遊戯王ZEXAL 風の戦士たち   作:ナタタク

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侑斗
No.00ガスタの魔剣士ユウ
CNo.00ガスタの魔剣士ユウ・暴風
WNo.00ガスタの魔剣士ユウ・清風
No.49秘鳥フォーチュンチュン
No.50ブラック・コーン号
No.64古狸三太夫
No.74マジカル・クラウン―ミッシング・ソード
No.69 紋章神コート・オブ・アームズ
CNo.69紋章死神カオス・オブ・アームズ

璃緒
No.7ラッキー・ストライプ
No.17リバイス・ドラゴン
No.32海咬龍シャーク・ドレイク
No.55竜騎兵グレン
CNo.55灼熱竜騎兵グレン
CNo.55竜闘士グレン
No.57奮迅竜トレスラグーン
No.82ハートランドラコ
No.85クレイジー・ボックス
No.90ヒート・ガストラフェテス
No.91サンダー・スパーク・ドラゴン

竜司
No.10白騎士イルミネーター
No.11ビッグ・アイ
No.18ジェムナイト・アゲート
CNo.18ジェムナイトマスター・アゲート
No.52ダイヤモンド・クラブ・キング

瑠那
No.16色の支配者ショック・ルーラー
No.20蟻岩土ブリリアント
No.23セイクリッド・ルナマリア
CNo.23セイクリッド・アーク
No.30破滅のアシッド・ゴーレム
No.87雪月花美神クイーン・オブ・ナイツ


第95話 海王VS魔王

「はっ…!?」

眠っていたベクターが目を覚ます。

彼の手は汗でぬれていて、服もかなり濡れていて心地悪い。

ベクターへの怨念のこもった声を出して追いかけてくる亡者たち。

おそらく、彼らはベクターによって殺された人々だろう。

彼は今、コロッセオに似た建造物を創造し、椅子に座った状態で凌牙を待っている。

手に入れた力を体になじませるために少しだけ眠りについていたのだ。

そんな彼の背後にドン・サウザンドが現れる。

(どうした、ベクター)

「…。なんでもねえ」

(ナッシュが近づいてきているぞ。怒りで爆発しそうになりながらな)

「分かってる」

(大詰めのようだな、うん…?)

突然、ドン・サウザンドが多くの紫色の縄で拘束される。

「ふっ…」

己が世界の神にに対し、ベクターは不敵な笑みを浮かべる。

封じるだけならば、ミザエルと凌牙以外の七皇から奪い取った力でどうにでもなる。

(な…なんのつもりだ、ベクター!!)

「いや、あんたが出るまでもない。ナッシュとは俺が決着をつける)

ドン・サウザンドは抵抗できないまま姿を消していった。

(ふふ…。メラグ達の力を奪ったおかげで、俺の力も格段に上がっているようだ)

「ベクターーーーー!!!」

建造物に凌牙が突っ込んできた。

「ベクター!!」

「会いたかったぜ」

復活した凌牙に対して、先ほど以上に不敵な笑みを浮かべるベクター。

自分の方がはるかに勝算があると考えているかのように…。

 

一方、飛行船は紫色の光に近づきつつあった。

「あれがバリアン世界の入り口、あそこにベクターとドン・サウザンドがいるわ」

「突入するぞ、遊馬、侑斗!」

「ああ、必ずドン・サウザンドをぶっ倒す!!」

「うん。蓮やカイトさん達のためにも…」

 

「貴様…よくもメラグとドルベを…」

憎悪がこもった瞳でベクターを見る。

今の彼は王としての使命を捨てている。

ただ、1人の復讐者としてそこに立っている。

「ああ、いただいちゃいましたよ。ふふふ…それだけじゃねえ、すでにギラグとアリトの力も頂戴した」

「なんだと!?」

「ヘヘヘヘ」

「貴様…ベクター!!」

凌牙の拳から青い電撃が放たれる。

しかし、命中したのはベクターが座っていた椅子、彼は瞬間移動で回避したのだ。

「くらいすぎて少々もたれてたところだ。腹ごなしにてめえをぶっ倒して、力を頂くとするぜ」

凌牙の目の前に現れたベクターはなおも力への欲望を抑えきれない。

「俺は…これほどまでに他人を憎んだことはない!!」

ベクターによって人生を狂わされてしまった数え切れぬほどの人々…。

そして、そんな彼の行動を許してしまった自分自身のふがいなさ。

あまたの感情が彼の中で交錯する。

「グッヒヒヒヒヒ!たまらないねえ、その顔」

「ベクターーーー!!」

「グチグチ言っていても仕方ねえ!!俺たちの決着をつけることができるのは、デュエルしかねえ!!ナッシューーー!」

「ベクター!!!」

両者の姿が人間からバリアンに変化する。

今、ここに決して相容れることのない2人が激突する。

「「デュエル!!」」

 

ベクター

手札5

ライフ4000

 

凌牙

手札5

ライフ4000

 

「貴様を叩き潰す!!」

「つぶれるのはお前だよ!俺のターン、ドロー!!」

 

ベクター

手札5→6

 

「俺は手札から魔法カード《ドン・サウザンドの契約》を発動!!」

発動と同時にそのカードから漆黒の粒子が放出され、凌牙を飲み込む。

「何!?これは…うわあああ!!」

粒子に包まれた凌牙に凄まじい衝撃が走る。

「ヒヒヒ!!このカードは相手がライフを2000支払うことで発動できる!!」

「何!?俺がライフコストを…?」

「決まっているだろう?ここは俺の城だ。俺とデュエルがしたいなら、場所代を支払ってもらわないとなあ」

「好きにしろ、俺は必ず貴様をぶっ倒す!」

「ふざけんなてめえ…契約成立だ!!!」

凌牙への衝撃がさらに強まり、大幅に力を吸い取られてしまう。

 

凌牙

ライフ4000→2000

 

大幅にライフが減るものの、凌牙の戦意は失われない。

「ハハハハ!!このカードを発動した後、お互いにカードを1枚ドローし、公開する!その後もお互いにドローしたカードを公開し、それが魔法カードだったらそのターンの終わりまで相手はモンスターを通常召喚できない!さあ、引きな!」

「く…!!ドロー!!」

「ドロー!」

 

ベクター

手札6→5→6

 

凌牙

手札5→6

 

「俺が引いたカードは…《スプリッド・ディフェンダー》だ」

魔法カードを引いてしまったが、今はベクターのターンであるため、《血の代償》が無い以上はリスクなしだ。

「おっと、俺のターンでラッキーだったな。じゃあ、俺が引いたのは《アンブラル・ゴーレム》だ!!そしてこいつは通常召喚できねえが、俺の場にモンスターが存在しないとき、特殊召喚できる!」

ベクターの場にボロボロなコートを着た紫色の悪魔が現れる。

 

アンブラル・ゴーレム レベル3 守備1600

 

「更に俺は、カードを2枚伏せてターンエンドだ!!」

 

ベクター

手札6→3

ライフ4000

場 アンブラル・ゴーレム レベル3 守備1600

  ドン・サウザンドの契約(永続魔法)

  伏せカード2

 

凌牙

手札6(うち1枚《スプリッド・ディフェンダ-》)

ライフ2000

場 なし

 

その頃、飛行船はバリアン世界に到着していた。

「ここが…バリアン世界」

「必ずここに、ベクターとドン・サウザンドがいる」

「ああ…」

頷きながら、遊馬はデッキを握りしめていた。

 

「(ドルベ…アリト…ギラグ…お前たちの無念は必ず俺が!!)バリアンズ・カオス・ドロー!!」

 

凌牙

手札6→7

 

