PK廃人共の異世界   作:サイトー

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八・廃魔神化計画起動開始

 アルベドからの話を聞き、モモンガはユグドラシル時代のことを思い出した。確か、あれはメンバーが抜けてナザリックの防衛力が激減したのが原因だったか。流石に自分が24時間見張る訳にもいかず、ログイン出来ない日もあり、無人の間でも安心してナザリックを空けていられる確信が欲しかった。

 モモンガが求めたのは、大量のレアアイテム。それもダンジョンとしてナザリック改造をするために有効なダンジョン素材である。レアモンスターが稀に落とすこともあるが、このゲームには確実にダンジョン素材が手に入る廃人の坩堝があった。

 ――聖杯ダンジョンである。

 ランダム生成されるダンジョンは何階層にも別れている上、強力なアイテムを得るためにダンジョンを呪い、探索中のプレイヤーのHPを半減させる冒涜化という仕様がある。カンストプレーヤーが藁のように死に、敵は更に凶悪になっている。そして、そんな地獄みたいな冒涜ダンジョンには地底人プレイヤーが徘徊し、PKとPKKが横行する邪悪の釜と成り果ててしまっていた。

 

「今度は良いかもしれないですよ、モモンガさん」

 

「そうですかね。でも、私は不運な奴ですけど、ムーンさんの勘なら信じても大丈夫そうです」

 

「いやいや。私も中々にアンラッキーガールですから。前のダンジョンのラスボスもモモンガさんと協力して倒しましたけど、万能武器強化素材の血昌石もダブっちゃったし、宝箱に入ってるダンジョン素材もモモンガさんが欲しいのじゃなかったし」

 

「でも私にとって、ダンジョン素材も武器強化素材も無駄じゃなかったですから」

 

「なら良かったです。私も、モモンガさんのギルドが消えるのは思い出が消えるみたいで寂しいですし、協力出来ることは言ってくださいね。

 まぁ、地底人な私が出来るのは、ナザリック強化の為のダンジョン素材集めマラソンや、武器素材集めの為の連続冒涜ボス狩りマラソンくらいですけど」

 

「本当に、本当にそれだけのことが、私にはとって大変有難いです。何より、もう私だけが管理しているナザリック地下大墳墓にとって、ダンジョン素材以上重要なこともないですから。

 私一人でも護れるように、早くナザリックを頑強な迷宮に強化しなくてはならなくて。ムーンさんはそんな私の焦りを察して、こうやって手伝ってくれています」

 

「ふふ。勿論、私は手伝いますよ。そもそも私は地底が好きで地底人をしてるだけの狩人RPですし、武器強化素材は厳選コレクションしてますけど、ダンジョン素材の方は余ってまして。自家製聖杯ダンジョンを作るよりもドロップアイテムが良い他の人の聖杯ダンジョンで地底人している方が、実は血晶石は中々に粒揃いになるんです。

 何より、あのモモンガさんによるダンジョンソロ魔改造計画ですから。その為に、ですよね?」

 

「ええ。第一層から第三層までを、カンスト殺しの墓王ダンジョンに作り替えます。まずはそこでなるべく殺して、出来ればMPとスキルを使い切らせて、上の階層も私一人でも強化改築を続けていこうかなと。

 そこで私が居ない日でもプレイヤーを仕留められるようにしないと、ログインしたらナザリック消滅なんてことになっていても不思議じゃありませんからね」

 

「流石モモンガさん、ギルド厨廃人は伊達ではないですね。対ボス戦の魔法職は火力が重要ですけど、対プレイヤー集団戦が肝なギルド戦闘なら、モモンガさんはぶっちゃけユグドラシルの廃人共の中でも断トツで最強ですからね。

 そのモモンガさんが考える迷宮作りなんて考えると……いやー、面白そうですね」

 

「今はもう、殆んどソロ活動が基本な対人厨PK廃人ですけどね」

 

「あぁ、森ですね。あそこは金策だけなら、地底よりも回転率が良いですものね」

 

「でも、この地底も金策になりますから良いですよね。聖杯ダンジョンは鬼畜難易度ですけど、お金と一緒にダンジョン素材と武器強化素材も手に入りますから。

 ……あ、宝箱。しかも黄金色」

 

