魔法世界の訳あり物件   作:日々空回り

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二話

 

昼食での開口から数日、リッカは相変わらず部署にて事務作業をしていた。

 

「……」

 

マシュウには何もするなと言われたが、そこは先輩の矜持、何もせずになんてできるわけなかった。そのマシュウは今日も、他の部隊への協力のため出ている。なかなか渋っていたが、これは俺のお願いなんだけど、というリッカの言葉にすぐ様部屋を出て言った。

 

ウィーン

 

「おっはー☆今日の調子はどう?」

「定時ギリギリだぞ、リリィ」

「いや〜、発明の手が止まらなくて」

「その情熱を少しでも仕事に傾けたらな…」

「そこは隊長の仕事だろ?」

「これは隊の仕事だ」

 

ごめんね〜と言いながら、大きな杖を携えた少女が部屋へと入室して行った。茶色のウェーブをかけた少女はリリィー本名、リリィ=L=ランジェローで、この特殊装備科に所属している数少ない局員の一人だった。

 

「頼むから仕事してくれよ、マシュウにも言われてるんだろう?」

 

リッカは変わらず書類とにらめっこをしながらリリィに語りかける。語られたリリィはというと、杖を壁にかけ自分の机につき、椅子の背もたれに大きく寄りかかりぐるぐると回っている。

 

「確かにマシュウに毎回言われるよねー。先輩に仕事をさせないでくださいって」

「なら、やれよ」

「ふふふ、このリリィちゃんは、やらなくていいことならやらない主義なんだよ☆」

「ファック」

 

むふふーとリリィは笑うと、自分のデスクのパソコンを立ち上げる。

 

「あ、そういえば」

「どうした?」

「八神二等陸佐が呼んでたよ」

「なんでさ」

 

その名前が聞こえた途端リッカは、筆を置きめんどくさそうな顔をした。

 

「なんだかー、これからのここに関わる話だからだってさー」

「おいおい、それを隊長の俺じゃなくてなんでリリィに話すんだよ」

「私天才だもん」

「天災の間違いだろ」

「あながち間違いじゃないね☆」

 

くるくると回るリリィは、回り続けながら屈託のない笑みを浮かべた。リッカは再びため息をつくと、持ってきた書類をリリィの机に置く。

 

「八神二等陸佐のとこに行ってくるから、これよろしく」

「ええー、なんでさー」

「俺、隊長。お前、隊員。you know?」

「圧政だー‼︎」

 

ブーブーと文句をリリィが言うので、仕方なくリッカは切り札を切る。

 

「第三十二倉庫」

「⁉︎」

 

その言葉を聞いた途端、リリィの表情は固まってしまった。

 

「いやー、色々溜め込んで見るみたいだけど、誰の許可w「完璧にこなしてみせるよ、隊長‼︎」わかればよろしい」

 

リリィが敬礼して仕事を了承したので、リッカは部屋を出る。

 

「ちゃんとやんなきゃわかってるよな?」

「イエッサー‼︎」

「うむ、行ってくる」

 

リリィの敬礼を再び見て、部屋の扉をリッカは閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相変わらずリッカが歩くと陰口を叩かれるのだが、それらを無視して八神二等陸佐が待つ部屋へとたどり着いた。

八神はやて二等陸佐。ランクSSランクにして、守護騎士ヴォルケンリッターを束ねる夜天の書の主人である。その経歴は一般的にはホワイトであるが、その裏は知る人とぞ知るブラックである。

 

コンコンコン

 

「リッカ=E=タチバナ三等空士入ります」

『うん。はいってなー』

 

ノックを三回して入室を許可されると、リッカは部屋へと入る。そこには茶髪のショートカットの少女が大きな机と椅子に座っていた。その横には銀髪の生体デバイス、リインフォース=ツヴァイもいた。

二人を見て、リッカは敬礼をする。

 

「リッカ=E=タチバナ三等空士。招集につき参上しました」

「うん、ありがとなー。リィン、お茶用意したって」

「はいです‼︎」

 

主人のはやての命令を聞いて、リィンはお茶の準備をする。

はやては座っていた椅子から退くと、接待用の向かい合ったソファーに座る。

 