「さあ、《ドン・サウザンドの契約》の効果でドローカードを公開しなければならない!」

わざとらしく効果を伝えるベクター。

そのカードがなんなのかわかりきっているのだが。

「俺がドローしたカードは…魔法カード」

「残念!!これでてめえはこのターンモンスターを通常召喚できねえ!!」

「《RUM-七皇の件》!」

「な…何だと!?」

このカードならば、通常召喚が封じられてもそれ以上の力を与える。

「このカードの効果はよくわかっているはずだ。現れろ、《CNo.101S・H・Dark Knight》!!」

トーマスとの激闘で傷ついていた《CNo.101S・H・Dark Knight》が完全な姿で再び凌牙の場に姿を現す。

 

CNo.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800

 

「ちっ…!そいつがお前のカオスオーバーハンドレッドナンバーズか!?」

知らないような口で言っているが、実際ベクターはウィンドとデュエルをしながらではあるがそのモンスターを目撃している。

そして、その効果の恐ろしさもよくわかっている。

「だが残念だったな!俺の場の《アンブラル・ゴーレム》は1ターンに1度、自分の場のアンブラルと名のつくモンスターへの攻撃を無効にできる!」

「無駄だ!《Dark Knight》の力を見せてやる!」

「何!?」

「俺は《Dark Knight》の効果発動!1ターンに1度、相手の場に特殊召喚されているモンスター1体をこのカードのオーバーレイユニットとすることができる!ダーク・ソウル・ローバー!!」

《CNo.101S・H・Dark Knight》の槍から放たれた紫色の光線が《アンブラル・ゴーレム》を分解し、カオスオーバーレイユニットに変化させた。

 

アンブラル・ゴーレム(アニメオリカ・調整)

レベル3 攻撃800 守備1600 効果 闇属性 悪魔族

このカードは通常召喚できない。

このカードは自分フィールド上にモンスターが存在しない場合にのみ手札から特殊召喚できる。

1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する「アンブラル」と名のつくモンスター1体が相手の攻撃対象となったときに発動できる。

その攻撃を無効にする。

 

「これで貴様の壁となるモンスターはいなくなった!!」

「ひい…!?」

「俺は《Dark Knight》でダイレクトアタック!!砕けろ、ベクター!!!」

《CNo.101S・H・Dark Knight》の槍から再び紫色の光線がベクターに向けて放たれた。

「うわああああ!!!」

 

ベクター

ライフ4000→1200

 

その攻撃の衝撃で発生した光の柱を遊馬達が目撃する。

「何あれ!?」

「あそこでデュエルをやってるんだよ…きっと…」

「もしかしたら…凌牙が」

 

攻撃の衝撃で、ベクターが転倒する。

「立て!!勝負はここからだ!貴様は跡形もなく消し去ってやる!!」

「2800のダメージ…ありがとさーん!」

狡猾な笑みを凌牙に見せる。

これこそ、ベクターが待っていたものだ。

「な…!?」

「バーカ!俺はてめえのデュエルを見ていたんだよ。お前のオーバーハンドレッドナンバーズのすごさはよーく分かっている!怒りに任せて、お前が俺に大ダメージを与えてくることは分かっていた。その《Dark Knight》でな!!」

全ては凌牙を倒すための誘導。

ドン・サウザンドほどではないが、かなりの策士ぶりだ。

「ハハハハ!!罠発動!《カオス・ライジング》!!相手のカオスナンバーズの直接攻撃によって俺が2000ポイント以上のダメージを受けたとき、俺はエクストラデッキからカオスナンバーズ1体を特殊召喚する!現れろ、《CNo.65裁断魔王ジャッジ・デビル》!!」

右手に鎌を装備し、紫色のコートを着ている裁判官とも死刑執行人とも見ることができる悪魔が現れる。

コートの右裾に自身の番号が刻まれている。

 

CNo.65裁断魔王ジャッジ・デビル ランク3 攻撃1600

 

カオス・ライジング(アニメオリカ・調整)

通常罠カード

自分が相手フィールド上に表側表示で存在する「CNo.」と名のつくモンスターの直接攻撃によって2000ポイント以上の戦闘ダメージを受けたときにのみ発動できる。

自分のエクストラデッキから「CNo.」と名のつくモンスター1体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚する。

 

「2800ポイントのダメージを受けてまで貴様がしたかったことはカオスナンバーズ1体を特殊召喚することか?」

「ヒヒヒヒヒ…」

なおも笑うのをやめないベクター。

《CNo.65裁断魔王ジャッジ・デビル》はカオスオーバーレイユニットがないと効果を発動できず。更に攻撃力はたったの1600だ。

更に、特殊召喚されているために《CNo.101S・H・Dark Knight》の餌食になってしまう可能性が高い。

まだまだ裏がありそうだ。

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」

 

ベクター

手札3

ライフ1200

場 CNo.65裁断魔王ジャッジ・デビル ランク3 攻撃1600

  ドン・サウザンドの契約(永続魔法)

  伏せカード1

 

凌牙

手札7→5(うち1枚《スプリッド・ディフェンダー》)

ライフ2000

場 CNo.101S・H・Dark Knight(オーバーレイユニット2) ランク5 攻撃2800

  伏せカード1

 

「さあ、俺のターンだ!このドローがお前の運命を決めることになる」

ベクターはバリアンズ・カオス・ドローの準備を整える。

「どういうことだ…?」

「いくぜ、ドロー!!」

 

ベクター

手札3→4

 

「おっと、魔法カードを引いちまった。だが、ただの魔法カードじゃねえぜ?俺は《カオス狂宴》を発動!このカードは俺のライフが2000以下で、俺の場に存在するモンスターがカオスナンバーズ1体のみの場合に場に存在するドン・サウザンドと名のつくカード1枚を墓地へ送ることで発動できる!そして、俺の場にカオスオーバーハンドレッドナンバーズ3体を効果を無効にして特殊召喚する!」

「なんだと!?」

ベクターの本当の目的は4体のカオスナンバーズを呼び出すことだったのだ。

「まずは《CNo.104仮面魔跳士アンブラル》!!」

 

CNo.104仮面魔跳士アンブラル ランク5 攻撃3000

 

「さあ、俺の新しい友達を紹介するぜえ?《CNo.102光堕天使ノーブル・デーモン》!!」

 

CNo.102光堕天使ノーブル・デーモン ランク5 攻撃2900

 

「そのカードはドルベの…!?」

ベクターはここまで4人の力を奪った。

それと同時にオーバーハンドレッドナンバーズも手に入れたため、このような芸当が可能になったのだろう。

「そして、とっておきのこれだぁ」

残忍な笑みを浮かべながら、《CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》を手にする。

「そいつは…」

「大きな拍手で迎えてくれよお?《CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》!!」

 

CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ ランク5 攻撃2800

 

カオス狂宴(アニメオリカ・調整)

通常魔法カード

自分のライフポイントが2000以下で、自分フィールド上に存在するモンスターが「CNo.」と名のつくエクシーズモンスター1体のみの場合、自分フィールド上に表側表示で存在する「ドン・サウザンド」と名のつくカード1枚を墓地へ送ることで発動できる。

自分のエクストラデッキから「CNo.101」~「CNo.107」いずれかをカード名に含むモンスター3体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚する。

「カオス狂宴」はデュエル中1回しか発動できない。

 

「く…メラグ…ドルベ…」

「以上!元はメラグとドルベの…今はお・れ・の!!カオスナンバーズーーー!!」

これで、形勢が逆転した。

それだけでなく、守れなかった仲間のカオスオーバーハンドレッドナンバーズが牙をむくことで、凌牙の精神にもダメージが発生する。

「ベクター!!」

「フフフ…どうだ、ナッシュ?大切な仲間のナンバーズが敵の手の中にある心境はよお?さびしいか?切ないか?そりゃそうだよな、ドルベもアリトもギラグも、みんなみんな俺のものだ!!そして、力を失ったメラグもぶっ殺せば、お前は完全に1人ぼっちだーー!!」