「あ、本当ですね。多分ダンジョン素材でしょうし、私はもう要らないですから。

 モモンガさん、どうぞ」

 

「感謝です、ムーンさん」

 

 何が出るかなぁ、と内心ではドキドキしながらモモンガは、宝箱をゆっくりしたモーションで開いた。

 

「……―――」

 

 そして、唐突に思い出した記憶からモモンガは戻って来た。

 

「―――――――え?」

 

「はい……?」

 

 髑髏に宿る真紅の両目を点滅させながらモモンガ―――改め、アインズ・ウール・ゴウンはアルベドからの報告を思い返す。

 内容としては、捕虜から吸い上げた異世界における情報の数々。

 質問に答えると死亡する魔法が掛けられていたらしいが、アインズも含めて優秀な魔法詠唱者がいるナザリックの力の前では無駄。あっさりとディスペル系魔法で解呪され、拷問官の玩具にされて生かさず殺さずの生死の境界を彷徨い続けていた。

 

「あー……アルベド。もう一度、言ってはくれないか?」

 

「はい。アインズ様。捕えた男は陽光聖典と言う組織のリーダーでありまして、スレイン法国の暗部組織六色聖典の一部隊であるそうです。また六色聖典は他に五つの部隊があり、中でも漆黒聖典が精鋭であるみたいです。

 そして、その六色聖典でありますが―――」

 

「―――いや、六色聖典の話は良い。次の報告にあったモノを頼む」

 

「分かりました。では、その六色聖典を纏めるのが聖典機関と呼ばれています。

 そこの機関長を務めるのはプレゼンスと呼ばれる暗部の人間であり、情報も規制されているようです。男か女かも知らず、フルネームも大部分の者は知らず、機関長プレゼンスの名前だけが暗部で浸透していると思います。しかし、このニグンなる男は地位もそれなりにあり、機関長の事も少し知っているようでして、その者が法国で新たな宗派を作り上げた人物であるようです。また血の神エブリエタスを医療教会の祭神にし、法国の首都でのみ活動する地域限定の宗教団体も纏めているらしいです。

 また、この機関長プレゼンスは聖歌隊と呼ばれる部隊と、聖典機関員である狩人衆と言う戦力を法国で持つらしく、その権力は法国暗部に限定されてはいますが、非常に大きい存在であります。

 とは言え、それらは噂程度の情報として聞いたものらしく、この男も正式な組織情報として得たものではないようです」

 

「そうか。情報規制による隠蔽工作と……しかし、アルベド。お前はプレゼンスと言う名前に聞き覚えはないのか?」

 

「……いえ。その者がどうかなさいましたか?」

 

「いや、知らぬならば良い。今はまだ知る必要もないことだ。しかし……ふむ、厄介だな。それが本当だとすると、もう後戻りは不可能か……」

 

“うわぁ……うわぁ……プレゼンスって、ムーン・プレゼンス? 同好会の狩人が来てるの?

 ヤバいな。それ本当なら知人の身内、殺しちゃったよ。かなり危険だ。しかも、かなり厄介な相手に手を出したみたいだよ。

 あの人の事だ。もし自分と同じ様に異形種化した精神を持ってるなら、嬉々として復讐を愉しむだろうなぁ”

 

 確証はないが、ユグドラシルで良く聞いた単語を忘れる訳がない。ヒャッハーダークと並ぶ対人厨PK廃人衆の一人であり、ナザリック侵攻においてルベドを殺した廃人の中の廃人。そして、メリー・トラフィックライトをPKした直後のたっち・みーの不意を突き、あっさりワールド・チャンピオンを殺した頭の可笑しいプレイヤーだ。しかし、ユグドラシルでモモンガも強くなった。今はナザリックの支配者としてアインズを名乗るも、モモンガとしての廃人精神を失ってはいない。ムーンにもPVPで勝った事もあり、この異世界で殺し合っても勝機はあるが、それはムーンがゲーム時代の強さのままであればと言う前提条件が必要だ。

 確実に殺すにはパンドラを連れて行く必要がある。異世界によってゲーム的縛り要素がない現実であるならば、自分とパンドラの二人がいればワールドボスにさえ勝ち抜く自信があるが、それを想像しないムーンでもないだろう。

