PK廃人共の異世界   作:サイトー

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世界樹編
一・1500の囮と21人の卑怯者


 ――――それは、余りにも卑怯な策謀だった。

 第八層のルベドは強く、余りにも強く、チートにしか思えない程に強かった。勝てる訳がないと先の階層に逃げるのも必然だったのだろう。1500人のプレイヤーはその機械人形とおぞましい化け物共から逃げた先、浮遊する赤子と遭遇し、殺してしまった。

 ……明らかに妖しいNPCを殺害(キル)してしまった。

 終わりの始まり。言ってしまえば、侵入者共の皆殺しである。

 

「ま、こんなものですね」

 

 荒野を更に破滅させ、ナザリックに来た挑戦者を全て殺したと安心する。見るからに邪悪な形をしている髑髏の男―――モモンガは、笑みマークを浮かべながら自らの戦歴を見た。

 敵対していた奴らは一人もいない。

 計画通りであると同時に、最終防衛ラインと定めた策略が見事成功したのだろう。

 

「いやいや、見事。見事。御見事です。流石はアインズ・ウール・ゴウン、流石はギルドマスター・モモンガさん。我々が準備した1500人以上の囮らを、こうも見事に殲滅するとは素晴しい。

 予想通りの悪辣さ、予感通りの周到性、想像通りの脅威でありますね」

 

「―――まさか。なんで、貴方が、貴方が此処に居るんだ……ヒャッハーダーク!!」

 

 パチパチ、と言う軽い音。拍手をしながら、虚空から一人のプレイヤーがモモンガの前に現れた。姿は実に分かり易く、髑髏の仮面兜と、骸骨を模した白と黒衣の死神鎧。右手に持つは大剣のダークソードであり、左に纏わり付くエフェクトはダークハンドと言う装備アイテムであろう。

 

「ホッホッホッホ。魔王殿。魔王モモンガ殿。長い時に渡り我らが同盟、こうして貴方を討ち果たしに来ましたよ。此処に居るのは、ただただそれだけの理由です」

 

 にしても、この二人ノリノリである。ゲームキャラとしてRPすることに熱を入れ過ぎだった。

 

「モモンガさん……――――」

 

「ええ、分かってます。ウルベルトさん」

 

 異形種、ヒャッハーダーク。当然の事ながらカンスト廃人であり、ソロPKランキング上位者。ここ最近は一位を確保し、自分と同じカンスト勢パーティを狩り殺す事を娯楽にしているヤバい奴。対人厨のPKソロプレイヤーでありながらも、ガチスキルではないRP重視の非公式バグボスだった。

 しかし、ウルベルトの疑問はそこではない。この度のナザリック攻略は、当然の事ながらギルド活動である。ソロに拘るRP勢が、最大の娯楽とするPKの為とは言え、他のプレイヤーの為にナザリックのプレイヤーをキルするのは余りに不自然。

 

「では、そろそろネタばらしといきましょうか」

 

「OKOK、臨時リーダー。ここいらで暴れるとしましょうか」

 

 そして、唐突に髑髏戦士の隣に現れたのが、花の冠を被る白ローブの女魔術師プレイヤー。

 

「貴女はあの、屑の中の屑。腐れド外道姫プレイヤー……――メリー・トラフィックライト」

 

「あらあら。私の事、ちゃんと覚えておいてくれてたんだね、モモっち」

 

「るし★ふぁーさんが良く、貴女と組んでした悪戯を自慢してましたからね」

 

「ああ、彼ね。私も良く、姫プレイの取り巻きには言わないけど、ソロPK仲間には自慢してるし仕方ないかな。けどまぁ、良いでしょう。と言うことで、それはそれ。これはこれ。

 私たちも、無駄話はこれくらいにして、そろそろ盛大に遊びましょ?」

 

 ――――それは余りにも、本当に卑怯な策謀だった。

 とてもPKらしい作戦。人間心理の裏を掻い潜る外道が思い付いたナザリック殲滅作戦の全貌だった。

 幻術師に極ブリ特化したメリーは、手に持つ杖を振って自分達同盟の策をついにこのナザリック地下墳墓の中で具現させたのだ。1500人と言う囮を盾に、幻術で姿を隠し、温存していた自分達の本当の戦力を披露した。

 一位。黒髑髏の死神鎧を身に付けた黒炎の戦士―――ヒャッハーダーク。

 二位。左手に銃と右手に鋸を持つ血生臭い狩人―――ムーン・プレゼンス。

 三位。人を馬鹿にしたようなお面を被る黄金鎧―――仮面巨人ヌードル。

 四位。目を白い包帯で巻く着物姿で杖を持つ侍―――狂宙イチコ。

 五位。ゴブリンの軍勢を統率する悪霊姿の魔王―――ハーロイスメイ。

 六位。スニーキングスーツの白髪髭眼帯の老人―――エキタイオロチ。

 七位。戦闘機体に乗る銃器で武装した機械人間―――トフェッサンmkX。

 八位。黒い狂戦士の甲冑を身に纏う巨大剣使い―――ゲハルノート。

 九位。白ローブの幻術師姿の完全無欠の美少女―――メリー・トラフィックライト。

 十位。黒スーツに冒涜的な気配を纏う麗しい女―――エルトダウン・シャーナ。

 計十名のメンバーは、ついにナザリックのギルドリーダーの前に出現した。囮に使われていたプレイヤーにはいざと言う時の後詰めと説明していたが、この十人はナザリックが1500人を皆殺しに出来るとある意味誰よりも信じ、この出番を隠れながら待っていた。

