PK廃人共の異世界   作:サイトー

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十一・ともだち

 モモンは森の賢王改めハムスケに跨り、ナーベを連れてエ・ランテル城砦都市に戻って来た。協力していた漆黒の剣と雇い主のンフィーレアとも一旦別れ、拳王エリザベス二世から預かった賢王ハムスケを冒険者組合に登録する為に道を進んでいた。

 

「おお、ここが人間種の街でござるか。拙者は初めてでござるな」

 

「黙りなさい。モモンさんを煩わせる真似は慎むように」

 

「―――ひ! ナーベ殿は何故そんなに拙者に厳しいでござるか……?」

 

「―――っち。愚鈍な魔獣如きめ」

 

「こ、恐いでござる。殿、出来れば某の代わりに聞いて欲しいのでござる。拙者が聞いても舌打しかされないでござるよ……」

 

「あー……ナーベよ。そこまで厳しくする必要はないと思うのだが」

 

「は! モモンさ―――ん。しかしながら、あろうことか……モモンさんに、直接跨って乗って貰う等と言う名誉を、この、この獣如きに……ク。出来れば、この私目がなすべき役目だと言うのに」

 

「ク、ではないからな。女性をペットや騎獣扱いする趣味は全くないのだぞ。何故お前達は私限定で少し変態風味になるのだ?」

 

「へ、変態なんて……そんなアインズ様!!」

 

「すまないな。少し言い過ぎた。後、私の名前はモモンな」

 

「いえ、そのようなことは。申し訳御座いません……」

 

「だがな、私としてはそれで構わない。成長を急ぐ必要もなく、今のお前が有りの儘のナーベであるのなら、そのまま知識と技術を高めるだけで十分なのだ」

 

「あ、あ、アインズ様!!」

 

「だからモモンな」

 

「う、うぅ、また私は……本当に申し訳御座いません」

 

「お前の全てを許そう。ナーベよ」

 

「有り難き幸せ!」

 

“だって、俺を含めてギルドメンバー殆んどが変態揃いの変人だったからな。創造者に似るNPCが変態になってしまうのも無理はない。

 ……あぁ、パンドラズ・アクターがあれだものなぁ。そう思えば、俺たちナザリックほどシリアスが似合わないのもいないのかも”

 

「……むぅ、成る程でござる。ならばナーベ殿は、拙者の代わりに殿に跨って欲しい訳でござるな。それならば、ナーベ殿が拙者の上で四つん這いになり、その上で殿が更に騎乗すれば完璧でござらんか?

 そうすれば、殿も威厳を持って街を練り歩くことも出来るでござるよ」

 

「―――ハムスケ。貴女、天才ね」

 

「いやぁ、天才だなんて初めて言われたでござる。照れるでござらんか」

 

「謙遜は不要よ。流石は、賢王と呼ばれていた事はあるわね……―――ですので、モモンさん。早速でございますが、ハムスケの言われた通り―――」

 

「―――やらないからな。本当に変態王になるからな」

 

「はは! 差し出がましい真似を」

 

「次から気を付ければ構わないさ」

 

 などと雑談をしながらも、二人と一匹は夜の街を歩いていた。周囲の人々はハムスケの威容と威圧感に気圧され、誰も近づいてくる者はいなかった。

 一人だけ除き、誰もが遠目から見守っているだけだった

 

「―――モォモンくぅーん、(あーそ)びーましょ~う」

 

 そんな気の抜けた声に驚いたモモンが振り返った時、その男は平然とナーベとは反対側のハムスケの隣を歩いていた。

 

「なんだ。貴様は……?」

 

 見た事も無い顔。この異世界でも、ユグドラシルでも見た事のない頭部の紋様。人差し指を一本だけ立てた手を使い、まるで目玉のような形を描いている仮面のような覆面。何よりも、仕立てが良いと一目で分かるスーツ姿。この異世界の雰囲気とまるで合わないのに、どうしようもなく自然体で、この街の地元住民にしか見えない心地良い気配だった。

