

 里紗かこっちを見て嬉しそうに笑う。黙っていれば良いものを……と考えていたけれど、あんな笑顔を見せられてしまっては邪険に出来ん。とは言え、クリスマス……今年も来たな……

 

「25日に何かあるの?」

「そっか、ララちゃん達は初めてだもんね。クリスマスだよ」

 

 宇宙人組はクリスマスについて知らないため、首を傾げていた。御門先生とティアーユ先生は知っているらしい。本当はイエス・キリストの降誕を記念する祭で、キリスト降誕祭、降誕日、聖誕祭、ノエルなどとも呼ばれる。

 

 だが現代の人達はクリスマスはサンタさんが来る日だとかご馳走食べる日とか仮装して皆でパーティーする日とか十人十色の様相を見せる。中には恋人同士で愛を確かめ合ったりとか……あまりにも人の誕生日でイチャコラし過ぎる日である。

 

「去年里紗ちゃんは明久君と二人きりでクリスマスしたんでしょ」

「う、羨ましい……!」

「ほんっとに何も無かったけどね。ご飯作ってくれてケーキ食べてメリークリスマースなんてお祝いしてただけ」

 

 何かあったら嫌だろ。え、なにか事件とか起きて欲しかったのか?僕はゴメンだ。平和にご飯食べて語らうのも良かっただろ。そう言うと睨みつけられてしまった。何がいけなかった?僕にはさっぱり分からない。

 

「所で……日本にはクリスマスイブの夜、性の六時間と呼ばれる時間帯が地球にはあるらしいわね」

 

 ……僕はこの日、御門先生を死ぬほど恨むことになる。こんな事を言わなければ争いなんて起きないのに。ほらぁ、女の子達が目をギラつかせて……恐怖映像だろ。ハイエナのような目でこちらを見てくるのは心臓にも悪い。

 

「ウチでは楽しいクリスマスパーティーを開くことは許可しますが、性の六時間なんてものはありません。そもそもキリストの誕生日になにイチャついてんだって話でしょうが」

「いつでもどこでも女抱き放題のアンタがそっち側なわけ?」

「喧しい!御門先生が渡してくれる薬が無きゃ僕は今頃腹上死してんだぞ!頻度を考えろ!」

 

 皆が頬を膨らませる中、メモを作って皆の前に出す。皆がメモを覗き込むようにこちらにやってきた。

 

「これは?」

「クリスマスパーティー、やるんだろ?皆で楽しいものにするから、一緒に準備手伝って」

 

 そう言うと皆にこやかになってメモを凝視した後、それぞれ買い物に走って行った。御門先生はセリーヌを抱いてニコニコしてるし、ティアーユ先生は僕と一緒に優雅に珈琲を啜っている。後から母さんとセフィさんがリビングにやってきた。

 

「何騒いでたの?」

「クリスマスパーティーの準備をするから買い出しに行かせたの。……買い出しに行かせなかったら僕はきっとこの世にお別れを告げなければならなかったんだ」

「大袈裟ねぇ、腹上死なんて滅多に起きないのに」

 

 母さんが聞かないようにしていた。そりゃそうだ。息子のそんな事聞かされたくもないだろう。

 

「医者であるあなたがそれ言うんですか……はい、御門先生も珈琲。母さんとセフィさんは呑む?」

「私はいいわ。また父さんと仕事に出掛けるから留守番お願い。正月前には帰ってくる」

「私はいただきましょう」

 

 はいよと応えながら朝食を差し出す。それを貪りながら今日のスケジュールを確認していた。

 

「ありがとう明久君。……にしてもクリスマス……サンタさん、と言うのが来るのでしょう?」

「あぁ、サンタクロースですね」

 

 サンタクロースの説明をしていると母さんが「我が家のサンタは私だ」なんて言うから朝から「嘘だぁぁぁぁぁ!」なんて絶叫してしまった。まるで無限の彼方に飛んで行きそうなおもちゃが倒すべき悪の帝王に「お前の父は私だ」と言われた時と同じくらいショックだった。

 

「子供の夢を壊すなよ!僕が美柑のサンタクロースになってたのに……!」

「……そこまで怒られるとは……ごめんなさい……」

「良いよ、今年も僕が美柑にプレゼント置いておくから」

 

