プリキュアオールスターズ 闇からの挑戦状 作:風紀@ボカロ厨
恐る恐る、といったようにブンビーが尋ねると少女はくるりと回った。黒のスカートが一斉に広がり、しぼむ。
「私は、ライアと申す者です。あなたが、先輩のブンビーさんですよね?なぜ、私があなたのことを先輩と呼ぶのかというと、勤務歴が長いのは私ですけど、ほら、年上を敬うのって大切じゃないですか?」
「そうだけどさぁ…。君、学生、だよね?」
頭を掻きながらたずねるブンビーだったが、本来は逃げ出したくってしょうがなかった。先ほどの無愛想な姿から一変したこの態度がただただ不気味だったのだ。
「はい。そうです、。嗚呼、そういえば未成年って働いちゃダメなんですっけ?でもでもー、社会ではそれを見て見ぬ振りをしてるところもあるんだし気付かなかったということでおねがいします」
目が細めまり、口も細い弧を描く。その笑顔にブンビーは昔の上司を思い出したのか少しばかり青ざめた。
「えっと、ブンビーさんの仕事は主にデスクワークですね。本来の仕事はプリキュアを倒す、ってことなんですけどほら、あまりやりたがる社員はいないんですよねー」
「へぇ」
突如始まった己の仕事内容の話に動転はしたもののそこは、数々の修羅場と上司の罵声を受けて来た彼。すぐさま、メモ用紙を取り出し仕事内容のメモを書き始める。
「ボーナスは出ますけどあまり期待はできませんね。プリキュアを倒さないと出ないので。まぁでも、デスクワークだけでも十分、お給料は入るので支障はないんですけど」
「さっき言ってた、あまり社員がプリキュア退治に行かない理由は?」
「ああ、それは簡単なことです。」
その台詞とともにライアはブンビーに近づくとなった顔を近づけた。
「三回、任務に失敗したら、
死ぬか自我を失うからですよ」
先ほどの怖い笑顔のまま、ライアは言った。しばらくぽかんとしていたブンビーだったが、次の瞬間には真っ赤になっていた。
「はぁ!?なにそのTHEブラック企業って感じの職務条件は!!」
その台詞を聞くとライアはブンビーから離れるとあからさまに溜息を吐いた。
「まったく、ブンビーさん。企業なんて、社会なんてそんなもんですよ?ここでは任務に失敗したら待っているのは【死】のみです」
死刑宣告のようなその台詞にブンビーはまたもや固まった。
その時何故か思い出したのは
既にいない【戦友】たちのことだった。
(拝啓
エターナルとナイトメアの皆様
私が就職した先は、皆様も真っ青の
ブラック企業でしたぁぁぁ!!!!)
脳内でそんなことを叫びながら、ブンビーはがっくりと膝をついた。
芝生公園。
ナシマホウ界と魔法界を繋ぐ街にあるこの公園は、ここに住む人々にとって憩いの場所であった。
施設が整った遊具、おいしいいちごメロンパンが売っていると好評の移動販売車が訪れ、休日は家族連れで賑わう。
住民の大多数を占める家族連れや学生たちにとって使い慣れたお馴染みの場所。
敷地も広く、適度な管理を施された並木があり、照りつける太陽を遮って木漏れ日がそそぐ平和で穏やかな公園だった。
「ヨクバール!!!」
だが、今は、殺気立って向かい合う怪物によってすっかりその平和な風景は消えていた。
2本の角が生えた骸骨のような素体が絵本のようなものから飛び出した化け物が暴れているのだ。
この化け物を使役していた者達はこれを【ヨクバール】と呼んでいた。
闇の魔法使いが生み出すこの怪物は、ものを組み合わせることで生まれる。
「マジカル、フェリーチェ、準備はいい?」
それに対峙し、やけに大仰なポーズでヨクバールを睨みつけるのは3人の女の子だった。
2人の少女の前に立つ少女はピンクを基調とした曲線的な
デザイン。胴の部分は濃いピンク、そこから濃淡2種類のピンクと白による3重フリルのスカートを身につけ、胸から上は白いブラウス。白い手袋と先がピンクの白色のブーツを着用している。
その少女にマジカル、と呼ばれた少女のほうは紫色を基調とした直線的なデザインの服をまとっており、スカートを中心とした薄紫色の服の上に濃い紫色の服と白系のケープを着用、黒い長手袋とつま先が紫色の黒いブーツを身に着けている。後頭部の髪は翼状になっており、赤いリボンと黒い帽子をあしらったカチューシャがつけられ、胸元にはリボンと共に薄紫色の宝石がつけられている。メンバーで唯一ノースリーブだ。