 そして、それ以外は何も分からない不気味さ。

 何せ自分を見張っていた筈の部下からも、この男の接近は知らされなかった。

 

「なんだ……と言う質問はとても簡単だよ。僕の名前はトモダチ。フルネームだと、トモダチ・ユージンフレンドって言うんだ。

 どうか親しい仲みたいに―――ともだち、と呼んで欲しいな。

 ああ、それと、冒険帰りで疲れてると思うから、歩きながら話をしようか。僕も時間を取りたい訳じゃないからね。多分だけど、行き先はギルドだよね?」

 

「はぁ、まぁ、構いませんが。話すだけならば、特には」

 

 顔が分からない。気配が分からない。姿から身分も職業も分からない。異形種の気配もなく、人型をしているので人間種だとしか分からない。

 

「―――待て。ナーベ。今は落ち付け」

 

 一瞬で殺気立ったナーベを、モモンは直ぐに宥めた。そして、念の為に備えてモモンはハムスケから下り、そのハムスケとナーベの前に移動した。丁度、彼女達一人と一匹を“ともだち”から立ち塞がる形になった。

 そして、モモンは自分の足で歩き始めた。それに合わせて怪人も歩き出し、ナーベとハムスケも付いて行った。

 

「しかし……ッ―――いえ。申し訳ありません、モモンさん」

 

「そうだ。落ち付け、今はな」

 

「……はい」

 

 その会話を人差し指仮面のスーツ男は静かに聞き、とても自然な態度で会話に割り込んで来た。

 

「とても怖く、とても頼もしい御友達みだいだね。乗っている魔獣もとても可愛らしく、とても逞しい御友達だ。僕もそんな友達が欲しいから、モモン君がとても羨ましい。

 ……あぁ、そうだ。君はナーベと言う名前みたいだ。どうか、君とも友達になりたいと思うよ」

 

「誰が貴様のような得体の知れ―――」

 

「―――ナーベ。

 彼は確かに妖しいが、名前を名乗った。こちらも、それ相応の礼儀は持つべきだ」

 

「……ッ―――はい」

 

「うん。良い子だね、ナーベちゃん。とても可愛らしい女の子でもあるみたいだ」

 

「…………………………ッ」

 

「あー……トモダチと言ったか?

 私の仲間であるナーベをからかうのはやめて頂こうか」

 

「やだな。モモン君。可愛い女の子が好きなだけで揄うつもりはないんだ。だけど、不愉快な気持ちにしたのなら申し訳ないな。

 ―――あ。とのことで、これ僕の名刺です。どうぞ」

 

「あー、これはご丁寧に。どうもありがとうございます……―――って、貴様!?」

 

 小学校を卒業してから身についていた習慣から、余りにも自然にモモンは受け取ってしまった。しかし、それを責めるのは酷というもの。サラリーマンと言う生物にとって生き抜くために必須な習性であり、これがしっかり出来ない者は日本の経済社会から弾き出され、電気代も払えなくなる。そうなれば外から入り込んで来た毒ガスが家の中に充満し、息も出来ない苦痛の中で窒息死するしかない。

 そんな地獄を生き延びた企業戦士(ビジネスウォリアー)がモモンガの中の人であり、地獄を生きる獄卒の名を社畜(サラリーマン)と呼んだ。

 

「……どうかしたの、モモン君?

 ただの名刺だよ。余り伝わってない風習だけど、僕が運営してるユージンフレンド商会は皆しているんだ。何でも僕の御爺ちゃんの御爺ちゃんの、もっと昔の御爺ちゃんが“さらりーまん”と言う職業クラスでね、これをするのが商人職に就くものの最低限のスキルなんだって。そう代々伝わってるから、誰にでも渡すようにしてるんだ。

 ほら、何より便利だし。僕は何処何処の商人だよって文字で覚えて貰えるし、その紙を見て貰えれば何時でも思い出して貰えるから」

 

「そうですか。あー……ですが、自分の方は持っておらず――」

 

“サラリーマン!! 名刺!! ホワイ、何故、どういうことなの!!?”

