遊戯王ZEXAL 風の戦士たち   作:ナタタク

103 / 112
侑斗
No.00ガスタの魔剣士ユウ
CNo.00ガスタの魔剣士ユウ・暴風
WNo.00ガスタの魔剣士ユウ・清風
No.49秘鳥フォーチュンチュン
No.50ブラック・コーン号
No.64古狸三太夫
No.74マジカル・クラウン―ミッシング・ソード
No.69 紋章神コート・オブ・アームズ
CNo.69紋章死神カオス・オブ・アームズ


No.7ラッキー・ストライプ
No.17リバイス・ドラゴン
No.32海咬龍シャーク・ドレイク
No.55竜騎兵グレン
CNo.55灼熱竜騎兵グレン
CNo.55竜闘士グレン
No.57奮迅竜トレスラグーン
No.82ハートランドラコ
No.85クレイジー・ボックス
No.90ヒート・ガストラフェテス
No.91サンダー・スパーク・ドラゴン

竜司
No.10白騎士イルミネーター
No.11ビッグ・アイ
No.18ジェムナイト・アゲート
No.52ダイヤモンド・クラブ・キング

瑠那
No.16色の支配者ショック・ルーラー
No.20蟻岩土ブリリアント
No.23セイクリッド・ルナマリア
CNo.23セイクリッド・アーク
No.30破滅のアシッド・ゴーレム
No.87雪月花美神クイーン・オブ・ナイツ


第92話 ベクターの凶行

「もうすぐだ…もうすぐバリアン世界につく…」

たった1人、蓮はバリアン世界へ向かう。

今の彼のスピードは飛行船の約半分程度だ。

追いつくだろうと思っていたが、アリトとデュエルをしているためか、未だにその姿が見えない。

(璃緒…ドルベ…)

人間世界から戻ると、何度も説教をしながら見せたドルベの困り果てた顔と、デートのときに璃緒が何度も見せてくれた、いつもなら見ることができない無邪気な笑顔を思い出す。

2度にわたって、凌牙たちにドン・サウザンドと自分たちの過去に関して話すチャンスがあった。

しかし、最初は自らの頭に血が上っていたこと、2度目が状況が原因で話すことができなかった。

いや、話したとしてもドン・サウザンドの力は自分の想像をはるかに超えている。

それに対する対策も万全だろう。

(バリアン…七皇か…)

眠りの中で、蓮はバリアンとしての記憶だけでなく、自分が消えた後の凌牙達の動きも知った。

自身が人間に生まれ変わった後、凌牙達7人は自らをバリアン七皇と名乗った。

それは蓮が行方不明になったこともあるが、ベクター以外のそれぞれが1人も犠牲になることなく化された使命を果たすという意思を示したものだ。

そして、そのあとすぐにベクターは…。

(凌牙…璃緒…俺はバリアン世界とか人間世界とかどうでもいいんだ…。俺にはお前たちと仲間の方が大事なんだ…)

 

「う…うう…」

紫色の空間の中で凌牙は目を覚ます。

体中を縛っている黒い触手がギラグの罠にはまったことを伝える。

ダメージが大きかったためか、姿は人間に戻っている。

「この呪縛の強さ…ドン・サウザンドの力?なぜギラグが…??」

呪縛を解こうともがく凌牙の前に映像が現れる。

その映像から、バリアン世界の王の間の光景が見える。

「よお…待っていたぜ」

玉座で偉そうに座ったままのベクターの前にドルベと璃緒が現れる。

「ベクター!?」

「なぜここに…」

「どうやら俺たちの力を一つにするときが来たようだな」

「何を言っている!?我々の力はすでに1つとなっている」

その証拠こそが凌牙が創造した《RUM-七皇の剣》だ、と続けようとした。

しかし、ベクターが言う意味の1つとドルベのそれは大いに異なっている。

「分かってねえなあ。お前たちをぶった押してその魂ごと力をもらうんだよ!分かった!?」

「私たちを倒して、魂ごと力を得るですって!?」

「そんなことができると思っているのか!?」

「メラグ!ドルベ!!」

2人がここに来ることは分かっていた。

だが、なぜベクターがそこにいるかはわからなかった。

しかし、彼の口調から理解できたことは1つだけある。

それは、ギラグを介して自分を罠にはめたのがベクターであるということだ。

「できるのさ!!なぜなら俺はドン・サウザンドの力を俺の中に蘇らせたんだからなあ!!」

ベクターの体からドン・サウザンドのオーラが現れる。

そのオーラはベクターの笑い声と共に巨人の姿に変化する。

「あれは…!!」

(我はドン・サウザンド。バリアン世界の創造主)

「ベクターがドン・サウザンドを蘇らせていただと!?」

(我が僕よ、時が来た。今こそ我が糧となり、我が力となるがよい)

「バカな!?あなたがバリアンの神であるならば、なぜ我らを…!?」

神は善良な存在だと誤解する人々が多い。

キリストやアッラー、お釈迦様を全量ととらえるのは間違いではない。

しかし、日本の神の多くが祟り神であるように、善良でない存在もある。

ドン・サウザンドは祟り神、鎮める術のない祟り神なのだ。

「それがそなたたちの運命だからだ。我の力を取り戻すために選ばれた魂、それが七皇とホーク。すでに我の中にはホークの力が宿っている」

「そ…そんな…では、我ら七皇は…」

「そうさ。お前らは最初からドン・サウザンドのえさなんだよ!!」

七皇の使命はまやかし、ドン・サウザンドの生贄となることこそが本当の使命。

バリアン世界を守ることこそ使命と思い続けてきたドルベは落胆するが、璃緒は毅然としている。

「お前も七皇の1人!我々同様!!」

「違うんだよ!俺はドン・サウザンドと一体となった!!俺は…神だーーーーー!!!」

オーラが消え、ベクターの力が増幅されていく。

「はははははは!!力が…力がみなぎってくるぜーーー!!」

狂喜の笑みを浮かべながら、璃緒たちの目の前まで飛び降りてくる。

その時の彼の姿はバリアンの物となっていた。

「く…ここは私に任せて、逃げろメラグ!!」

「でもドルベ…!!」

「君はこのことをほかのみんなに伝えるんだ!!」

それが今の2人にとれるはずだった最善の策だが、その策はすでに封じられている。

「気づいてなかったのか!?アリトもギラグも復活してからずっと俺の手駒だったんだぜ?」

「バカな…!?」

「もっとも、アリトは遊馬に負けて寝返っちまったが。遊馬とアストラルはこっちに向かってるぜ。裏切り者アリトと手と手を携えてなあ…」

「だが、まだ私たちにはナッシュがいる!!」

ミザエルが月へ向かった以上、今2人が頼れるのは凌牙だけ。

その凌牙の現状を把握していなかったことはある意味幸せかもしれない。

「とにかく!!お前らはここで食われるんだ!!にがしゃしねえ!!」

ベクターの体から放たれた赤い波動が玉座の間の周辺にヒビをいれた。

「今のベクターを止めるためには、力を合わせるしかないようね」

「そのようだ…。食われたくなければ、貴様を倒すしかないということか!!」

「なら…やるしかない!!」

2人の姿がバリアンの物へと変わり、腕にはデュエルディスクが現れる。

「「「デュエル!!!」」」

 

ベクター

手札5

ライフ4000

 

璃緒

手札5

ライフ4000

 

ドルベ

手札5

ライフ4000

 

一方、地上世界では…。

「うわあ…参ったなあ…」

「アリト…ギラグ…ドルベ…璃緒…??」

町中に数千の七皇のコピーが出現していた。

「はは…どうする?これ、逃げられそうにないね…」

「ええ。やるしかないわ」

竜司と瑠那がデュエルの準備を整える。

(守って見せるわ…。凌牙が帰ってくるべきこの町を)

(俺たちの持っているナンバーズは万が一の時のための最後の砦。絶対に奪わせない)

 

「このデュエル、バトルロイヤルで行こうぜ!!まずは俺からだ!!ドロー!!」

 