 

“うーん。殺し合いになると想定はしておいた方が良いけど、気は進まないなぁ……”

 

 自分一人にギルドが過疎になり、ナザリックを守る防衛能力が落ちるのは防げない。なので嘗てのモモンガはダンジョン改造のアイテムを集めに、自動生成迷宮である聖杯ダンジョンに潜ってダンジョン素材を集めていた。そこの住人であったムーンにモモンガはとても助けられ、彼女がいなければ罠の改良が間に合わず、過疎期にやって来たプレイヤーにナザリック地下大墳墓は消滅させられていたかもしれない。

 それを考えれば、ある意味ムーンはナザリックの恩人だ。と言うよりも、レトロキャラコスプレ同好会の廃人衆は何だかんだで全員自分の恩人になっている。一人でギルド運営を頑張る廃人であるモモンガを見捨てる者は同好会に一人もおらず、困っているのを自然と察してモモンガのギルド運営や、ゲーム活動を手助けしてくれる御人好しばかりな廃人集団だった。

 中でもギルドの手助けと言う意味ならば、ゲーム時代のモモンガにとって一番の恩人はムーン・プレゼンスに他ならない。彼女には感謝の念しかない。だが法国があの人の国だと言うならば、まだ話し合いの可能性はあるが、あの国はそもそも罪のない民間人を虐殺する連中だ。自分もそうである自覚があり、異形種化した自分達プレイヤーの精神状態を考えれば、甘い考えは捨てるべきである。

 

“しかし、あれだよなぁ。NPCたちは同好会の人達に凄い恨み節だって言うのに、あの人らの個人情報は知らないみたいだね。ヒャッハーダークさんなんかは固有名詞でギルドの皆が使ってたから知ってるみたいだけど、ムーン・プレゼンスさんはムーンさんとしか基本呼ばれないから、多分プレゼンスの方は知らないのかもな……”

 

 そう思いながらも、ナザリックへの侵略者がいることはまだ伝えないでおく。感情を暴発させて暴走されても困るし……と考えながらも、しかし、意志伝達の齟齬が在る方が問題かもしれないとアインズは思い直した。

 

「アルベドよ」

 

「はい、アインズ様」

 

「恐らくは、と言う可能性の話なのだがな。このナザリックを攻めたプレイヤーに、ムーン・プレゼンスと言う名前の狩人がいた」

 

「……ッ―――――――――!」

 

 一瞬にして殺意の塊になるが、アインズの前なのでそれも直ぐに納まる。己が命よりも遥かに価値がある御方に無礼など有り得ず、アルベドは身が狂う程の殺意を制御する術を身に付けていた。

 

「まぁ、落ち着け。確証はない。確証はないが、偶然であると考えるのも愚か者がすることだ」

 

「―――…………はい」

 

「そこで、だ。計画に変更はないが、お前達守護者たちに私の戦闘技術……俗に言うPK戦法を教えようと思う」

 

「―――それは、しかし!?

 ……いえ、確かにアインズ様からの指導でありましたら、私達の能力も飛躍的に上昇しましょう」

 

「うむ。この世界でも、向こう側から転移してきたプレイヤーやNPCと出会う可能性も十分に有り得る。なので、カンストしている守護者などのリーダー格の者を第六階層の闘技場に集めてくれないか?」

 

「分かりました。直ちに、アインズ様」

 

「頼むぞ、アルベドよ」

 

「はい!」

 

 彼女はアインズに背を向けて、執務室の扉の方へ歩いて行った。その表情を壮絶なまで歪めさせながら、見た者の心臓を握り潰して停止させるような、悪鬼のような邪悪さで微笑んでいた。

 ―――殺せる、この手で。

 もう二度と手が届かないと絶望していたけど、この世界なら――――殺せる……!

