翌朝、アルシェはクーデリカとウレイリカに対してこれからチェーロ、レイナースと共に王国に向かうことと、レイナースをレイナと呼ぶように説明した。
少しするとレイナが馬車を操縦してチェーロ達を迎えに来た。
「おはようございます。荷物はそちらだけですか?」
「うん。家具類までは持って行けないから、洋服や食器のみ持って行くことにした。」
「レイナお姉ちゃんおはようございます!」
「レイナお姉ちゃんもいっしょなんですか?」
「クーデリカ、ウレイリカおはよう。そうですよ。一緒に行きましょう。アルシェと馬車に乗ってください。」
「「わーい!」」
「レイナさん。おはようございます。じゃあ行きましょうか。」
チェーロが荷物を馬車に積み込み、アルシェがクーデリカとウレイリカを抱えて馬車へと乗り込んだ。四人が乗り込んだのを確認したレイナは馬車を走らせる。
門を出る際の確認ではクーデリカとウレイリカがピクニックと嬉しそうにはしゃいでいたことから怪しまれずに通過することができ馬車は草原を進んで行く。
「アルシェ。とりあえず目的地はエ・ランテルでいい?」
「大丈夫。でも二人の体力も心配だから随所随所で街か村で休めたら嬉しい。」
「それならエ・ランテルに着くまでにいくつか村があったはずですよ。」
「今すぐに着かないと行けないわけではないからゆっくり行こう。」
チェーロ達三人は馬車を止めて地図を見ながら目的地の確認をしていた。山脈を超えることは除外し、一番近いエ・ランテルに向かうことにした。馬車の中ではクーデリカとウレイリカがはしゃぎ疲れて眠っており、アルシェはそんな二人を見ながら野宿ばかりは避けてあげたいと考えていた。チェーロとレイナも同じ考えを持っており、村などに寄りながらゆっくり進むことにした。
「そういえば、レイナさんの装備が違いますが、昨日のはどうしたんですか?」
「あれは四騎士に授けられる装備一式になりますので、手紙と一緒に置いて来ましたの。持って来てしまうと追う口実にもなりそうでしたし。」
「あれは魔法省管理の魔法が付与されている武器と防具。最悪・・・師が追って来ていたかも。」
「それは嫌ですわね。」
「アルシェの師・・・フールーダ・パラダインだよね?第6位階魔法が使える逸脱者ね。(第6位階魔法程度なら無効化されるし俺が相手をすればいいかな。)」
レイナの装備が昨日は全身鎧の重装備だったのが、今日は急所を守る程度の装備になっていた。昨日着用していたものは四騎士に任命された際に皇帝から授与されたもので貴重なアイテムであり、これを持っていなくなった場合、捜索隊が出される可能性が高いと判断して部屋に置いて来ていた。
その頃帝国王宮ではレイナースの置き手紙と装備一式が皇帝の元に届けられていた。
「ふむ。レイナースは呪いを解き、解いた相手と行動を共にする道を選んだらしい。」
「追いかけますか?」
「やめておけ。装備一式を置いていったことからレイナースの本気度が伝わるだろ?追うならこちらにあいつの牙がむくぞ。」
「あの呪いを解くとは・・・どんなマジックアイテムなのか気になりますな。」
「追うなよじい。」
アルシェ達が危惧していたことはなく、帝国の皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスは手紙を読むと溜息は吐いたが対処不要という指示を出した。