ライフが0になるのと同時に、目の前からヌメロン・ドラゴンが姿を消した。
「はあ…はあ…はあ…」
デュエルが終わり、気が抜けたためか、侑斗は疲れ果て、座り込む。
「ユウ…大丈夫?」
「うん。今回は…かなり大変だったな…」
疲れとダメージのせいで、今の侑斗はウィンダの支え無しでは立てない状態だ。
「許せ、剣崎侑斗」
急に後ろから声が聞こえ、侑斗達は振り返る。
そこには本来の竜の姿に戻っているヌメロン・ドラゴンの姿があった。
「お前の…お前たちの世界が持つ意思の力、見事だ。長い時を待ち続けた甲斐があった」
「ヌメロン・ドラゴン…僕は…」
「何も言うな。もう、お前たちの世界にヌメロン・コードは必要ない。いや、むしろヌメロン・コードの存在がこのような戦いを引き起こしたのだ」
侑斗の目の前に再びすべてのナンバーズが現れる。
「ヌメロン・コードは世界を書き換える力。真の力を解放することができるのは我だけだ」
「じゃあ、ヌメロン・コードの一部になるというのは…」
「ここで我と戦い、敗れた者の末路だ。せめての情けとして、ヌメロン・コードにそのものが願ったものは我が叶えた」
「ヌメロン・ドラゴン…聞きたいことがある。僕を人間に生まれ変わらせ、遊馬君とアストラルを引き合わせた…」
「この扉のことか?」
急に侑斗とウィンダの後ろに、侑斗を生まれ変わらせた扉が現れる。
「これが…ユウが言っていた扉?」
「うん…。ということは…」
「そう、これは我が生み出した扉。ヌメロン・コードに閉ざされた我を解き放つ存在を探すための手段…」
「閉ざされた…?」
「お前の眼で感じとってほしい。我のすべてを…」
侑斗の風の目が光り始める。
「こ…これは…!!?」
フラッシュバックするありとあらゆる光景、そして彼の感情。
孤独を嘆き、自らの力をすべて使って世界を生み出したヌメロン・ドラゴン。
力を使い果たし、死にゆく彼は自らが生んだ世界の行く末を見届けることをあきらめきれなかった。
その思いがヌメロン・コードを生み出し、肉体を失った彼の魂がそれに閉じ込められた。
このくらい空間の中で幾千、幾万、幾憶もの時をたった1人で生き、そこから世界を見続けた。
孤独を恐れて世界を生み出したにもかかわらず、相変わらず孤独であることに変わりがない。
そして、ある時から彼の願いが変わった。
強靭な意思を手にするに至った命によって、ヌメロン・コードが破壊されることが願いとなった。
それはヌメロン・ドラゴンの記憶のすべてだった。
「ヌメロン・ドラゴン…」
ヌメロン・ドラゴンの思いを感じ、侑斗の眼から涙がこぼれる。
「ユウ…ヌメロン・ドラゴンって…ずっとつらかったんだね…」
ウィンダも彼の思いを感じたらしく、彼女も涙を流す。
そして、すべてのナンバーズが水色の水晶のような金属でできた剣に変わる。
「分かっている。我はヌメロン・コードの中でしか生きることができない。ヌメロン・コードと我の命は一体化している。しかし、お前たち命は…自らの手で世界を切り開くことができることを証明してくれた。九十九遊馬とナッシュがドン・サウザンドを、お前が我を…お前たちが言う神を倒すことで…」
ヌメロン・ドラゴンはしばらく目を閉じる。
そして、目を開くと最後の願いを口にする。
「剣崎侑斗、その剣で我を解放してほしい。お前たちの世界を神から、ヌメロン・コードから解放するのだ…」
「…」
剣を見て、侑斗はこれまでのことを思い出す。
精霊だったころの日々、人間になったからの日々のすべてを。
戦いの中で、ヌメロン・コードは使い人によってはあまりにも危険な存在となることをドン・サウザンドを見て知った。
「ユウ…」
ウィンダが侑斗の左手をやさしく握る。
そんな彼女に侑斗は静かにうなずくと、剣を手に取った。
「さあ…斬れ。今までのように、これからも自らの手で世界を切り開け。お前たちの歩みだけが道となることを忘れるな」
「はあああああ!!」
青き刃がヌメロン・ドラゴンに深々と突き刺さる。
黄金の竜の輝きが強まり、徐々に体が粒子となっていく。