「俺は…1人…」

前世の生々しい記憶がよみがえる。

璃緒を失った後、凌牙は仇討のためにベクターと戦う決心を固めた。

その戦いで見事ベクターを倒すことができたが、率いていた軍が全滅してしまい、結局何も守ることができなかった。

そして今、バリアン世界のために遊馬達を裏切り、七皇のナッシュとなった。

しかし、再びベクターに仲間を奪われ、蓮が命がけで守らなければ璃緒も奪われるところだった。

結局1人、結局非力。

絶望が凌牙の心を満たそうとしていた時だった。

「シャークーーー!!」

「凌牙!!」

聞き覚えのある2人の声のする方向に目を向ける。

そこには飛行船が浮かんでいた。

「ほお…こいつは」

飛行船から侑斗達が降りてくる。

「シャーク!!」

「凌牙!!」

遊馬と璃緒が凌牙に駆け寄る。

「璃緒…」

「ははは!良かったなあナッシュ!一人ぼっちのお前に懐かしの友と妹の到着だあ」

凌牙の中に熱いものが芽生える。

裏切ったはずの自分の元に、それでも遊馬達が来てくれた。

本当なら詫びたい、一緒に戦いたい。

だが、トーマスを殺したという事実、そしてバリアン世界を守るという決心がそうさせない。

「黙れ!!今の遊馬達は敵!!」

「シャーク…」

「ふられたねえ遊馬君?かわいそうに」

「ベクターーー!!」

友の命を奪ったベクターに憎悪の目を向ける遊馬。

「だが、安心しなよ?このデュエルが終わったら、お前の相手を侑斗とメラグも一緒に、たっぷりしてやるからよ?」

舐めきった態度をするベクター。

もう、自分の勝利は決定しているとでも言わんばかりの態度だ。

「貴様に次などない!!」

「へっ!!メラグとドルベの無念を晴らすってか?うおおおおお!!」

ベクターの体内から璃緒たちの力の源である光の球体が現れる。

青白い光はそのままだが、それ以外の光はアリト、ギラグ、ドルベの姿に変化する。

「みんな…!?」

「さあ、来いやあ!!」

光がすべてベクターに再び吸収され、爆発的な力を生み出す。

「すげえ…すげえぜ!!みなぎるぜえ!!うおおおお!!!!」

紫色の光の中で、ベクターの姿が変化していく。

翼が消え、服装が黒いローブと神官風の帽子をつけた高貴なものになっている。

その姿はまさしく魔王といっても過言ではない。

「あれが…4人の力を吸収したベクターの姿…!?」

「ベクターーー!!喜楽の殿様を返せだポンーーー!!」

「ユウ…あれ…」

「もう、ベクターは七皇を超える力を手に入れたんだ。きっと、ドン・サウザンドに次ぐ力を…」

「どうだ?俺の新しい姿は。これもすべてあいつら能無しのおかげだ」

「貴様…ベクターーーー!!」

仲間を侮辱されたこと、それが更に凌牙の憎悪の炎を燃え上がらせる。

だが、憎悪の炎は際限なく燃える炎。

下手をすれば、自分まで焼き尽くす。

そのことは先ほど罠にはまってしまったことで分かっているが、ベクターのこれまでの行動がその炎の制御を難しくする。

「そうだ、怒れナッシュ!!あの時のようにな!!」

「あの時…!?」

「そうだ!!ここはかつて俺とお前がデュエルをした場所、いうなれば因縁の地だ。てめえに倒された俺は命からがら城へ戻った!!だが、勢いに乗ったおまえは単身ここまで追いかけてきやがった!!」

その軽率な行動が命取りとなり、凌牙の軍は王と合流するために進軍、そして全滅してしまった。

「そうだ…仲間を奪ったお前を許せなかった。そしてここに乗り込んだとき、お前はすべての民と家臣を処刑し、たった1人で立っていやがった」

記憶が戻るのと同時に、その時の光景が生々しく蘇る。

老若男女問わず処刑し、血に染まった剣、装束、そしてベクターの肌。

もはや動かぬ遺体を切り刻んだときの楽しげな表情。

「ああ、あれなあ。邪魔だったんだよ。どいつもこいつも。もう戦をやめようとか言いやがってよお。邪魔で邪魔で仕方がなかった。だから始末したんだよ」

「そんな…ひどい!!」

「ゲスの極みだな、ベクター」

「へっ!!このくらいでゲスだと?甘え、甘えんだよ!!なんせ、俺が最初に手をかけ、始末したのは…自分の親父とおふくろなんだからなあ!!ハハハハハハ!!」

「自分の…親を…」

高笑いしながら言うベクターを遊馬と侑斗は恐れながら聞いていた。

もはや心のない、破壊でしか自分の存在を証明できない愚かな男としか彼をとらえることができない。

「そうさ!!俺は邪魔な奴らを残らず排除してきた!!敵だったんだよ!!あの日、てめえに負けるまではなナッシュ!!俺はお前に再び負けた!!しかも、自分の王宮でな!!惨めだったぜ、悔しかったぜ!!だからよお、今度こそ同じ場所で俺がてめえをぶっ潰す!!お前の大事な仲間の力でぶっ潰してやるよ!!」

すべては、自分を倒した凌牙へのリベンジのため、それこそが彼の行動原理だった。

ドン・サウザンドの力を得たのはそのための手段、遊馬へのリベンジという目的も兼ねてだが。

「貴様ぁ!!」

「さあ、行くぞナッシュ!!まずは《アンブラル》で《Dark Knight》を攻撃!!」

《CNo.104仮面魔跳士アンブラル》の杖から放たれた紫色の電撃が《CNo.101S・H・Dark Knight》を貫き、撃破した。

「ぐあああ!!」

 

凌牙

ライフ2000→1800

 

「だが、《Dark Knight》の効果発動!カオスオーバーレイユニットを持つこのカードが破壊され墓地に送られ、更に俺の墓地に《Ark Knight》が存在するとき、墓地から復活する!リターン・フロム・リンボ!!」

電撃によって胸に傷跡ができた《CNo.101S・H・Dark Knight》が再び凌牙の場に舞い戻る。

 

CNo.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800

 

「そして、俺のライフは《Dark Knight》の元々の攻撃力分だけ回復する!」

 

凌牙

ライフ1800→4600

 

一気にライフを戻したものの、まだベクターの場には3体のカオスナンバーズの攻撃が残っていて、《CNo.101S・H・Dark Knight》にはもうカオスオーバーレイユニットが存在しない。

「なら俺は《ノーブル・デーモン》で《Dark Knight》を攻撃!!」

《CNo.102光堕天使ノーブル・デーモン》は2体の堕天使の力を受けた槍を投擲し、傷跡が残っている《CNo.101S・H・Dark Knight》を貫いた。

カオスオーバーレイユニットを持たない《CNo.101S・H・Dark Knight》にはもはや再起する力がなく、そのまま倒れ、消滅した。

「く…!!」

 

凌牙

ライフ4600→4500

 

「ハハハハハハ!!お次は《ラグナ・インフィニティ》でダイレクトアタック!!」

《CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》は力強く鎌を振り回し、凌牙を切り裂いた。

「うわああああ!!」

「凌牙!!」

 

凌牙

ライフ4500→1700

 

「ハハハハハ!!どうだ?メラグのモンスターにぶちのめされた気分は?」

「うう…!!」

フラフラになりながら、凌牙はベクターに目を向ける。

「いけ、《ジャッジ・デビル》!!ナッシュにダイレクトアタック!!」

《CNo.65裁断魔王ジャッジ・デビル》の鎌から紫色の光線を放ち、凌牙を追い詰めていく。

「くっ…!!」

 