ベクター

手札5→6

 

「俺は手札の《アンブラル・コンダクター》の効果発動!このカードを手札から墓地へ送ることで、デッキからサウザンドと名のつく魔法カード1枚を手札に加えることができる!!」

体の右半身が人で左半身が骸骨となっているオーケストラの指揮者のような衣装をした白髪の老人が現れ、ベクターにカードをもたらした。

 

アンブラル・コンダクター

レベル2 攻撃1000 守備0 効果 闇属性 悪魔族

このカードを手札から捨てて発動する。自分のデッキから「サウザンド」と名のついた魔法カードを1枚選択し、手札に加える事ができる。

 

 

「はははははー!来ちゃったぜーお楽しみのカードがなあ!!」

このカードが璃緒、凌牙、ドルベを地獄へ送る。

心身ともにじっくりと、一方的にいたぶることを可能にする最低なカードだ。

「俺は手札から永続魔法《ドン・サウザンドの玉座》を発動!!」

ベクターの背後にドン・サウザンドの姿を模した玉座が現れ、ベクターは再び偉そうに片肘をついて座った。

「こいつに座ってのんびり相手したいところだが、それではさすがに失礼だ。だから俺はこのカードを俺に装備だ!!」

宣言と同時に玉座が見る見るうちにベクターに取りつき、彼の体がドン・サウザンドに近くなっていく。

それと同時に《ドン・サウザンドの玉座》のテキストが書き換わったことをベクターとドン・サウザンド以外は知らなかった。

「奴め…」

「一体何のつもり!?」

「う…何だ!?」

凌牙にはテキスト変化と同時に体に異変が起こった。

何かが自分の心臓に入ってきて、そこから血を奪っていくような感覚だ。

「俺は手札の《アンブラル・ゴースト》の効果を発動!このターンの通常召喚を放棄する代わりに、こいつと手札に存在するレベル4以下の悪魔族モンスター1体を特殊召喚できる。俺は《アンブラル・ゴースト》と《シャーマン》を特殊召喚!!」

黒い煙と共に茶色い布きれを身のつけた長髪のゴーストが現れる。

ゴーストと呼ばれるように、実体はなく、真っ黒な中身からはっきり見えるのは3つの眼だけだ。

そして、《アンブラル・ゴースト》とともに現れたのは不気味なタトゥーを全身に刻んでいる灰色の肌で人骨でできた杖、そして魔力がこもった布でできた腰巻だけを装備したシャーマンだ。

よくみると、彼の左手は右手のような形をしていて、更に不気味さが深まっている。

 

アンブラル・シャーマン レベル1 攻撃900

アンブラル・ゴースト レベル2 攻撃200

 

「更に《アンブラル・シャーマン》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、墓地にそんザウス瑠アンブラルと名のつくモンスター1体を特殊召喚し、このカードのレベルを特殊召喚したモンスターと同じにできる!!」

両手に人差し指に存在するあまりにも長く伸びすぎている爪で自らのタトゥーをなぞると、墓場から《アンブラレル・コンダクター》が現れた。

 

アンブラル・コンダクター レベル2 攻撃1000

アンブラル・シャーマン レベル1→2 攻撃900

 

アンブラル・シャーマン

レベル1 攻撃900 守備0 効果 闇属性 悪魔族

このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、自分の墓地に存在する「アンブラル」と名のついたモンスター1体を選択し、自分フィールド上に表側表示で特殊召喚し、このカードのレベルをこの効果で特殊召喚したモンスターのレベルと同じにする。

このカードはシンクロ召喚の素材とすることができない。

 

「俺はレベル2の《アンブラル・ゴースト》、《シャーマン》、《コンダクター》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!現れろ、No.96!!漆黒の闇からの使者、《ブラック・ミスト》!!」

 

No.96ブラック・ミスト ランク2 攻撃100

 

「そしてぇ…《ブラック・ミスト》!!お前の本当の姿を見せてくれ!!」

《No.96ブラック・ミスト》のゼリーのような肉体が変化していき、黒いアストラルとなる。

「あれは…!?」

ドルベは《No.96ブラック・ミスト》の本当の姿を見たことがない。

それだけに、アストラルそっくりとなったそのモンスターに驚きが隠せなかった。

「ドルベ、お前は初対面だったな。こいつはかつてアストラルを1度は葬ったNo.96!!」

ドルベだけでなく、面識のある凌牙と璃緒も今のその姿に驚きが隠せなかった。

その姿は首と関節部分が輪で繋げられているマリオネットのようなものだったからだ。

「お前は…No.96と手を組んでいたんじゃ…!?」

そう、遺跡を巡る旅をしている間、ドン・サウザンドをおのれの心臓に宿して復活したベクターは自らをボロボロにした遊馬に逆恨みをしていた。

そして、アストラルを倒したいというNo.96と互いの利害が一致して協力体制に入ったのだ。

だが、今のNo.96はどう見てもベクターの傀儡にしか見えなかった。

「ああ…そうだ。だが、96がアストラルと刺し違えた後、奴が残した力は俺が頂いたのさ!!それでいまやこいつは俺の操り人形ってやつさ。お前らもいずれ、俺に食われてこうなるのさ!!」

その言葉を聞き、璃緒に鳥肌がたった。

下劣、残忍、裏切り者、最低。

その言葉でも表現できないくらいの吐き気のする悪を持つベクターの傀儡となることは死ぬことよりも屈辱的だ。

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド。バトルロイヤルじゃあ、すべてのプレイヤーは1ターン目は攻撃できねえからなあ」

 

ベクター

手札6→2

ライフ4000

場 No.96ブラック・ミスト(オーバーレイユニット2) ランク2 攻撃100

  ドン・サウザンドの玉座(テキスト改変)(永続魔法)

  伏せカード1

 

璃緒

手札5

ライフ4000

場 なし

 

ドルベ

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「絶対にお前に負けられない!ナッシュのためにも!!私のターン、ドロー!」

 

璃緒

手札5→6

 

「このカードは相手の場にのみモンスターが存在するとき、特殊召喚できる。《リチュア・フラッグ》を特殊召喚!!」

璃緒の場に《リチュアの儀水鏡》を模した旗を掲げた黒い衣の魔導士が現れる。

その顔の左半分は儀式の影響で焼けただれていて、右側の眼は義眼になっている。

 

リチュア・フラッグ レベル4 攻撃1100

 

「この効果で特殊召喚に成功した時、私はデッキからリチュアと名のつくカード1枚を手札に加えることができる!私はデッキから《リチュア・チェイン》を手札に加え、そのまま召喚!」

緑色で、魚と人間を組み合わせたようなモンスターが現れると、同時に装備している鎖で璃緒のデッキのカードを3枚飛ばした。

 

リチュア・チェイン レベル4 攻撃1800

 

「このカードの召喚に成功した時、デッキトップから3枚のカードをめくり、その中から儀式モンスターか儀式魔法を1枚相手に見せて手札に加え、それ以外のカードは好きな順番でデッキの上に戻す!!」

璃緒はカードを手札に加えることなくカードをデッキに戻す。

これで、璃緒は3枚だけ何が手札に加わるか把握することができた。

 

リチュア・フラッグ

レベル4 攻撃1100 守備1000 効果 水属性 魔法使い族

このカードは通常召喚できない。

このカードは自分フィールド上にモンスターが存在せず、相手フィールド上にモンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる。

この効果で特殊召喚に成功した時、自分はデッキから「リチュア」と名のつくカードを1枚選択して手札に加えることができる。

 

「私はレベル4の《リチュア・チェイン》と《フラッグ》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!現れろ、《No.103神葬零嬢ラグナ・ゼロ》!!」

 

No.103神葬零嬢ラグナ・ゼロ ランク4 攻撃2400

 