そして、フェリーチェ、と呼ばれた少女は、ピンク色の髪が左右に伸びて編み込んだ三つ編み形となり、頭には花と蝶をかたどったカチューシャを身に着け、「エメラルドスタイル」というミント系の緑を主体に白も配色されたドレス風のコスチュームを着用している。
彼らは、魔法つかいプリキュア。
魔法界の伝説の魔法使い、である。
「えぇ、もちろんよ。ミラクル」
「うん!」
そして、3人は一瞬でヨクバールと距離を詰める。それと同時に、拳を全力で振り下ろそうとする。しかし
「タスケテ」
どこからが響く低い声に3人は一瞬止まった。
「ヨクバールが喋った!?」
驚くマジカル。そのヨクバールは苦痛に満ちた顔でプリキュアたちを見つめている。
「気のせいじゃないかな?とりあえず、こいつを倒そう!いくよ、マジカル、フェリーチェ!」
「えぇ」
「う、うん・・・」
3人はアレクサンドライトを用いり、オーバーザレインボー状態に変身した。そして、
「巡り会う奇跡よ!繋がる魔法よ!育まれし幸福よ!今私たちの手に!」
レインボーキャリッジにリンクルストーン・アレクサンドライトをはめる。他の全てのリンクルストーンの力を集結し、プレシャスブレスを呼び出し装着、キャリッジを操作して魔法陣を呼び出し、
「フル・フル・フルフルリンクル!プリキュア・エクストリーム・レインボー!」
と、叫ぶ。すると、魔法陣がシールドとなった。さらに、
「キュアップ・ラパパ!虹の彼方に!」
と唱え、魔法陣から虹色の光線を発射された。
「あ、あぁぁぁぁぁ!!」
悲痛な叫び声をあげてヨクバールは光に包まれ、消えた。そして、3人は元の、みらい、リコ、ことは、に戻った。しかし、大学生の姿で、である。
「よーし!じゃあ、早速、魔法界に行こっか!!」
みらいがヨクバールが現れる前に買ったいちごメロンパンの袋を抱きしめながら笑顔で言った。
「そうね。」
「はーちゃん、よろしくっ!」
「う、うん。キュアップラパパ、いざ魔法界へ!」
はーちゃんの魔法によって、3人の姿はすっと消えた。途端に静かになる公園。
休日の昼間。いつもは家族連れで賑わうはずの公園にしてはやけに静かだった。
「よーし!到着!!」
彼女たち3人がワープしたのは、魔法の森の中だった。背の高い木々に囲まれたこの森は滅多に人がこない。なので、もっぱら聞こえるのは鳥の声と風に揺れる葉の音ばかりだった。
「ワープなんてしちゃって大丈夫だったかな?」
「大丈夫、大丈夫!!」
「でも、勝手に入っちゃったら魔法界に今、誰がいるのかとかわからなくなるよね・・・?」
困り顔のことはにみらいとリコは顔を見合わせた。
「はーちゃんらしくないわね?私たちの目的はひとつでしょ?そのためにはこっそり入らなきゃいけなかったんだし」
みらいはいちごメロンパンの袋の中をしばらくまさぐると中から、モフルンを取り出した。
「いい匂いだったモフ!」
「もう。みらいったら。なんで、そんなところにモフルンを入れたの?」
モフルンを出した後に、さっそく、いちごメロンパンにかじりついたみらい。
「ほら、いちごメロンパンの中に入れたらモフルン、すごくいい匂いになったでしょ!」
ことはがモフルンを優しく持ち上げ、匂いを嗅ぐ。
「はーっ!!とってもいい匂いっ!」
暗い顔をしていたことはもにっこりと笑顔になり、モフルンを抱きしめた。
「ねぇ、ここで、本当に大丈夫?」
「えぇ。ここなら、魔力が満ち足りてるからバレないで、計画を実行できそうよ。」
みらいはいちごメロンパンを食べ終わると、リコに向かって手を出した。
「じゃあ、早く始めよ!!」
「そうね。」
そして、4人は手を繋いだ。すると、自然と3人はプリキュアの衣装に変身した。
「巡りし時よ!永久のメモリーよ!」
「 私たちを還らせ給え!!」
「キュアップラパパ!」
呪文を唱え終えたその瞬間だった。森の中が静かになった。鳥のさえずりも木々のせせらぎも聞こえない。
なんの光も、音もしない、しかし、彼女達の運命を根本的にひっくり返すような魔法。
「これで、いいんだよね?」
ことは━━━否、フェリーチェが不安そうに確認するが、ミラクルとマジカルは大丈夫、と言うように力強く頷いた。モフルンはきょとんとした表情で双方を見ていた。