 

「俺達はシステム上のギルドメンバーでもなければ、普段つるむパーティメンバーでもない。だから、実は別に有名じゃないんだよ。単純にフレンド登録しているだけの、個人的な同好会の集まりでね。簡単に言えば、レトロキャラコスプレ同好会って言う、ただのコスプレRPを自慢し合うグループさ。

 尤も―――全員が、上位ランキングに入るソロPKってだけな話」

 

 つまるところ、対ナザリック殲滅用臨時パーティ。一人一人がたっち・みーに匹敵する―――否、対人に限ればRPキャラでありながら、ユグドラシル最悪の対人厨廃人集団。ガチ勢を駆逐し、悪名を好き放題するロマンPK共。

 故に、あのプレイヤーたちがいるのがモモンガは信じられなかった。

 奴らはソロプレイを貫きながらも、ナザリックを倒す為だけに徒党を組んだソロプレイヤーの集まりだった。

 

「良い塩梅ですね。ここまで巧く行くとは思いませんでしたよ」

 

「成る程。そう言う作戦だったのですね、メリーさん」

 

「ええ。大変でしたよぅ、ウルベルトさん。私の幻術も気張らないと、この十人全てを隠しながら進めませんでしたから。

 ―――私の姫プレイでギルドを誑かして、1500人のプレイヤーを集めて囮にする。

 作戦はまぁ、ただそれだけな話。ナザリックが相手となると、流石にソロではキツイです。けど、自分が他プレイヤーのギルドに入るのは論外で、他ギルドと組むのも拘りが許さないです。

 とのことで―――ソロプレイヤーの臨時パーティとなりました。

 元々はギルドでもなんでもないレトロキャラコスプレ同窓会に過ぎなかったですけど、互いに殺し合って、気が付けば全員がランキング入りするソロPKになってたのも良かったです」

 

 今、この場にいるのは十二名のプレイヤーと、NPCとモンスターのみ。数の上では襲撃者グループの方が上であるものの、またモモンガが先程の攻撃をすれば皆殺しにされるだろう。

 ……撃てるなら、の話だが。

 場は熟した。ナザリックのメンバーは理想通りに攻略組を嵌め殺せたと喜んだが、その囮共に策を消費した事をレトロキャラコスプレ同好会のメンバーはほくそ笑んだ。

 

「取り敢えず、ヒャッハーダークさん。私があのNPCやりますね。所詮はNPC。殺し方はルーチンワークですし、人型の相手なら完殺も簡単でしょうし。

 何人か残して、後は攻め入って皆殺しって雰囲気で良いじゃないでしょうかね?」

 

「ええ。じゃ、お願いしますね、ムーンさん」

 

「あいあい」

 

 右手に鋸鉈と、左手に古式短銃を握った女性プレイヤーは、とても軽い足取りでルベドの方へ歩いて行った。

 ―――刹那、PCvsNPCの殺し合いが始まる。

 ムーンさんと呼ばれたPC――ムーン・プレゼンスは、ルベドの攻撃を全て回避していた。加え、攻撃される度に相手が防御も回避も出来ない機会を逃さず銃撃し、スキル「ダウンショット」を全て命中させている。体勢が崩れ落ち、ごく僅かな時間とは言え、スタン状態が無効化される間に接敵し、スキル「臓器解剖」で致命攻撃を繰り出していた。

 だが、そんな事は不可能な筈。しかし、違うのだ。ムーンの動作は余りにも素早く、こと素早さだけならルベドさえ遥かに凌駕しているレベルであった。

 

「――――成る程。良いですね、良いですね、良いですね!!」

 

 モモンガは楽しかった。余りにも面白くて、ゲームである事の真髄を愉しんでいた。ナザリックを作り出し、仲間たちと青春時代を過ごし、この瞬間こそがRPプレイの真骨頂だった。

 このストーリー、この展開、この物語!!

 自分が、自分達こそが、憎むべき敵全員が、このゲームにおける主役であると!!

 

「ああ、アインズ・ウール・ゴウン! アインズ・ウール・ゴウンの(ツワモノ)共よ!!

 これより殲滅戦に移行する!!