「うーん…さっそく可愛い娘ちゃんのお出ましかあ…」

《No.96ブラック・ミスト》がいるためか、オーバーハンドレッドナンバーズが先に出されてもベクターは余裕な表情だ。

「私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ベクター

手札2

ライフ4000

場 No.96ブラック・ミスト(オーバーレイユニット3) ランク2 攻撃100

  ドン・サウザンドの玉座(テキスト改変)(永続魔法)

  伏せカード1

 

璃緒

手札6→4

ライフ4000

場 No.103神葬零嬢ラグナ・ゼロ(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃2400

 

ドルベ

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「ベクター、我ら2人の力を見せてやる!私のターン、ドロー!!」

 

ドルベ

手札5→6

 

「私は《光天使ウィングス》を召喚!このカードの召喚に成功した時、手札から光天使と名のつくモンスター1体を特殊召喚できる!私はその効果で、《光天使スケール》を特殊召喚!」

紫が基調で、金色のラインのある翼と黄金で天秤の形をしたモンスターが現れる。

 

光天使ウィングス レベル4 攻撃1200

光天使スケール レベル4 攻撃1500

 

「更に《光天使スケール》の特殊召喚に成功した時、手札から光天使と名のつくモンスター1体を特殊召喚できる!私はさらに《光天使ソード》を特殊召喚!」

5本の剣で構成された金色のラインのあるモンスターが現れる。

中央の剣の鍔部分には人面を模した紋章がある。

 

光天使ソード レベル4 攻撃1400

 

「私はレベル4の《光天使ウィングス》、《スケール》、《ソード》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!光の使いよ、今、悠久の時を超え、輝きの衣をまといて、かの地に降臨せよ!《No.102光天使グローリアス・ヘイロー》!!」

 

No.102光天使グローリアス・ヘイロー ランク4 攻撃2500

 

これで、璃緒とドルベの場に自らのオーバーハンドレッドナンバーズが並ぶ。

そして、休む間もなく2人は連携攻撃を開始する。

「《グローリアス・ヘイロー》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手モンスター1体の攻撃力を半分にし、その効果を無効にする!!」

《No.00ガスタの魔剣士ユウ》の上を行く効果を持つ光の矢が傀儡である《No.96ブラック・ミスト》の胸を貫いた。

 

No.96ブラック・ミスト ランク2 攻撃100→50

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・光天使ウィングス

 

「ちっ…!!」

光の矢に力を奪われた自らの傀儡にベクターは舌打ちをする。

《No.96ブラック・ミスト》にはオーバーレイユニットを使うことで、戦う相手モンスターの攻撃力の半分を奪い取る力がある。

3体ものモンスターを使い、せっかく呼び出したにもかかわらず、これではすぐに退場となってしまう。

計算の範囲内とはいえ、少しでもライフをこのカードで削りたかったのがベクターの本音だ。

「私は《ラグナ・ゼロ》の効果を発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除き、元々の攻撃力とは異なる攻撃力を持つ相手モンスター1体を破壊し、デッキからカードを1枚ドローする!ガイダンス・トゥ・フューネラル!!」

手持ちの刃にオーバーレイユニットを宿した《No.103神葬零嬢ラグナ・ゼロ》は狂い舞いながら、《No.96ブラック・ミスト》を切り裂いた。

「なんだと…!!?」

 

璃緒

手札4→5

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・リチュア・チェイン

 

「そして、私は手札から速攻魔法《ラス・オブ・ホーリーライトニング》を発動!私の場に光天使と名のつくモンスターが存在し、相手モンスターが破壊された時、相手に1000ポイントのダメージを与える!」

質量をもった光の光線がベクターを吹き飛ばした。

「うわああああ!!」

 

ベクター

ライフ4000→3000

 

ラス・オブ・ホーリーライトニング(アニメオリカ)

速攻魔法カード

自分フィールド上に「光天使」と名のついたモンスターが存在する場合、相手モンスターが破壊された時に発動できる。

相手ライフに1000ポイントダメージを与える。

 

「どうだベクター!!」

「我ら2人の連携!」

「く…ふざけやがって…!!」

腹部の痛みをこらえながら、ベクターは立ち上がる。

この後回復できるとはいえ、2人に先制されてしまったことはベクターにとって気に入らないことだ。

「そして私はカードを1枚伏せ、ターンエ…」

「おっと待った!!罠発動!《屍の合星》!!俺の場のナンバーズが破壊されたターンのエンドフェイズ時に発動し、エクストラデッキからランク4以下の闇属性・悪魔族エクシーズモンスター1体を選択!そのモンスターの召喚に必要な数の闇属性モンスターを復活させ、そいつらでそのモンスターを素材にエクシーズ召喚を行う!!」

墓穴から《アンブラル・シャーマン》、《アンブラル・ゴースト》、《アンブラル・コンダクター》の抜け殻が現れ、オーバーレイネットワークに取り込まれていく。

「エクシーズ召喚!現れろ、No.43!死者の眠りを妨げる冒涜の化身。《魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》!」

三日月のような形の赤い角を左右非対称に着け、3本の手の指1本1本から赤い糸がある漆黒の悪魔が現れる。

腕と頭、肩以外は紫色の霧で、左わき腹にはそのモンスターの番号が刻まれている。

 

No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター ランク2 攻撃0

 

屍の合星(アニメオリカ)

通常罠カード

自分フィールド上の「No.」と名のついたモンスターが破壊されたターンのエンドフェイズ時に、自分のエクストラデッキのランク4以下の闇属性・悪魔族エクシーズモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターのエクシーズ召喚に必要な素材の数だけ自分の墓地から闇属性モンスターを特殊召喚し、選択したモンスターのエクシーズ召喚を行う。

この時、自分の墓地から特殊召喚したモンスターのレベルは、このエクシーズ召喚の条件と同じレベルとして扱う。

 

「ベクター…一体何を!?」

「ははははー!更に永続魔法《ドン・サウザンドの玉座》の効果発動!互いのターンのエンドフェイズごとにそのターンに受けたダメージ分、俺のライフが回復する!」

ベクターの体が宙に浮かび、赤い光に包まれる。

そして、体中から触手が伸びるとどこからか赤いエネルギーを吸いだし、ベクターに送り届ける。

それと同時に、凌牙を拘束していた触手も赤く光り始める。

「う…うわあああ!!(な…なんだ!?この全身から血を搾り取られるような感覚は…!?)」

「はははは!!力がみなぎるぜえ!(ナッシュ、ごちそうさん。お前のおかげでこの玉座は最高のカードになってるぜ…)」

本来の《ドン・サウザンドの玉座》は相手のエンドフェイズごとに自分が戦闘ダメージを受けた回数×500ポイント回復するという物だった。

しかし、凌牙の力を縛り取ることが可能になったことでテキストがこのように書き換わったのだ。

 

ベクター

ライフ3000→4000

 

回復を終え、無傷になったベクターは地に降りると、反撃を開始する。

「ここで《ソウル・マリオネッター》の効果発動だ!1ターンに1度、俺のライフが回復した時、その数値分攻撃力をアップさせ、更にそれと同じ数値分のダメージを相手に与える!!俺が受けた1000ポイントのダメージをそっくりそのまま返してやるぜ…メラグ!!」

「な…!?」

「リザルトコンバート!!」

《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》の口からカメレオンのような長い舌が現れ、それが璃緒をたたきつけた。

「あああああ!!」

 

璃緒

ライフ4000→3000

 

 

 

ベクター

手札2

ライフ4000

場 No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター(オーバーレイユニット3) ランク2 攻撃0→1000

  ドン・サウザンドの玉座(テキスト改変)(永続魔法)

 

璃緒

手札5

ライフ3000

場 No.103神葬零嬢ラグナ・ゼロ(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃2400

 

ドルベ

手札6→2

ライフ4000

場 No.102光天使グローリアス・ヘイロー(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃2500

  伏せカード1

 

 