 そう言うとお願いと頼まれ、ご飯を食べて仕事へ行ってしまう。さてと、どうしたものかな。やる事は沢山あるが……

 

「そうだ、セフィさん達にもお手伝い、お願いしてもいいですか?」

「あら、私達でも役に立てることある?」

「皆はご飯とか装飾用の買い物に出かけてます。僕と一緒に家の掃除をして欲しくて」

「いいけど、ご褒美頂戴ね?」

 

 ……歳下の学生にご褒美を強請る先生ってどうなんだ?もう何も考えずに「わぁぁぁ、えっちぃねぇ〜」と顔赤くしてりゃいいのか?あ、そうだ。たまにはちょっかい出してみるか。

 

「そんなに僕の事好きなんです?」

「生涯愛するって決めたし。処女だってあげたでしょ?」

「そ、そうよ!私だって……!」

「あまり大人を揶揄うと、搾り取っちゃうかもしれないわ」

「……スミマセンデシタ」

 

 ……大人って怖い……て言うか、もう目付きが獲物を狙うハイエナなんよ。いや、ハンターかな?そんなに僕の事好きでいてくれるのは嬉しいけれども……

 

「とにかく掃除しましょ。皆でやれば早く終わりますよ」

「そうね、皆が帰ってくる前に終わらせなきゃね」

「そ、そうね!」

 

 家の掃除をおまかせする事に。掃除に自信があるなんてセフィさんには玄関と庭の掃除を、御門先生にはお風呂を、ティアーユ先生にはリビングの掃除をお願いし、トイレや自室、親の部屋、皆が使う部屋の掃除は僕が担当して……

 

 一時間半後、粗方掃除を終えた僕らは4人でお茶の時間を設けていた。後はこの家に住む女の子達の部屋の掃除ではあるが、後で各自にやらせる事にする。……て言うか本当に帰らないんだよなぁ……沙姫ちゃんとか帰らなくていいの?なんて聞いてみたら家の人から連絡かかってきて「お嬢様をお願いします」なんて言われてしまったし。ハーレムも来る所まで来ちまったな。

 

「そう言えばクリスマスパーティーには他の子は呼ぶのかしら?」

「来たら招き入れますが、基本的には雄二達は来ないって言ってましたし僕らだけでやることになりそうです」

「なるほどね。……話変わるけど……ティアがここを掃除したんでしょう?よく物を壊さなかったわね」

「わ、私だって掃除くらい出来るわよ!」

「あら、ティアーユ先生は物を壊してしまうのですか?」

 

 あれ、セフィさん知らないんだっけ。そう考えながらお茶を飲んでいると、御門先生がティアーユ先生の事について説明を始めた。

 

「明久君同様かなりドジでして」

「御門先生、僕の事ドジだと……」

 

 そんな事を言うとは思わなかった。そう言うと隣から虐めないのと僕の腕に抱き着きながら僕の頭を撫で始めたティアーユ先生。あ、今はその優しさがスーッと沁みるんだ……

 

「仕方ないわよ、明久君可愛いから揶揄っちゃうの」

「いくら明久君が好きだからって揶揄うなんて子供じみてるわよ」

「あら、いけない?地球に来るまで子供じみた下着を身に着けていたティアに言われたくないけれど」

「そ、そんなに子供っぽくないわよ!」

 

 この二人って前から思ってたけど普段は御門先生>ティアーユ先生でたまにティアーユ先生が強気に出てもカウンター貰ってるって感じしかないな……ティアーユ先生がどんなに上を取ろうとしても御門先生がその上を行ってる感じがする。

 

「この際だから明久君に教えてあげるわね。……ティア、あなたと会うまで男と性知識についてなんも知らなかったのよ」

 

 ……純情過ぎるし、良い事ではないか。そう言うと御門先生もセフィさんもダメよなんて首を横に振ってしまう。……て言うかこの人に関してはもうその方が良かった説ないか?