凌牙

ライフ1700→100

 

「あっという間にライフが100に!!」

「ハハハ…いいザマだぜ」

傷だらけになり倒れている凌牙を見て、ベクターは面白おかしく笑う。

「く…ベクター!!」

「お?いいぜやっても。だが、バリアンの力を失ったお前に何ができるんだよ、メラグちゃーん?」

「く…!!」

唇をかみしめ、涙をためながら璃緒はベクターを見る。

「ああ、そうだった。お前たちにはほかにもこれを見せねえとなあ」

ベクターが指を鳴らすと、侑斗達の目の前に映像が出てくる。

「あ…!!」

「こ…これは!?」

映像に映っているのはハートランドシティ中で破壊活動をする七皇のコピーの数々だった。

コピーの数は数千で、ついに自衛隊も派遣されているがなすすべがない。

「そんな…ユウの…みんなの街が…」

「でも、これだけの数のコピーを…ベクター、まさか!!」

「そう、そのまさかなのさ。あいつらはぜーんぶ戦えねえ無能な民で、俺の操り人形さ!!」

「ベクター!!!!」

「あ、ユウ!!竜司君と瑠那ちゃんがいる!!」

映像の中には、コピーと応戦している竜司と瑠那の姿があった。

何度も戦っているためか、2人とも傷だらけで息も荒くなっている。

 

「はあ…はあ…はあ…」

「これは…少し不味いことになったね…」

完全に包囲されている2人に対し、コピーは次々とオーバーハンドレッドナンバーズを呼び出す。

あまりの疲れで瑠那が座り込むと同時に《No.105BK流星のセスタス》の攻撃で《No.23セイクリッド・ルナマリア》が破壊されてしまった。

「しまった!!」

続いて《No.106巨岩掌ジャイアント・ハンド》が瑠那にダイレクトアタックしようとする。

「瑠那ーーーー!!」

「罠発動!《攻撃の無力化》!?」

しかし、突然現れた時空の渦が瑠那を守る。

「こ…《攻撃の無力化》!?」

「一体誰が!?」

竜司も瑠那も《攻撃の無力化》を発動した覚えがない。

すると、2人の目の前に見覚えのある少年が現れる。

「おいおいどこのだれか知らねえけど、抜け駆けはなしだぜ?竜司を倒すのは俺だからな」

「炎!?」

「竜司!特別に手を貸してやるぜ!!さあ、やってくれよヒイロのおっさん!!」

「え…!?」

炎が声を上げた直後、激流が発生して周囲のオーバーハンドレッドナンバーズが押し流されていく。

「え…!?何、何が起こったの!?」

「俺はおっさん呼ばわりされるほど年を取っていない」

炎に続き、ウィンドが竜司たちの前に姿を現す。

彼の背後には《セイヴァー・マリン・ドラゴン》が存在する。

「ウィンドさん!?はっはーん、やっぱり偽名だったんだ」

「ふん、時間を稼ぐぞ」

 

一方、ハートの塔では町の住民の収容を始めていた。

そこにもコピーが現れているため、島と明里、チャーリー、バイロンが応戦している。

「さあ、来るんなら俺たちのところに来てくださいよー!行け、《X-セイバーソウザ》!!」

「これ以上好き勝手はさせない!さあ行くぞ、僕の紋章獣たちよ!!」

「明里、お前は塔に入っていていいんだぜ?タイムマジックだ!!《時の魔術師》!!」

「何を言ってるの!?あんたのギャンブルデッキだけじゃ頼りにならないわ。貫け、《ガントレッド・シューター》!!」

 

「竜司…瑠那…みんな…」

「まあ、無駄な努力だな。なんせ、たとえあいつらが全滅しても、また作って送りだしゃいいからなあ。まだまだバリアン世界には住民が残っているから、代わりはいくらでもいるぜぇ?俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

ベクター

手札4→1

ライフ1200

場 CNo.65裁断魔王ジャッジ・デビル ランク3 攻撃1600

  CNo.104仮面魔跳士アンブラル(《カオス狂宴》の影響下) ランク5 攻撃3000

  CNo.102光堕天使ノーブル・デーモン(《カオス狂宴》の影響下) ランク5 攻撃2900

  CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ(《カオス狂宴》の影響下) ランク5 攻撃2800

  伏せカード3

 

凌牙

手札5(うち1枚《スプリッド・ディフェンダー》)

ライフ100

場 伏せカード1

 

「く…ベクター…」

怒りを力に変え、ゆっくりと凌牙は立ち上がる。

死んだ仲間のためにも、ベクターによって改造され操り人形となってしまった多くの民のためにも負けるわけにはいかない。

「俺のターン、ドロー!!」

 

凌牙

手札5→6

 

「俺は手札から魔法カード《スプリッド・ディフェンダー》を発動!俺の場にモンスターが存在せず、相手の場にモンスターが2体以上存在するとき、相手の場で最も守備力の高いモンスター1体のコントロールを得る!そして、守備力が一番高いモンスターが2体以上存在する場合、相手はコントロールを渡すモンスターをどれか選択できる!今お前の場で最も守備力が高いのは《ノーブル・デーモン》か《ラグナ・インフィニティ》!!どちらかを頂くぜ!!」

だが、ベクターは《ドン・サウザンドの契約》の効果でそのカードが手札にあることを知っている。

そんな彼が対策を練らないはずがない。

「甘えんだよナッシュ!!ここで使うことはお見通しだ!!罠発動、《ガード・オフ》!!場に存在するすべてのモンスターの守備力を0にし、俺の場に存在する守備力が0のモンスター1体につき400ポイントのダメージを与える!!」

 

CNo.65裁断魔王ジャッジ・デビル ランク3 守備0

CNo.104仮面魔跳士アンブラル ランク5 守備1500→0

CNo.102光堕天使ノーブル・デーモン ランク5 守備2400→0

CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ ランク5 守備2400→0

 

「な…!?」

選択肢増加とバーンダメージを同時に使ってきた。

「まずいよ!!今の凌牙君のライフは100!!この効果を受けたら…」

「あばよ、ナッシュ!!」

ベクターが持つ4体のカオスナンバーズが力を合わせて巨大な紫色の電撃を生み出し、凌牙に向けて放つ。

「俺は永続罠《エクシーズ・チャージアップ》を発動!俺が受ける効果ダメージを0にする!!」

電撃は凌牙ではなく、《エクシーズ・チャージアップ》に命中し、吸収されていった。

 

スプリッド・ディフェンダー(アニメオリカ)

通常魔法カード

相手フィールド上にモンスターが2体以上存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動できる。

自分は相手フィールド上の守備力が一番高いモンスター1体のコントロールを得る。

守備力が一番高いモンスターが2体以上存在する場合、相手がその中から1体を任意に選択する。

 

ガード・オフ(アニメオリカ)

通常罠カード

フィールド上の全てのモンスターの守備力を0にする。

その後、自分フィールド上の守備力が0のモンスターの数×400ポイントダメージを相手ライフに与える。

 

「ちっ…!!俺が《スプリッド・ディフェンダー》を持っていることを知っていて、お前が何か対策しないと思うほど、俺は甘ちゃんじゃねえ!!さあ選べ!俺に差し出す1体を!!」

「ちっ…!!《ジャッジ・デビル》!!」

凌牙の場に《CNo.65裁断魔王ジャッジ・デビル》が移動してくる。

だが、そのモンスターの攻撃力はほかのカオスナンバーズには程遠い。

「これで充分だ!俺は《エクシーズ・チャージアップ》の更なる効果を発動!このカードを墓地へ送ることで、俺の場のエクシーズモンスター1体の攻撃力を無効にした効果ダメージの数値分アップさせる!!」

 

CNo.65裁断魔王ジャッジ・デビル ランク3 攻撃1600→3200

 