「我が世界の子供よ…帰るがいい。帰りを待つ者たちのところへ…」
竜の肉体がすべて粒子となり、やがてその粒子は消滅した。
そして、侑斗達の周囲がまぶしい光に包まれた。
「おい…見ろ!!ヌメロン・コードが!!」
映像を見ていた遊馬が最初にヌメロン・コードの異変に気付く。
ヌメロン・コードに細かいヒビが入り、一瞬まぶしい光を放つと、粉々に砕け散った。
「ヌメロン・コードが…」
「きゃ!!今度は一体何が起こるの??」
その直後、コンピュータルームが光に包まれる。
光が消えると、侑斗とウィンダが姿を現した。
「ゆ…侑斗!!」
「ほほぉ、これは…派手な戻り方だな」
「みんな…ただいま」
「ポポン!!オイラを忘れるなポン!!」
精霊状態のままになっているポン太が侑斗とウィンダの周囲を飛び回る。
人間世界に戻って実体化できなくなり、遊馬と小鳥にかまってもらえずさびしかったようだ。
「狸さん…」
「…。どうやら、戻ってきたのは君たちだけじゃないみたいだ」
「え…?」
バイロンが町中に存在するカメラからの映像を画面に表示する。
そこにはロビンやアンナ、鉄男、ゴーシュ、ドロワ、六十郎、闇川、クリストファー、トーマス、ミハエルの姿がある。
彼らだけではない。
アリト、ギラグ、ミザエル、ドルベ、そして蓮の姿もあった。
「みんなぁ!!」
「もしかして、ヌメロン・ドラゴンがよみがえらせてくれたのかな…?」
そして、映像は次にハートランド上空を映し出す。
そこにはカイトとオービタル7が乗っているシャトルの姿もあった。
(終わったんだ…。これで…)
侑斗の右手にはすべてのナンバーズが握られていた。
「どうやら…すべて終わったようだな」
バリアン世界と人間世界をつなぐ光の柱に取り込まれた人々が復活するのをヒイロは見届ける。
その中には徳之助の姿もあった。
「もしかしたら、俺の助けは不要だったのかもしれないな」
「マスター、早く帰ろう。龍可ちゃんとルカス君が帰りを待ってるよ」
「そうだな…いつまでもあいつを待たせるわけにはいかないからな」
そして、数か月後。
ハートの塔のコンピュータルームにはカイトとクリストファー、バイロン、Dr.フェイカー、そしてアストラルがいる。
「ということは、アストラル世界とバリアン世界と融合したということか」
「そうだ。バリアン世界の住民だった人々もアストラル世界で暮らしている」
アストラルからの答えをカイトはノートにまとめる。
アストラルは現在、人間世界とアストラル世界を行き来する日々を送っている。
元バリアン世界の住民とアストラル世界の住民のトラブルの調停やカイトたちの異世界研究への協力を行う忙しい日々で、相変わらず人間世界では皇の鍵の周囲にしか移動することができない。
エリファスも復活したものの、今は世界を見守るだけで、たいていのことはアストラル達に任せている。
「ヌメロン・コードによるものか…」
「おそらく。本来世界がぶつかると力の弱い頬の世界が滅びる。だが、衝突する前に融合を始め、1つの世界になった。どちらの世界にも被害が出ないように。それから…」
「父さん!兄さん!!」
コンピュータルームの中にハルトが入ってくる。
その後ろにはオービタル7とコーヒーが入ったコップをお盆に乗せて運んでいるオボミの姿もある。
あの戦いの後、なんとオービタル7とオボミが結婚したのだ。
今ではハルトがカイトから機械について教えてもらいながら、2人の子供を作ろうと頑張っている。
「ハルト。そうか、もうこんな時間か」
「それと、遊馬がそろそろ皇の鍵を返せって」
「そうか。なら遊馬に伝えておいてくれ。もう少しアストラルに聞きたいことがあるから待てと」
カイトは近くの椅子に座り、静かにコーヒーを飲んだ。
(さあさあ皆様お待たせしました!!極東デュエルカップ決勝戦!何ということでしょうか!!赤コーナー、現極東デュエルチャンピオンのⅣこと、トーマス・アークライト!!そして青コーナーは変幻自在のエクシーズ召喚を見せつけるシャークこと神代凌牙---!!WDCで戦ったあの2人が再び激突するーーー!!)
