「ここが例の冒険者達が泊まっている宿屋だな。」
「はい。宿屋の責任者と一帯の警備の人間は買収済みです。また周りにも人を配置していますので、自由に暴れてください。」
「ふん 騒ぎになるほどの実力が相手にあればいいがな。いくぞ。」
六腕の面々は宿屋に向かいながら下っ端に状況を確認していた。念のため、根回しを頼んだのはいいが相手は格下の冒険者だという意識があり、襲撃をするにもかかわらず堂々と宿屋の正面から突入しようとしていた。
「ム 来たみたいでござるぞ。」
「遅い 眠い 夜中に襲撃はチェーロ以外お断り。」
「本気で正面から来るなんて。でも宿屋と警備の人間にもちゃんと根回しをしているところを見ると一筋縄ではいかない相手みたいだね。トップの人間が優秀なのかな?」
「まさかお出迎えをしてくれるとはな。」
六腕が宿屋に到着すると宿屋の入り口にてチェーロとアルシェ、ハムスケが待機していた。
「俺たち八本指に手を出したことを後悔しろ。おい!俺は真ん中の奴を相手にする。デイバーノックとエドストレームは魔法詠唱者、ペシュリアンとマルムヴィストは魔獣を相手にしろ。魔獣は構わないが魔法詠唱者は殺すなよ。」
~~~アルシェside~~~
「私の相手はお前たち二人?なら役不足。さっさと終わらせて天使達の寝顔を鑑賞する。」
「ふざけたことを、ただの魔法詠唱者如きがこの不死王様を侮辱するか。井の中の蛙とは良く言ったものよ。エドストレーム!!手出しは無用!格の違いというものを教えてやるわ!」
「相手の力量もわからないなんて貴女馬鹿ね。私は楽だからいいけど。」
「くらえ!《ファイヤーボール/火球》」
「《ファイヤーボール/火球》。」
「いつまで続くか見物だな。《ファイヤーボール/火球》」
「もしかしてそれだけ?《ファイヤーボール/火球》」
「エルダーリッチと魔力を競い合うなんて愚かね。」
アルシェは怠そうにしながらも後ろの宿屋に被害がでないように避けずに魔法を相殺することにしていた。その怠そうな姿を見て、デイバーノックとエドストレームは早々に魔力不足を起こしたのだろうとほくそ笑んでいた。
~~~ハムスケside~~~
「某の相手はお主達でござるか。」
「油断はしない。いくぞ!空間斬!」
「キエエエエエエェエエエエ」
ペシュリアンとマルムヴィストは目の前にいる魔獣から強者の気配を感じ取り、油断などせずに鞘から抜き放つ一閃で、三メートル先の目標を両断する魔技、”空間斬”を放ち、致死の猛毒が塗られたレイピアを自身が出せる最速のスピードにて放っていた。
~~~チェーロside~~~
「安心しな。殺しはしない。抵抗するなら痛い目にはあってもらうがな。」
「ん~~自分の力に絶対の自信があるのかな?でもその余裕は命取りだね。久しぶりに胸糞悪いし見たところモンクみたいだから、俺も素手で相手をしてあげるよ。」
「ほぅ、女らしく爪で引っ掻く程度なら……存在する事を許容してやったんだがな。一人くらい五体満足じゃなくてもいいだろう。ふん―――ッ!」
一気に踏み込み、チェーロへ拳をぶち込む、チェーロも拳を突き出しており、拳と拳が派手にぶつかり周辺に風圧を発生させた。
「ッ!!」(やるじぇねえか。)
拳に痺れを感じたゼロは一旦後ろに跳躍し、ここで殺しておいた方が賢明と判断し、更にギアを上げ全身に刻まれた《呪文印/スペルタトゥー》を解放する。
《足の豹/パンサー》
《背中の隼/ファルコン》
《腕の犀/ライノセラス》
強化されたスピードとパワーで右腕を振り抜いて胴体へと叩き込んだ。すると轟音を轟かせて辺りは砂煙が舞い二人の姿を隠す。
「あらあら、殺すなって言われていたのに。あれじゃ助からないわね。お仲間が心配?」
「フハハ よそ見をするとは愚かなり《ファイヤーボール/火球》《ファイヤーボール/火球》《ファイヤーボール/火球》」