エクシーズ・チャージアップ(アニメオリカ)

永続罠カード

効果ダメージが発生した時に発動できる。

その効果ダメージを0にする。

このカードを墓地へ送る事で、自分フィールド上のエクシーズモンスター1体の攻撃力はこのカードの発動時に発生した効果ダメージの数値分アップする。

 

「なんだと!?」

「すげえぜ、これで《ジャッジ・デビル》の攻撃力は一番上だ!!」

今のベクターの考えはすべて凌牙に読み取られていた。

「俺は《ジャッジ・デビル》で《アンブラル》を攻撃!!」

《CNo.65裁断魔王ジャッジ・デビル》はその身を回転させ、《CNo.104仮面魔跳士アンブラル》を鎌で切断した。

「何…!?うわあああああ!!」

攻撃の衝撃でベクターは吹き飛び、姿が人間に戻る。

 

ベクター

ライフ1200→1000

 

「こ…これは…!?」

「ユウ…これって!?」

「うん…。《ジャッジ・デビル》はベクターの遺跡のナンバーズだったんだよ。だから、《アンブラル》を倒したとき…」

急にベクターたちの眼にビジョンが映る。

 

ベクターが誕生した日、すべての民衆が彼を祝福した。

彼の生まれた国では、その日は平和の神が生まれた日であり、人々は彼の誕生に平和な時代を期待していたのだ。

それと同じ日に、ベクターの元に遺跡のナンバーズも現れた。

先代国王、つまりベクターの父は征服王であり、今のベクターと同じように侵略戦争を繰り返し、殺戮と略奪の限りを尽くしていた。

しかし、度重なる戦争で国は疲弊し、手にした富は貴族と王族が独占した。

そんな中、父は病で倒れる。

不治の病であったため、ベクターは母に諭されて国王となった。

母も平和を愛し、殺戮と略奪を嫌っていたのだ。

そんな母の影響を受けていたためか、ベクターは侵略を行った他国へ領土と富を返還して賠償も行い、更には軍事費拡大による重税をやめて軍縮を行うといった善政で国の内外から高い支持を得た。

元々、ベクターは遊馬と同じく善良な性格で、演技で真月でいたときのような男だったのだ。

といっても、おせっかいが過ぎて逆に不利益をもたらすようなこともしていない。

それを知った父は激昂し、見舞いに訪れたベクターに剣を向けた。

ベクターに対する凶刃を母がかばって死に、父は病の進行によって直後に死んだ。

いきなり両親を失い、絶望したベクターに語りかけたのはドン・サウザンドだった。

ドン・サウザンドは《No.104仮面魔踏士シャイニング》を宿し、記憶だけでなく性格を父と同じ残虐なものに書き換えた。

善良であり純粋な性格であった分、こうやって書き換えるのはドン・サウザンドにとっては造作もないことだった。

 

「これがベクターの…」

「本当の記憶…??」

「ベクターも他の七皇同様、ドン・サウザンドに操られていた…」

侑斗達はそのあまりの真実に驚いているものの、一番驚いているのはベクターの方だ。

「そんな…そんなバカな!?今のが俺の人間だった時の記憶…?それじゃあ…嘘なのか!?俺が両親を手に掛けたことは!!?だったら俺は…俺は…ドン・サウザンド!!!」

誰でもいいから、自分が納得できるような答えがほしい。

その願いと共にドン・サウザンドを呼び出す。

(どうやらお前も真実にたどり着いたようだな)

「貴様は俺を…俺をだましていたのかぁ!!?」

(フフフハハ…)

何も答えず、ただ笑うだけ。

だが、ベクターがすべてを悟るにはそれで充分だった。

彼の顔が悲痛で歪む。

「ベクター…」

「ひどい!!」

「うわああああああああ!!」

悲鳴と共に、ベクターは膝を地につけ、戦意を喪失させる。

「ドン・サウザンド!!お前のせいでベクターの心が壊れちまったんだ!!あんな思いをしたらあたりまえじゃねえか!!」

絶望するベクターに遊馬が救いの声をかける。

何度も遊馬の心を踏みにじり、ドルベ達を殺した彼であるにもかかわらず。

「ベクター!!お前は元々、心の優しい奴だったんだよ!俺の前に現れた真月零!!あれが…お前の姿なんだ!!あれが…本当のお前なんだ!!」

「真月…真月が俺の本当の姿…?」

(九十九遊馬、ベクターは逸材だったのだ。心が純粋であればあるほど、その反動により生まれる闇は深い。強気バリアンとして生まれ変わるためにな)

「お前が記憶を書き換えなければ、ベクターは心の優しい王子のままだったんだ!!」

ビジョンの中で見たベクター、もし彼がそのままならば凌牙に降りかかったあの悲劇は無かった。

凌牙と璃緒がバリアンにならずに済んだ。

結局、すべての原因がドン・サウザンドに帰結する。

しかし、ここで記憶が戻ったところで真実は変わらない。

(だが、この男が行った残虐非道な行いはすべて事実。その罪は消せん!!)

「そうだ…俺が犯した罪は消えない…」

「ベクター!そんなのまたやり直せばいい!」

「そうよ!!過去は変えられなくても、未来は描ける!!」

遊馬と小鳥が必死にベクターに語りかけるが、侑斗と璃緒、凌牙は沈黙を保つ。

「ユウ!!ユウも何か言ってあげてよ!!」

「…」

「侑斗!」

「ありがとう…遊馬、小鳥」

立ち上がり、悲しげな瞳を遊馬達に向ける。

悲しい覚悟を固めた目を…。

「君たちやナッシュをここまで苦しめた俺に…未来なんて…罠発動!《エクシーズ・ディスチェージ》!!相手は手札を1枚を墓地へ送ることで、俺の場のエクシーズモンスターのコントロールを得る!!」

「なんだと!?」

(どういうつもりだ!!?)

全く自分のためにはならない、普通なら役立たずなカード。

だが、覚悟を決めたベクターにとっては絶対に必要なカードだ。

「ナッシュ!これが俺にできる償いだ!そのモンスターたちを使って俺を倒せ!!」

(何ぃ!?)

「俺の中にいるドン・サウザンドもろとも、俺を葬れ!!」

(貴様ぁ!!?)

「ドン・サウザンドとともに消えるつもりか!?」

「よせ、ベクター!!」

「ナッシュ!!汚れきった俺の過去と共に、俺を消してくれ!!」

(させぬわぁ!!)

ドン・サウザンドはベクターを握りつぶそうとした。

しかし、璃緒たちの力を奪っているベクターは強力なバリアを展開し、自らを防御する。

(こ…小癪な真似を!!?)

