「・・・なんで!?」
「スゥスゥ」
目覚めたチェーロの横では女性が規則正しく寝息を立てていた。
チェーロは部屋で話し合った後のことを思い出す。
「俺は一人で違う宿屋か部屋を借りようと思うんだ。護衛はハムスケがいるし、違う部屋とはいえ青の薔薇もいるんだから戦力的には大丈夫だと思うし、流石に一緒に寝るのは・・・ね。」
「私は気にしない。むしろ一緒に寝たい。」
「私も大丈夫ですわ。」
「はい!アルシェさんの反対側を予約していいですか!?」
「あら?なら私は上で。」
「だから!三人とはまだそんな関係になりたくないんだって!しかもウレイリカ達だっているんだよ!?子供と同じ部屋ですることじゃないでしょ。」
残りのベットが一つしかないのを確認すると、他で寝るために部屋から出ようとするが、アルシェ達は同じベッドで構わないからと期待する眼差しを向けてきていた。
チェーロは珍しく動揺してしまい普段なら言わないことを言い残して部屋から出て行った。
「~~~♪」
「アルシェさんとレイナさんはどうしてそんなに嬉しそうなんですか?」
エンリは鼻歌を歌うアルシェと笑顔のレイナを見て首を傾げていた。
「チェーロは【まだ】と言った。つまりは私たちをそういう対象として意識している証拠。いままでなら単純に拒否するか無抵抗だった。ちょっと進展。」
「それに、子供達がいるからと言っていたでしょ。つまりいなければ我慢できなくて手を出す可能性があるともとれますわ。」
「・・・・そういうことなんですね。私は単純に拒否られたのかと思っちゃいました。」
「ふっ私達はエンリよりも付き合いが長いから。」
「気にすることはありませんわ。」
「(姫はまだまだ青いでござるな。)」
アルシェとレイナはチェーロが口走った言葉の意味に気が付いており、旅の間にチェーロの考えが進展していることに嬉しがっていた。
「部屋を飛び出してきたのはいいけど。これからどこに行こうかな。」
チェーロは部屋を飛び出して誰もいない待合室にて佇んでいた。すると両脇の陰から二つの塊が飛び出してきた。
「やっと一人になった。」
「大丈夫。私たちの身体の準備はできてる。」
「はぁ 今日は厄日か。でも、闇渡り・・その技はやっかいだ。他にはどんな忍術を使えるのかな?」
「私達の忍術を知っている?もっと知りたい?いやん なら身体を隅々まで調べていい。」
「なら私はチェーロを隅々まで調べる。大丈夫。お姉さんに任せていれば痛くしない。痛くしてほしいならその趣向でも問題ない。専用の道具もある。」
「言葉が通じない!?あー!王都に来てから調子が狂う。いっそ全てを消し炭に・・・。」
「「調子が悪いならベッドに行こう。」」
「お前達!!こんなところにいたのか!今日は交代で見張りをする約束だったはずだぞ。はやく持ち場に戻れ!」
飛び出してきたのは忍術を使用したティナとティアで、チェーロは一人になるタイミングを見計らっていたかのような登場に警戒心を露わにした。他の忍術を聞き出そうとするが、二人の返答は斜め上をいき会話が噛み合わず、チェーロは頭を抱えながらストレスを感じていた。
そんなチェーロの行動を体調不良と判断した二人は密室まで誘導しようとするが、イビルアイが登場して二人の首根っこを掴んで放り投げる。
「邪魔が入った。でも仕事ならしょうがない。」
「イビルアイも二人っきりだからってチェーロを襲わないように。」
「だれが襲うか!!さっさと行け!」
ティナとティアは猫のようにシュタッと着地すると残念そうに持ち場へと戻って行った。
「ハハハ ありがとうございます。イビルアイさん。助かりました。」
「か 勘違いするなよ。お前を助けたのではなくあいつらがサボっていたから注意をしただけだ。」
二人が見えなくなるとイビルアイもチェーロの対面に座る。チェーロはお礼を言いながら、他愛無い会話をしていたが、ふと考え込むような仕草をし
「感謝している部分は他にもあるんです。異種族と人間が仲良くしているのを見れたことで、ちょっと希望が持てたというか・・・・イビルアイさん・・・良かったら俺と一緒に旅をしませんか?」