「メラグ!!」

「大丈夫…このくらい…」

ナンバーズによるものか、それともベクターとドン・サウザンドによるものか、今までのデュエルよりも削られたライフに対する肉体へのダメージが大きい。

しかし、再起不能になるには程遠いものだ。

「そうそう、このくらい耐えてくれねえとなあ」

ダメージを回復し、それを引き金に攻撃力増加と効果ダメージというコンボ。

下手に攻撃すれば、大きなしっぺ返しが来る。

そして、凌牙の力を奪い取り、弱らせる。

ベクターにしかできないあまりにも極悪な戦術だ。

「奴を倒すには、1ターンで奴のライフを0にするしかない」

「この俺を倒すだと?神に等しいこのベクター様によお!俺のターン、ドロー!!」

 

ベクター

手札2→3

 

「俺は手札から速攻魔法《ナンバーズ・インスタントバリア》を発動!このターンのみ、相手の場に存在するナンバーズ1体の効果を無効にする!そして、このカードの発動の際に相手はカード効果を発動できねえ!」

《No.103神葬零嬢ラグナ・ゼロ》の効果は相手ターンにも発動できる。

そのカードで妨害できる時間は1ターンのみだが、ベクターにとってはそれだけで十分だった。

 

ナンバーズ・インスタントバリア

速攻魔法カード

相手フィールド上に表側表示で存在する「No.」と名のつくエクシーズモンスター1体を選択して発動する。

選択されたモンスターの効果をエンドフェイズまで無効にする。

このカードの発動に対して、相手は魔法・罠・効果モンスターの効果を発動できない。

「ナンバーズ・インスタントバリア」は1ターンに1度しか発動できない。

 

「そして俺は手札から魔法カード《エクシーズ・トレジャー》を発動!その効果で、俺は場に存在するエクシーズモンスターの数だけカードをドローする!!」

 

ベクター

手札3→2→4

 

「俺は《ソウル・マリオネッター》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、墓地に存在する俺のナンバーズ1体を装備する!」

オーバーレイユニットを捕食した《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》は墓場から《No.96ブラック・ミスト》を取り出し、指にある赤い糸で操り始めた。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・アンブラル・シャーマン

 

「そして俺は《ソウル・マリオネッター》で《グローリアス・ヘイロー》を攻撃!!」

「バカな!!?」

動揺するドルベをよそに、《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》の眼から赤い光線が放たれる。

《No.102光天使グローリアス・ヘイロー》手に持つ弓を回転させ、それを跳ね返すと、《No.96ブラック・ミスト》が盾となった。

「何!?」

「《ソウル・マリオネッター》はナンバーズを装備している限り破壊されない!そして、手札から速攻魔法《自虐の宝札》を発動!俺がダメージを受けたとき、さらに1000ポイントのダメージを受け、デッキからカードを1枚ドローする!うわあああ!!」

発動し、カードをドローした瞬間、ベクターは足元に起こった爆発で吹き飛ばされた。

 

ベクター

ライフ4000→2500→1500

 

自虐の宝札(アニメオリカ・調整)

速攻魔法カード

自分へのダメージが発生した時に発動できる。

自分は1000ポイントのダメージを受ける。

その後、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

「そして俺はカードを3枚伏せ、ターンエンド!ひひひ…ここで再び《ドン・サウザンドの玉座》の効果発動!!」

ダメージが多くなったためか、さらに大量の力が凌牙から強引に搾り取られていく。

「うわあああああ!!」

 

ベクター

ライフ1500→4000

 

「はははははは!!続いて《ソウル・マリオネッター》の効果発動!!またまた攻撃力がアップだ!!」

 

No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター ランク2 攻撃1000→3500

 

わずか2ターンで、ベクターは攻撃力が0の雑魚モンスターに破壊耐性と圧倒的な攻撃力を与えることに成功した。

しかし、まだベクターの攻撃は終わらない。

「そして俺が受けたダメージを同じ、2500のダメージを受けてもらうぜ!!」

ベクターはタイムサービスで出せれた数多くの商品を眺めるような目で璃緒とドルベを見る。

効果を使う相手は最初から決めているにもかかわらずだ。

「ひひひひ!!今度もメラグ!!リザルトコンバート!!」

再び《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》の舌が璃緒を襲い掛かった。

「ああああああ!!」

「メラグーーーーー!!!」

傷ついていく璃緒を今の凌牙は見ていることしかできなかった。

 

ベクター

手札4→1

ライフ4000

場 No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター(《No.96ブラック・ミスト》装備 オーバーレイユニット2) ランク2 攻撃3500

  ドン・サウザンドの玉座(テキスト改変)(永続魔法)

  伏せカード3

 

璃緒

手札5

ライフ3000→500

場 No.103神葬零嬢ラグナ・ゼロ(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃2400

 

ドルベ

手札2

ライフ4000

場 No.102光天使グローリアス・ヘイロー(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃2500

  伏せカード1

 

「いいザマだーーー!!いつもお高く泊まっていたお前がズタボロだー!!」

「なぜメラグばかりを!?」

「ムフフフフーーー!!」

ドルベの肩をかり、ゆっくりと璃緒が起き上がる。

その眼にはベクターに対する憤怒の色が宿っている。

「いいよ。その眼だよその眼。痛ぶり甲斐があるってもんだ!!」

「ベクターーーーー!!」

もはや凌牙はベクターを七皇としてではなく、殺すべき相手ととらえていた。

「メラグ…。お前のライフは残り500。あと少しで今度こそお前を地獄へ送ってやるぜー」

「今度こそ…?」

ベクターの言葉に璃緒が疑問に思う。

まるで、1度殺そうとして失敗したかのような物言いだからだ。

「あ?お前まだ思い出してねえのか?じゃあ教えてやるよ。今明かされる衝撃の真実!!ジャンジャジャーン!!メラグー。バリアン世界でお前とナッシュを殺したのはー、この俺だ!!」

衝撃の発言に、3人は衝撃を受けた。

 

「そうだ…。あいつは璃緒と凌牙を…」

蓮は眠りの中で知った衝撃の真実を思い出す。

それは、ベクターが璃緒と凌牙をバリアン世界で殺したことだ。

理由はあまりにもシンプルなもので、気に入らなかったというだけだ。

しかし、死んだ2人を救ったのはアビスで、彼の力でバリアンとしての記憶と引き換えに人間世界で復活を遂げたのだ。

夢の中で蓮と璃緒が出会ったのも、前世で彼女との結びつきが凌牙よりも強かった影響によるものだ。

(嫌な予感がする…。急がねえと…!!)

 

「バトル!《セイクリッド・ルナマリア》でダイレクトアタック!!ムーン・シュート!」

《No.23セイクリッド・ルナマリア》の矢がアリトのコピーを破壊した。

しかし、1人倒したとしてもコピーはまだまだ残っている。

「バリアンも本気…みたいだね」

「ええ。けれど、力はオリジナルに劣るわ。倒せない相手じゃない」

「そりゃそうか。じゃあ、俺も頑張らないとなー!俺は《RUM-チャリオット・フォース》を発動!!」

《No.18ジェムナイト・アゲート》がオーバーレイネットワークに取り込まれていく。

「このカードは俺の場のランク4以下のエクシーズモンスター1体をカオス化する!カオスエクシーズチェンジ!!現れろ、CNo.18!!大地の力宿りしジェムナイトの王者!!《ジェムナイトマスター・アゲート》!!」

色彩は《No.18ジェムナイト・アゲート》と変わらないものの、倍近く大きくなり、両肩に盾、右手に槍、左手に大砲のような形の銃を装備したモンスターが現れる。

 

CNo.18ジェムナイトマスター・アゲート ランク5 攻撃3300

 

「更に、《チャリオット・フォース》の効果でエクシーズ召喚されたモンスターの攻撃力は1000ポイントアップする!!」

 

CNo.18ジェムナイトマスター・アゲート ランク5 攻撃3300→4300

 

