大空と死の支配者   作:ばすけばすけ

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接触

「その必要はない。《クリーン/清潔》」

 

「戦闘系だけじゃなくて生活に役立つ魔法も所得しているんですね。ちなみに第何位階まで使用できるんですか?」

 

「ちょっと待って!チェーロさん、その質問にはお答えすることはできません。」

 

「フフ そうですよね。じゃあ質問タイムはここまでにしときましょう。行くよレイナ、エンリ・・・アルシェは、まだ回復しなさそうだね。」

 

エンリはネムと手を繋いで、レイナはクーデリカとウレイリカの手を握り入口へと向かう。チェーロは気絶しているアルシェをお姫様抱っこをして入口へと向かおうとするが、何かを思い出したように立ち止まり、イビルアイに耳打ちした。

 

「アンデットってことは仲間も知っているみたいですね。なら安心です。」

 

「お前!!」

 

「では蒼の薔薇のみなさん。また今度お会いしましょう。」

 

耳打ちされたイビルアイはチェーロに掴みかかろうとするが、チェーロはヒラリと躱してすぐにお店の外へと移動した。

 

「どうしたイビルアイ?」

 

「ここでは話せん。あいつを追いたいが・・・くそ!宿に移動するぞ。」

 

「「私達は尾行してくる。明後日の朝までには帰ってくる。」」

 

「やめなさい。とりあえず全員で宿に戻るわよ。イビルアイが言われたことも気になるし、追わないってことは敵対行動をしそうってわけじゃないんでしょ。」

 

「ああ、それなら有無を言わずに向こうから攻撃してくるはずだ。」

 

ティアとティナはチェーロ達の後を追いたそうにしていたが、ラキュースの指示もあり全員で宿へと移動する。

 

「それで、何を言われたの?」

 

「私のことをアンデットだと見抜いていた。」

 

「は!?そりゃあ、つまりあれか!討伐するぞってことか?」

 

「いや、お前たちも私がアンデットだと知って行動していると判断したようで、なら安心ですねって言っていたから、討伐をする気はないんだろう。」

 

「つまりチェーロさん達も亜人との共存に理解を示しているのかしら!!それならばぜひまたお話したいわ!」

 

「ならいますぐにでも宿に突撃するべき。」

 

「イビルアイの仮面の下も気になっていたからチェーロの裸と交換条件にすればいい。」

 

「だがよラキュース。イビルアイがアンデットだって気づいたってのは誰かのタレントが原因なんだろ?」

 

「それなら最初に動揺していたアルシェという小娘のタレントだろう。あの動揺はアンデットだって気づいたことによるものだ。」

 

「そうね。それなら納得いくわ。アンデット系を探知するタレントかしら。」

 

「アイテムの効果を無効化するものかもしれん。探知系ならこの指輪で対策をしているしな。いままでの似た様なタレント持ちでもこの指輪の効果を破ったものはいない。」

 

「アイテムの無効化なら今度の作戦に力をかしてほしい。」

 

「そのままチームで仲良くなってムフフな展開希望。」

 

「ん~たしかにいたら便利だが、戦闘面では役に立ちそうもないぞ。どう高く見積もっても第三位階までしか使えないだろう。それよりもレイナという剣士なんだがよ。あいつ帝国の四騎士で見た事があるような気がするんだよ。あの重爆に似ていないか。」

 

「私も誰かに似ているとは思ってはいたけど、さすがに帝国四騎士はないと思うのよ。重爆って四騎士でも最大の攻撃力を誇るって話でしょ。皇帝が手放さないと思うのよね。」

 

「それもそうか。ん?」

 

蒼の薔薇の面々がチェーロ達のことを話し合っていると部屋の扉がノックされた。

 

「お!童貞じゃないか!宿に訪ねに来たってことは俺に喰われに来たってことでいいんだよな。安心しろよ。すぐに終わる。」

 

「いえ違います。ラナー様がラキュース様にお城に来てほしいと言うことを伝えに参りました。今回はドレスではなくていいそうです。私は宿の外で待っておりますので、準備が出来ましたらお声をかけてください。」

 

「ラナーが?なにかしら。ちょっと行ってくるわね。」

 

「「私達もチェーロ達が泊まっている宿を探してくる。」」

 

「俺は・・・ちょっと飲み直してくるかな。イビルアイも来るか?」

 

「私は・・・ティナ達の方に着いていこうかと思う。」

 

「「「「え!?」」」」

 

「イビルアイがデレた?」

 

「まさかの発情期?」

 

「違う!ただあいつが言っていた安心の意味が気になるだけだ。」

 

「まあイビルアイも一緒ならいいかしら。くれぐれも騒ぎになるようなことはしないようにね。じゃあ私はラナーにあってくるから。」

 

いつもなら興味を示さないイビルアイが着いてくることに他のメンバーは驚くがラキュースからしたらストッパー役がいることに安心したのか、笑顔で城に向かって行った。

 

 

〜〜〜〜〜〜白百合side〜〜〜〜〜〜

 

「お待たせハムスケ。結局入れなくてごめんね。」

 

「某の偉大なる姿ならしょうがないのでござるよ。アルシェ殿はどうしたのでござるか?」

 

「ずっと一人だと寂しいだろうし、入れるお店を探しておくよ。ちょっと色々あってね。」

 

「・・・・ハムスケさん。ウレイリカとクーデリカをお願いします。二人ともちゃんと掴まっているんですよ?」

 