「早く!!俺がこいつを抑え込んでいる間に!!」

「…分かった」

「シャーク!!」

「俺は《ドリーム・シャーク》を墓地へ送り、お前の場のエクシーズモンスターの効果を得る!!」

《ドリーム・シャーク》の誘いを受けた2体のカオスオーバーハンドレッドナンバーズが凌牙の元へはせ参じる。

 

エクシーズ・ディスチャージ(アニメオリカ)

通常罠カード

相手が手札を1枚墓地へ送る事で発動できる。

自分フィールド上の全てのエクシーズモンスターのコントロールを相手に与える。

 

「…おかしい」

「え?」

侑斗の言葉にウィンダが首をかしげる。

「《エクシーズ・ディスチャージ》は前のターンに伏せているカード。操られているときに伏せたカードだよ。あのベクターが考えなしにそんなカードをデッキに入れるはずがないよ」

「で…でも、本当のベクターをユウは見たでしょ?あんなにやさし…」

「ドン・サウザンドの言う通りなら、記憶を戻すだけで消えるほど闇は薄くないんじゃないかな?」

ミザエル、アリト、ギラグは確かにバリアンの使命の元、遊馬達を襲ったが邪悪な人格ではなかった。

無論、それは凌牙と璃緒、ドルベにも言える。

それに対してベクターが持つ心の闇は彼らすべての闇に対してもはるかに強い。

ほとんど手の施しようがないくらいだ。

(ベクターの場にはあと2枚伏せカードがある。もし、さっきの行為が誘導だとしたら…)

本当なら凌牙に伝えるべきかもしれないが、デュエルである以上アドバイスは許されない。

今は凌牙の裁量にゆだねるしかない。

「さあ、早くやるんだナッシュ!!」

「やめろシャーク!!ベクターは!!」

「遊馬…これしかないんだ…これしか…」

ベクターは涙をため、悲しい笑みを遊馬に向ける。

「ベクター…」

「やれーーーー!!ナッシューーーーー!!」

「ああ!!《ラグナ・インフィニティ》!!」

「やめろーーーーー!!!!」

「ダイレクトアタック!!!」

璃緒のカオスオーバーハンドレッドナンバーズである《CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》の鎌がベクターに襲い掛かる。

その瞬間、ベクターの表情が再びいつもの状態に戻る。

そして、先ほど仕込んだ策を発動する。

「罠発動!《トリック・バスター》!!このカードが俺の場にモンスターがいない状態で相手が攻撃してきたとき、その攻撃を無効にし、相手の場の表側攻撃表示モンスターをすべて破壊する!!」

「…!!」

ベクターの目の前に白銀の盾が現れ、《CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》の鎌が弾かれる。

そして、《トリック・バスター》から放たれた3本の剣が凌牙のモンスターを全滅させた。

「やっぱり…」

「そんな…」

「ハハハハハハ!!ひ…ひっかかった!!」

ベクターの左手から小さな容器が落ちる。

それは嘘泣きように用意した目薬だ。

「どういうことだ、ベクター!!」

「どうもこうもあるかよ!?お前の言っていた通りだったんだ。みんな引っかかったんだよ!俺の名演技によお!!」

「ユウには引っかからなかったけど」

「バーカ!!まんまと引っかかりやがって!!とんでもねえ甘ちゃんだな!!」

「く…ベクター!!」

再び心を踏みにじったベクターに怒りの目を向ける。

だが、それに対して凌牙は冷静にじっとベクターを見ている。

「さあ、ナッシュ。今からお前を御仲間のところへ送ってやるよ。だが、その前に…」

怪しげな笑みを浮かべながら、ベクターは背後に存在するドン・サウザンドを見る。

「邪魔な神ってやつを始末しようか?」

(どういうことだ!?ベクター!!」

「俺はとーっくの昔に気付いていたのさ。お前が…俺の過去を改ざんしたことなんて」

「それじゃあ、これまでしてきたことはあなたが望んで…」

「ああ、俺はお前たちが苦しむ姿を見るのがたまらなく面白いんだよ!!」

「そんな…」

ベクターが自身の記憶を取り戻したのはいつなのかはわからない。

だが、彼は元の人格に戻る道を捨てた。

その時点で彼の償いの機会は消え、闇に落ちることになったのだ。

他社の苦痛という、たまらなく甘美な闇へ。

「まあ、俺の記憶を改ざんしたお前にはムカついてたんだよ」

(ベクター!!貴様は我には歯向かえぬはず!!)

「うるせえ!!七皇の力を奪った俺の方がてめえよりも上なんだよ!!」

再び魔王の姿に変化したベクターの眼が怪しく光る。

すると、ドン・サウザンドの体が自然発火した。

(ぬああああ!!バカなベクター!!これほどまでの力をお前が!!?ベクターーーーー!!!)

怨念の声を上げながら、ドン・サウザンドは灰となった。

凌牙は今やドン・サウザンドを超える神の力を得たベクターと戦わなければならなくなったのだ。

「ドン・サウザンドを…葬ったのか?」

「さあ、ナッシュ!次はてめえの番だ。《トリック・バスター》の効果はまだ終わっちゃいねえ!!この効果で破壊したモンスター1体につき、300ポイントのダメージを与える!あばよ、ナッシュ!!」

ベクターの墓地から3本の光線が凌牙に向けて発射される。

「凌牙!!」

しかし、凌牙は遊馬ほどお人好しではない。

お人好しであることは時に薬となるが、時には毒にもなるのだ。

冷徹になることも同様だが、今回はそれが薬となった。

「俺は《ドリーム・シャーク》の効果発動!俺が効果ダメージを受けること、このカードを墓地から特殊召喚することで、そのダメージを無効にする!」

「なんだと!?」

凌牙に襲うはずだった光線は赤い眼でオレンジ色の奇抜な模様が付いた鮫に丸飲みにされてしまった。

 

ドリーム・シャーク レベル5 守備2600

 

トリック・バスター(アニメオリカ)

通常罠カード

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。

相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスターを全て破壊する。

この効果で破壊したモンスターの数×300ポイントダメージを相手ライフに与える。

 

「てめえ…俺を信じたんじゃなかったのかぁ!?」

「今更お前を信じるはずがないだろう?ベクター!俺はカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

ベクター

手札1

ライフ1000

場 なし

 

凌牙

手札6→3

ライフ100

場 ドリーム・シャーク レベル5 守備2600

  伏せカード2

 

「く…ナッシュ!!許せねえ!!」

自分の策を、最も憎む相手に見透かされたことに凄まじい憎悪を抱く。

「見せてやるぜ!俺の本当の力を!!俺のターン、ドロー!!」

 

ベクター

手札1→2

 

ドローしたカードを見て、ベクターは邪悪な笑みを浮かべる。

凌牙を徹底的に追い詰めるカードを手にしたためだ。

「俺は手札から《RUM-千死蛮巧》を発動!互いの墓地から同じランクのエクシーズモンスターを素材とし、それらのモンスターよりもランクが1つ高いエクシーズモンスター1体を特殊召喚する!」

ベクターの場に4体のオーバーハンドレッドカオスナンバーズが現れる。

そしてその4体がオーバーレイネットワークに取り込まれていく。

「ダイレクトカオスエクシーズチェンジ!!現れろ、CNo.5!混沌なる世界の亡者ども!今、その魂をひとつに溶かし、混濁とした世界に降臨せよ!《亡朧龍カオス・キマイラ・ドラゴン》!」

キマイラという言葉を表しているように、鳥と蛇、そして竜が合成された真紅の魔物が姿を現す。

胴体に装備されている白い鎧や翼部、頭部の各所にはカオスの力が込められた玉石が埋め込まれており、鎧の右側にはそのモンスターの番号が刻まれている。

 

CNo.5亡朧龍カオス・キマイラ・ドラゴン ランク6 攻撃0

 

「見ろよ、ナッシュ。こいつはお前の大切なお仲間のカオスの力を1つにしたナンバーズだぜ?」

「く…!!」

「さあ、行くぜ!《カオス・キマイラ・ドラゴン》の攻撃力はこいつのカオスオーバーレイユニット1つにつき1000ポイントアップする!」

 

CNo.5亡朧龍カオス・キマイラ・ドラゴン ランク6 攻撃0→4000

 

「攻撃力4000!?」

「そういう効果なら、あのRUMと抜群の相性だ」

オーバーレイユニットがあればある程、《CNo.5亡朧龍カオス・キマイラ・ドラゴン》はその真価を発揮する。

オーバーハンドレッドカオスナンバーズ同士の戦いを想定するならば、《RUM-千死蛮巧》をベクターは最大限に活用したことになる。

「バトルだぁ!!《カオス・キマイラ・ドラゴン》で《ドリーム・シャーク》を攻撃!!」

鎧につけられた4つの玉石が赤・緑・白・水色に光り、それらから高出力の光線が発射される。

「俺は《ドリーム・シャーク》の効果を発動!このカードは1ターンに1度、戦闘で破壊される代わりに守備力を1000ポイントダウンさせることができる!」

虹色の粒子が《ドリーム・シャーク》を包み込み、攻撃をしのぐ。

 