「ミラクル、マジカル、フェリーチェ、モフルン。あなた達、最っ高ですね!!」
全身が泡立つ。突如現れたその声に4人は身震いした。
「嫌な気配モフ・・・!」
「誰なの!?」
叫ぶミラクルたちの前に現れたのは一人の少女だった。黒色を基準とした制服を身にまとった背の高い少女。整った顔立ちなもののその顔には歪な笑顔と1個の小さな星が浮かんでいる。
「私は、ライア。ディストピアカンパニーの社員です。」
禍々しいオーラを纏うライアにフェリーチェは顔を歪め、いつでも戦えるようにとかまえた。
「ひとまず、行くよ!2人ともっ!」
ミラクルの合図と共にミラクルとマジカル、そしてフェリーチェはライアに距離を縮めた。そして、ミラクルが足を全力で振り下ろす。
「やぁっ!」
ライアはそれを腕の十時交差でそれを受け止め、ミラクルの足と共に飛んできたマジカルの右腹部へのパンチとフェリーチェの背後からのキックを避けた。
「はあっ!」
その後に飛んできたマジカルの鉄拳とミラクルの蹴りを両手で止め、フェリーチェの体当たりもかわす、そして、フェリーチェの腕を掴むとライアは彼女をパンチが避けられバランスを崩したマジカルに向かって思い切り放り投げた。二人は、10メートルほど後方にある木に衝突した。
「つ、強いっ・・・」
「大丈夫!?マジカル、フェリーチェ!」
駆け寄ろうとするミラクルに、仕返しとでも言わんばかりにライアがミラクルの腹部に鉄拳を飛ばす。それは見事にミラクルの腹部にヒットし、ミラクルは膝をついた。
「うっ・・・」
「ミラクル・・・!しっかりして!!」
まだ先程の衝撃から立ち上がれない2人を置いて、ライアは立ち上がったミラクルに拳を浴びせる。
その1発1発がこれまで受けたことがないくらい重い。
「ねぇ、キュアミラクル。あなたはおかしいと思わなかったのですか?」
拳を止めずにライアが口を開いた。
「おかしい?なんのことっ?」
思い当たりがないので素直にそう答えたもののその声は苦しげだ。拳を防ぎきれてはいるものの、じわじわと後退させられているからである。
「今日、芝生公園にはあなた方以外に誰かいましたか?」
笑みを崩さないままライアが言った。
「え?」
( 思い返すと・・・確かに、いちごメロンパンを買って以来、誰にもあってないかも)
「おや?気づいてなかったんですか?それは変ですねぇ?それと・・・今日現れたヨクバール
なぜ、倒せたんですか?」
重いパンチをもろにくらい、ミラクルは尻餅をついた。
「だって、あれはヨクバールだよ?倒さないと・・・「倒さないといけなかったんですか?」え?」
ライアは尻餅をついたミラクルを目を細めた笑顔で見つめた。
「あのヨクバールは助けを求めてましたよね?なぜ、消したんですか?」
「それは・・・
公園に出てきたから、みんなが、危ないって思ったからで・・・」
「公園に人がいないことにすら気が付かなかったあなたが何を言ってるんですかぁ?」
その言葉にミラクルは冷水を浴びせられたかのように固まった。
「助けを求める声をスルーするなんて、プリキュアとしてどうなんですかね?プリキュアとしてどうかといえば・・・
あなた方が使った魔法って、時間を巻き戻す魔法ですよね?」
その言葉にミラクルは本当に動けなくなってしまった。
「今まで積み重ねてきたことをすべて壊してまで過去に戻りたかったんですか?しかも、ほかの人、ひいては世界の時間すら巻き戻して?それはおかしいですよね?」
「おかしくない・・・だって、私はマジカルとフェリーチェと一緒にいたいんだもん!!」
叫ぶミラクルをライアは笑顔で見つめる。
「ほかの人を巻き込んで、自分の目的を達成するなんてどんだけ自己中心的なんですか」
やれやれとでも言うようにため息を吐くライア。
「そんなことは無いっ!!ミラクルは自己中なんかじゃない!!」
ようやく立ち上がったマジカルが叫ぶ。
「え?自己中じゃないんですか?あ、ならすみません。では、自分本位、というのでどうでしょうか?」
「ミラクルは自分本位なんかじゃないよ!!」
立ち上がったフェリーチェもライアをきっと睨みつけると叫んだ。
「どこがですかね?あなた方が終わりなき混沌を倒すまでの過程や日常のレポートを読ませていただきましたが
遊んでましたよね、ずっと。敵が来ても事情なんか聞かずに倒すだけ、理由は【私たちの日常を壊して欲しくないから!】どんだけ自分の世界に閉じこもってんですか?」