「ひゃ!ひゃにお い い 言って。」
「今すぐでなくてもいいんです。イビルアイさんに寿命はありませんよね?一人になってしまった時に俺のことを少しでも考えてくれれば。」
「しょ しょんなことを 言われても・・・うぁわわわわわああああああぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ。」
自分の種族のこともばれてもいいかなと思いながらイビルアイに未来の提案をする。イビルアイは突然の告白に動揺してしまい、叫びながらどこかに走り去っていってしまった。
「あ~~早まったかな。でもいいか。そろそろアルシェ達にも本当のことを話さないといけないかな。ここで青の薔薇の人達と会えたのは良かった。」
残されたチェーロは一人呟きながら誰もいなくなった空間にてポツリと呟く。その呟きを掻き消すように足音が響き渡った。
「あら チェーロさん。お休みにはならないのですか?」
「ああ ラキュースさん。ええさすがに女性だけの空間で寝るのには抵抗がありますので、違う部屋か宿屋でも探そうかと。」
「そうなんですね。フフ そういえば、さっきイビルアイが奇声をあげながら走っているのをみたのですが、何か知っていますか?」
「ああ それは俺のせいかもしれないですね。すいません。というか敬語じゃなくて大丈夫ですよ。俺の方が年下ですし、冒険者としての階級も下ですから。」
「ん~~階級は今回の件ですぐ同じになりそうですが・・・・。そうね。なら敬語はなしでいかせてもらうわ。それでイビルアイになにをしたの?」
ラキュースの姿を確認したチェーロは笑顔でラキュースに応対する。そんなチェーロにラキュースも笑顔で接していたが、イビルアイの奇行がチェーロの仕業ということを確認すると怒気を込めた様な雰囲気に変わった。
「うちのチームに入らないか勧誘しただけですよ。」
「そう はぁ 引き抜きはやめてほしいのだけれど、イビルアイが望むのならしょうがないわね。その時はあの子の事をよろしくね。確かに生きている時間は私達よりも長いのだけれど、色々と心配だから。」
「えぇ でも断られると思いますけどね。いまの雰囲気が気に入っているみたいですし。」
チェーロからの言葉を聞いたラキュースは苦笑いを浮かべて溜息を吐くが、笑顔に変わってチェーロに頭を下げた。しかし、チェーロからしたらイビルアイはいまのパーティを気に入っているため誘いには乗ってこないだろうという確信があった。
その後も二人は他愛もない会話を続けていた。
「お客様。本来は提供していないお部屋が一つだけありますが、そちらでもよろしければご案内可能でございます。ただ、田舎から出てきた従業員の泊り込み用になりますのでベッドしかありませんが。」
「本当ですか!?助かります!ありがとうございます!」
「良かったわね。一応場所だけは確認したいから一緒に着いて行くわ。」
「こちらになります。」
ずっと待合室にいるチェーロを見かねた宿屋の主人が誰も使用していない従業員用の一室なら提供できると提案してきたため、チェーロとラキュースはその部屋に移動することにした。
「あら ベッドしかないけど従業員用とは思えないくらい綺麗ね。」
「そうですね。じゃあラキュースさん。ありがとうございました。また明日よろしくお願いします。」
「ちょ ちょっと待って!せっかくだからまたあのマントを見せてもらえないかしら。」
「マントですか?そんなに気に入ったんですね。でも譲ることはできませんからね。」
そう言ってチェーロはラキュースを部屋に招き入れてドアを閉めた。
「なるほど。あの後、ラキュースさんがマントを羽織りながら厨二全開なことをしだして結局二人とも寝てしまったのか。」
「スゥスゥ 漆黒の ムニャムニャ 右手が疼く 」
ッバン!!
「チェーロ、朝。」
「「突撃!!」」
「待ちなさい色ボケ忍者!!」
勢い良く開かれたドアからアルシェ、ティア、ティナ、レイナが雪崩れ込んできた。