ドリーム・シャーク(アニメオリカ)

レベル5 攻撃0 守備2600 効果 水属性 魚族

効果ダメージが発生した時、自分の墓地からこのカードを特殊召喚し、そのダメージを0にできる。

この効果で特殊召喚したこのカードが墓地へ送られる場合、このカードはゲームから除外される。

1ターンに1度、このカードが戦闘によって破壊される場合、代わりにこのカードの守備力を1000ポイントダウンする事ができる。

 

しかし、そのことは織り込み済みだ。

「甘え!!《カオス・キマイラ・ドラゴン》の効果を発動!このカードが攻撃を行ったバトルフェイズ終了時にカオスオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手モンスターに続けて攻撃することができる!」

カオスオーバーレイユニットをその身に宿した《CNo.5亡朧龍カオス・キマイラ・ドラゴン》が再び光線を放つと、《ドリーム・シャーク》は一瞬で消滅した。

 

CNo.5亡朧龍カオス・キマイラ・ドラゴン ランク6 攻撃4000→3000

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・CNo.104仮面魔跳士アンブラル

 

「これでてめぇのモンスターはいなくなった!これでしめえだ…といきてえところだが、残念ながらこいつが追加攻撃できるのはモンスター限定だ。これで俺のバトルフェイズは終了するが、ここで《カオス・キマイラ・ドラゴン》の更なる効果発動!バトルフェイズ終了時にライフを半分支払うことで、墓地のカード2枚を選択し、1枚をこいつのカオスオーバーレイユニットに、もう1枚を持ち主のデッキに戻す!俺が選択するのは《アンブラル》、そして《七皇の剣》だ!!」

「何!!?」

《CNo.104仮面魔跳士アンブラル》が再びカオスオーバーレイユニットに戻り、《RUM-七皇の剣》が凌牙のデッキトップへ向かう。

 

ベクター

ライフ1000→500

 

CNo.5亡朧龍カオス・キマイラ・ドラゴン ランク6 ランク6 攻撃3000→4000

 

「まずいわ!!《七皇の剣》はデュエル中1回しか発動できないカード!今の凌牙には完全に死に札だわ!!」

璃緒のいうとおり、このままでは次のターン、凌牙は必ず《RUM-七皇の剣》をドローすることになる。

残された3枚のカードで勝負しなければならない。

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!!」

 

ベクター

手札2→0

ライフ500

場 CNo.5亡朧龍カオス・キマイラ・ドラゴン(オーバーレイユニット4) ランク6 攻撃4000

  伏せカード1

 

凌牙

手札3

ライフ100

場 伏せカード2

 

「やばいぜ…これじゃあモンスターを召喚しても」

「《カオス・キマイラ・ドラゴン》に倒されて、更に効果でデッキ操作までされる…」

このままベクターにターンを回すわけにはいかなくなった。

もしベクターが《メテオストライク》のような貫通効果を与えるカードを手にしたら、凌牙はもう持たない。

「俺のターン、ドロー!!!」

 

凌牙

手札3→4

 

やはり手札に加わったのは《RUM-七皇の剣》。

「(今の俺の手札にはあいつを倒すことができるカードはねえ。だが、このカードさえ来れば!!)俺は手札から魔法カード《強欲なウツボ》を発動!手札の水属性モンスター2体をデッキに戻し、デッキから3枚カードをドローする!!」

「何!?まだそんなカードを…?」

《ビッグ・ジョーズ》と《ジョーズマン》をデッキに戻し、右手に光を宿す。

「(ドルベ、アリト、ギラグ…!お前たちの力を貸してくれ!!)バリアンズ・カオス・ドローーー!!」

紫色の光と共に、凌牙はカードを引く。

「俺は永続罠《アクア・ディメンジョン》を発動!ゲームから除外されている俺の水属性モンスター1体を特殊召喚する!俺は《ドリーム・シャーク》を特殊召喚!」

 

ドリーム・シャーク レベル5 守備2600

 

アクア・ディメンジョン

永続罠カード

ゲームから除外されている自分の水属性モンスター1体を選択して特殊召喚する。

このカードがフィールド上から離れた時、

そのモンスターを破壊してゲームから除外する。

そのモンスターが破壊された時、このカードを破壊する。

 

「水属性専用の《闇次元の解放》!?」

「水属性でレベル5のモンスター…」

「更に、俺は《ドリーム・シャーク》をリリースし、《イーグル・シャーク》をアドバンス召喚!さらに、俺の場に《イーグル・シャーク》が存在するとき、《パンサー・シャーク》は手札から特殊召喚できる!」

《セイバー・シャーク》と《サイレント・アングラー》が《バハムート・シャーク》と《No.101S・H・Ark Knight》の呼び水なら、この2体の鮫は深海を総べる力の神の呼び水だ。

 

イーグル・シャーク レベル5 攻撃1000

パンサー・シャーク レベル5 攻撃1100

 

「俺はレベル5の《イーグル・シャーク》と《パンサー・シャーク》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、No.73!カオスに落ちたる聖なる滴。その力を示し、混沌を浄化せよ!《激瀧神アビス・スプラッシュ》!」

かつてはベクターにとらわれ、璃緒の命と引き換えに浄化された神が再びベクターを葬るために現れる。

 

No.73激瀧神アビス・スプラッシュ ランク5 攻撃2400

 

「《アビス・スプラッシュ》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、このカードの攻撃力を相手のターンのエンドフェイズまで2倍にする!」

 

No.73激瀧神アビス・スプラッシュ ランク5 攻撃2400→4800

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・パンサー・シャーク

 

「攻撃力4800!?」

これで、《CNo.5亡朧龍カオス・キマイラ・ドラゴン》を倒すことができるが、《No.73激瀧神アビス・スプラッシュ》はその効果の代償として発動ターンに相手に与える戦闘ダメージが半分になる。

そのため、ベクターにはとどめを刺すことができないがあのモンスターさえ倒せば決定打になることは明白だ。

「いけ、《アビス・スプラッシュ》!!《カオス・キマイラ・ドラゴン》を攻撃!!」

「くっ!!甘え、甘えんだよお前はよお!!罠カード《オーバーレイ・バーグラリ》!!相手のエクシーズモンスターが俺のエクシーズモンスターを攻撃するとき、そのモンスターのオーバーレイユニット1つを攻撃対象となった俺のモンスターに与える!」

「何!?」

「それじゃあ、《カオス・キマイラ・ドラゴン》の攻撃力は…!!」

「そうだ!これでこいつのカオスオーバーレイユニットは5つ!攻撃力5000で返り討ちだ!!」

《イーグル・シャーク》を奪い取り、カオスオーバーレイユニットとした《CNo.5亡朧龍カオス・キマイラ・ドラゴン》は《No.73激瀧神アビス・スプラッシュ》が起こした大波を光線で消し飛ばすと、そのままそのモンスターを捕食しようとした。

 

CNo.5亡朧龍カオス・キマイラ・ドラゴン ランク6 攻撃4000→5000

 

オーバーレイ・バーグラリ(アニメオリカ・調整)

通常罠カード

自分フィールド上のエクシーズモンスター1体が相手フィールド上のエクシーズモンスター1体の攻撃対象に選択された時に発動できる。

相手の攻撃モンスター1体のエクシーズ素材1つを、攻撃対象に選択された自分のエクシーズモンスター1体の下に重ねてエクシーズ素材とする。

 