「そして、《マスター・アゲート》は1ターンに1度、カオスオーバーレイユニットを1つ取り除くことで相手モンスターすべてに1回ずつ攻撃できる!!」

カオスオーバーレイユニットが砕けた瞬間、《CNo.18ジェムナイトマスター・アゲート》は槍と大砲を合体させ、大剣にした。

「いっけーーー!!!《マスター・アゲート》!!アゲート・クリスタルブレイク!!」

《CNo.18ジェムナイトマスター・アゲート》の大剣の刃が魔力によって大幅に伸びる。

そして、それを振るった瞬間、周囲にいた多くのオーバーハンドレッドナンバーズが切り裂かれ、それと同時にコピーも消滅していった。

 

CNo.18ジェムナイトマスター・アゲート

ランク5 攻撃3300 守備3000 エクシーズ 地属性 岩石族

「ジェムナイト」と名のつくレベル5モンスター×4

このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

また、このカードが「No.18ジェムナイト・アゲート」をエクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。

●1ターンに1度、自分のターンのバトルフェイズ開始時に発動できる。

このカードのエクシーズ素材を1つ取り除くことで、このカードはこのターン、相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1階ずつ攻撃することができる。

 

RUM-チャリオット・フォース

通常魔法カード

自分フィールド上に表側表示で存在するランク4以下のモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターと同じ種族でランクが1つ高い

「C」と名のついたモンスター1体を、選択した自分のモンスターの上に重ねて

エクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

また、この効果で特殊召喚されたモンスター1体の攻撃力は1000ポイントアップする。

 

「これで、少しは落ち着いたわね…」

「さっすが俺のカオスナンバーズ!いい働きするなー」

自分のカオスナンバーズを竜司はうれしそうに眺める。

「油断したら駄目よ。まだまだ数があるから…」

「はいはい。でも、このままだと俺たち…」

これ以上は言わないが、2人は連戦によって疲労している。

このまま続ければ、いつ限界が来るかわからない。

しかし、コピーはナンバーズを持つ自分たちだけでなく、街の人々も襲おうとした。

それではナンバーズを持つ自分たちが頑張るしかない。

「さあ…また来るわよ。昼寝をする時間はないわ」

「分かってる。さすがにこの状況で寝るわけにはいかないね!!」

 

衝撃の事実を知り、璃緒の心に悲しみと怒りが立ち込める。

「あの時、人間に転生した私達は神代凌牙、璃緒として遊馬とその仲間たちと会い、絆を深めていった」

自分が手にかけた鉄男もまた、遊馬の仲間だ。

鉄男だけではなく、七皇たちが遊馬を追いかけた際に倒したデュエリストたちも…。

「バリアンとしての使命を思い出し、ナッシュがどれほど苦しんだか!!」

璃緒の眼から涙があふれ出る。

たしかに、ベクターに殺されなければこのような苦しみは無かっただろう。

だが、蓮と永遠に会えなかった可能性もある。

彼女は自分のことよりも遊馬達と敵対せざるを得なくなった凌牙の苦しみに涙したのだ。

「ああ…見ていて愉快だったぜ」

「ベクターーーーーーー!!!!!」

彼女の怒号が部屋中にこだまする。

そして、明確な殺意とともにデッキトップに指を掛ける。

「(ナッシュ…あなたの力、私にかして!!)私のターン、ドロー!!」

 

璃緒

手札5→6

 

「私は手札から《RUM-バリアンズ・フォース》を発動!その効果で私は《ラグナ・ゼロ》でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!現れなさい、CNo.103!時をも凍らす無限の力が今、よみがえる。《神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》!」

 

CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ ランク5 攻撃2800

 

登場と同時に、《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》のオーバーレイユニットの1つ、《アンブラル・ゴースト》がそのモンスターのカオスオーバーレイユニットと化した。

「ベクター…今度は私がお前を生きて戻れぬよう、氷漬けにしてやる!!」

「やれるもんならなあ…。だが、1ポイントでも残したら、《ドン・サウザンドの玉座》で回復する。そして、くらったダメージがそっくりそのままお前を襲う!もう1度この手でお前を地獄へ送れると思うとぞくぞくするぜえ!」

「黙れベクター!我らを裏切った罪、許すことはできん!!」

「ドルベ…ベクターは私がこのてで地獄へ送って見せる。あとのことはお願い…」

「メラグ…」

ドルベは彼女がこれから何をしようとするのかを悟り、やめさせようとした。

しかし、今の璃緒には、憎悪の塊と化した彼女には聞く耳がないことを知っている。

それ故に止めることができなかった。

「私は手札から魔法カード《魔水晶》を発動!このターン、相手モンスターの攻撃力が変化する数値を2倍にする!!」

 

魔水晶(ディストーション・クリスタル)(アニメオリカ)

通常魔法カード

自分フィールド上に水属性モンスターが存在する場合に発動できる。

このターンのエンドフェイズ時まで、相手モンスターの攻撃力の変化は倍になる。

 

「更に私は手札から魔法カード《氷結の剣》を発動!相手モンスター1体の攻撃力を1000ポイントダウンさせる!」

「なんだと!?」

《魔水晶》の効果で、《氷結の剣》の力が増幅され、《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》の攻撃力が一気に2000ポイント失われることになる。

 

No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター ランク2 攻撃3500→1500

 

「く…!やりやがったな!!」

「まだよ!《ラグナ・インフィニティ》の効果発動!1ターンに1度、カオスオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手モンスター1体の攻撃力と元々の攻撃力の差分のダメージを与え、選択したモンスターを除外する!!」

「何!?」

《No.96ブラック・ミスト》を持つ《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》を破壊することはできない。

しかし、除外であれば話は別だ。

「ガイダンス・トゥ・パーガトリィ!!」

カオスオーバーレイユニットを宿した《CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》の三日月の形をした刃が《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》を切り裂こうとした。

「永続罠《王宮の鉄壁》を発動!!これで、お互いにカードをゲームから除外できねえ!!」

「でも、ダメージは受けてもらう」

その刃は《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》を狙うのをやめ、ベクターの胴体を狙い、切り裂いた。

「ぐああああああ!!」

 

ベクター

ライフ4000→2000

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・アンブラル・ゴースト

 

「く…!!だがこのまま攻撃しても俺のライフは残るぜ?」

胴体の傷を抑えながら、ベクターは璃緒を嘲笑する。

「それはどうかしら?《氷結の刃》を発動したターン、《ラグナ・インフィニティ》は2回攻撃することができる!!」

「なんだと!!?」

「ベクター…私とナッシュにしたことを償わせてやる!!まずは私の分!《ソウル・マリオネッター》を攻撃!!」

《CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》が踊りながら鎌を投げ、《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》を切り裂いた。

それと同時にベクターの胴体に再び深い傷ができる。

先程の傷と交差する感じの傷を。

「うわあああああ!!」

 

ベクター

ライフ2000→700

 

氷結の刃(ゼロ・ブレード)(アニメオリカ・調整)

自分フィールド上に表側表示で存在する「No.103」と名のつくエクシーズモンスター1体と相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。

選択した相手モンスターの攻撃力を1000ポイントダウンさせる。

このカードを発動したターン、選択した自分のモンスターは1度のバトルフェイズ中に2度攻撃することができる。

「氷結の刃」は1ターンに1度しか発動できない。

 

攻撃のあまりの衝撃で玉座への階段が砕け、ベクターの左目もつぶれていた。

「《ソウル・マリオネッター》が破壊されなくとも、お前にダメージを与えることはできる!これでお前はおしまいよ!!今度はナッシュの分!!《ラグナ・インフィニティ》で再び《ソウル・マリオネッター》を攻撃!!」

鎌を再び手にした《CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》が再びそれを《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》に向けて投げつけた。

その鎌は不気味な傀儡使いを貫通し、ベクターを真っ二つにしようとする。

「永続罠《ダメージ・ポッド》を発動!俺が受ける戦闘ダメージを無効にする!!」

4つの人面が描かれた紫色の不気味な壺が鎌を吸収してしまった。

そして、《CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》は氷で再び鎌を作り出す。

「残念だったなー。俺のライフをすべて削ることができなくて」

これで、エンドフェイズ時に《ドン・サウザンドの玉座》と《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》の効果を発動すれば、璃緒を倒すことができる。

もう打つ手がないだろうと確信する。

だが、何が起こるかわからないのがデュエルであり現実だ。

「そして、《ドン・サウザンドの玉座》を発動!これで俺のライフは再び4000だ!!」

「うう…ああ…ああーーーー!!!」

再び力を奪い取られていく凌牙だが、彼を助けることができる人物はそこにはいない。

 

ベクター

ライフ700→4000

 

「(ふふふふ…ありがとうよナッシュ)知っていると思うが、《ソウル・マリオネッター》は俺のライフが回復するとき、回復した数値分攻撃力がアップし、さらにその数値分のダメージを与える。俺が受けたダメージは3300。さあメラグちゃーん、再び地獄へ行ってもらおうか!?」

傷がすべて癒えたベクターはとどめを刺そうと効果発動の宣言をしようとする。

(まてベクター!《ラグナ・インフィニティ》が場に存在するのだぞ!?)