「リッカ君、君も座って。あと、言葉遣いも普段通りでええから」

「じゃ、遠慮なく」

 

リッカはソファー深々と座り、はやてと正面で向き合う。

 

「相変わらずやなあ」

「変わらないことって尊いよな」

「またそないなこと言う…」

「お待たせです‼︎」

 

苦笑いをはやてが浮かべると、リィンがお茶を持ってきた。

 

「ありがとな、リィン。…うん、うまい」

「ありがとうです‼︎」

「……」

「ん、どうしたはやて?」

 

リィンの入れてくれたお茶を舌鼓していると、じっとはやてがリッカを見つめていた。

 

「いやな、リッカ君もそんな顔できんのやなーって思うて」

「お前は俺をなんだと思ってるんだ」

「不器用」

「クソダヌキ」

「………」

「………」

「はやてちゃん?リッカ君?」

 

二人の無言のにらみ合いを不思議に思ったのか、リィンは二人の名前を呼ぶ。

 

「ま、別にええわ」

「それで要件ってなんだよ」

 

リッカはお茶を置くと、深々と座り直しはやてを見る。

 

「実はな、うち新しい部隊作ろうってなってねん」

「まさかそこで働けと?この俺が?」

「話が早うて助かるわ」

 

ふふふと笑うはやてだが、一方のリッカは眉を寄せる。

 

「厳密に言えば、リッカ君だけじゃなく特殊装備科全員をうちが作る時空管理局遺失物管理部機動六課に欲しいんよ」

「…マジで言ってんの?」

「おおマジやで」

 

リッカは上を向いて装備が全員の顔を浮かべて考える。一人は自分、事務作業をなんとかこなせてランクは最低。一人はマシュウ、優秀であるが自分の言葉以外は聞かない。一人はリリィ、天才であるがその分だけ周り特に自分に迷惑をかける。もう一人いるが、そいつも別の場所で仕事をしておりかつ人間のゴミのような性格である。

以上のことを考えて、リッカは答えを出す。

 

「やめとけ、はやて。せっかく作った六課がその日のうちになくなる」

「そんなことはならんて」

「いや、ありえる」

 

はやては笑うが、リッカの目は笑っていなかった。冷静に分析した結果、メリットよりもデメリットの方が大きく優ったのだ。

 

「じゃあこれを見て」

「は?……ええ…お前そこまでする?」

「うちはなんでもする女やで」

 

はやてがリッカに見せた紙、それは管理局の三賢人の名前が記された辞令だった。

 

「『特殊装備科を時空管理局遺失物管理部機動六課に加えることを命ずる』って、これはやりすぎだろうが」

「さっきも言った通りやで、それでリッカ君どないするの?」

 

リッカは辞令を机に置くと、ふーっと息を吐きはやてに答える。

 

「受けないわけにはいかないだろうが。…特殊装備科隊長リッカ=E=タチバナ以下四名、辞令の通りに八神はやて二等陸佐の元に参画します」

「そうそれは良かったわ。なあ、リィン?」

「はい‼︎またリッカ君と遊べます‼︎」

「出向だあくまで」

 

その後はやてはリッカに書類を渡し、出向のための確認をした。

 

「ん、そう言えばリッカ君」

「なんだ?」

「文体の名前どうする?」

「俺が決めていいのか?」

「うん。今ある、スターズとライトニング、それとロングアーチと被らなかったらなんでもええで」

「簡単に決めてくれるなぁ…」

「こう言うのはインスピレーションが大事やで」

「知っとる」

 

うーんっと少し悩むと、手元の書類に分隊名を書く。

 

「これが俺たちの名前だ」

「…何々、うん、ええ名前やな」

「うう、リィンにも教えて欲しいです」

 

はやては書類を見てわかったが、リィンは机の上で作業をしているため見ることができなかった。リッカは苦笑すると、リィンに自分の隊の名前を教えてあげた。

 

「俺たちの名前はカルデア。独立装備遊撃隊カルデアだ」

 

そう言ったリッカの顔は、どこか健やかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみにライトニングの分隊長、フェイトちゃんやから」

「やっぱりやめさせていただきます」

「そないなことできるわけあらへんやろ」

 

笑うはやてに、このたぬきいつか殺すとリッカは思った。

 

 

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