大空と死の支配者   作:ばすけばすけ

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カルネ村

チェーロ達が村に着いた時にはすでに夕方近くになっており、外に出ている村人は見つからなかった。馬車をとめた一行は一番近くにあった家の住人に、旅の冒険者で一晩泊めてほしいので村長に許可を取りたいと伝え村長の家を教えてもらうことに成功した。

村長宅でも魔獣の姿はあるが、はたから見ると女性しかいないということと、少女二人の寝姿を確認すると快く空き家を提供してくれた。

 

「こんな言い方は悪いけど、クーデリカとウレイリカがいて良かったよ。二人がいなければ怪しまれて空き家を提供してもらえないと思うんだよね。」

 

「そうですわね。冒険者なら普通は野営を選択しますから。」

 

「ふふん!私の妹達は天使だから。可愛い二人を見たらみんなメロメロになるのは当然。」

 

三人はハムスケに寝ている二人の護衛を任せて空き家を掃除していた。掃除をしながら今回の旅は宿屋がない村などでは空き家を提供してもらえる場面が多く、要因としてクーデリカとウレイリカという二人の少女の存在が大きかった。チェーロの呟きにレイナも同意し、そのやり取りを聞いていたアルシェはドヤ顔で妹達についての可愛さを語り始めた。

 

 

「ハムスケは・・・・入るのは無理かな。どうする?馬車もきついと思うけど。」

 

「うむ・・・それならば今回は森の中にある住処に帰ろうと思うでござるよ。幸いこの村からなら数分で到着するでござる。」

 

「二人の護衛ありがとう。また明日。」

 

「・・・だとすれば、この村はハムスケさんの縄張りだったりするのかしら?」

 

「はて?拙者は縄張りに侵入してきた敵意あるモンスターは退治していたが、この村まで守っていたつもりはないでござるよ。ではおやすみなさいでござる。」

 

「なるほどね。この村がこの環境なのはそれが影響しているのかな。レイナ、アルシェ、村人を見捨てることにはなるけど、この件はここだけの話にしよう。」

 

「わかった。村人は勝手に移動することもできないから。言っても不安を煽るだけ。」

 

「そうですわね。護衛を頼まれても私達にも目的がありますから。」

 

掃除を終えて馬車から寝ている二人を空き家に移動させた。チェーロは後から着いてきて入口に挟まったハムスケに苦笑いを向けながらどうするのか確認をした。ハムスケも困った表情を浮かべてはいるが、本来の寝床が近い為そこで寝ることにすると残念そうな感じで挟まっていた頭を引き抜く。

ハムスケの発言からこの村はハムスケによる恩恵を受けている事がわかり、この村の警戒心の薄さなどもそのせいかと納得した。想像ではあるがハムスケがモンスターを退治してきたことにより、一度もモンスターによる襲撃がなかったのかもしれない。

三人は一宿の恩はあるが、そこまでの深入れはできないと割り切ってハムスケの件は黙っていることにした。

 

 

「すいませ~~~ん!」

 

三人はお腹もすいたため軽い食事の用意をしようかと準備を進めていたが、唐突に入口が叩かれて若い女性の声が響いた。

 

「はい。なんでしょうか。」

 

「夜遅くにごめんなさい。私向いの家のエンリ・エモットといいます。村長から旅の冒険者様がお泊りになっているとききまして、私の家はその・・薬草とかを扱っていてよかったら買ってもらえないかなと思い・・・すいません。疲れているのにご迷惑ですよね。でも両親から行ってみなさいと言われて・・・。」

 

「いいよ。とりあえず中に入ってもらってもいいかな?」

 

「はい!ありがとうございます!

 

「ちょっと声を抑えてほしい。チェーロ、別に薬草は必要ないんじゃない?」

 

「奥で寝ている子達がいるんだ。アルシェ、回復アイテムは持っていることに越したことはないよ。」

 

「そうですわね。ポーションでは補えない効用のものもあるかもしれませんし、見ておいて損はないかと思いますわ。」

 

レイナが警戒しながら扉を開けるとエンリと名乗る村娘が籠を持って立っていた。どうやら籠の中身は薬草で冒険者が立ち寄っていると言う話をきき、女性だけということもあり危険ではないと判断した両親から、今後のエンリの成長を促すために押し売りをして来いと言われてきたらしい。とうのエンリはレイナからの怪訝な視線とアルシェの無愛想な対応に涙目になりながら謝っていたが、チェーロが笑顔で対応するとパッと表情を明るくさせてチェーロに手を引かれながら家の中にある椅子へと腰かけた。


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