永美side
その日、パラドとの見回りは特に異常もなく終わった。事務所に戻ってきた私たちであったが、
「永美。」
「なに?パラド?」
「今はパラドクスな。それより、職場体験中の宿泊先は事務所内にある部屋の一室だからな。」
「ホテルじゃないの?」
「何か起きたときにホテルにいたらどうなる?」
「救助に間に合わない。」
「そういうことだ。部屋に案内するからついてきてくれ。」
「了解です!」
パラドに案内され、部屋に入った私。部屋自体はそこまで広くはないけど、生活に必要な家電製品。最低限の家具。キッチン、バスルームも付いている。キッチンには調理器具が充実している。寝室もあった。
「これ、普通に生活できるよね。」
そんな感想を抱くしかない。そんなことがあったが、その日は特に何もなく終わった。二日目も特に何事もなく終わった。
三日目 夕方
「今日も何も起こらないね。」
「こんなヒーローが多くいる場所に
「そっかぁ~暇だね。」
「見回り中にそんなことを言うな。」
今日も特に何も起きずに終わるのかと思っていた。しかし、
「パラドクス、通信機が鳴っているよ。」
「ん?永美の携帯にも何か来ているぞ。」
「え?」
パラドは通信機を私は携帯を確認する。
「なんだと!?今から行く!」
「ここ来いってことかな?」
私の携帯に緑谷くんから位置情報が送られてきた。おそらく緑谷くんの今の居場所だとは思うけど…
「パラドクス!私、今から保須市に行ってくる!それと、これ借りていくね!」
「待て!それは!?」
私はパラドの部屋にあったバグヴァイザーにベルトがついているものと白いガシャットを借りて、全速力で保須市に向かう。向かっている最中、保須市の方面から逃げてくる人が多くいた。やっぱり何かあったんだ。
緑谷くんのいるであろう場所に向かう。到着した場所にいたのは、
縄でくくられた
「導さん!」
「導、遅すぎだ。」
「導くん…」
な、なんだろう。このもう終わりました感は…
「えっとぉお、お疲れ様?…何があったの?」
「それは!?導さん!後ろ!」
私の後ろにいたのはUSJで私たちを襲ってきた脳無と呼ばれていた化け物だった。まずい!
そう思った私は全力で脳無を路地裏から大通りに蹴り飛ばす。
「緑谷くん!逆方向に逃げて!」
「でも!」
「いいから!早く!」
無理矢理みんなを逃がした私は脳無とのリベンジマッチに挑む。脳無の見た目はUSJの時と似た見た目なのでおそらく馬鹿みたいなパワーを持っているはず。
『マイティ―ブラザーズを使っても負けてしまう。なら、』
パラドから借りたバグヴァイザーが付いたベルトを巻く。その時、吹き飛ばした脳無が瓦礫の中から起き上がり、私に突っ込んでくる。咄嗟にしゃがみ込み、避けた。
『今の私は変身解除状態だから危なかった!』
ひやひやしながら、パラドから借りたガシャットを起動させる。今はこのガシャットだけが頼りだ!
《デンジャラスゾンビ!》
不気味な音声が鳴り響く。だが、私はそんなことを気にする余裕もなく、ガシャットをバグヴァイザーに差し込む。
《ガッシャット!》
「こ、この後は!?」
変身できないことに戸惑い、バグヴァイザーを触っていると、ガシャットの差し込み口の左側にボタンがあった。見つけたのはいいが、脳無の拳が目の前まで迫ってきている!やけくそでボタンを押す。
《バグルアップ!》
低温ボイスが鳴ると、
足元から黒い靄みたいなものが出始め、ひび割れたスクリーンが現れた。スクリーンは私の目の前で止まった。
「もしかして…」
私はスクリーンを突き破るように、前に出る。
《デンジャー! デンジャー! ジェノサイド! デス・ザ・クライシス!
