「えー、そんなわけで私たち特殊装備科は、六課に組み込まれることになりました」
「あららー、私たちのことを必要としてくれるところがあるなんて意外だね☆」
「やっと先輩の実力が分かる上司ができるのですね‼︎このマシュルマロール、闘魂不屈の勢いで先輩の名が広まるように頑張ります‼︎」
「はいはい。まずリリィ、君が原因であることを理解するように。お荷物呼ばれするのは君が原因でもあるんだから。それとマシュウは、俺のためじゃなくて社会貢献に尽くしてくれ。いや頼むから」
「私はいつも通りだよー?」
「全ては先輩のためですよ?」
「この馬鹿二人は…」
後日、はやてから言われた部隊の統合を、特殊装備科に伝えるとやはりと言ったほうがいいか、思ってたような返答が帰ってきた。わかっていたとは言え、頭を痛めるリリィだった。
リッカが頭を痛めていると、マシュウが手を挙げた。
「先輩」
「はい、マシュウ」
「あの人には伝えなくていいのでしょうか、このお話を」
「あー…あいつにか…」
ふと特殊装備科最後の一人の顔が浮かんだ。しかし、その顔はニヤニヤとこちらを見定めているようで、すぐにでもその顔をぶん殴りたかった。
「いらんだろう。このままいなくなってしまってもいいし」
「そうだねー。それにあいつなら持ち前のスキルでなんでもお見通しって感じだしね」
「そういうことで連絡は無しだ。わかったか、マシュウ」
「承りました」
「そういえば部隊創設式って今日なんだろう?急がなくていいのかい?」
「ん、まだ時間にはあるだろう。ほら時計ではまだ十二時指してるし」
そう言ってリッカは自分の時計を見る。確かにその針は十二時を示していた。
「…先輩、ただいまの時刻は一時過ぎです」
「え?」
「ほらほらー、この天才が作った時計を見てごらんよー。きっかり一時十五分を指し示してるよー☆」
ギギギっとリリィの時計を見ると、たしかにリッカの時計とは違う時刻が刻まれていた。
「あれぇぇぇぇ⁉︎いや、なんでぇ‼︎」
「あ、この前仕事押し付けられた腹いせにいじったの忘れたままだった」
「こんのクソ天災がぁぁぁぁ‼︎」
「ふぇふぇふぇ、そんなにひわなくへもわかるほ」
リッカはいたずらを仕掛けたリリィの両ほっぺを思い切り伸ばすが、当のリリィにはあまり聞いていないようだ。
これ以上の時間ロスは無駄と考え、リリィのほっぺから手を離しマシュウに迫る。
「マシュウ‼︎今日の創設式は何時からだ⁉︎」
「はい‼︎本日十三時三十分ちょうどです‼︎」
「あと、十五分しかないだと…」
「今の問答で、あと十分に減ったけどねー☆」
「黙らっしゃい‼︎」
リッカは残り時間とここから六課までの距離を計算する。どんな乗り物を使っても、一時間はかかる。つまり定刻には遅れる。大失態である。
そのためリッカは苦渋の決断を下した。
「マシュウ…行けるか?」
「…‼︎はい‼︎このマシュルマロール‼︎先輩のご命令ならば、なんでも成し遂げます‼︎」
「はあ…こればっかりは使いたくなかったけど、しょうがないよな。ほらリリィ、マシュウに掴まれ」
「りょーかい」
「その笑顔、後でぶち殺す」
「怖いよ、マシュウ〜」
「僕はいつだって先輩の味方ですので、先輩が殺すというならば僕も殺します」
「…ひどい忠犬ぶりだ」
「それがマシュウだからな」
マシュウの後ろにリッカはおぶさり、リリィはその手に犬のように抱えられた。
「ねえー、普通女の子がそっちじゃない?」
「男の背におぶさる俺の気持ちにもなれ。結局のところは、腹を抱えるられるか、おぶさるかどっちの方が見栄えがいいと思う?俺は隊長だからおんぶを選ぶ」
「それでも〜…」
「準備はよろしいですか?それでは行きますよ‼︎」
「口閉じとけ、死ぬぞ」
「知ってるるるるるるる⁉︎」
マシュウの声に合わせて、景色が遅れて行った。
リッカが取った方法は一つ、マシュウのスペック任せの超高速移動である。
(こんな時はマシュウがエース並みの力でよかったって思うわ)
「ぶぶぶへくせやまね‼︎」
(馬鹿は相変わらず、何か言ってるし)
そして定刻になり六課の創設式が開催された。
「ええー、それではまだついていない部隊もありますが、定刻になりましたので始めたいと思います」
はやてはうんざりしながら、開会の宣言をする。
足りない部署はどこなのか、それは隊長のはやてのみが知ることで分隊長のなのはもフェイトも知らないことだった。