 

「女を磨くならそういうところにも力を入れないと」

「なまじルックスが良いから男に言い寄られるけど固まっちゃうからね」

「あ、あなただって!」

「私はちゃんと自分で断れてたから。どっかの誰かさんと違ってね」

「……」

 

 虐められている……そろそろ助け舟を出すか。正直先生の泣き顔は嫌いではないし唆る物はあるけれど僕はサディストになった覚えはない。

 

「虐めないであげて下さいよ」

「あら、ティアにも甘いわね……やっぱりヤミちゃんに似てるから?」

「そんなんじゃないですよ。……僕は平等なんです。良くも悪くも」

「嘘おっしゃい、ヤミちゃんにだけ他の子より一割増で甘いわよ?」

 

 ……無自覚で甘やかしていたか?……否だ。僕は平等に愛すると決めたのだ。そんな事はありえない。

 

「……そりゃ他の子達より苦労してますし。ちゃんと頑張ったら頑張った分だけ甘やかすのは当たり前でしょう?御門先生も、意地悪しないであげてください、ね?」

「そうね、ちょっと悪戯し過ぎちゃったかしら」

 

 ティアーユ先生も僕に抱き着きながら御門先生を睨みつけている。取り敢えず一悶着も落ち着いたし、四人でお茶会再開。

 

「にしても……ララも本当にこの家にワープして良かったわ……この家じゃなかったらと思うと目眩がするわね」

 

 ……浴槽で考え事してたらいきなり目の前に全裸で現れるからなぁ……流石に夢かと思ったし、なんなら男に対して耐性があるのかないのかわからんかったから本当にやりづらかった……

 

「……でもよくまぁ……この家に居るようにOKしてくれたわね?」

「……それも、自分自身のためだったんです。結局……一人が好きな癖に、独りは嫌だなんてワガママな考えを持ってたから」

「あの頃とは大違いよね……どうして相談しに来てくれなかったのかしら?」

「いや、御門先生心療内科じゃ……」

 

 そう反論しようとするとかかりつけ医にそんな無粋なこと言わないのと胸の所に頭を持っていかれる。まるでセリーヌを見ているかのように僕の頭を抱き抱えて……

 

「……ミカド、明久君が困ってたのに家に乗り込んでどうしたのも言ってあげなかったの?」

「それは世間じゃ犯罪と言うのよ」

「こらこら」

「本当にありがとう、明久君。世間知らずの娘達に色んな事を教えてあげたでしょう?」

「……心配かけてばっかでしたけどね」

 

 珈琲を飲み干して時計を確認。もうそろそろ戻って来るかなんて考えていると、玄関から騒がしい声の数々が聞こえてくる。

 

「ただいまー!」

「お帰り。買えた?」

「ほら、ちゃんと買ってきたよ。アンタは何してたの?先生達とイチャついてた?」

「そうね、大人の女を教えてたわ」

「掃除とお茶するのを大人の女って言うんですね」

 

 軽くいなして買ってきたものを確認。これなら足りそうだ。なんて考えていると皆がヤケにニコニコしている。なんだ?なんか良い事でもあったか?

 

「先生達もちょっと来てください!」

「?良いけど……」

「明久にとーってもいいもの見せてあげるから部屋行って休んでてー!」

「その間に僕はクリスマスイブに食べる夜ご飯の仕込みしたいんだけど」

「じゃあこうしますね」

 

 モモがなんかの装置を起動するとガラス張りの敷居が出てきた。僕と通路、そしてララ達を器用に隔ててしまう。それよりも気になったのはガラス張りなのに中がまるで見えないことだ。なんでもララの家とかではよくある造りらしい。

 

『これから私達はクリスマスパーティーを盛り上げる為の衣装に着替えます』

「今着替えなくていいだろ」

『折角拵えた衣装が合わなかったらアウトでしょうがよ!』

『とにかく明久には待ってて欲しいの!』

『……アキ、絶対気に入りますから』

 

 仕方なくごゆっくりと答えてパーティーで食べるご飯の下拵えをしながら今日のご飯の献立を考える。僕が気に入る?……て言うか、ヤミがそう言うとはとても気になりはする。だってそうだろ?あのコスプレに興味なかったヤミが自信を持って言うコスチューム。気になりはする。とはいえ、クリスマスパーティーのコスプレなんてサンタさんかトナカイだろ。なるほどな?確かにミニスカサンタとか出て来たら視線を釘付けにするかもしれん。

 

