PK廃人共の異世界   作:サイトー

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四・骸骨廃人モモンガ

 ―――アップデート・冒涜者編第一弾、深淵の王国。

 ―――アップデート・冒涜者編第二弾、血の獣界。

 俗に言うマゾゲー脳感謝月間と呼ばれるダウンロードイベントがあった。一カ月ごとに第一弾と第二弾が販売され、超高難易度ダンジョンによる攻略組と、攻略組を邪魔するPKと、そのPKを狩るPKKで大いに盛り上がった。

 とはいえ、そのダウンロード販売も数年前。ユグドラシルが全盛期を迎える更に前。ナザリックに1500人のプレイヤーと、二十一名の廃人集団が進行してくる二年以上も昔のこと。

 ―――アップデート・冒涜者編第三弾、失楽園。

 第三弾が発売されたのは、第二弾が出たかなり後だった。楽しかった全盛期を過ぎた今の過疎期の発表。そんなニュースをユグドラシル内でモモンガは聞き、半ば無気力に流してしまっていた。

 

「へぇ、そうなん。まだモモンガさん、失楽園を始めてないんだ?」

 

 とある異形種の街。運営の街ではなく、人間種と異形種の共存型ギルドが切り開いた辺境の開拓街の一角。過疎化した今のユグドラシルとは言え、まだまだそれなりにこのギルド街には人が集まる。その街にある擬似的なファーストフード店で、二名の異形種プレイヤーが会話をしていた。

 

「ええ。ダウンロードはしましたのですが、どうもヤル気が出なくて。結局、冒涜者編は一通りストーリーをクリアした程度。第一弾も第二弾もまだまだやり込んでいない訳でして、一部分をちょっと利用してるくらい。そうなると、第三弾の方もわざわざソロでクリアするのも面倒な状況に感じてしまい……」

 

「……勿体無いですね。

 私らの同好会ですと、ヒャッハーダークとムーン・プレゼンスと仮面巨人ヌードルは、そのダウンロードに合わせたコスプレキャラみたいで、相当そのコンテンツに入れ込んでいるんですよ。

 何せ、ユグドラシル最難易度。エンドコンテンツも豊富ですし、あのアップデートワールドには、今尚気が狂ったマゾゲーマーが集まっていますしね」

 

「ああ、知ってますよ。俗に言う(MORI)地底(CHITEI)でしょ? 私も資金稼ぎに森の方は長い期間入り浸る事もありますし、ヌードルさんともかなり殺し合います」

 

 森と呼ばれるステージは、マゾい対人厨のメッカでもある。特徴として、森内部で死んでもレベルダウンは起こらず、かわりに経験値も手に入らない。その代わり、PKの数に合わせて高価なアイテムが手に入り、纏まったお金が一気に手に入る場所だった。

 正にモモンガが必要とする殺伐空間。ヒャッハーダークに誘われた時、天啓が脳裏に奔る程。

 そこで鍛えられたモモンガの対人スキルは、既にレトロキャラコスプレ同好会の連中と同じく異次元領域。彼個人が持つプレイヤースキルは今尚成長期であり、限界をまだ感じていない。今のモモンガからすれば、全盛期時代のチャンピオンなどタイマンで軽く捻る程であり、真性廃人化が着々と進んでいた。

 

「はい。森と地底です。ヒャッハーは何処にでも出現するPK馬鹿ですけど、ムーンは地底人で、ヌードルは森の住人が基本プレイスタイルです。

 後、暗黒厨って呼ばれている鯛焼仙人掌(タイヤキサボテン)さんは、どうも失楽園の方にどっぷり嵌まってしまって。ソロPKプレイヤーの筈なのですが、鳥巣譚(トリスタン)亜茶子(アチャコ)とマゼマゼヴォロネーゼを連れて久方ぶりにダンジョン探索に嵌まってます。

 いやまぁ、ダンジョンやっているのは皆同じ何ですけどね?」

 