 渇望であり、熱望であり、それはとても切なく健気な悪意だった。アルベドにとって奴らは、特にヒャッハーダークは創造主を殺した敵であり、憎いなんて感情では抑えられない相手だった。至高の御方たちがナザリックを棄てたのも、自分達の不甲斐なさを考えれば当然だとアルベドは思い込んでいた。主人を守れぬ役に立たない従者で、御方を誰も守れなかった弱い私達は、御方たちにとって無用な塵だと捨てられるのも仕方が無い。そのまま朽ち果てて死ぬのが御似合いだとずっと考えていた。至高の御方を守り抜いた男は、ナザリックの救世主は、自分達の中ではパンドラズ・アクター唯一人。

 それでも―――モモンガ様は、アインズ・ウール・ゴウン様は、私達を守り続け、愛し続けて頂けた。

 しかし、アルベドは思ってしまう事がある。パンドラズ・アクターがモモンガ様を守り抜く事が出来た様に、もし自分がタブラ・スマラグディナ様を守りぬけたのならば―――あの御方は、ナザリックに残ってくれたのではないか?

 だから、モモンガ様はナザリックに残ってくれたのではないか?

 その罪悪感がアルベドを蝕み続ける。そして、他の下僕も同じ絶望を抱いている事だろう。純粋無垢で、自分達守護者が羨む程に綺麗な忠誠心を抱いているのは、パンドラズ・アクターとクリーム・ダンテスの二人だけになってしまった。

 だから殺す。

 ―――殺す。殺す殺す殺す殺す。

 全員殺す。一人も残さず、関係者も皆殺す。法国の塵屑は全員殺す。女も子供も、人間も異形種も関係無く殺してやる!!

 殺してやる!

 奴らの従属も殺してやる! 家族も仲間も友人も殺してやる! あぁぁあああ、絶対に、絶対に、絶対に絶対に絶対に!!

 私の、私達の、ナザリックの手が届く世界に――奴等がいる!!!

 

 

◆◆◆

 

 

 闘技場に合わないホワイトボード。その前に立ってペンを持つ男は、とても知的な雰囲気を纏っていた。骸骨のアンデッドなのに、奇妙なまでに人間的な気配を纏い、賢者のような気配だった。

 つまるところ―――眼鏡である。

 知的な大学教授とでも言うべき姿になり、デミウルゴスと似た黒いスーツ服に着替え、アインズはちょっとしたコスプレ衣装で集めた臣下達の前で講義を始めようとした。女性陣は大興奮だった、性的に。男性陣もアインズ様超サイコーと喝采していた。

 ……アインズが引く程、愛しい臣下達は喜んでいた。

 

「はい。皆の者、集まってくれてありがとう。では、少しだけ静―――」

 

「―――アインズ様、素敵! 抱いて下さい!」

 

 その熱量、少しだけ怖かった。もしかすると、アルベドは自分が設定を変えようが変えないが、こう言う性格だったのかもしれないと思い始めているアインズだった。

 

「すまないな、アルベド。お前の求愛は何時も心が潤うが、私は生身が朽ちたアンデッド。生物としてその行為に応えることは不可能なのだ。

 出来る事と言えば、精々が前戯程度なものだ。それではお前を満足させられないだろう」

 

「妾はそれで構いませんでありんす!! ただただアインズ様を肌で感じたいだけでありんす!!」

 

「シャルティア。お前の言葉は私の乾いた骨を癒してくれるが、今はまだその時ではない。アンデッドとして生身ではない死体ではあろうが、何時か肉の体を手に入れた時、お前のその心に応えようと思う。

 固く尖ったオーバーロードの体では、ペロロンチーノが愛したお前の美しい体を傷付けてしまうことだろう」

 

「で、で、でしたら僕は。ただ、だた、あのアインズ様と同じベッドで……」

 

「マーレ。お前の気持ちはとても嬉しい。だが、大人として育っていないお前に手を出せば成長に悪影響であり、そうなればマーレの母である茶釜さんに申し訳がない」

 

「あの! それでしたら私は―――」

 

「すまないな。アウラよ、お前は単純にロリっ子だ」

 

「ロリっ子?!!!」

 

「んんアインズ様! ならば私めが百変化で理想の――」

 

「黙れ、パンドラ。今日から私のことはパパ上と呼べ」

 

「パパ上?!!!!」

 

「アインズパパ。実はこのクリーム、骨だけの人に性的欲求を抱けません!」

 

「安心しろ。それが普通だ」

 

「しかし、しかしながら、相手が我が契約者であるアインズ殿でありましたら、何か良いかなと!