 美味しそうなのを片っ端からリストアップし、何を作るか、何を食べさせたら喜んでもらえるかなどを必死に吟味しながらお肉に味を染み込ませるための工程を準えていた。かく言う僕も楽しみだから、皆で楽しみたいからここまで頑張れる。その為に何をするべきか考えるのはとっても楽しかった。

 

「明久!終わったよ!」

 

 声が聞こえてきて隔たりが無くなったのかと認識し、皆の言う「僕の気に入るコスプレ」を拝む事に。リビングに目をやると……

 

「じゃーん!ダークネスでーす!」

「……」

 

 空いた口が塞がらなかった。全員が全員嬉々としてヤミがダークネスになった時の服に着替えているのだ。……ゑ?マジ?

 

「……お邪魔しました」

「な、なんで目を背けるのー!?」

「当たり前だ!!全員なんて格好してんだよ!!てかなんで先生やセフィさんまで!?」

「明久君のオキニのヤミちゃんの着てた服を着れば喜ぶって美柑ちゃんがね」

 

 ……嘘、だろ……?美柑の提案なのか?てか美柑も着てるし……

 

「どお?嬉しいでしょ?アキ、こう言うの好きじゃなかった?」

「……国へ帰ります、探さないでください」

「なんで逃げるのさー!」

「じゃかぁしいっ!僕は皆がサンタさんやトナカイのコスプレするのかなって楽しみに待ってたのに!」

 

 全員が顔を見合わせて頭にクエスチョンマークを浮かべるとは思わなかったよ。クリスマスにちなんだコスプレじゃないのかと問い質せば一言もそんなことは言ってないと……確かに盛り上げるためとは言ったけど……まさかエロかよ……

 

「……くっ……」

「な、なんでそんな悲しそうな顔をするの?」

「だって……クリスマスパーティー……楽しみにしてたのに……皆、結局そんなエロに走るなんて……僕は失望したよ……」

「……クリスマスパーティー……この格好で楽しむのはダメですか?」

 

 ……そうだ。ヤミ達は知らないんだっけ……ちゃんと教えるか……

 

「折角ならちゃんとした……あー、よし。ララ、簡易ペケバッジ出して」

「え?良いけど……」

 

 簡易ペケバッジを受け取る。これはペケの機能を簡略化したバッジであり、インストールしたデータの衣服を着ることができる。

 

「その格好は嫌いじゃない。だが楽しいパーティーでそんなエロに走る事を僕は許さん」

「……まさかここまで純粋に楽しみたいって……」

「出来た!よし、これをインストールして……っと。ほら、着てみな」

 

 簡易ペケバッジを着けたララがバッジのボタンを押すと、可愛いサンタガールが完成した。ヨシ。後は……

 

「はい。後はこのコーデとか確認して着るように。……繰り返すがその衣装は嫌いじゃないけど、大切なイベントの時に持ってくるなってこと!」

「……なんで説教されてるんだっけ……」

 

 喧しい。それに風邪引かれたら困るんだ。

 

 その後は全員服を考え直すよう命じて部屋から出した。……折角のパーティーなんだ。楽しくやりたいだけなのに……もしかして皆との認識がズレてる?僕は純粋に皆とワイワイしたかっただけなのに、女の子達からすればエロ関連と認識されてるのか?

 

「……ぐぬぬ……」

 

 性の六時間なんて話が上がらなければこんな事にはならなかったのだ。本気でばいばいメモリーくんミニを使う事になるかと思ったぞ?

 

 因みにミニとは僕も開発に携わって一部だけ記憶を消す事に成功した初めての完成品。……なのだが、ララは出来栄えに文句があって封印しているが……

 

 とにかく僕は信じてる。女の子達はちゃんとオシャレしてきてくれる。そう願って再度ご飯関係のやるべき事に着手し直した。

 

 

 ◆

 

 

「まさか明久、純粋にパーティーしたかっただけだったなんて……」

「……これじゃ私達、ヘンタイさんです」

「美柑ちゃん!アキ君怒ってたじゃないの!」

「ごめんなさい、兄が不能で……」

「……それはちょっと違うかも」

 

 女子陣がカタログを調べながら自分の着る衣装について考察していた。服装はダークネスのままであるため、各々頬を赤らめながら服のズレを直したりしている。

 