「ひどい事言わないで!!ミラクルが可哀想よ!!」
「あなたもですけど?キュアマジカル」
「え?」
もうミラクルは動けないと判断したのかライアは今度はマジカルの元へ来た。そして、フェリーチェとマジカルを見つめる。
「あなた、規則違反なのに魔法を使って、ナシマホウ界のクラスメートの勝木さんを嘘つきに仕立てあげましたよね?」
「そ、それは・・・仕方ないじゃない!」
「仕方ない?自分が悪いのに彼女を周りから嘘つきだと認識させることが仕方ない、と?」
「っ・・・」
うつむいたマジカルを満足げにみやると今度はフェリーチェに目を向けた。
「そういえば、あなた・・・マジカルとミラクルが親、なんですよね?」
「えぇ、私の自慢のお母さんたちよ」
怯まないフェリーチェ。
「へぇ。でも、報告書を見た限り幼少期、あなたをお世話してたのはほとんどモフルンだったようなんですけれども」
その言葉にマジカルとミラクルが顔を上げた。
「最初のうちはちゃーんとお世話してたみたいですけど、だんだんとモフルン任せになっちゃったみたいですね?」
「ち、ちが「ちがいませーん」
「最初は可愛くても赤ん坊なんてすぐに飽きられますよ?っていうか、そんな親に育てられちゃったから、まだ名前しか名乗っていない人間を倒そうとしちゃうんですね」
その言葉にフェリーチェも固まった。
(何も・・・してない?そういえば、最初、彼女は私たちに名乗っただけだった。なのに、勝手に私たちが襲って・・・あれ?)
その時、フェリーチェは気づいてしまった。
「私たちがやってる事って・・・闇の魔法使いと、一緒?」
「ピンポーン!私欲のために勝手に時を戻す魔法を使ったりして。そういう魔法は禁忌なんですよ?無抵抗な相手に襲いかかるのも一見すれば、悪じゃないですか」
「あ・・・あ・・・」
俯くフェリーチェを見ると、ライアはスカートのポケットの中から黒色のトランプのようなカードの束を取り出した。そして、そのカードの1枚を取るとフェリーチェの胸元に密着させた。
その途端、フェリーチェが消えた。そして黒色のカードには若葉を両手で持ち微笑むフェリーチェの姿があった。
「フェリーチェ!!」
ミラクルとマジカルが叫ぶ。そして、ライアはマジカルにも目を向けるとカードをマジカルの胸元までどんどん近づけていく。
「い、嫌だっ!!体が動かないっ!?なんで!?」
「恐怖ですかね?大丈夫ですよ。怖いのは一瞬ですから」
「マジカルに手を出さないでぇぇぇ!!!」
耐えきれずに叫ぶミラクル。そして、モフルンがライアの腕にしがみついた。
「やめるモフっ!!」
しかし、ライアはモフルンを無造作に放り投げると、マジカルの胸元にカードを押し付けた。
「ミラクル・・・」
その瞬間に、マジカルが消え、カードには月の中、1人で佇むキュアマジカルの姿が現れた。
「そんな・・・」
そして、ライアはミラクルの元に歩み寄る。
「ありがとうございます。キュアミラクル。あなた方が勝手にこの森に侵入してくれたおかげで私もそれに乗じてここに侵入ができました。それに、あなた方が時を戻す魔法を使ったおかげで他の世界では同じ時間がループしてしまう現象が発生してるようです。こちらも色々やりやすくなるので感謝感激です!ほんとうにほんとうにほんとうに・・・
ありがとうございました!!」
今までで一番いい笑顔を見せて、ライアはミラクルにカードをあてた。次の瞬間、カードには魔法の杖を持ったミラクルのイラストが現れた。
「ミラクルぅぅ!!マジカルぅ!フェリーチェ・・・なんでこんな酷いことをするモフ!?」
モフルンは顔を歪めてぐずぐずと泣いていた。しかし、そんなモフルンにライアはぐいっと顔を近づけると真顔になった。
「仕事だからですよ。かわいいかわいいお人形さん」
一瞬の閃光。眩い光が放たれたかと思うと次の瞬間にはモフルンは元の、ただのぬいぐるみになっていた。
ライアはそれを拾うとミラクル、マジカル、フェリーチェのカードを見た。【
「彼女たちは未来を捨てたし、プリキュアとしての責任を果たさなかった。そして、苦しむ敵を助ける慈愛すらないなんて・・・。ホンット馬鹿ですね。まぁ、
あのヨクバールの声、私が勝手にそれっぽく叫んだだけなんですけど」