「うーん……でもなぁ? タイヤキさんとアチャコさんとマゼマゼさんみたいな、美女三人パーティに混ざって一緒に攻略出来るなら嬉しいですけど、野郎一人でダンジョンうろつくのもなぁ……虚しいなぁ」

 

「まぁまぁ。折角のゲームなんですし、楽しみましょうよ。ぶっちゃけ、ほら、モモンガさんも私達と同じソロPKプレイヤーみたいなものなんですしね!」

 

「はぅぁあッ!!」

 

「あ、すみません。トラウマでしたね」

 

「か、帰って来る筈なんですよ。本当、そう信じているんですよぉ。皆、ちょっとリアルが忙しいだけで……ほら、偶にログインしてくれるメンバーもいることですし!!」

 

「もぉ……モモンガさん。意地を張らず、私達のレトロキャラコスプレ同好会に入りましょうよ。現実と戦わなきゃ、仮想現実ですけど。

 て言うか、殆んど私達のフレンド状況じゃないですか? ね、入りましょう?」

 

「やだ!! 絶対にヤダ!!」

 

「いいじゃないのぉ。本当に、本当にちょっとで良いお試し期間ですから」

 

「絶対にノーですよ、コギルさん!!」

 

「えー」

 

「えー、じゃないです。こう見えても私、一応はギルド長なんですからね!」

 

 そんなモモンガに微笑みマークを送るのは、彼からコギルさんと呼ばれたプレイヤー――コギル・デンスタンと言う名前のソロPKプレイヤーだった。所属ギルドはなく、強いて言えばレトロキャラコスプレ同好会が居場所。

 また姿も一目見たら忘れられない特徴の塊。まるで蝸牛(かたつむり)みたいな頭部と、骨と皮だけの細い体。何処かのレトロ漫画に出てくるス〇ウターに似た機械モノクルを顔に装着し、薄手のローブ姿と言う見るからに色モノキャラだった。言うなれば、異形種のマッドサイエンティストであり、種族クラスも旧支配者(グレート・オールド・ワン):5lvまで取得済みのカンストプレイヤーである。

 

「あれま。また振られたようですね、コギルさん?」

 

「あー、ヌードルさんですか。ええ、見られちゃいましたか。ここはやはり、私みたいなヘンテコ異形種じゃなくて、美人キャラを使ったハニートラップの方が良かったかもしれませんね。骸骨ヘッドに有効かは知りませんけど」

 

 一人のプレイヤーが声を掛けた。人を小馬鹿にしたお面を付け、嫌に目立つ黄金鎧を纏う戦士――仮面巨人ヌードルは、本気で苛立つ「やれやれだぜ」みたいな嘆息モーションをしながら近づいて来た。

 

「アチャコさんはモモンガさんの事、かなり大歓迎みたいですよ。他の人も墓王(グレイブロード)のコスプレさせたいって皆言ってますし。あ、勿論私もですかね。どうです、偶にはパーティを組んでダンジョン攻略でも。

 失楽園の方ではないですけど、モモンガさんにかなりお勧めのダンジョンとボスクエストがあるんですよね」

 

 鳥巣譚亜茶子。通称、アチャコ。あるいは、首撥ね妖精さん。ユグドラシル最悪の吟遊詩人(バード)であり、音界の覇者と呼ばれる音楽家の弓兵。見た目は赤毛美女ワイルドエルフの女性プレイヤーであり、とても優しそうな顔立ちのキャラなのだが、遠距離から一方的に魔法職を嬲り殺し、近距離戦も異常に強いので可愛気が一欠片もない人だった。加え、発作的に低レベ虐殺や攻略組狩りをするので、PK界隈でも腐れ外道で通っている。

 

「そうなのですか、ヌードルさん?」

 