 この第八階層より先、何人たりとも逃さず虐殺せよ!!」

 

 モモンガの魔王ロールカッコいいとウルベルトは思わず目を輝かせた。数年後、そんなモモンガは目が覚めるのかもしれないが、今の彼はまだまだ厨二病真っただ中。

 だが、それこそが合図であった。敵も味方も関係なく、この演劇をリアルにするべく熱が入った。故に、これも必然だったのだろう。最低限の守りを残し、ナザリックのメンバーもまたモモンガの元へ転移する。

 相手は十人で、こちらにはモンスターとNPCもいる。

 敵全員がたっち・みーと同等以上のプレイヤースキルを持つソロPK集団とは言え、流石に二倍以上の戦力差がある。このゲームがMMORPGである以上、運営が狂っている糞だとしても、レベルが同じであればある程度は平等なのだ。

 だが、既に対策は立てられていた。

 第八階層にいるモンスターは、ゴブリン軍団を率いるハーロイスメイに完全に押さえ付けられている。本来ならば傭兵NPCや召喚したモンスター程度のAIに対応できるモンスターではないが、ハーロイスメイがAIの行動条件設定をしたゴブリンは桁が違う。何よりエンチャンター型100lv特殊ゴブリンの補助魔法の援護により、ハーロイスメイの白兵戦能力も同じく桁違い。

 このままならば、第八階層はムーン・プレゼンスとハーロイスメイの手で攻略されるのも時間の問題。

 であるならば話は容易。このナザリック最終防衛ラインである第八階層が生きている内にメンバーを集結させ、一気に敵陣営を殲滅するのみ。

 

「ああ……それとね、モモンガさん?」

 

「ん? なんですか、ヒャッハーダークさん?」

 

「十人と言いましたが―――あれは、嘘だ」

 

「なん……だと―――ッ!?」

 

 にしても、この二人は本当にノリノリである。ナザリックの人達は生温かい目でギルド長を見詰め、侵入者らは何時ものRP大好き発作かと優しい目でちらりと一瞥する。

 

「それでは、メリーさん。転移お願いしますね」

 

「オーケー、臨時リーダー。すすすっと計画を始めましょう―――」

 

 ゲート、とメリーが呟いた誰にも聞こえない程の音。しかし、ゲームシステムが発動するには十分な音量で彼女は準備していた魔法を開放した。

 転移魔法の一種、異界門が開かれる。

 あろうことか、このナザリック地下大墳墓内で。

 しかし、種は凄く簡単なもの。幻術特化の限定異形種「リリス」であるメリー・トラフィックライトは、あらゆる防衛魔法を錯覚させる。攻性防壁さえ無意味。それがダンジョンの守護だろうと彼女が内部に入ってしまえば、未到達エリアに干渉は出来ないだろうが、既に踏破したエリアではやりたい放題。

 

「ヒャッハー、汚物は消毒だぁぁああああ!!」

 

 叫び声ともに乱入して来たのは、更に十一名のソロPKプレイヤー。そして一番最初に現れたのは、モーターバイクアイテムに乗ったアンデッドの骸骨異形種プレイヤー。その火炎骸骨バイクライダーは不意打ち最高と鎖を一気に伸ばし、獲物を一匹捕えた。

 

「うぇ……」

 

 ボッと燃える足。空中で飛びながら驚いて固まっていたバードマンは不意打ちを受け、燃え盛る鎖に足首を拘束されてしまう。

 

「……ぇぇぇえええええええええあああああああああああ!!」

 

「ゲッヒャッハッハッハッハッハッハハハハハハハハハ!!」

 

 無論、髑髏ライダーはそのまま炎上バイクに乗って疾走。砂嵐を作りながら砂漠を爆走し、バードマンのプレイヤーも勢いそのまま引き摺られる。しかも、骸骨ライダーはスキルによって鎖で拘束したプレイヤーを武器オブジェクトとして使用可能であり、哀れバードマンはファイアーハンマーにされてしまった。

 下品に笑いながら髑髏ライダーは、特に意味もなくバードマンをグルグル振り回し、ハーロイスメイが戦っているモンスターへ思いっ切り叩きつけた。その上、炎を撒き散らしながら爆走してナザリックのメンバーを平然と轢き飛ばしつつ、物の序でにバードマンで相手プレイヤーにアタックし続ける。

 

「弟ぉぉおおおおおおおおおお!!」

 

「ペロロンチーノォォオオオオ!!」

 

 姉とギルド長の悲痛な叫び。バードマン―――ペロロンチーノはもう駄目だと判断しつつ、モモンガは状況判断を的確に下す。メッセージで各メンバーに指示を飛ばし、自分もいざ戦場へと覚悟をした瞬間だった。

 

「所詮この世は弱肉強食。弱ければ死に、強ければ生きる……!」

 

「俺の名は、スパイダーマッ!!!」

 

 ノリノリで参戦するミイラ男と蜘蛛人の異形種。他にもまだいるが、そんな彼らも好き勝手に笑いながら参戦し始める。メリーのスキルと魔法で転移して来た後続組はRP用決め台詞を言いながら、凄く楽しそうにナザリックへ襲撃を開始した。







 ゴブリン遣いの魔王コスプレキャラ・ハーロイスメイは違うオーバーロードが元ネタです。
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