「もう飽きた。それにチェーロなら無事。あんな肉ダルマにやられたりなんかしない。《トリプレットマジック/魔法三重化》《ファイヤーボール/火球》」
「えい!でござる。これは珍しい武器でござるな。」
「俺の!俺の腕が〜〜。」
「マルムヴィスト!くそ、離しやがれ!」
「離していいのでござるか?なら二人まとめて死ぬでござるよ。《武技/斬撃》。レイナ殿との特訓の成果でござる。」
アルシェは眉を寄せながら口元を押さえてチェーロの方に意識を向けていた。それを仲間を心配してと判断されたが、アルシェの内心は“煙たくしやがってあの肉ダルマ野郎”である。火球しか使用してこないくせに口が良くまわる相手にイライラしていた為、ストレスゲージが破裂寸前だった。
ハムスケは尻尾で空間斬を絡め取ると、刺突を放つために近づいていていたマルムヴィストの腕を爪で引っ掻いて切り離していた。ペシュリアンが剣を後ろに引くタイミングで剣を離して、バランスを崩した後にマルムヴィスト諸共二人まとめて切り裂いていた。
「あがああああああああぁぁぁ お前!何をした!?」
砂煙が晴れると腕を掴まれ、後ろにねじり回されているゼロの姿があった。
「よっと。」ッゴキ
「グァ!お前!舐めた真似をしやがって!いま仕留めなかったことを後悔させてやる。サキュロント!そろそろ終わってるだろ!」
「そういえば一人足りないでござるな。」
「大丈夫だよ。ハムスケ、そろそろ飛んでくるから。」
「助太刀するぞ!」
「助けに来た。チェーロは安心して私の胸に飛び込んできていい。」
「こいつらは八本指の六腕。すでに二人死んでるから四腕。一人足りない?」
「チッ またウザいのが来た。」
「青の薔薇!?時間稼ぎをしていたというの?」
「何人増えようが人質を取れればこっちのもんだ!!」
ドッカーーーーーーン
「サキュロントの野郎。待たせやがって。お前や青の薔薇もこれで終わりだ!!」
「なにをした!?」
ヒュルルルルルル〜〜〜〜〜〜ドスン
「な!!サキュロント?」
「親方 空からおっさんが!死んでる。」
「切傷に火傷、致命傷は胸に刺さってる氷の粒。」
「チェーロさーーん。こちらは終わりましたわ。」
「チェーロさんすいません。宿を壊してしまいましたー。」
「作戦は失敗か。」
「何が失敗なの?」
「幼子を人質にするつもりだったのさ。せめてお前だけは殺してやる。《クリエイト・アンデッド/不死者創造》。」
「ちょっとデイバーノック!いくらなんでも二人の死体を使うのは。」
「構わんだろう。六腕に弱者は不要!」
「人質?そう、このクズ野郎どもがぁあ!わ わた 私の天使達を人質にして恐怖を与えるなど、ゴミである身の程を知れぇえええ!《サモン・エンジェル・7th/第7位階天使召喚》威光の主天使!善なる極撃を放て!《マキシマイズマジック/魔法最強化》《チェイン・ドラゴン・ライトニング/連鎖する龍雷》全員まとめて消し炭になれーーー!!!」
「ちょ!!アルシェ!?あからさまなオーバーキル!レイナ、エンリ、ハムスケ奥に移動して!!クソ!間に合わない!!」
「第7位階魔法だと!?」
「む!チェーロ積極的。・・・この感触は!」
「死の間近になって精力が増量した?お姉さんそういうの嫌いではない。」
チェーロは念の為にレイナに戦えない組の護衛を頼んでいたが、案の定六腕の一人が幼組を人質にしようと忍び込んでおり、レイナとエンリに返り討ちにされていた。
しかし、それをきいたアルシェは、度重なるストレスから我慢の限界に達してしまい、目立たないように倒すという当初の計画を忘れて第7位階魔法を放ってしまう。
周りにも被害が出ると判断したチェーロは、急いで青の薔薇の三人を抱き寄せるとマントで余波を防ぐことにした。