「失楽園のダウンロードに合わせて、深淵の王国と血の獣界もかなりアップデートされたんですよ。今はそれなりに追加要素や新ダンジョンで賑わってますし、戦って面白いボスも結構出て来ましたしね。

 王国の方ですけど、可能性の世界から来たって言う設定の新ボスと戦いました。ほら、深淵の騎士っていたじゃないですか。あれが本当なら自分を穢す筈の深淵を逆に呑み干し、深淵の主を喰い殺し、闇の君臨者になりましてね。

 確か、ボス名は“名を失くした騎士(ナイト・ロストネーム)”だったっけな」

 

「なにそれ、凄く気になる」

 

「あとは墓王イベントの追加でしたか。あの神様系ボスはオーバーロードの更なる上位種であり、始まりの死者にして最古の死霊術師って言う設定だったでしょ?」

 

「はい」

 

「なので、異形種オーバーロードが主役です。死霊系魔術が更新されましたよ。更にネクロマンサー系統最上位職業クラス:エクリプス持ちに限定し、新魔法修得クエストが解禁されたようです」

 

「良し、行こう。さぁ行こう! ひゃあ、ゲーマー魂が叫びそうダゼ!!」

 

 うひょー、とテンションが上がる死の支配者。そんな彼を生温かい目で見るコギル・デンスタンと、仮面巨人ヌードルの二人がいた。

 そして、今この場に居るプレイヤーはモモンガ、コギル、ヌードル。加え、NPCが一体だけ存在していた。

 

「この三人じゃあ、墓王クエストが遊びに丁度良いですかね。んー……でも、纏まった時間が取れる日でもあれば、暇な奴集めてダンジョン攻略とクエスト攻略をやりましょうかね。

 ……まぁ、それはそれとして。私の傑作NPCであるクリーム・ダンテスの使い勝手はどうですかね、モモンガさん?」

 

「問題がないですね。とても有り難いです。コギルさんが作成した傭兵NPCの御蔭で、雑魚モンスター狩りも楽になりましたよ。

 それにNPCなら、報酬の分け前も考える必要も全く無いですし」

 

「いやはや、それは良かったです」

 

「ええ」

 

 コギル・デンスタンは生命創造系ソロPK錬金術師である。特殊な種族スキルで自分が製作したNPCやモンスターに憑依すると言う設定の能力によって、自機操作するキャラを変更出来るキャラだ。あるいは、精密に条件設定した発狂物のAIを組み込んだ御供モンスターやNPCを連れ、ソロでありながら集団で行動する変質者でもある。とのことで、ゲーム内ではPKを一番好み、二番目にモンスターとNPCの製作。その次に生命創造用のモンスター素材収集や生け捕りが主な活動。

 そして、自分の成果を自慢したいのも廃人の生態。

 困っている同類の廃人にも、手を貸したくなる程度には善人だった。

 つまるところ、コギル・デンスタンはアインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーが一人一人脱退し、ログインする人も段々と減り、それでも唯一人でギルド運営を続けるモモンガを見捨てられなかった。

 

クリーム・ダンテス(そのNPC)はまぁ、基礎条件を数パターンに分けてますからね。ソロプレイが面倒だなぁって時に、手軽に使えるキャラがいるとオンラインソロゲーライフも快適だから」

 

 だから、コギルはクリーム・ダンテスをモモンガに渡した。自分の装備とクラスも極め、新魔法修得クエスト以外にやることがない暇な彼の為にも、NPCの装備品集めと言う暇潰しエンドコンテンツを楽しんでもらいたいと言う理由もあった。

 

「まぁ、それは有り難いです。対雑魚戦、対モンスター戦、対人戦、対ボス戦、対廃人戦の条件を持って、更にその中から戦士職、魔法職、援護職、その他諸々に分けたAIは凄いとか越えて、ちょっと怖かったですけどね」

 

「モモンガさん、廃人はやり過ぎ位が丁度良いですよ。ね、ヌードルさん?」

 