 むしろ、素晴らしいかなと!」

 

「錯乱してはいけないぞ。確かに私は私以外に有り得ぬが、所詮骨は骨だ。義理のマイドウター」

 

「マイドウター、素晴らしき響き! 親近ですね、はい!!」

 

「私はもう突っ込まないからな」

 

「何故ですか、アインズ様。何故このアルベドに突っ込んで頂けないのですか!?

 私は二十四時間常にアインズ様と会った瞬間から臨戦態勢になっているのですから、何時でも何処でも呼んでどうか好き勝手に突っ込んで下さい!!」

 

「突っ込み道具を数日前に亡くしたのでな。ナザリックが転移する異変が無ければ、まだまだ現役大君主(オーバーロード)を名乗れたものを。くっ」

 

「なんと! アインズ様の大君主が!?」

 

「ソレハ嘆カワシイ事カト。コノコキュートス、命二代エテモ異変ノ下手人ヲ切リ捨テテミマショウ。

 ――爺トナル我ガ理想ノ為ニモ!」

 

「突っ込む、突っ込む……突っ込む、大君主様が奥まで。あぁぁ、何て蠱惑的で素晴らしい響きでありんすか。

 ダメダメ、もう耐えられないでありんすよぉ……――濡れる!」

 

「ロリっ子……ロリっ子……はっ! 確かぶんぶく茶釜様は、男は皆ロリコンでマザコンなのって言っていた気がする!

 よし! なら私がロリっ子お母さんになりさえすれば、きっとアインズ様は私に!」

 

「お姉ちゃん!?」

 

「パパ上。パパ上様……いや、しかしいや、私には重過ぎて気安過ぎます。

 ―――ンンアインズ様!

 出来れば、父上と呼ばさせて頂ければ?」

 

「父上……? いや、一体なんの話かは分からないが、私はお前の創造者であり、このアインズ・ウール・ゴウンは全てのナザリックを自分の子供だと思っている。

 故にパンドラよ、私の事は好きに呼べ。その全てを私は許そう」

 

「おおお。おおおお、父上! アインズ父上様! おおおおおおおおお!」

 

「ナント。デハ、パンドラコソ、アインズ様ノ御子? 新シク、想像モシテイナカッタ。

 ……フム。パンドラヨ、少シ話ガアルノダガ?」

 

「おおおおお……お、はい? 如何なさいましたか、コキュートス?」

 

「爺ヤト少シ、呼ンデ欲シイノダガ?」

 

「貴方は一体何を言っているのですか?」

 

「うっ……ううっ……欲しい。愛が欲しい、ドロッとした白いアインズ様の愛が欲しい。このアルベド、愛こそ全てですのに」

 

「頑張って下さい、アルベド。私も契約者殿の赤ちゃんに会いたいですし、貴女は美人だからきっと可愛いに決ってます。

 私は何時も、頑張り屋さんなアルベドを応援していますから」

 

「ク、クリームっ!」

 

「え、私は。私は応援してくれないの……?」

 

「シャルティア。やっちゃえば男はデキコンで責任を取るしかないと言ってました。我が創造者も確か、デキコンはワールドクラスで絶対に夫婦になると言っていたました」

 

「デキコンでありんす! アインズ様のデキコンでありんす!!」

 

「ならばデキコンで私も王妃に!」

 

「――皆の者、少し静かに」

 

「「「「「「「「ハッ!」」」」」」」」

 

“相変わらず切り替え早。でもよっしゃー、先延ばし成功。デミウルゴスは頭良いから、皆みたいに何時も深読みとかしなさそうでバレそうだけど、まだいける筈!

 未来の俺、マジガンバレ!!”