「……ねぇヤミちゃん?本当にこの服着てたの?」

「……私の意思ではありませんよ……それに、言ったでしょう?私より胸が大きい人は着るのは辞めた方がいいって」

「そ、そりゃ見えちゃうかもだけど……」

「……それに私この服に良い思い入れありません。それならこっち着た方が精神的にも健全です」

 

 そう言って取りだしたのはベビードールだった。

 

「な、なんでそんなもの持ってるの!?」

「プリンセスモモが教えてくれました」

 

 その一言にナナがモモを襲い、その他複数名がモモを取り押さえる。もみくちゃにした後に各々が衣装を決めた後、リビングに戻るとセフィの顔をマジマジと見つめる明久がいた。セフィが照れてる中、そんな事にも微塵も気にも留めず、ただただじーっと見てるだけなので照れるのを辞めて訝しむ目で見始めたところで里紗が声を掛けた。

 

「何してんの?」

「……セフィさんの声、誰かに似てるなって考えて、ようやく理解したんだ……それによってどうしてチャームに掛からないのかも理解した」

「え、なんで?」

「セフィさん、姉さんと声そっくりだもん。アキくんなんて言われたら姉さんに詰められてるようで……誰かに声似てるなって思いながら話してたけど姉さんだったか。だから僕チャームきかないんだ」

 

 誰もがそんな馬鹿なと言ってる中、明久は玲に電話をかけた。すぐに電話が繋がる。

 

『もしもし?アキくんですか?』

「あー!!ほんとだ!!ママと声そっくり!!」

「これには驚きです……!」

「あらほんと……玲ちゃん、ごめんなさいね。明久君が私の声と玲ちゃんの声が似てるっていうから」

『確かに似てますね……電話越しなら話し方真似すればどっちが話してるか分からないかもしれません』

「それで明久がママのチャームにかからない理由がお姉ちゃんに詰められてるみたいだからって』

『アキくん?お話があります』

「どうしてバラすの?」

 

 アカンて。僕は心を閉ざさなきゃいけなくなるじゃあないか。通話を切ってスマホをポッケにしまい、ソファーに座って項垂れた。

 

「はぁ……疲れた……」

「でもアキってなんでお姉ちゃんを苦手視してんの?」

 

 ナナに言われて別に苦手ではないと補足を入れる。本当に苦手な訳ではないんだと、呪詛のように繰り返した。

 

「お姉ちゃん、アキに対してお嫁に行けなくなるようなチューしようとするから」

「そんなの私達がいつもしてるじゃん」

「でもそれで私のチャームが効かないのは納得いかないわ。ただでさえララ達の妹を作ろうとした時も全然チャームかからなかったし」

 

 罪悪感が止まらないのだが。僕はどうすれば良かったのだ?確かに腹括って皆の望むようにしたさ。その結果がこれだと?猥談に向かって僕はお腹がキリキリするのか?

 

 そんな後悔に近い思考を頭で反芻させながら明久は頭を抱えていると皆が簡易ペケを使って着替え始めた。

 

「ほら!皆クリスマスに相応しい衣装に着替えたよ!」

「……サンタガール……とっても良いですね」

「やれば出来るじゃん。そうだよ、純粋にパーティーを楽しむ為にサンタガールは必須。そしてサンタを迎えるのだよ。美柑、サンタが来るから今日は早く寝なよ」

「分かってるよ」

 

 手を引かれ、ため息を吐きながらクリスマスイブに相応しいパーティーを皆で準備する事となった。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「メリークリスマース!」

 

 準備を終えてご飯の用意が出来、僕はサンタのコスプレをしてサンタガールに囲まれている。去年は美柑が父さんと母さんに会いに行ってたし、里紗しか居なかったから新鮮だなぁ。

 

「ちぇっ、去年のままなら私だけなのにな〜」

「……狡いです」

「そもそもヤミちぃは会ってすらいないでしょ」

 

 あれからほんと人も増えたよなぁ……運命とはわからぬものだ。

 

「でも良かったですねぇ?よりどりみどりですよ?」

「オッサンか君は」

「アキがこんなハーレムなんて数ヶ月前じゃ全然思えなかったよ」

「それもこれも私との出会いが全てを変えたと言っても過言じゃないよね」

「あなたと言う子は……何度も言うけど明久君の家だったからよかったものを……あぁ、目眩が……」

「……母上が母親してる……」

「私は母親です!」

 