 

 鎧兜の上からでは表情は見えないのは当然だが、モモンは何とか声にも感情が乗るのを抑え込んでいた。吃驚し過ぎて安定化がしたのもそうだが、事態が行き成り過ぎて思考回路が停止していたのも事実だった。

 しかし、今のモモンは名刺を貰っても意味がない。まだこの異世界の言葉を覚えておらず、彼の名刺も当然の事ながら異世界言語で書かれていた。

 

「――構わないよ。もう僕達、ともだちじゃあないか。

 なによりさ、名刺をしてるのは僕のユージンフレンド商会だけだもの。貰ってくれるだけで有り難いな」

 

「友達ですか? いや、そんなつもりは私の方にはないのですが」

 

「え、絶交?」

 

「いや。流石に、そこまでは言いませんが……」

 

「じゃあ、ともだちかな?」

 

「……はいはい。もう友達で良いですよ」

 

「そうかい。だったら、ともだちとこれからは呼んでね」

 

「分かりました。では、トモダチさんと」

 

「分かったよ。しようがないなぁ、モモン君は」

 

 やれやれ、と人差し指目玉仮面怪人のともだちはモモンを見て鼻で笑った。様に合った煽りモーションで、モモンはPKされて煽られた過去を思い出す程に苛立つ仕草だった。

 

「シャー、シャー、ブッコロォブッコロォ……―――」

 

「どうどうナーベ殿。落ち着くでござる、落ち着くでござる」

 

「―――ハッ! 私は一体。何か許せない事が目の前で……って、ハムスケ。なんで私を後ろから羽交い締めにしてるのよ?」

 

「良いでござるよ。辛い事でもあれば、どうか拙者にも言って下され。今日から仲間でござるのだからな」

 

「は、はぁ……ありがとう?」

 

 そんな背後の寸劇を聞きながら、モモンは目の前の怪人を観察し続ける。明らかに妖し過ぎて、素性が怪し過ぎて、どんな手を出せば良いのか何一つ分からなかった。

 

「それで、貴方は何が目的なのですか?」

 

「勿論、モモン君と友達になることだよ」

 

「だからな、そうではなくて。無名に過ぎないただの冒険者の私に、何の用だと聞いている」

 

「やだな。モモン君、そんな目立ってるのに何言ってるの?」

 

「え……? つまり、どういうことですか?」

 

「いやぁ……ね。部下の一人から報告があって、どう見ても国宝品以上の鎧と剣とアイテムを持ち、人間以上の能力を持っている冒険者が城砦都市にやって来たって話があってね。それに噂通り、こうやって立派な魔獣ちゃんも従えて街に戻って来たよね。

 僕も偶々この街に商売をしにやって来ていたから、出来れば会いたいなぁ……と、思いながら深夜散歩してたら会えたんだ。仲良くなれば、僕たちの商会にとって利益にしかならないし。なので良ければ僕と友達にならないかなと思ってて、こうやって友達になれた訳なんだ。

 ……と、おや。もう冒険者ギルドに到着してしまったか。

 僕はまだ、君が許してくれるなら話をしていたから、用事が済むまで待っていようと思うんだけど。良いかな?」

 

「ああ。そのようですね。まぁ、話の方でしたら、まだ自分も雇い主の所まで歩かなければならないので、そこまでの間でしたら構いませんよ。

 今は違う仕事をしている最中なので、その邪魔をしない程度であれば」

 

「はは。ありがとう、モモン君」

 

 そうして、丁度ギルドに付き、モモンはハムスケの名付けた魔獣の登録をする為、ギルド内に進んで行った。

 

『ナーベラル。何か有れば、直ぐに連絡しろ』

 

『分かりました。アインズ様』

 

 勿論、大事な部下にメッセージをすることを忘れるアインズではなかった。怪し過ぎて、どうすれば良いか分からない程に怪しいが、気を抜く事は許されない。ナーベラルに注意した後、アインズは冒険者モモンとしてギルドの中へ入って行った。










 新キャラが登場しました。その名もトモダチ・ユージンフレンド。一体彼の正体はヒャッハー某なのだろう……
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