(ああ。だが、その効果は1ターンに1度。この状況で発動できるわけが…)

(メラグのデッキにあのカードが入っていることを忘れたか!?)

(…!!)

ドン・サウザンドの警告にベクターがはっとする。

璃緒のデッキには《CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》が存在しなければ発動できないカードがある。

《氷結葬》。

相手の場に存在するモンスターの攻撃力が上がったとき、そのモンスターを除外し、除外したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。

バトルロイヤルルールでは、最初の1人のライフが0になってもデュエルは終了せず、ライフが0になったプレイヤーは発動条件を満たしている場合のみ場や墓地、手札のカードを発動できる。

璃緒のもう1つの狙いは《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》の攻撃力を上げさせること。

《魔水晶》の効果で変化する数値が倍になるため、ここで《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》の攻撃力は6600ポイントアップすることができる。

しかし、もし彼女の手札に《氷結葬》があれば最後。

ベクターが敗北し、ドルベか璃緒のどちらかが生き残ることになる。

「どうしたの?効果を発動しないの?」

「く…てめえ!!」

「どうやら自分が地獄に落ちかかっていたことに気付かなかったようね?」

この言動では、今の璃緒の手札には間違いなくそのカードがある。

今のベクターにはライフ回復だけでこのターンを終わらせることしかできなかった。

 

ベクター

手札1

ライフ4000

場 No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター(《No.96ブラック・ミスト》装備 オーバーレイユニット1) ランク2 攻撃1500

  ドン・サウザンドの玉座(テキスト改変)(永続魔法)

  ダメージ・ポッド(永続罠)

  王宮の鉄壁(永続罠)

  伏せカード1

 

璃緒

手札6→3(うち1枚《氷結葬》)

ライフ500

場 CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ(オーバーレイユニット2) ランク5 攻撃2800

 

ドルベ

手札2

ライフ4000

場 No.102光天使グローリアス・ヘイロー(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃2500

  伏せカード1

 

「お前のコンボは破られた。いくら神を気取ったところで、所詮お前はその程度」

「うるせえ!!虫けらの分際で、知った風な口きいてんじゃねえ!!」

殺そうと思った相手に再び見下されたことで、ベクターの怒りが爆発する。

戦いは勝利を確信した時、敗北となる。

「くっそーーー!!バカにしやがって!!だったら見せてやるよ!またまた明かされる衝撃の真じ2--!!ジャジャジャジャーン!!」

璃緒とドルベの目の前に映像が現れる。

「ナッシュ!?」

「これは…」

その映像には力を搾り取られ、弱りきった凌牙の姿があった。

「ギラグを使って、罠にはめてやったのさ」

「貴様!!何のためにこんな真似を!?」

「あいつはボロボロ。俺はピンピンしている。何度もライフを回復させてもらってなあ!!」

その言葉で、2人は知ってしまった。

ベクターは凌牙から力を奪い、回復を続けていたことを。

このことが意味することはただ1つ、自分たちの攻撃によって、凌牙が傷ついてしまったということだ。

「そんな…」

ショックを受けた璃緒は力なく膝を折る。

そして、ドルベの心にはベクターへのすさまじい殺意が目覚める。

「なんという卑劣な!!」

「ハハハハハハ!!てめえらの苦しむ顔を見るとたまんねえぜ!!」

「魂までも腐りきったか!?私のターン、ドロー!!」

 

ドルベ

手札2→3

 

「私はメラグの場の《ラグナ・インフェニティ》の効果を発動!ガイダンス・トゥ・パーガトリィ!!」

《CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》はオーバーレイユニットを宿した鎌を振り回し、《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》を切り裂く。

その表情は心なしか復讐心を満足させることへの狂喜に満ちていた。

「うわあああ!!」

 

ベクター

ライフ4000→2500

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・リチュア・フラッグ

 

「だ…だが、《王宮の鉄壁》の効果で《ソウル・マリオネッター》は除外されねえ!!」

「そして私は手札から《RUM-バリアンズ・フォース》発動!その効果で私は《グローリアス・ヘイロー》でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!来るがいい、《CNo.102光堕天使ノーブル・デーモン》!!」

 

CNo.102光堕天使ノーブル・デーモン ランク5 攻撃2900

 

《RUM-バリアンズ・フォース》の更なる効果によって、《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》の最後のオーバーレイユニットである《アンブラル・コンダクター》がカオスオーバーレイユニットと化した。

「ベクター!今の貴様を倒すたった1つの術はこれだ!!《ノーブル・デーモン》の効果発動!1ターンに1度、カオスオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手モンスター1体の攻撃力を0にし、効果を無効にする!!」

《CNo.102光堕天使ノーブル・デーモン》の両翼から放たれた光線を受けた《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》はその力を消失させた。

これで、ベクターの回復によるコンボが完全に破たんした。

 

No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター ランク2 攻撃1500→0

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・アンブラル・コンダクター

 

「なんだと!?」

「これで、お前が受ける戦闘ダメージは2900。ドン・サウザンドと共に地獄へ落ちるがいい!!《ノーブル・デーモン》で《ソウル・マリオネッター》を攻撃!!!」

《CNo.102光堕天使ノーブル・デーモン》は槍を《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》に向けて投擲する。

そして、投げた瞬間に現れた2体の堕天使と融合し、光の矢へと変化し、さらにスピードを上げる。

まるで、ベクターに避けられまいとするかのように。

(いまだベクター!!)

「永続罠《イービル1》発動!俺の場のモンスターが相手モンスターと戦闘で発生するダメージによって俺のライフが0になる場合に発動し、その戦闘で俺のモンスターは破壊されず、俺が受ける戦闘ダメージは俺のライフ-100ポイントの数値になる!うぐう…!!」

矢を胸に受けたベクターは苦しげに膝を地につけるが、なんとか生きながらえていた。

 

ベクター

ライフ2500→100

 

「はあ…はあ…危ねえ危ねえ、もう少しで地獄行だったぜ」

「く…!まだそのようなカードを…」

必殺の一撃が交わされてしまった。

もはや、ドルベの手札にはこれ以上追撃できるカードがない。

たった100ポイントのライフ。

だが、今の彼にはあまりにも遠かった。

「さあ、早くターンエンドしろよ」

「私は…手札から装備魔法《メテオストライク》を《ラグナ・インフィニティ》に装備。ターンエンド…」

「この瞬間、《ドン・サウザンドの玉座》の効果発動!!」

再び凌牙から力を奪い、自らの傷をいやすベクター。

そして璃緒とドルベは苦しむ凌牙の姿を見ることになってしまった。

「うわあああ!!」

「「ナッシュ!!」」

「これがてめえらの頑張った結果だ」

 

ベクター

手札1

ライフ100→4000

場 No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター(《CNo.102光堕天使ノーブル・デーモン》の影響下   《No.96ブラック・ミスト》装備) ランク2 攻撃0

  ドン・サウザンドの玉座(テキスト改変)(永続魔法)

  ダメージ・ポッド(永続罠)

  王宮の鉄壁(永続罠)