 

 勢い任せで自分がどんな言葉を使っていたのか、殆んど無意識に頭をフル回転させて全守護者と他二名を相手にした所為で覚えていないが、自分は今回もちゃんと対応出来たらしい事を確認する。しかし、現在のアインズは知らなかった。デミウルゴスこそ頭が良い上に守護者フィルターが機能し過ぎて、1を聞いて10を誤解し、100の誤算を作り出す深読みのデミウルゴスになることを。

 アインズの誤算と胃痛は全てナザリックの利益なることを。

 そして唯一人、静かにアインズの話を聞いていたセバスが彼の癒しになりつつことを。

 

「少々宜しいでしょうか、アインズ様。このデミウルゴスが書記として、その白板にアインズ様の言葉を書きましょう」

 

「ああ。そうか。いや、気を使わせてすまないな」

 

「滅相も御座いません。至高の絶対支配者に仕える事こそ我が最高の歓び!!」

 

「お前の献身は何時も有り難いと感じている。では、宜しく頼むぞ」

 

「ハハッ!」

 

 近くによって来たお気遣いの達人であるデミウルゴスにペンを渡し、アインズはホワイトボードの横に移動する。そして、そこにデミウルゴスが並ぶことで、スーツ姿のデビルとスケルトンが皆の前で議題を出した。

 

「ふむ。今回は廃人について説明しようと思う」

 

「廃人ですか……? もしや、恐怖公の部屋に閉じ込められた人間の事ですか?」

 

「イヤ。第五階層ノ氷ノ牢獄デ拷問サレタ人間デハ?」

 

「うーん。それかもしくは、デミウルゴスの玩具にされた人間とかもそうかも?」

 

「それでしたら、シャルティアの性奴隷にされた人間かもしれません」

 

「ローパーの性拷問を受けた女性もそんな雰囲気になるでありんすよ」

 

「はい、皆の者。全て不正解だ。この度説明する廃人は、廃人の中でも特別に、対人技術を極め抜いたプレイヤーについて、だ。

 私たちプレイヤーは、そう言った者のことを廃人と呼んでいる」

 

 キュキュキュ、とデミウルゴスがボードに廃人と書き始める。

 

「でだ。この種のプレイヤーがいる痕跡が情報の中から発見された。他プレイヤーの確認で、ナザリックのギルドメンバー……お前たちの創造者達もこの世界にいる可能性も出て来た」

 

「「「「「「「「「おぉおおおお!」」」」」」」」」

 

「とは言え、その捜索部隊や探査作戦は、また後日にアルベドやデミウルゴスと相談しようと思う。なので今日は、皆の者にこのプレイヤー達と遭遇して戦うような事態に陥った時、必要となる基礎的な戦術を伝えようと思う。無知のまま戦えば、嬲り殺しにされるのは必至だからな。

 また対廃人戦用の戦術書や、鍛錬方法を記した物なども後日配る予定だが、今日は私からお前たちに覚えておいてほしい知識を伝授する」

 

「「「「「「「「…………」」」」」」」」」

 

 凄く真面目な顔で臣下はアインズの話を聞き、次の言葉を待っている。その光景を見て静かに支配者は頷き、自分が廃人共から教えられ、その戦い方から観察して身に付け、自身もまた対人厨となった感覚的技術を脳内で言葉に変換した。

 

「基礎として、まずはレッスン1。スキルと魔法を目の前で使うとあっさり殺される。

 これは奴らが発動に必要な言葉やモーション、あるいは魔法陣の配置や大きさから、どんなものが出るか把握しているからだ。そのまま使えば通じないと思え。また発動中に即効性のある攻撃を行い、強制的にダウン状態にする何かしらのスキルやアイテムを当たり前のように使い、致命攻撃や死ぬまで武器をブンブンされる事態になる。基本的に通じない物と覚え、向こう側も滅多に使ってくることはない。

 レッスン2。奴ら全員は標準でホモステッパーだ。

 此方がスキルや魔法を使うと動きが発動中はある程度制限されるが、それを廃人は利用して死角に回り込んで来る。特に至近距離で魔法の無詠唱や、予めスキルを用意せず無言で即効発動させない場合、物凄く優雅な動きで殺しに掛って来る。無防備な側面や背後に周り、致命攻撃を行って大ダメージを与え、更にその後で武器をブンブンしてHPを削りに掛ってくる。更に巧い廃人は通常攻撃などの些細な動きさえ決して見逃さず、迅速なモーションで死角に回り込んで来るので常に死が纏わり付く。

 レッスン3。正直に言うと、一番強いのは通常行動だ。

 はっきり言って、一番自由度が高く、一番応用性がある攻撃が通常攻撃だ。魔法職だと、簡単に発動して使える近距離白兵戦魔法なども該当する。後はスキルや魔法を使わない通常防御や、攻撃を受け流す通常パリィなども、使い勝手が良く、パッシブスキルやアイテムなどで通常行動を強化するのが最強手段であったりするな。私もそうなのだが、一対一の対人戦だと基礎こそ最大の奥義になる。中でも武器によるパリィはエグイぞ。