「「はーい!」」

 

「心得たでござるよ。」

 

「ネムはどうする?」

 

「私は歩こうかな。」

 

「チェーロさんちょっと失礼。・・・アルシェさん。起きているのはわかっていますわ。いますぐに起きないとあの忍者の前に投げ捨てますわよ。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ン・・・・・・・あれは夢?そしてこれが噂のお持ち帰り、まさかの送り狼・・・・レイナ痛い!!わかった!自分で歩く!!」

 

馬車置き場で食事をしていたハムスケとも合流し宿へと戻る一行。ハムスケは抱きかかえられているアルシェを心配そうに見ていたが、レイナが違和感を感じてアルシェだけに聞こえるように耳元でなにかを囁く。するとアルシェが少し身動ぎをしたかと思うとゆっくりと目を開きチェーロの首に腕を回して顔を近づけていくが、途中でレイナから頭を叩かれて涙目になりながら自分で歩き出した。

 

「「お姉ちゃん大丈夫?」」

 

「大丈夫。でもレイナは酷い。少しは優しくしてほしい。」

 

「さっきのはアルシェさんが悪いかと。私もされてみたいな。」

 

「お姉ちゃんなら頼んだらしてくれてると思うよ。」

 

「確かにエンリならまだ・・・やっぱり全体的に華奢な方がいいのでしょうか。そしたら私も・・・・」

 

「ム?」

 

「キャァッ!」

 

「っと!大丈夫ですか?」

 

アルシェがレイナに抗議をしながらチェーロからは少し離れて女四人で固まって会話を続けていた、ハムスケの上からは姉を心配している妹たち二人の姿もあり、チェーロはその平和な光景に癒されながら超直感の赴くままにハムスケの横に移動する。すると横道から飛び出してきた女性がハムスケの毛に衝突してきた。チェーロは女性が地面に倒れこむ前に抱き寄せて身体を支える。

 

「ありがとうございます。ごめんなさい。急いでいるのこれで失礼します。・・・いッ。」

 

「足首を捻ったみたいですね。ハムスケ、この人も背中に乗せてあげて、目的地まで連れてってあげよう。」

 

「ウム。某は乗り物ではないのでござるが・・姫の頼みであるならば致し方ない。」

 

「いえ、私は・・・・」

 

「落ちないようにちゃんとつかんだほうがいいよ。」

 

「からだぜんたいでかかえこむのがコツなのです。」

 

女性は先を急ごうとしたが、足首を捻挫してしまったらしくチェーロから有無を言わさずにハムスケの上に乗せられて、クーデリカとウレイリカからハムスケの乗り方を教わっていた。

 

「見つけたぞ!!おい!!ちょっと待てや!!コラ!」

 

「その女を勝手に連れてかれては困るんだよ!!」

 

「痛い目にあいたくなければ大人しく言うことを聞くんだな!」

 

「俺たちを!!誰だと思ってやがる!!ヒッなんでこんな街中にこんな魔獣がいるんだよ!」

 

「五月蠅い喚くな。お前たちは大人しく引っ込んでいろ。お姉さん方、失礼いたしました。そちらの女性はうちの従業員でしてね。職場から逃げ出したんですよ。これから大事な仕事があるんでこちらに引き渡していただくことはできませんかね?」

 

「助けてくださいっ! 捕まったら私は、殺されてしまいますっ!」

 

「ツアレは黙っていろ!!」

 

「お姉さん方は冒険者ですよね。こちらとしては大貴族の方からも支援をしていただいているお店になりまして、下手なことには関わらない方がいいかと思いますが。小さい御嬢さんもおりますし、この意味わかってもらえますかね。」

 

すると同じ横道から数人の男達が飛び出してきてチェーロ達を囲みだす。最初は五月蠅く喚いていたがハムスケのことが視界に入ると怯えたように萎縮し始めた。一人身嗜みがきちんとした黒服の男のみが平然としながら話しかけてきた。

 

元々、警戒をしていたアルシェ達ではあったが、小さいクーデリカとウレイリカ、ネムを見ながら小さい御嬢さんという発言を聞いた瞬間に各々の武器に手をかけていた。またエンリはネムをハムスケに乗せることにより危険にも対応できるように行動していた。

 

「はぁ 殺されると聞いて、はい、そうですか。とは言えないかな。初対面とはいえ、そんな泣きながら助けを求められたらね。皆、いい?」

 

「私は大丈夫。それよりもさっきの発言は許さない。」

 

「私はチェーロさんの決めたことに口を出す気はありませんわ。」

 

「私も大丈夫です。このままツアレさんを引き渡したら後悔しちゃいそうですし。」

 

「某に刃向うとはいい度胸なのでござる。身の程を思い知るがいいでござるよ!」

 

「「ハムスケ GO!!」」

 

「そうですか。今は退きますが・・後悔のないようにお過ごしください。」

 

チェーロは溜息を吐きながらもツアレを守ることに決めて、それをアルシェやレイナ、エンリは了承した。すると黒服の男は一言だけ言葉を残して薄気味悪い笑みを浮かべながら来た道を引き返していった。

 

「ありがとうございます。それと巻き込んでしまいごめんなさい。」

 

「とりあえず話は宿屋に帰ってから聞こうかな。四人はそのままハムスケの上に、ハムスケは付けられていないか確認して。三人も周りには警戒してね。」


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