  イービル1(永続罠)

 

璃緒

手札3(うち1枚《氷結葬》)

ライフ500

場 CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ(《メテオストライク》装備 オーバーレイユニット1) ランク5 攻撃2800

 

ドルベ

手札3→1

ライフ4000

場 CNo.102光堕天使ノーブル・デーモン(オーバーレイユニット3) ランク5 攻撃2900

  伏せカード1

 

しかし、ベクターもここまで2人が追いつめてくるというのは予想外だった。

《イービル1》がなければ、確実にやられていたからだ。

そんなベクターだが、もう場にはアストラル曰く、勝利の方程式が出来上がっている。

「俺のターン、ドロー!!」

 

ベクター

手札1→2

 

「俺はメインフェイズ1開始時に《イービル1》の効果を発動!このカードを墓地へ送ることで、場に存在するカードを2枚まで墓地へ送る!!」

「何!?」

「けど、この効果を使うと強制的にターンが終わってしまうんだよなー。さてさて、どいつを墓地へ送りますかねえ」

不気味な笑みを浮かべ、ふざけきっているベクター。

良からぬことをたくらんでいる証拠だ。

「俺が墓地へ送るのは《ダメージ・ポッド》と《ノーブル・デーモン》だ!!」

上空から紫色の眼が現れ、それを中心に暗黒空間が現れる。

《CNo.102光堕天使ノーブル・デーモン》は暗黒空間に吸収され、粉みじんに砕かれる。

《ダメージ・ポッド》はひびが入るが、いつまでたっても暗黒空間に吸収されない。

「こいつが場から離れたとき、吸収したダメージがすべてのプレイヤーを襲う!!それでメラグは地獄行ー、俺とドルベは無事ー!ウヒヒヒヒー!あばよ、メラグーー!!」

《ダメージ・ポッド》が爆発寸前まで向かっている。

「(メラグ…)カウンター罠《白き盾》発動!!このカードはこのターン発生するダメージをすべて無効にする!!」

《スフィア・フィールド》によく似た空間が《ダメージ・ポッド》を抑え込んだ。

「な…何だと!?」

「そして、私の墓地に存在する天使族モンスター1体の攻撃力を場に存在するモンスター1体に加える。私は《ノーブル・デーモン》の力を《ラグナ・インフィニティ》に託す!!」

 

CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ ランク5 攻撃2800→5700

 

ダメージ・ポッド(アニメオリカ)

永続罠

戦闘ダメージが発生した時に発動できる。

その戦闘ダメージを0にする。

その後、このカードがフィールド上から離れた時、このカードの発動時に発生した戦闘ダメージと同じ数値分のダメージをお互いのライフに与える。

 

イービル1(アニメオリカ・調整)

自分フィールド上のモンスターが相手モンスターと戦闘を行い、自分のライフポイントが0になる場合にのみ発動できる。

その戦闘ではモンスターは破壊されず、その戦闘ダメージはそのダメージを受けるプレイヤーのライフポイント-100の数値になる。

自分のメインフェイズ開始時に、このカードを墓地へ送る事で、フィールド上のカード2枚を選択して墓地へ送る。

その後、このターンのエンドフェイズとなる。

 

(攻撃力5700、そして《メテオストライク》による貫通効果があれば…。ドルベ、これで次のターンで私は…)

すると、急にドルベは腕をゆっくり降ろす。

「メラグ…お別れだ」

「な…何を言っているの!?」

「《白き盾》を発動したターンのエンドフェイズ、私は敗北する」

ドルベの代名詞たる強力な《白き盾》の恐るべき代償。

このカードを使わず、璃緒を見捨てれば、ドルベはまだ戦うことができた。

しかし、今の彼には自分が助かるよりも仲間が犠牲になるのがつらかったのだ。

「そんな!!ドルベ!!」

「ムフフー!」

ベクターの笑みはドルベの覚悟への侮辱でしかない。

しかし、ドルベはそれを意に介さず、璃緒に自身の思いの丈を伝える。

「すまない、メラグ。非力な私を許してくれ。私にとって君たちはかけがえのない存在。人間として、バリアンとして、2つの世界で出会えたことを幸せに思う。勝つんだ!!メラグ!!」

その言葉を最後に、ドルベの場に大爆発が起こり、彼は吹き飛ばされていく。

「ドルベーーーー!!」

 

ドルベ

ライフ4000→0

 

白き盾(セイント・シールド)(アニメオリカ・調整)

カウンター罠カード

自分にダメージが発生した時にのみ発動できる。

このターン発生する効果ダメージと自分に発生する戦闘ダメージを0にする。

フィールド上の天使族モンスター1体の攻撃力は自分の墓地に存在する天使族モンスター1体の元々の攻撃力分アップする。

このカードを発動したターンのエンドフェイズ時、自分はデュエルに敗北する。

 

「メラグ、ナッシュ…。君たちと出会えて、本当によかった…」

全てを伝えきったドルベは消滅し、彼の魂と思われる白い光がベクターに吸収されていく。

バリアン世界の盾として、自らの生を全うした瞬間だ。

呪縛でも、因縁でもなく、ただ友のために選んだ末路。

その思いは2人に確かに伝わったのだ。

「ドルベーーーーー!!!!」

誰もいない空間の中で、凌牙は涙を流しながら友の死を悼む。

 

「…!!」

バリアン世界に到着した瞬間、蓮はドルベの死を感じ取った。

「ドルベ…バカ野郎が…」

なぜか、彼の脳裏にベクターと対峙する璃緒の姿が映る。

まるで、ドルベが蓮に璃緒を救ってほしいと願ったかのように。

「そこにベクターと璃緒がいるんだな…」

蓮は大急ぎで城へ走っていく。

 

「ドルベ…あなたの思いは決して無駄にはしないわ。あなたが命と引き換えにくれた力で…。ベクター、覚悟なさい!!」

「ひ…ひぃーーーーー!!!」

恐ろしい璃緒の表情にベクターの顔が恐怖で固まっていく。

 

ベクター

手札2

ライフ4000

場 No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター(《CNo.102光堕天使ノーブル・デーモン》の影響下   《No.96ブラック・ミスト》装備) ランク2 攻撃0

  ドン・サウザンドの玉座(テキスト改変)(永続魔法)

  王宮の鉄壁(永続罠)

 

璃緒

手札3(うち1枚《氷結葬》)

ライフ500

場 CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ(《メテオストライク》装備 オーバーレイユニット1) ランク5 攻撃5700

 

「私のターン、ドロー!!」

 

璃緒

手札3→4

 

「私は《ラグナ・インフィニティ》で《ソウル・マリオネッター》を攻撃!!」

《CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》の鎌が白銀に染まっていく。

「この一撃で、お前のライフを砕く!!」

「ひぃーーーーー!!!!」

その手から離れた白銀の鎌は不規則な軌道を描きながら、《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》に接触、大爆発を引き起こした。

(仇は討ったわ。この勝利、あなたの力があったからこそ…)

「はははははは…」

煙の中から、ベクターの笑い声が聞こえる。

「そうはいかねえんだなあ、メラグ!!」

「なぜ…おまえはもうデュエルに敗北して…それに…」

煙が晴れていくと、無傷の《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》、そして《ドン・サウザンドの玉座》が外れたベクターの姿が現れる。

「俺は《ドン・サウザンドの玉座》の効果を発動したのさ。俺の場のナンバーズへの攻撃をこのカードを墓地へ送ることで無効にする!」

「く…!!そんな効果が…」

「まだだ!!さらにそのナンバーズをカオス化させる!!」

《No.43魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》がオーバーレイネットワークに取り込まれていく。

「カオスエクシーズチェンジ!!現れろ、《CNo.43魂魄傀儡鬼神カオス・マリオネッター》!!」

紫色の蜘蛛のような肉体となり、その手から無数の赤い糸を展開させた傀儡使が姿を現す。

腹部の右側に自身の番号が刻まれている。

 