デンジャラスゾンビ! ウオオオ!》
「ふぅぅぅ、変身できた。脳無、行くぞ!」
脳無の攻撃が来るが片手で止めることができた。
「すごい…これなら!」
私は脳無に拳を何度も叩き込む。
「これで、終わりだ!」
気絶させるため、頭に重い一撃を入れようとしたとき、脳無が私の後ろを見ていることに気が付く。
「あ、あああああ!?」
恐怖におびえ、動けない一般人がいた。脳無は標的を私からその人に変え、とびかかる。
「させるかぁ!」
全力で脳無の攻撃から市民を守る。どんなに拳で殴られようとも守る。拳で殴られているとき、ある事に気が付く。
(痛みがない。)
殴られたところにダメージが入った感覚もなければ痛みもない。
脳無も異変に気が付いたのか後退りを始める。
「必殺技で終わらせる。」
なんとなくではあるが必殺技のやり方がわかる。ドライバーのAとBを同時に押し、Aを押す。
『クリティカル・エンド!』
空中に飛び上がり、縦に回転しながらキックを繰り出す。
キックをくらった脳無は吹き飛ばされ、意識を失う。
「これで、おわった…」
私は変身を解こうとした。その時、後ろから炎が飛んできた。私は炎を拳で打ち払い、炎が飛んできた方向を見ると、
「だれ。」
「それは俺のセリフだ。」
緑谷side
「俺を殺していいのは
僕を助けてくれたヒーロー殺し ステインはその言葉を残し、気絶した。そのあと、ヒーロー殺しの捕獲のために多くのヒーローが来たとき、僕は思い出した。
「導さんが!早くいかないと!」
僕が叫ぶと轟くんがエンデヴァーに導さんのいるであろう場所を教えた。僕たちもエンデヴァーの後に向かうと、そこにいたのは、
「だれ。」
「それは俺のセリフだ。」
半分が黒、半分が白の髪、バイザーの下から見える目は赤と青、口元にはボロボロのガスマスクをつけている。体にはボロボロの白のアーマーを纏っている。
そのヴィランのような見た目をしている人物の隣には頭だけが地面に倒れ伏している脳無の姿があった。
「もしかして、導さん?」
「少年、それがこのヴィランの名前か?」
エンデヴァーがそう尋ねてきたが、
「彼女は僕たちのクラスメイトです!」
「緑谷くん。無事だったのね。」
僕の言葉の後に、導さんが言葉を発した。それと同時に導さんが変身を解く。
「よかった。無事で。」
「導さんが助けてくれなかったら今頃は…そ、それより、脳無を倒したのって、やっぱり…」
「私です。さて、私は自分の事務所の方のところに戻らな、い、がはっ!」
導さんが口からとんでもない量の血を吐きはじめ、倒れた。
「導さん!導さん!」
導さんと僕たちはその後、病院に入院することとなった。導さんは二日経過しても起きることはなかった。そして、3日目になろうとしたときだった。看護師の方が僕たちの病室に入ってくると、
「お友達の導さんが目を覚ましました!」
僕たちは急ぎ、導さんの病室に向かう。そこにはベッドから起き上がっていた導さんがいた。
「導さん!起き上がっても大丈夫なの?」
導さんはこちらを見ると、
「おぉ!緑谷じゃないか!それに、飯田に轟まで!私の見舞いに来てくれたのか!ありがとう!」
僕たちは固まった。
見た目は導さんだけど中身が違う。
轟くんが導さんに近づく。
「お前、だれだ?」
導さん?は尋ねられると笑い始めた。
「あはははは!ばれたか。ご明察の通り、体は導、中身は違う。先にいっておくが永美の回復を早めるために俺が体を使ってるだけだからな。安心しろ、永美はもうすぐ起きる。あと1時間ほどで目覚めるから頼んだぞ。」
導さんの体はそういうと、ぱたりとまたベッドに倒れた。
その後、その言葉の通り、導さんは意識を取り戻した。
導さんに体が誰かに使われていたことを教えると、
「たぶんパラドね。」
「パラド?」
「私の保護者みたいなものかな。さて、私はもう少し眠らせてもらうね。」
導さんに部屋を追い出されてしまった。
ともかく、ヒーロー殺しの事件は幕を閉じた。
導さんに関して色々聞きたいことはあるけど、今は体を治すことに専念しよう。
パラドに送られてきたガシャットの中にはデンジャラスゾンビもありました~
仮面ライダーエグゼイド本編で、パラドが使っていたので今回登場させてみました。
デンジャラスゾンビの登場はこれで終了!主役はゲンムではないので!
永美が使った際に血を吐いたのは、変身時の反動ということにしておきます