SAO世界に注意喚起しにきたが駄目だったようだ... 作:8bit
ふぅ、時計台に少し上るだけでも割と高いね。
選挙カーに乗ったかのような高さから、私は辺りを見回す。私が声を掛けた人達は、訝し気にこちらを見ている。声を掛けていない人の中にも、この状況を呆然と眺めている人が見受けられた。
このまましゃべり始めてもいいけどこの広場にはまだ9000人の人がいる。その中で私に注目しているのは、何人だろう。20人?30人? みんな、今の状況を受け入れられないでいる。私が知っていることを少しでも共有できれば、無駄な死者を出さなくて済む。そして、その助かった人の積み重ねがこのゲームのクリアに貢献できる糧となる。そのためには、私にもっと注目してもらわないと困る。
私はおもむろにポケットからポーションを2つほど取り出す。それを空中に放り投げた。
私はβテスターとして誇りに思っていることが一つだけある。それは、誰よりもソードスキルへの予備動作を少なく発動することができること。
空中に投げられたポーションにむかって、アニールブレードの剣先が捉える。
——ソードスキル・スラント!! ———
空中に舞うポーションはポリゴンの欠片となって僅かばかりの音を立てて砕け散った。その音とポリゴンの粒子に今まで、こちらを見ていなかった人もギョッとしてこちらを見る。茅場の演説で、このゲームでの死=データとしての消失=ポリゴンとなって消えるという一連の感覚がみんなの頭の中にはあるはずだ。私は、少々強引な手にはなったが、こちらに注目を向けさせることができたようだ。少々荒っぽかった気もするが、それはご愛嬌ということで...。
「ちゅうもぉぉぉく!はじめまして、私の名前はルーナ。このゲームのβテスターをしたことがあるゲーマーで、職業は、物理教師をしています。」
もちろん、大嘘である。高校生だからな。私は皆に比べてでかい、それにモデルのような顔つきとスタイルから大人に間違えられる。前世では、教師だった気がする。気がするだけだがな。
「今から、このゲームを攻略していこうと思う人、攻略方法を知りたいと思う人、何をすればいいのかわからない人、とりあえず話を聞いてくれる人は、私を進行役として、話し合いをしていきたいと思います。先ほどは手荒な真似をしてすいません!!」
私よりだいぶ大人の人たちがこの状況に飲まれている。そんななかでも話を聞いてくれる人はいるようで、10分くらいの時間をかけて小さな学校の集会程度の人数は聞いてくれる用意が整ったのか、静かになり始めた。その中には、頼りになりそうな大人の男性たちが周りを宥めている姿を見受けられた。みんな、この事態に混乱している。それでも、話し合いの場が設けられたのは僥倖であった。
そして、沈黙とはいかないまでも、静かになった時計台周辺の人たちに向けて私はできるだけ大きな声で、はっきりと語っていく。
「みなさん、この状況に混乱していると思います。この場は、仮で私が仕切らせて貰います。アバターネーム【ルーナ】と申します。ここで私のリアルの名前、職業を語るのは筋違いだとは思います。ですが、皆さん今日初めて会った間柄で信頼できる状況ではないと思いますので、せめてこの世界で信頼できる情報の第一歩として言わしてください。私の名前は【木崎 春奈】、2年前から物理教師をしています。」
「いろんな考えが皆さんあると思いますが、先ほどの会話を少し思い返しましょう。ゲームで人が死ぬという言葉です。茅場明彦なる者が言っていた話を鵜呑みにするのは荒唐無稽、事実無根、絵に描いた餅だ。と思う人もいると思います。ですが、あの話を事実として仮定するとかなり高い確率で死ぬ可能性があります。」
実際死ぬしな、前世で読んだ内容だと4000人だっけ、いまいち数を把握していない。
「このゲーム機の内臓バッテリーの容量を皆さん知っていますでしょうか。私は仮にもリアルでは物理の先生だったので、このゲームを始める前に気になって見たことがあるのですが、大容量のバッテリーが搭載されており、コンセントを外されても3時間は稼働するほどはあります。神経伝達回路というのがナーブギアにはあります。そこに過度な電気を送り込めば、頭をレンジでチンするくらいは訳ない出力があると考えられます。本来は、ナーブギアの防護機能で守られている部分です。ですが、先ほどの話を聞く限り、ナーブギアの開発者はあの茅場明彦です。細工をすることは本人なら容易でしょう。仮に、茅場明彦が犯人ではなかったとしても、そのリスクを背負ってまで死ぬのは、大いにお勧めしません。」
私が言った内容に対し、「そんなことができるもんかー!」といった頭チンパンジーなオツムの野郎が数人批判を言ってくる。想定の範囲内。批判からは何も生まれないという言葉はよく言ったもので、こういう輩は、対案、自分の考えを出してこない。ただ批判するだけならAIにだってできる。...いや、最近のAIは馬鹿にできないな。撤回しよう。
何はともあれ、こういった輩には、自分の意見を真っ向からぶつけることは得策ではない。議論がヒートアップすること必至だからだ。全然違う方向にね。
「すいません、みなさん、思い思いの考えがあると思います。混乱を避けるために、発言のある方は挙手でお願いします。もちろん発言は匿名でもかまいません。この場は、皆さんの意見を一つの方向、このゲームをどうクリアに導いていくかという題目に沿って進めていきたいと思っています。発言のある方は、再度お願いしますが、挙手をお願いします。」
目立ちたくない一部の日本人だけにしか通用しないが、この状況での挙手性は効果抜群だと思うの。数が絞り込めて、話が聞きやすくなるという点に関しては特にね。
全員が全員、記者クラブみたいに手を挙げるわけではない。このおよそ400人程度の規模で、手を挙げるのは、まばらにだがいる。先ほどの反対意見を言いたい人と、自分の考えを知ってもらいたい人、有益な情報を持っている人などだ。
進行役として、初めは、インパクトのある人にいってもらいたいなぁ。
少し服装が女のアバターっぽい男の人を当てる。
「そこのピンクの服を着た男の人!お願いします。」
添削だるだるのだる。
感想に書いてくれたら修正します。