そのまま王都へと到着したチェーロ達一行は宿屋にエンリとハムスケを残して目ぼしい依頼の確認や討伐したモンスターの部位を換金しに冒険者組合に顔を出していた。
「良い任務はありませんでしたわね。」
「貴族や商人の護衛任務ならあるけど、いまは関わりたくない。私達は女性だけのチームだし貴族に目をつけられる可能性もある。」
「そうだね。受けるならハムスケもいるからモンスター討伐や採取系が理想かな。一度宿屋に戻ってからみんなでご飯を食べに出かけようか。(女性だけって・・・うん。スルーしよう。)」
「でしたら貴族も来るお店よりも組合が運営しているあちらのお店の方がよろしいですわね。」
「ちょっと騒がしいみたいだけど、綺麗そうだから・・・!!!」
「どうしたのアルシェ?顔色悪いけど大丈夫?ハムスケも一緒に食べることができたら嬉しいんだけど。口で説明するよりもハムスケと一緒に来て聞いてみようか。」
良い依頼は朝一になくなってしまったようで、残っていたのは貴族などの護衛や来た道を戻るような商人の護衛などで、チェーロ達は余計なトラブルになりそうなことには関わりたくないと考えて王都観光と食事をすることにした。王都の冒険者組合は冒険者と貴族達が衝突しないように冒険者達ご用達の飲食店と連結していた。
アルシェは妹達でも大丈夫かとチラッと内装を確認し、問題ないと判断するが、奥の一角に座っている集団を見るとビクッと肩を震わせて顔色を悪くしていた。チェーロとレイナはアルシェのタレントに関して聞いており、その変化にも気づいていたが、この場で聞くのはまずいと判断し足早に外へと移動した。
「アルシェさん大丈夫ですか?あの奥にいた冒険者達ですわよね。あれは青の薔薇かと・・・アデマンタイト級冒険者達ですわね。」
「あれがアデマンタイト級ね。魔法詠唱者らしきマントにマスクの小さい子もいたけどその子かな?・・・・アルシェ歩ける?」
「大丈夫。そう、あれが青の薔薇。なら納得。あ!やっぱり歩けない。チェーロお姫様抱っこでお願い!!」
「大丈夫そうですわね。俵抱きでよければ私が運びますわよ?」
「遠慮する。」
「ハハハ それで、なにが納得なの?」
「ん・・・。あのマスクの女の子。第五位階魔法の使い手。でもオーラが人間のものではなかった。たぶん亜人だから顔を隠しているんだと思う。あと白い鎧の女の人も第五位階魔法が使えると思う。」
「たしか・・・イビルアイと言ったかしら。陛下が興味を示していたと記憶にありますわ。白いのはリーダーのラキュースですわね。そちらは蘇生魔法が使用でき剣の腕も相当な神官戦士だったかと。」
「さすがレイナさん詳しいね。亜人の可能性があるんだ。差別とか偏見がないいいチームなのかな。ちょっとお話してみたいなー。でもアルシェの体調も心配だし、違うお店にする?」
「私なら大丈夫。いきなりで驚いただけ。いまの私はレベルもあがったし第七位階も使えるから意識していれば問題ない。あとはチェーロが隣にいてくれれば完璧。」
「意識してなくても大丈夫にならないといけないのですよ?でも訓練相手には丁度いいかもしれませんわね。」
「レベルと経験が追い付いてないのかもね。俺でいいならアルシェやレイナが望む限りは隣にいるよ。」
アルシェが見て感じたことを話し始めると、レイナがその情報に補足する形で説明を始める。やはり帝国四騎士ともなると敵対国の主要人物は頭に入っているようで、チェーロは関心したように頷きながら聞いていた。
またイビルアイが亜人の可能性があり、その亜人を仲間にしている青の薔薇とは友好的な関係を築きたいなと好印象を受けたチェーロだが、レイナとアルシェは興味がないらしく経験を積む相手として話を進めていた。
一方、飲食店にいた青の薔薇はというと
「おい。あの冒険者、たしかこの前野宿していたやつだったよな。」
「ええ。三人で一チームなのかしら。でもあの槍を持った女の人はどこかで見たことがあるような気もするのよね。ねぇイビルアイどこだったかしら?」
「私が知るか。だがあの冒険者達が持っていたアイテムは中々のものだぞ。下手したらラキュースの魔剣と同等かそれ以上かもしれん。それにあの魔法詠唱者、私を見て目を見開いて狼狽えていた。なんらかのタレントを使用した可能性が高い。」
「それなら接触して聞いてみるしかない。私が身体に聞くのが一番早い。」
「私も行く。あの冒険者が男の子である可能性は捨てきれていない。他の二人はティアが相手していい。」
「確かめるなら二人一緒でやるべき。」
「身体に聞くって・・・はぁ いきなり襲うのはやめなさい。でもイビルアイの秘密に気が付いた可能性があるなら接触した方がよさそうね。ここで食事をしてくれたら嬉しいのだけど。」
「あの冒険者からは童貞の匂いがしないんだよなーー。卒業済みか女かのどっちかだとは思うが。卒業済みだった場合、相手はあの二人のどっちかの可能性があるな。」
白熱していくガガーランとティア、ティナの会話に対してラキュースは頭を抱えて、イビルアイは無関心を決め込んでいた。
補足
アルシェのタレントはレベルが上がったことにより変化しています