「まこと、その通りです。クリームちゃんの出来栄え、むしろ私の方が欲しい位だったですよ」

 

「駄目ですよ、ヌードルさん。この子はもう私の相棒ちゃんなのです。愛着もありますし。腹ペコホムンクルスだからご飯を上げるのも楽しいですし。大食いで直ぐに空腹になるから、食糧アイテムでバフの重ね掛けが簡単で面白いですし。

 いえ、まぁ、コギルさんが返して欲しいと言うならば、また話は違うんですけど……」

 

「言いませんよ。それにモモンガさんに上げたクリーム・ダンテスは私が作った傑作NPC、ガーゴン・ダンテスの双子の妹って言う設定でしてね。ぶっちゃけると、元ネタになったレトロキャラを模したソレの女体化版なんですよね」

 

「え! クリームってTSキャラだったんですか!?」

 

「キャラ設定の案の大元はそうなりますかね」

 

「それはまた……あ。だったら、あの厨二病が入ったナルシスト設定と特殊ポーズモーション、そのレトロキャラがネタの元?

 まぁ、キャラ性能を考えれば、ナルシストも相応しいNPCですけど」

 

「勿論です。カッコいいでしょう?」

 

「そ、そ、そうですね。格好良いですよね」

 

 言えない。最近、厨二病が心から晴れて来たことを。昔はあれ程好きだったパンドラズ・アクターのキャラ設定が、黒歴史に感じて羞恥心を覚えるようになってしまったことを。

 

「素晴しい。流石は厨骨のモモンガと呼ばれる事はあります」

 

「やめて!!」

 

「あ、それ……私が広めたあだ名だ。気が付いたら、掲示板で広がってたんですよね」

 

「ヌゥゥゥウードルさぁぁぁああん!!?」

 

 とまぁ、そんな一時を過ごすプレイヤーたち。そして、モモンガの傍で待機し続けるNPC。三人と一体のプレイヤーとNPCはゲーム終了時間を考え、墓王クエストに挑むべく冒涜者編シリーズがあるフィールドエリア――キングスフィールドに向かって行った。

 

 

◆◆◆

 

 

魔法効果範囲拡大最強化(ワイデンマキシマイズマジック)死の大剣舞(デス・グレートソードダンス)!!」

 

「惨い……」

 

「酷い……」

 

「…………」

 

「ウォッシャぁあああ! これがオーバーロード専用新魔法! 正に魔王ロールにぴったりな死霊魔法!!」

 

 そして、何だかんだとクエストクリアし、自分の墓の中にある棺桶でニートみたいに眠る墓王(グレイブロード)から新魔法を報酬に貰ったモモンガは、早速雑魚の群れ相手へ気分良く撃っていた。

 ……本当に気分がとても良く、久方ぶりにゲームが面白いと思えた。

 モモンガの眼前に広がるのは亡者兵だったモンスターであり、今はもうただの屍で、直ぐにでもポリゴンが消滅する寸前。百に等しい屍のオーラで編まれた片刃大曲剣が地面から生え、モンスターをあっさりと皆殺しにしてしまっていた。

 

「―――ふぅむ。良いなぁ。こう言うの見ると、私も旧支配者(グレート・オールド・ワン)じゃなくて、オーバーロードにすれば良かったって思いますね」

 

「ま、同感ですね。魔法職の異形種は華がありますから。私は二重の影(ドッペルゲンガー)変身の獣(ミミック)ですので、隠れんぼ、不意打ち、待伏せ、擬態に特化していて地味ですし、御寿司」

 

 コギルとヌードルは惨劇を見詰め、とても楽しそうな雰囲気を纏っていた。

 

「いやはや、本当にありがとうございました! これは良い魔法ですね」

 

「何を言ってるんですか、モモンガさん。水臭い。それにエクリプス専用の新魔法はまだ手に入ってないですよ」

 

「え? コギルさん?」

 

