大空と死の支配者   作:ばすけばすけ

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エ・ランテル

「チェーロさんあそこがエ・ランテルの入口になります!!ハムスケさんがそのまま並んでも大丈夫だと思いますよ。」

 

「あそこがエ・ランテルなんだ。行商人と冒険者かな?がたくさん並んでるね。ハムスケお願いできる?」

 

「あそこに並べばいいのでござるな。心得たでござるよ。」

 

「ねえレイナ。エンリはいつになったらチェーロが男だって気づくと思う?というよりも女だと思っているのはずなのになんで顔を赤くしてモジモジしているのかな。」

 

「そうですわね。チェーロさんも隠しているわけではありませんが、私達から伝えないと気付けないのではないのでしょうか。あれは肉欲というよりも憧れと羨望かと。どうしてネムはすぐに気づきましたの?」

 

「ん~~~っとねーー。お姉ちゃんよりお胸がないし、抱っこしてもらった時にお父さんみたいにからだがかたかったの!」

 

「ネムはいがいとするどいしどきょうがあるよ!」

 

「うん!!女はどきょうってかんじで生きてるよね。」

 

カルネ村を出発した一同は一度だけ野宿をし翌日のお昼前にはエ・ランテルの検問に到着していた。検問が見えるとエンリが嬉々としてチェーロに対し報告をしていた。エンリがチェーロに向ける熱い視線にアルシェは疑問に感じていたが似たような視線を浴びてきたレイナがその意味をアルシェに説明すると納得したのか頷く。

 

エンリはチェーロのことをいまだに女性と認識しており、ハムスケの主はチェーロと聞くとエンリのチェーロに対するイメージが優しいだけではなく、とてつもなく強い女性だということで尊敬の眼差しでみるようになっていた。

ネムはカルネ村を出発してすぐにチェーロのことを男性だと認識してはいたが、正直な話男性だろうが女性だろうが私には関係ないかなと達観した様子で姉には伝えずにクーデリカとウレイリカと一緒に遊んでいた。

 

クーデリカとウレイリカは初めてできた貴族ではない平民の友人の行動に最初は驚いていたが、これから生きていくにはこういった強さが必要なのかとネムから色々と教わっていた。二人もただ無邪気に馬車の旅をしていたのではなく自分たちの立場をきちんと理解していた。

 

そんな二人の成長にアルシェは悲しんだが、チェーロやレイナからも説得されて二人の決意を無駄にするのではなくてきちんと守れるようにと魔法の勉強により一層力を入れていた。

 

レイナもそのことに刺激を受け、チェーロやハムスケというわかりやすい絶対的強者に模擬戦を挑むようになっていた。

 

 

 

大人しく入門審査を受ける列の最後尾に並ぶんでいた一行であったが、順番待ちの人々の視線が一気に集中した。周りの人々の反応はハムスケに怯えたり、怯えて暴れている馬を必死に落ち着かせたり、チェーロを筆頭に見目麗しい女性陣に目を奪われて固まってしまったりと大混乱の前触れの様相を呈してきた。

 

 

程なく詰め所から門衛の兵士らしき人間が走り出てきてチェーロ達に話しかけてきた。

 

「あのっ、あなた方は先に処置させて頂きますので、こちらにおいで頂けますか?」

 

「あれ?でもみんな待ってるんでしょ?順番抜かしちゃっていいのかなぁ?」

 

「どうしますかチェーロさん?」

 

「んーー本来ならいけないことだけど、ここはその申し出を受けた方が周りの人達のためかな?皆さんもよろしいでしょうか?」

 

「ひゃい!!」

 

「構わないから行ってくれ!!」

 

「おーーーこれがとっけんかいきゅうのちから!」

 

「ハムスケによるじゃくにくきょうしょく!」

 

「二人とも!この対応ではしゃいではいけませんよ!!」

 

「「はーい」」

 

「レイナ・・・うちの妹たちは落ち込んでも天使。」

 

「アルシェさんにも教育が必要なのかしら・・・。」

 

「ごめんなさい。必要ない。」

 

門衛からの申し出に対しネムが疑問の声をあげてエンリが不安そうにチェーロの服を掴みながら尋ねると、チェーロは笑顔を浮かべながら列の前方に声をかける。その笑顔をみた人達は男女問わず顔を赤くし頷き、馬を宥めるのに必死で見ている余裕のない人達からも懇願に近い叫び声があがった。

その光景をみたクーデリカとウレイリカは目を輝かせながら喜んでいたが、レイナから叱られるとしょんぼりとしながらアルシェのローブを掴んでいた。ローブを掴まれたアルシェは嬉しそうにレイナに報告するが、呆れたレイナに睨まれるとふざけ過ぎたと素直に謝罪した。

 

 

詰め所に到着しチェーロ達は中に入るがハムスケは入れずに外で待機することになる。魔獣の見張りの門衛は喋るハムスケを前に頼むから機嫌を損ねることをしないでくれと中の状況にハラハラし静かに死を覚悟していた。

 

「まず身分証明になるようなものはお持ちですか?」

 

「私達は帝国で活動しているカッパーの冒険者です。今回、活動拠点を王国に移そうかと思い移動してきました。私はチェーロ、こちらの剣士がレイナ、魔法詠唱者がアルシェです。アルシェに左右から抱き着いてるのが 「クーデリカ!」「ウレイリカ!」「「せーの!!二人はリカリカ!」」 アルシェの妹の二人です。そしてこの二人がカルネ村からエ・ランテルでの出稼ぎをするために一緒に来たエンリとネムの姉妹です。」

 

「確かにカッパーのプレートですね。そちらの二人についても何度が見た事がありますので大丈夫です。それであと、あの大きな魔獣はなんなのですか?」

 

「あれはハムスケと言って、トブの大森林森の賢王なんですよ!!チェーロさんが倒して使役しているんです!」

 

「エンリ落ち着いて。チェーロが困ってる。」

 

門衛は見目麗しい女性陣に見惚れていたが、自身の役目を全うしようと頭を振って質問をする。その問いに代表してチェーロが答えていくが、途中でクーデリカとウレイリカは気に入ったのか例のポーズを決めた自己紹介をし始めた。その光景に詰め所が和やかな空気になる。門衛も笑顔を浮かべているが、神妙な顔つきで外の魔獣について確認するとエンリが鼻息を荒くし興奮しながら説明をし門衛も驚愕の表情を浮かべながらチェーロを凝視していた。

それにチェーロが苦笑いを浮かべ、アルシェは同じ女として酷い顔をしているエンリを心配し止めに入った。

 

そのまま問題なく詰め所を通過した一行は、まずは冒険者組合に向いハムスケの魔獣登録をすることにした。


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