 ……母親とは思えないような事ばっかしてるからな……僕には初めて出会った時くらいしか母親の様相見れなかったし……てかほんと敬語で話してると姉さんの声に聞こえてくるんだよな……

 

「ただいま」

 

 ちょうど考えていたら姉さんが帰ってきた。

 

「本当に似てる……」

「お帰りなさい玲ちゃん」

「まぁ、皆さんクリスマスパーティーですね。でも意外です。帰ったら酒池肉林の光景を予想していたのですが」

「明久が今日はそういうのなしで純粋に楽しもうって」

「……」

「おいコラ、なに人を不能みたいな目で見てんだ」

 

 人にそんなことを言うんじゃありません。なんて考えていたら姉さんがセフィさんにヒソヒソと何かを耳打ちしていた。やりましょうとなにやら意気込んで僕の方を見て……

 

「「アキくん」」

「……」

「あー!泡吹いて倒れてる!」

 

 姉さんの声ってなーんかThe大人の女って感じがする。昔から「アキくん?女の子と仲良くしてましたね?おしおきです」なんて言われて追いかけ回された記憶が蘇る……

 

「明久を虐めないでー!」

「自分の弟が女性を取っかえ引っ変えしているのを見てるとむず痒いので」

「ダメよ玲ちゃん、明久君はデリケートなんだから」

「自分と同じ声の年上人妻が自分の弟と交合ってる気分って複雑ですね」

「すぐ慣れるわ」

 

 何話してんだよ……!どういうことだってばよ……!

 

「……アキを虐めたらダメです」

「私はあなたの変化も驚いてますよヤミちゃん……少し前のようにアキくんが性的な事をしたらお仕置きするヤミちゃんは何処へ?」

「……あれは偽物の私です」

「……アキくん、洗脳は良くないですよ……あら?」

 

 泡吹いて白目を剥いている。これならなんとかなるだろ……そう思っていた時期が僕にもありました。

 

「こら、逃げるな」

「ぐぇぇ!君は僕の味方でいろ!なんで目を覚まさせたんだよ!」

「私の下僕は常に女を弄び、常に優位に立ち、不敵な笑みを浮かべてなくてはならん」

「でもネメちゃんのせいでマスターの普段の性格どんなだっけって言う人増えてるからネメちゃんも悔い改めなきゃね」

「……年貢の納め時です」

「……助けて?」

 

 ……なんで追い詰められたら目をキラキラさせて声高くするんだ?最近ネットやSNS、ニュース番組に出てくるアニメのキャラかよ。見た目可愛いのに性格ドブカスの奴がいる。そのキャラは『甘いものが食べたいんだよォ〜〜〜!』とか『イ〜ヤ〜ヤダヤダ』なんて伝説的な語録を残している。メアそっくりの声してるんだよな……

 

「ダメ。君のせいで僕が学園でどんな扱い受けてるのか知らんのか?」

「良いじゃないか。学園の種馬」

「良くないに決まってるだろ!」

 

 女性比率がほんの少しだけ高いうちの学校。男子からは尊敬の眼差しを、女子からは『孕まされる』とか『女として屈服させられちゃう』とか顔真っ赤にして言われる。しかもその顔つきはなんか畏怖より期待とかそういう系の目だし。

 

「そもそもハーレムなんて……」

「なんだ、ハーレムを謳ったのは私ではないぞ。モモ姫だろ」

「なっ!」

「他の男子生徒に対しては普通に猫被っているが下僕相手だと凄いからな。なんなら普通にハーレムになる前に風呂に突撃して背中を流すと言いながら身体を密着させていた」

「……あなたという子は……育てた覚えはありませんが……?」

「どう考えてもママの血だよ」

「母上の血だな」

 

 娘に言われてなんですってと頭に血を登らせたセフィさんを横目に春菜や瑞希達と乾杯していた。

 

「去年は私と瑞希ちゃんで過ごしてたなぁ」

「まさかこうなるとは思いませんでしたね」

「人生どう転ぶかなんてわからんもんだ」

「でもまさか小学生の時からこんな可愛い子達を侍らせていたなんて……」

「なんなら低学年の時に私も色んな所に連れて行ってもらいました」

 