「その通り。取り敢えずモモンガさん、ソロで墓王倒してください」

 

「どういう事ですか、ヌードルさん?」

 

「私も其処まで詳しくないんですよね。魔法職じゃないですし。なので、まぁ、説明お願いしますね、コギル」

 

「うーん。そうですね。噂何ですけど、エクリプス取得したオーバーロードですと、墓王の呼び声に応える事が出来るらしく、原初の死の悪夢の中へ侵入出来るらしんですよ」

 

 唸りつつ、コギルは自分が出た情報をモモンガに漏らす。

 

「へぇ……それで?」

 

「そこにはオーバーロードを極めたソロでしか行けないらしく、そこで墓王を倒すと“墓王の大屍刀”を召喚可能な特殊武器召喚魔法が手に入るらしいですよ。

 名前は確か、何だっけか……第十位階魔法“屍刀の喚び墓”だったかな」

 

「武器の召喚魔法ですか。非常に珍しいですね……装備アイテムではなく?」

 

「まぁ、そりゃねぇ。仕方ないと言いますか。ほら、基本的にエクリプスが手に入る魔法職特化のオーバーロードじゃあ、大曲剣は装備条件にないですから。パーフェクト・ウォリアーって言うゴミネタ魔法もありますけど、それならそもそもエクリプス専用にする必要も全く無いでしょうし。

 一応、墓王の眷属であるオーバーロードが作った設定の墓王の凶骨刀もあるけど。そっちはモモンガさんも知っての通り、戦士職用の装備品ですから」

 

「成る程。成る程。納得ですね。スケルトンに似合う凶骨刀は持ってましたけど、無意味でしたし」

 

「その通り。まぁ、まともな武器が装備出来ない私みたいな錬金術師も、その場の魔法で自分作成の武器なら使える特殊スキルもあります。

 この特殊召喚も、似たような種類なんでしょう。

 しかも、クリエイト系じゃない召喚系なので第十位階魔法に相応しい火力を持ってますし、魔力消費も控え目で、種類もオーバーロードで補正が掛かる死霊系統。更には、第十位階なので最強化などの魔法強化のスキルも使えると言う、魔法職専用の最上位接近戦魔法ってなっております」

 

 何と言うセールストーク。もう神殺しをするしかないと決心する。

 

「良し、殺そう。死神を打ち倒そう」

 

 最近は森のPKと資金集めばかりで、MMORPGとしての娯楽性が薄かったモモンガは、一秒でも早く墓王を倒したくてウズウズしていた。

 新しい魔法を手に入れ、それを如何に戦術運用しようか悩み、実践を重ね、新戦術で敵に且つ。この一連の流れこそ、モモンガが魔法職を選んだ事を納得した最大の歓びであった。

 ―――五分後。

 挑みに行ったモモンガは、直ぐ様此方側に戻って来た。

 

「無理だ。墓王に死霊系効かないし。エクリプスも無駄ですし。魔法防御高過ぎて、他の魔法属性も効かないし。アイテムは効かないわ、眷属召喚してくるわ、魔法の炎じゃ全然効かないですし。

 ――……と言うかですね!

 あのワールドボス、魔法職オーバーロードの天敵じゃないですか!!」

 

「ええ。そりゃそうでしょう」

 

「ああ。当然と言えば当然だった」

 

「あの……あの、駄目運営め!! クエスト条件を満たすと倒せないボスとか、どうしろって言うんだ!!

 欲しいのに!! 今、この瞬間、大屍刀をブンブンしたいのに」

 

「まぁまぁ。私が錬金術で作った完全蘇生の秘薬もまだまだありますから、レベルダウンを気にせず何度も戦えますからね。と言うか、あれじゃないですかね。先程私が言った魔法、完璧なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)は今が使い時なんじゃないんですか?

 魔法職じゃあ勝てないソロ専用の特殊クエストボスみたいなら、あの魔法が便利ですし」

 

「それだ!! 絶対あの墓王、接近戦の打撃が弱点だ!!?

