「あー…すまんな、二人とも」
控室に通されたカルデア一行、リッカの口から出たのは謝罪の言葉だった。
「あの場のノリで合わしてくれたのかもしれんが、俺の我儘に付き合わせて」
リッカはそう言うが、マシュウは首を横に振りリリィは笑った。
「いいえ、先輩らしい素晴らしい言葉でした。このマシュウ、先輩の名を遂行して見せます」
「マシュウの言う通り、あそこで怒れるからリッカなんだよねー。ま、大船に乗ったつもりでまーかせて☆」
マシュウとリリィがそう言うので、リッカも泥舟の間違いだろうが、と言い笑みをこぼした。
「んじゃ頼んだ、二人とも。意識高い系エリート共に一泡吹かせてやれ」
リッカはそう言って両手を握り、マシュウとリリィにグッとする。二人はそれに笑みをこぼしながら、拳を合わせた。
「拝聴しました。先輩のためならば、どのような席にもたってみせます」
「ぶっ飛ばすよー☆」
「ほどほどにな」
ゴン
音こそ小さかったが、それは三人の胸に刻まれた。
さて、とうのライトニングとスターズの分隊メンバーは困惑していた。晴れの創設式かと思いきやいきなりの模擬戦。しかもその相手は噂のお荷物部隊、特殊装備科だという。
「何でこうなったのかしら…」
「わかんないよ、ティア」
スターズのメンバー、ティアナとスバルは頭を悩ませていた。それはライトニングのメンバーである、エリオとキャロも同様であった。
「いきなり模擬戦…」
「しかも相手は噂の…」
はあ、と四人のため息がシンクロした。
「ま、こんなに落ち込んでてもしょうがないでしょ。さあやるわよ」
ぱんとティアナが手を叩くと、分隊メンバーの顔つきが変わる。
「作戦…と言っても相手の力量がわかんないわね」
「でも、今回の模擬戦に隊長クラスは出ないんですよね?」
「うん、だから私たちだけなんだよね」
エリオの問いにスバルがうんと頷く。
今回の模擬戦のルールは
①各隊の総力戦、そして殲滅戦。
②時間無制限。
③しかし隊長クラスは不出場。
④リタイアの判定は、六課の隊長であるはやてが行う。
以上が今回のルールだった。
「だから、なのはさんもフェイトさんも観客席で見てるんでよね」
今回の目的は、分隊カルデアの実力を示すため。なので六課の局員のほとんどがこの模擬戦を観戦している。
「キャロの言う通り、今回は私たち若手だけの模擬戦よ。でも、みんなこれまでの訓練を思い出して。私たちが遅れる要素なんてあると思う?」
ティアナの問いに三人が首を横に振った。スバルに至っては、訓練を思い出したのか少し顔色が悪くなっている。
「とりあえずはスバルとエリオが先行して、対象にぶつかり次第交戦。多分、タイプ的にカリエール隊員が対応すると思うわ。私とキャロは二人のサポートしてもう一人のランジェロ隊員を牽制、うまくいけばそのままって感じね。何か意見のある人はいる?」
ティアナの問いにエリオが手を挙げる。
「そんなに簡単に行きますか?カリエール隊員は局内での実力は折り紙つき、それにランジェロ隊員に至っては実力が不透明です」
エリオの言うことにティアナたちはうんと頷く。
「確かにエリオの言う通りね。でも、強いと分かっているからって手を出さないのは、ナンセンスよ。それに二人ならできると思って言ったんだけど、やっぱりできない?」
ティアナの挑発に二人はにかりと笑う。
「そんなに言われて黙ってれるわけなんてないじゃん‼︎やってやろう、エリオ‼︎」
「そうですね、何事もやって見なきゃ分からないですよね‼︎」
「私も皆さんを全力でサポートします‼︎」
三人の意気込みにティアナも続く。
「みんないいみたいね。それじゃああいつらに見せてやりましょう、六課の力ってやつを‼︎」
おおー‼︎とスバル、エリオ、キャロは勢いづく。しかし、一方のティアナの胸の中にはある不安が残っていた。それはこの控室に通される前に言われたことであった。
『頑張ってなー、これもええ経験になると思うで』
『カルデアの皆から教えてもらえることたくさんあると思うから、頑張ってね』
『無茶だけはしないでね?それと…ううんやっぱり何でもないや。何があっても驚かない、それだけかな言えることは』
(今、思えば誰も私たちが勝つなんて言ってこなかった。もう、やる前からわかってるから?)
順にはやて、なのは、フェイトのアドバイスだった。そう今思えば誰もティアナたちの勝ちなど期待していなかった。ただこれもいい訓練になると思っていることだけが分かった。
「?ティアー、行くよ?」
「え、ああ。今行くわ」
スバルの声に戻されティアナは部屋から出る。
簡潔に結果だけ言おう。スターズ&ライトニングvsカルデア、その模擬戦の結果はカルデアの勝利。しかも余力を大いに残してのものだった。