台湾の首都、台北のスタジアムで多くの観客が見守る中、凌牙とトーマスが対峙する。
その観客の中には牛肉麺を食べている瑠那の姿もあった。
「トーマス、てめーからチャンピオンの座を奪いに来たぜ」
「奪えるものなら奪ってみろ凌牙!俺を簡単に倒せると思うなよ?」
「分かっているさ。俺がそのことを一番よく知っているからな」
《No.15ギミック・パペット―ジャイアント・キラー》と《No.47ナイトメア・シャーク》がぶつかり合う。
「ナッシュ…いや、凌牙。楽しんでいるな」
テレビで凌牙とトーマスのデュエルをドルベはじっと見ている。
彼は今、スウェーデンの小さな寮にいる。
「他のみんなも元気にしているようだな…」
他の仲間たちのことを思い出す。
アリトはボクシングチャンピオンになるため、ラスベガスへ行った。
ミザエルは各地で武者修行をしながら、プロリーグへの出場を目指している。
ギラグはなぜか日本の田舎で警察官になった。
もちろん、ポン太は彼についていき、今では狸とパトロールをする警官として地域の名物のようなものになっている。
だが、ベクターは復活することはなかった。
彼らは人間として生きていくことを決心したのだ。
「おい新入り!!何をやっている!もうすぐ練習だぞ!」
「あ…はい、すみません!!」
録画設定を済ませ、ドルベは大急ぎで外に出る。
今の彼の服装は灰色を基調とした勝負服だ。
青々としたグラウンドには佐目毛の若い馬が待っていた。
島のカード屋では…。
「いくぜ!《希望皇ホープ》でダイレクトアタックだ!!」
「ぎゃああ!!」
対戦相手の少年
ライフ1000→0
「えー、九十九遊馬、決勝進出!」
「よっしゃあ!!絶好調だぜ!」
ここまで遊馬は高い力量で勝利を収め続けている。
そんな彼を小鳥は温かく見守っている。
といっても、まだ遊馬は小鳥の想いに気づいていない様子だが。
ナンバーズを巡る戦いによって、遊馬はアストラルが認めるほどの高い実力を手に入れたのだ。
また、アストラル世界に飛ばされていた両親が戻ってきたこともあるだろう。
最近では侑斗に勝つこともある。
「それでは準決勝第2回戦。遊馬君と決勝で戦うのは誰でしょうかねぇ。対戦カードは竜司君とミハエル君だ!!」
「ふああ…やっと俺の出番ー?」
「竜司さん、本気でいきますからね?」
欠伸をする竜司と気合十分なミハエルが対峙する。
ミハエルは現在、高校卒業まで留学生として日本で生活することになった。
そのため、現在は遊馬の家で居候している。
一方、チャーリーは戦いの後のどさくさに紛れてどこかへ旅立ってしまった。
そのためしばらく明里はかなり不機嫌だったが、頻繁に彼から手紙が来るようになり、今では遊馬曰く、頬を赤くしながら読んでいるようだ。
一方、蓮の家では…。
「バトル!私は《ラグナ・インフィニティ》でダイレクトアタック!!」
「どわあああ!!」
蓮
ライフ2000→0
「くっそー…また負けかよ…」
悔しそうに璃緒の場の《CNo.103神葬零嬢ラグナ・インフィニティ》をじっと見つめる。
「当然よ。あなたの《グレン》はドラゴン族モンスターを装備して攻撃力がアップする。《ラグナ・インフィニティ》が付け入る隙はいくらでもあるわ」
「だったら見てろよ!絶対に《グレン》で《ラグナ・インフィニティ》を倒してやるぜ!」
「ふふ…期待しないで待ってるわ、蓮」
やさしく微笑むと、窓から外を見る。
「それにしても、精霊世界の天気はどうかしら?」
「ああ…そういやあ侑斗達は今精霊世界にいるんだったよな?」
「うーーん!!やっぱり気持ちいー!」
緑が広がる山の頂上で、ウィンダは大きく背伸びをする。
「遅くなっちゃったけど、旅行できてよかったよ」
精霊たちの頭をなでながら、侑斗はウィンダをやさしく見つめている。
天気は晴天で、旅行には最高の環境だ。
「ねえ…ユウ…」
「うん?」
「私達…これからもずっと一緒にいられるよね?」
急に不安げな表情で侑斗を見つめる。
「私、もういやだよ。いきなりユウと離れ離れになるの」
「ウィンダ」
「ふぇ!?」
急に侑斗に何かをかぶせられ、変な声を出してしまう。
「あんまり上手にできなかったけど…」
「ユウ…」
かぶせられたものを見て、ウィンダの眼が輝く。
それはこの山の中で咲いている花で作った花冠だ。
「大丈夫だよ、ウィンダ。もう絶対に離れない。ずっとそばにいる。約束するよ」
「ユウ…うん!!」
再び花冠をつけ、飛び切りの笑顔を侑斗に見せた。
そして、これはどこか別の場所で、そしていつか別の時での物語。
ゴミひとつなく、人一人いない浜辺。
季節は春で、海開きにはかなり早すぎる。
にもかかわらず、この浜辺では左腕以外すべてが埋まっている状態の人物がいる。
左腕にはデッキがセットされているデュエルディスクが装備されていた。
遊戯王ZEXAL 風の戦士たちは今回で終了になります!
これ、本当に完結できるのか??ってかなり不安でしたが、何とか描き切りました。
相変わらず誤字が多かったですが(泣)。
最後まで読んでくれた人、どうもありがとうございます!