 ついでに爆炎で綺麗な髑髏(しゃれこうべ)を吹っ飛ばしてやる!! ひゃあ!!」

 

 そして、ムーン・プレゼンスとカジノクエストのギャンブルで戦い、モモンガは彼女から巻き上げた爆裂噴鎚(ブームジェット・ハンマー)の装備を取り出した。今は完璧なる戦士を使ってないので持てないため、地面に一時的に置き、目的の魔法を思い出してエフェクトとモーションを発動させた。

 テンションが妙に高いなぁ、と疑問に思いつつ、魔法で完全武装したモモンガが墓王の夢に旅立つのをコギルとヌードルは見送っていた。

 

「おー、皆。どうしたんだ?」

 

「あれ、会長じゃないですか」

 

「ヒャッハーダークか。今はあいつらと一緒に新クエストに挑んでるって言ってなかったけ?」

 

「ああ。そうだったけど、もう素材収集目的のボスは倒しました。クトゥルフ系宇宙侵略のアップデートだったからな、余り私のビルドに有能なのはなかったですよ。後は魔法とか、銃器とかが豊富でしたし。

 シャーナとイチコはまだ素材集めしてますし、トフェッサンも珍しくやる気を出してましたよ。何か、新型装備でビームキャノンが出るとか」

 

 先程までヒャッハーダークは同好会会員トフェッサンmkⅩ(マーク・テン)――愛称トフェッサンと共に、冒涜者編第三弾・失楽園の前のアップデートで出来たフィールドで遊んでいた。

 ―――アップデート・外なる塔(アウター・タワー)

 トフェッサンはガンナーの改造人間であり、機械系統のキャラだ。使用武器も重火器系統一式に、小型戦闘機体(バトル・ロボット)を好む。なので、ヴァルキュリアの失墜から続く銃器や機械のイベントには必ず参加するようにしていた。

 

「なんで、私の方は何時も通り、気に入ったプレイヤーを通り魔PKしてるだけです。後は、墓王エリアの墓守NPC商人からアイテム補充をするのも目的ですよ。

 ―――……で、そう言う貴方達は何故ここで(たむろ)してるの?」

 

「モモンガさんの神殺し待ちですよ」

 

「ああ。ついに墓王(グレイブロード)のコスプレをして、同好会に入る気になったんですか」

 

「別にそう言う訳じゃない。むしろ、モモンガさんがギルドを棄てられると、貴方は本気で思っているんですか?」

 

 そして、ヒャッハーダークの質問を、ヌードルは少し悲しそうな声色で返答した。

 

「んにゃ、考えてない。考えてないけど、それはとても寂しいことだ。

 だったらせめて、努力してボス攻略を終えたモモンガさんを、私達みたいな社会不適合者が祝って上げないとなぁ……」

 

 そんな三人と、無言のまま待機する一体のNPCはずっと、モモンガが墓王を倒してクエストクリアし、新魔法を手に入れるまで待っていた。

 十数分もすれば、モモンガは墓王の夢から戻って来た。自慢するように新魔法を披露し、クエストクリアのBGMが丁度鳴る。勿論、三人は拍手のモーションで彼を迎え入れた。NPCもまた設定条件に従い、主であるモモンガに一礼をして拍手を行い、機械的にモモンガのクエストクリアを祝福した。









 過疎期に入りますと、廃人度が一気に急上昇する皆でした。今のモモンガさんは、装備やステータス、スキルなどの能力は原作と殆んど同じですが、原作と違ってクエストにも誘われているので使える魔法が増えており、プレイヤースキルも対人廃人共御用達のエリアで金策した所為で天元突破している状態です。魔法職なのにプレイヤースキルが高過ぎる所為で、戦士職よりも接近戦が異常に強い廃人です。勿論、魔法職としてのプレイヤースキルも強くなってます。
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