CNo.43魂魄傀儡鬼神カオス・マリオネッター ランク3 攻撃0

 

ドン・サウザンドの玉座(テキスト改変)

永続魔法カード

自分がダメージを受けたターンのエンドフェイズ時、そのターンに受けたダメージの合計分、自分はライフポイントを回復する。

また、自分フィールド上の「CNo.」以外の「No.」と名のついたモンスターが攻撃対象になった時、このカードを墓地へ送る事でその攻撃を無効にする。

その後、その自分のモンスターと同じ「No.」の数字を持つ「CNo.」と名のついたモンスターを、そのモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

「ドン・サウザンドの玉座」は自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

 

「さあ…どうするんだよ?メラグーー」

「…。私はカードを2枚伏せてターンエンド…」

 

ベクター

手札2

ライフ4000

場 CNo.43魂魄傀儡鬼神カオス・マリオネッター(カオスオーバーレイユニット1) ランク3 攻撃0

  王宮の鉄壁(永続罠)

 

璃緒

手札4→2(うち1枚《氷結葬》)

ライフ500

場 CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ(《メテオストライク》装備 オーバーレイユニット1) ランク5 攻撃5700

  伏せカード2

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

ベクター

手札2→3

 

「俺は手札から永続魔法《カースド・カオス》を発動!!俺の場にカオスナンバーズが存在する限り、お前はカードを発動するたびに500ポイントライフを減らさなきゃならねえ!!これで、お前の手は封じたぜ?」

 

カースド・カオス(アニメオリカ・調整)

永続魔法カード

自分フィールド上に「CNo.」と名のついたモンスターが存在しない場合、このカードを破壊する。

このカードがフィールド上に存在する限り、 相手がフィールド上のカードの効果を発動する場合、相手は500ライフポイントを払わなくてはならない。

 

璃緒のライフは500。

これでは、璃緒はもう何もすることができない。

「更に俺は手札から装備魔法《ドン・サウザンドの呪印》を発動!俺の場にカオスナンバーズが存在するとき、相手の場に存在するエクシーズモンスター1体に装備し、そのコントロールを得る!!」

「何!?」

《CNo.43魂魄傀儡鬼神カオス・マリオネッター》の口から放たれた蜘蛛の糸が《CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》を拘束する。

拘束された《CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》の眼が真っ白になり、完全にベクターの下僕と化した。

「そんな…《ラグナ・インフィニティ》が…。…!!」

その瞬間。璃緒の体にも異変が起こる。

急に自分の体から水色の光の球が抜け出て、ベクターに吸収された。

そして、自分の姿が人間の物へと戻っていく。

「そんな…これは一体…!?」

「ああ…。この《ドン・サウザンドの呪印》にはよお、奪ったオーバーハンドレッドナンバーズの持ち主の力もいただけるんだぜ?これで、お前を一方的に痛めつけることができるってわけよ!!」

 

ドン・サウザンドの呪印

装備魔法カード

自分フィールド上に「CNo.」と名のつくモンスターが表側表示で存在する場合にのみ、相手フィールド上の表側表示で存在するエクシーズモンスター1体に装備可能。

装備モンスターのコントロールを得る。

このカードはフィールドから離れたとき、ゲームから除外される。

 

これで、もはや璃緒に打つ手はない。

《CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》の攻撃によって、勝負が決まる。

「やめるんだ…ベクター。俺の命はくれてやる!!だから…やめろーーーー!!!!」

凌牙の懇願する声はむなしく木霊する。

今の彼にとっては璃緒だけが心の支えだった。

再び彼女を守れない自分があまりにも恨めしかった。

「ベクター…」

「さあー、覚悟はできたかーい?」

「く…」

「あばよ、メラグーーーー!!」

《CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》の鎌が本来の主である璃緒に襲い掛かる。

(そんな…これで終わりなの…?凌牙…蓮…)

「頼む…。誰でもいい。遊馬でもカイトでもだれでもいい!!メラグを…璃緒を助けてくれ!!俺のたった1人の家族をーーーーー!!!」

あまりにもはかない、たった1つの願いだった。

しかし、その願いが悲しい形で現実となる。

「璃緒ーーーーー!!」

蓮が玉座の間に飛び込み、璃緒を突き飛ばす。

そして、自身の腹部を鎌が貫いた。

「が…はあ…」

「蓮ーーーー!!!」

「ホーク!!てめえーーー!!」

「ベクター…この賭け、俺の…勝ちだぜ…」

残りの力を振り絞り、自らの手から大量の火球を放った。

火球は次々とベクターに着弾し、爆発と共に周囲が煙に包まれる。

「く…!!また邪魔しやがって!!!」

煙が晴れると、そこには誰もおらず、蓮がいた場所には血だまりが残っていた。

 

璃緒

ライフ500→0

 

「ちっ…!!ホーク…メラグ…どこへ行った!!!?」

(待てベクター。メラグは捨て置け。すでに力は手にしたであろう。あの抜け殻はいつでも始末できよう。それよりもギラグの元へ急げ、良からぬことが起こったぞ)

 

「蓮…蓮…!!」

「うう…璃緒…」

城の近くにある洞窟の中で、出血により意識を失っていた蓮が目を覚ます。

蓮がベクターの視界を封じたおかげで、璃緒の体内に残留した力によりここまで移動できた。

彼の頭は彼女の膝に置かれていた。

「初めてだな…璃緒の膝枕。へへ…ほんの少しだけ侑斗の気持ちがわかった気がするぜ…」

「蓮…。どうして私をかばったの?あなたは遊馬の…」

「璃緒…俺にはどうでもいいんだよ。こんな下らねえ世界も、人間世界も。だが、俺には仲間と…お前と凌牙の方が大事なんだ…」

「蓮…」

璃緒の瞳から涙が零れ落ちる。

「璃緒…。一つ、伝えておきてえことがある…。七皇と俺たちがバリアン世界に転生した理由は…はあはあ…」

「これ以上しゃべらないで、傷が…」

「最後まで聞けよ…。俺たちは…ドン・サウザンドにはめられて、この世界に来ちまったんだ…」

「そ…そんな!!じゃあ、遺跡で見た記憶は…」

「ああ…。察しの通りだ。ガハッ!!」

蓮の口から血がこぼれる。

「蓮!!」

「璃緒…頼みがある…聞いてくれるな…?」

今の璃緒にはうなずくことしかできなかった。

もうすぐ蓮は死ぬ。

そのことを認めたくないが、この出血では助からない。

「こいつを…侑斗に渡してくれ…。俺の魂を…」

愛用のギャンブル道具とデッキを璃緒にそっと差し出す。

彼女は何も言わずにそれを受け取った。

「ああ…それと凌牙を助けたら、これだけ伝えてくれ…この、バカ野郎ってな…」

「蓮…。分かったわ…」

璃緒の眼からどんどん涙が零れ落ちる。

涙はドルベが死んだときに流しつくしたはずだが、今の彼女には流さずにはいられない。

「おいおい…笑ってくれよ。最期くらい、お前のとびっきりの笑顔を見せてくれよ…。そうじゃねえと、安心して…あの世にいけねえぜ…」

「蓮…」

これが、自分が蓮にできるたった1つのこと。

璃緒は涙をふくと、やさしい微笑みを見せた。

「ありがとう…蓮…」

「へへ…。やっぱりな、璃緒には笑顔が一番よく似合…う…」

笑みを浮かべながら蓮は力尽き、その身を消滅させた。

「蓮…。必ず、届けて見せるわ」

預かったものをポケットにしまうと、自分に残った力を確かめる。

人間世界へはいけないが、少なくとも次元を超えて遊馬達が乗っていると思われる飛行船まで行くことはできそうだ。

(凌牙…待っていて。必ず助けに行くから…)

きっと、遊馬達なら協力してくれる。

しかし、裏切り者である自分たちを侑斗達は受け入れてくれるだろうか。

特に自分は蓮の死の原因を作ってしまっている。

不安を抱えながら、璃緒はその洞窟から出て行った。

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