 思い返すと女の子しか友達いなかったのか僕?今は秀吉や康太がいる。……え?雄二?アイツは悪友だ。友達と言う器で収まるような男ではない。そう考えると僕女の子としか接してないな……

 

「小さい頃から才が芽生えていたのですね」

「女誑しの才能と言ったらモモだけ今日野宿ね」

「……」

「こりゃダメだ。アキ、モモを外に捨ててくるよ」

「妹を外に捨てる姉なんて!恥を知りなさいよナナ!」

「……どの口が言ってんだ……」

 

 一悶着ありながらもクリスマスパーティーは幕を下ろした。片付けをして皆に風呂に行くように伝えて自室に戻ってくる。風呂は皆より先に入っていたからもう寝るだけ。今日は楽しかった……

 

 あと少ししたらもうすぐ3年生。僕の激動の高校生活もあと少し。

 ここ数ヶ月で劇的に変化した生活も、色がついて鮮やかになり、眩しくもあるこの生活はとても充実している。

 進学したとしても、僕の生活はきっと、きっと楽しいものだろう。

 そう思い、新年に思いを馳せながら布団に潜り、美柑が寝るまで……あ、あれ……眠くて……?

 や、やめろ。僕は美柑にプレゼントを……

 そんなことを考えていても意識が闇に引きずられていった。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「ふふふ、ようやくこの時が来た」

 

 明久の部屋の前ではダークネスの服を着たララ達が屯していた。性の六時間なるものの説明を受けてその時間を過ごそうというものである。

 

「どんなに言い繕ってもオスなんだから意識せざるを得ないでしょ」

「この先でアキが待ってるんですね」

「……辞めといた方がいいと思うよ」

 

 美柑が瞼を擦って欠伸をしながら言う。だが引かぬ止まらぬ省みぬの精神の一行を見てお休みと言って部屋に戻ってしまう。

 

「美柑ちゃんもつれないねぇ……でもこれで邪魔者が無くなったと言える!」

「突撃ー!」

 

 部屋を開けるとそこは真っ暗闇。視線の先には布団に潜ってスヤスヤと寝息を立てて眠る明久が居た。その姿を見て誰もが顔を見合わせてわなわなと震えて……

 

「「「「「なんでよ〜〜〜!!」」」」」

「な、ななななんだ!?」

 

 迫真の叫び声に飛び起きた明久が部屋を明るくして現状を把握すると服を着替えて正座しなさいと告げた。その顔に顔を青ざめながら誰もが従い、明久の部屋で正座した。

 

「君達は何をしようとしていた?正直に答えなさい」

「ナニをしようとしていました」

「上手いこと言ったつもりかね?全く、僕が鬼だったらダークネスの格好で外出してたよ」

「欲望に忠実になってはいけないのか?」

「そもそもですよ?子供出来るだろうし僕まだ責任取れないから」

「避妊すればいいのでは?」

「……せめて色々片付いてからにしてくれ……もうすぐ新年だぞ?」

「新年になると何かあるの?」

「お正月と言って色々イベントがある」

 

 明久がお正月の事を話してる最中、時計を見てそろそろ寝たかなと包みを取り出した。

 

「にしても助かった。美柑のプレゼントをこっそり置いてこなきゃ。戻ったら皆で寝よう。今日は寒くてかなわん」

「ベッド大きくしてるね」

「……それ戻るやつだよね」

「もち!」

「おっけー、頼む」

 

 美柑の部屋へ向かい、寝ているのを確認してこっそり置いた後、部屋に戻ってくるとセフィにティアーユ、涼子もやって来ていた。

 

「さぁ明久君!娘達は置いておいて私達大人の時間じゃない?」

「……もう寝るんですよ」

「そ、そんな!?性の六時間を楽しまないオスは居ないって御門先生は言っていたのに!?」

「……貴方という人は……」

「……ティア、淫ら過ぎです」

「あ、貴方に言われたくないわよ!」

「……ほら、喧嘩しないで……早く寝ますよ」

 

 こうして全員が抱き寄ってララによって大きくなった布団をかけて寝る。この時寒さも吹っ飛んで助かったと明久は後日語ったのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。