 レッスン4。相手にスキルと魔法を使わせろ。

 まぁ、こうは言ったが、実際に発動を許すのではなく、身動きが取り難い発動状態にさせて不意を突いたり、発動後の隙を狙って殺すのが目的だ。

 レッスン5。魔法とスキルは、ブラフやハッタリの道具になる。

 これは本当に基本中の基本だな。廃人だけではなく、それなりに戦闘で頭を使うのに余裕がある者は、実は言葉にした魔法やスキルの前に事前に準備しておいた物を発動させ、相手に行動を錯覚させる技をここぞと言う場面で使って来る。騙した奴が基本的に勝者となるが、ブラフを見抜かれると騙されたふりをされ、逆に騙されて死ぬ事もあるので気を付けよ。

 レッスン6。戦闘中に消費アイテムを使うと死ぬ。

 これはだな――――――」

 

 と、アインズは自分の体験談、主に自分が森の中で廃人共にされた嫌な思い出を語り続ける。何百何千と死に、何百何千と殺した記憶であり、相手は全て対人厨廃人である。戦闘の一つ一つが生活をユグドラシルに捧げた狂人共との競い合いであり、自分と同じ最後までゲームを楽しんだ相手が敵だったので、今も昔も忘れられない経験である。

 

「―――とまぁ、かなりしぶとく、最後の一人になっても戦い抜く能力と技術と、いざという時の為のアイテムを隠し持つ。殺したとしても死亡時にアレイズ系の復活能力があり、相手を殺した時に発動する対死亡時カウンター無効化なども身に付け、自分が死んで動けない状態や、致命的なデバフ状態になるのを極端に嫌う生き物だ。

 ……まずは、こんな所かな。

 まだ言うべきことや、私の体験談も話しておきたいが、それは後ほど。それと私が持ち得る知識も書類に纏めておくので、暇な時は読んで知識にしておいてくれ。質問もあると思うが、お前たち全員の声に応えたいので後で纏めて聞こう。なので、それらも紙に書いておき……そうだな、アルベドに渡してくれ。しっかりと読み、私の拙い知識で出来る限りの答えを準備しておこう」

 

 そして、ぎっしり書きこまれたホワイトボードを見て、アインズは凄い喋ったなぁと実感する。その横でデミウルゴスはとても良い笑みでアインズを見ており、内心では支配者の書記係りとして働けないことを残念に思っていた。

 

「また、私も対廃人戦の為に鍛錬を積み始めようと思う。主に第六階層の闘技場で基礎対人戦訓練や、第八階層での大規模魔法発動実験も行っていく予定だ。

 ……それでお前達には申し訳ないのだが、私と共に暇な時間があれば一緒に鍛えようと――――」

 

「「「「「「「「「「―――喜んで、アインズ様!!」」」」」」」」」

 

「……ぁ、ああ。良い返事だな、ありがとう。宜しく頼むぞ」

 

「「「「「「「「「「ハ!」」」」」」」」」」











 とのことで、ナザリック超強化計画発動です。
 またナザリック地下大墳墓ですがゲーム時代のムーンがギルド過疎化で、ギルド廃人からソロPK廃人になったモモンガに協力したことで、聖杯ダンジョンでアイテム乱獲発掘し、マラソンして集めに集めたダンジョン素材でカンスト絶殺仕様に進化してます。またムーンの方も要らないダンジョン素材を渡したり、激レアダンジョン素材も相場よりも格安でモモンガに渡していたり、レアアイテムと交換していたりしてます。後、最上位廃人は潜り抜けて来ますが、モモンガが平日安心してナザリックを空けて仕事が出来る程度に強化し、ユグドラシル後期に出たダンジョンシステムなどでも強化されてます。
 簡単に言うと、墓王モモンガの大墳墓なんですよね。
 仲間との思い出を守る為に強化・拡張をたった一人で繰り返し、自分がいなくても万全な難攻不落の魔城として全自動侵入者抹殺兵器に進化してます。

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