「終わりだ!!ナッシュ!!!」

「ううん…」

「まだよ!」

侑斗と璃緒は分かっていた。

今、凌牙が伏せているカードがベクターの息の根を止める。

「終わるのは貴様だ!!速攻魔法《RUM-クイック・カオス》発動!」

「何!?そのカードは…」

「このカードは俺の場のナンバーズ1体をカオス化させる!」

《No.73激瀧神アビス・スプラッシュ》は食われる直前に青い光となり、オーバーレイネットワークに取り込まれていく。

「カオスエクシーズチェンジ!!現れろ、CNo.73!!渦巻く混沌の水流を突き破り、今、かの地へ浮上せよ! 《激瀧瀑神アビス・スープラ》!」

青が基調となっていた部分が紫に変化し、体の一部一部にカオスの粒子が宿している《No.73激瀧神アビス・スプラッシュ》が姿を現す。

すべては、ベクターに死の鉄槌を下すために。

 

CNo.73激瀧瀑神アビス・スープラ ランク6 攻撃3000

 

「こいつが貴様を闇へ葬る!《アビス・スープラ》!!《カオス・キマイラ・ドラゴン》を攻撃!この瞬間、《アビス・スープラ》の効果発動!俺の場のモンスターが相手モンスターと戦闘を行う時、ダメージ計算時に1度、カオスオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、ダメージ計算時のみその自分のモンスターの攻撃力は戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップさせる!!」

「な…何ぃ!?」

《CNo.73激瀧瀑神アビス・スープラ》の胸にカオスオーバーレイユニットが宿り、青いオーラがその身体を包む。

 

CNo.73激瀧瀑神アビス・スープラ ランク6 攻撃3000→8000

 

「こ…攻撃力8000!?」

あまりの状況にベクターは頭を抱える。

ミザエルの力を得ていなかったとはいえ、ドン・サウザンドを焼き滅ぼした今の自分の力は凌牙よりも上だと信じていた。

しかし、凌牙の力はベクターのその上をいっていたのだ。

「終わりだ、ベクター!!今こそ光無き深海へとその汚れた魂を抱えて沈むがいい!!」

胸と両肩にあるカオスの玉石から巨大な杖にカオスの力がこれでもかというくらいに注ぎ込まれる。

「ナッシューーーー!!」

「砕け散れ!!ベクターーーーーー!!!」

凌牙の叫びと共に、《CNo.73激瀧瀑神アビス・スープラ》はその杖で《CNo.5亡朧龍カオス・キマイラ・ドラゴン》を砕いた。

「うわあああああ!!(バカな…!?俺が…俺が負けるだと!?)」

地震の敗北を認められないまま、ベクターは人間の姿に戻り、吹き飛ばされた。

 

ベクター

ライフ500→0

 

「やった!!シャークが勝った!!」

「わーいわーい!!」

「ポポン!ポン!!」

嬉しそうにウィンダはポン太と手を取り合って回り、遊馬と小鳥は笑顔を凌牙に向ける。

「凌牙…やっぱりあなたは強いわ…」

璃緒は静かに蓮の形見を握る。

(蓮…もう少しだけ、あなたの言葉を凌牙に届けるのは待っていてくれる?)

「バカな…!?この俺が…負けただと!?」

ボロボロになった体のまま、ベクターは起き上がる。

「あの時と同じだ、ベクター」

「なんだと…!?」

「かつて、ここで対決した時も貴様はデュエルで負け、そして…お前に殺された恨みと憎しみを抱えた亡者たちと共に地獄へ落ちた」

「ふざけるな…!!俺は…!!」

「ベクター…」

「ベクター!!!」

冷たい感触がベクターの肩に伝わる、

その手を見て、ベクターは確信する。

凌牙に敗れた後、青い亡者となった人々にとらえられ、痛みと苦しみ、そして気持ち悪さに襲われ、悲鳴を上げながら死んだことを。

凌牙を待つ間に見た夢はその時を再現するものだった。

そして今、再び自分は亡者の手で地獄へ落ちることになる。

しかし、今度はただの地獄ではなく無間地獄へ。

「うわあ!!や…やめろ!!やめろーーー!!」

「彼らからベクターへの強い憎しみを感じる…」

「いつも悪は自分の力に溺れ、身を滅ぼす」

「あ…あの時と一緒にするんじゃねえ!ナッシューーーー!!」

叫びと共に、残っていた力を解放する。

それによって解き放たれた紫色の光線が亡者たちを焼き払った。

「今の俺は七皇もドン・サウザンドも超えた存在!俺が消えるなら、お前たちも道連れだ!!」

ベクターはさらに、その力で王宮を浮遊させる。

浮遊の影響によってか、それともそもそも王宮がもろいためか、崩壊を始める。

「く…まだこんな力が残っていたとは!」

「きゃあ!!ユウ!!」

「侑斗ーーー!!」

「ウィンダ!ポン太君!」

「きゃーーー!!」

「小鳥ーー!!」

侑斗がウィンダとポン太を、遊馬が小鳥を、そして凌牙が璃緒を落ちないように支える

「これが俺の力だ!!神となった、俺の力だーーーーー!!」

「勘違いするな、ベクター」

背後から声が聞こえ、ベクターははっとする。

初めてなのだ。

これほどまではっきりとしたその声を聞くことは。

「ドン・サウザンド!!」

「ドン・サウザンドだって!?」

「嘘!?だって、さっきベクターに…」

「愚かなベクター、我がこの程度でやられると思っていたのか?すべてはこの時が来るのを待っていたのだ」

はっきりとドン・サウザンドの声が聞こえるが、どこにもその姿が見えない。

「どこだ…!?どこにいる、ドン・サウザンド!!」

「アストラル、九十九遊馬、剣崎侑斗、ナッシュ、メラグ、我はお前たちの目の前にいる」

「何!?」

「ま…まさか…!!」

「ああ…」

自分たちの目の前にいるのはベクター。

そう、ドン・サウザンドはベクターの中にいる。

「時は来た。ベクター、お前はもう用済みだ。その力、我がすべて貰う」

「な…何ぃ!?」

恐怖に満ちた表情となったベクターの体に紫色のひびが入る。

そのひびは次第に大きくなり、更に最初は頬だけだったのだ胸や足、腕にもできる。

ひびの一つ一つから激痛がベクターを襲う。

「うわああああああ!!た…助けて…助けてくれーーーー!!死にたくねぇーーーー!!頼む、遊馬、ナッシュ、侑斗、メラグ!!今までのことはすべて謝る!!だから…助けてくれぇ――――!!」

涙を流しながら、敵である侑斗達に助けを求める。

だが、侑斗はウィンダとポン太を抱いて目隠しすると、目を閉じて首を横に振るだけ出った。

遊馬も小鳥を支え、ただ哀れそうにベクターを見つめ、凌牙にかけてはベクターを歯牙にもかけていない。

「だ…誰でもいい!!早く、俺はこんなところで…死にたくねぇーーーーー!!」

悲痛な叫びに対し、侑斗は彼に一言だけ言う。

「君が生きていれば…また大きな悲劇が生まれる」

「な…何ぃ!?」

「分かったか、ベクター。お前はここで死ぬべき男なのだ」

一部はドン・サウザンドに操られたために引き起こしたこと、しかし大部分は自らの意思で犯した罪。

今更許してほしいというのは虫がよすぎる。

死ぬほんの少しのところで許しを求めてももう遅い、すべては遅すぎる。

数えきれない命を奪い、幾度も人の心を踏みにじった罪は命をはかりにかけても償いきれない。

「い…いやだ…いやだ!!うわあああああああああああ!!!!!!!!!!!」

ついに脳にまでひびが入る。

そのせいか、ベクターは血の涙を流し、悲鳴を上げながら砕け散った。

神を騙りもののその最期を哀しみ、悼むものはどこにもいなかった。

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