(ほんま、期待を裏切らんわ…まあ、こういうのも含めてリッカ君らしいけど)
続けて話そうとしたはやてが息をすうっと吸おうとした時、六課に風が吹いた。
「え?」
「あー…すみません、独立装備遊撃隊カルデア現時刻を持って到着いたしました」
「リッカ君⁉︎」
六課全員に衝撃が走った、追加で召集される部隊があることは知っていたが、まさかそれがお荷物部隊である特殊装備科であるとは、はやてとリィーンフォース以外知らないことだったからだ。
「ええ…なんなん、その格好は?」
「深い事情がありまして…」
「ただの遅刻なんだけどねー」
「マシュウ」
「はい、先輩」
「ひで⁉︎」
リッカの声で、マシュウに抱えられていたリリィは重力に逆らうことなく下に落ちた。
「あー…そんなわけで本日よりここ六課に召集されました、特殊装備科改め独立装備遊撃隊カルデアです。何卒よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げるリッカ。それに続いてマシュウとリリィも続いた。
しかし、衝撃から戻ってきた団員たちから帰ってきたのは疑いの声だった。
『まさかあのお荷物部隊が?』
『出来損ないばかりらしいじゃないか?』
『ほんと、自分たちの身分が分かっているのかしら?』
「マシュウ、落ち着け」
「……承知しました」
危うく手が出そうになったマシュウを、頭を下げながらリッカは制する。
しかし、次の言葉でリッカは動いてしまった。
『ほんとマシュウさんを置いて、ここからいなくなっちゃえばいいのに。マシュウさん以外何もできない無能なんだから』
「あ?」
流石に看過できなかった。リッカはざわつきが続く集団へと進む。リッカが通ろうすると、まるでモーゼの十戒のように人々が退いて行った。リッカの表情がいつものヘラヘラしたものではなく、憤怒に染まっていたからだ。
「てめえだよな、俺たちのことを馬鹿にしたのは?」
「…え?」
言ってしまった局員の前まで行くと、リッカは静かにそう告げる。その声音に局員は震え上がってしまった。
「別に俺のことは馬鹿にしてもらっても結構、実際無能だし、それにこの部隊がお荷物であることも事実だ。けどな…」
「グフ…」
リッカは女性局員の襟をつかみ、宙に浮かせた。
「何も知らねえてめえが言うな…マシュウの前に俺が殺すぞ…‼︎」
「ヒ…」
リッカの睨みに局員は息もできなくなってしまった。それを止めたのは金色の閃光だった。
「そこまでだ、リッカ=E=タチバナ三頭空士。今すぐ、その手を離せ」
フェイトはデバイスであるバルディッシュを展開され、リッカの首元にザンバー突きつける。
「舐められたまま黙ってろってのか?それともここの部隊は、馬鹿にされてそれを見過ごせって言うのかよ」
「確かに彼女に非があったのは事実だ。だけど、手を出したお前の方が悪い」
「手をしたら悪いってのか?じゃあ言葉で傷つけても何も悪くないってか。立派な考えをお持ちだこと、執務官様は」
「…もう一度通告する、その手を離せ。さもなくばその首を跳ねるぞ」
「…ふん」
「…‼︎ゲボゲボ…ありがとうございます、ハラウオン執務官」
フェイトに言われリッカは手を離した。すると、リッカたちにはやてが近づいてきた。
「あなたの処分は追って連絡します、いいですね?」
「…はい」
「それにしてもみんなカルデアが認められんようやね」
はやてが周りを見渡すと、皆声には出さないが同意のようだ。
「なら、カルデアの力を見せつけてみようか」
「どうやって見せつけるん?」
リッカの提案にはやては促す。
「確かここの部隊には、カルデア以外の分隊スターズとライトニングあると聞く。そこと俺たちカルデアが模擬戦して買ったら認めてもらうってことで」
「ええな、じゃあそうしようか」
突然決まった模擬戦にスターズ、ライトニング両名の隊員は驚く。しかし、関係ないとリッカはマシュウたちに続けた。
「マシュウ、リリィ」
「はい‼︎」
「なんだい?」
「こいつらに格の違いを見せてやれ、どこの部隊が一番強いかってな。できるか、二人とも?」
「先輩のご命令ならば、そして先輩を貶めたこいつらに地獄を見せます」
「私もいい気分じゃないからねー、久々に本気出すよ」
「いいね」
リッカはニカッと笑うと、六課に宣告する。
「現実ってやつを見せてやるよ、エリート共」