プリキュアオールスターズ 闇からの挑戦状 作:風紀@ボカロ厨
「笑顔、とはなんでしょうか」
「嬉しい時に自然と出てくる表情?」
「幸せなを表すもの?」
「一般論はそうですよね」
「私は、笑顔は嫌いです」
「【みんな仲良く 笑顔でいようね】などのくだらない標語なんかを見るとイライラします」
「あ、でも私の頬に星がついてる時・・・まぁ、私は営業用、って呼んでるんですが・・・その時に、不思議に思ったでしょう?」
「あなたはいつも笑顔じゃないかと」
「その秘密は、後ほど」
「ん・・・」
大の字で寝そべっていたあかねが目を覚ました。陽の光が彼女を照りつけ、あまりの暑さに、思わずたれてきた汗を拭う。
「んあ・・・なんや?なんかジャリジャリしとる・・・」
手のひらを見るとそこには少量の砂が付着していた。
━━ここ、どこや・・・?
起き上がって、目を擦りながら辺りを見回す。だんだんと周りの景色の輪郭が見えてくるにつれ、あかねの顔は真っ青になっていった。
「な、なんやねん!?ここ!?」
周りを見回しても、砂、砂、砂、砂。照りつける太陽と雲ひとつない真っ青な空。まさに砂漠、のような場所。
「あ、そうか、永久に頼まれて、本の中に入ったんやった・・・」
立ち上がって服についた砂を払う。
━━とりあえず、歩こ。
近くに転がっていたオレンジの水晶玉を手に取ると、あかねは行く宛もなく歩き始めた。
「あー、暑っつい・・・」
最初は威勢よく元気に歩いていたものの、やはり、炎天下の下、ろくに水分もとらないのは辛い。足取りもだんだんと鉛のように重くなっている。
「そういえば、これ、どーやったら帰れるんやろ・・・」
水晶玉をマジマジと見つめるが、反応はない。仕方が無いので黙々と歩くもののの、いつまで経っても風景は変わらない。
「あー、暑い暑い暑っついぃ!!なんで、出られへんねん!?」
イライラを隠せず、1人叫ぶあかね。しかし、叫んでも仕方が無いと思い直したのか、また歩き始める。
「はぁ・・・今頃、みんな、どーしとるんやろ・・・」
「はぁ・・・今頃、みんな、どーしとるんやろ・・・」
「え?」
「やっほー」
自分しかいないはずの砂漠で突如聞こえてきた声にあかねは飛び上がった。そして、キョロキョロと辺りを見回す。しかし、やはり自分以外に人がいる気配はない。
「・・・幻覚・・・やろか?」
「・・・幻覚、じゃないでー」
またもや、聞こえてきた声にあかねははっとした。
━━今の声、うちの声にそっくりや・・・
心臓がどくどくと跳ねる。
「誰か、おるん?」
威勢よく叫ぶと、背後からとんとん、と背中を軽く叩かれた。驚いて前に倒れ込みそうなのをぐっと堪えて、あかねは振り向いた。
そして、そこに立っていたのは
「・・・う、うち?」
前髪に止められたヘアピンに、1本にまとめられた後ろ髪。橙色の上着に紺色のズボン。オレンジ色の瞳に、人懐っこい笑顔の目の前の人物は、日野あかねだった。
「な、な、な、な」
驚きのあまり声が出ないあかね。しかし、目の前のあかねはニコニコと人懐っこい笑みを浮かべている。
「驚きすぎやって、うち。落ち着き」
しかし、そう簡単に落ち着けるわけもなく、言葉が出ないあかね。
「うち、永久から、頼まれてあんたの面倒を見にきたんや」
「・・・つまり、どういうこと?」
少し落ち着いたのか目の前のもう1人のあかねを、じっと見つめる。
「ほら、どうやって探せばええかとか、説明してもらわへんかったやろ?」
「いや、水晶玉がうんたらかんたらー、みたいなのはしてもらったで?」
「あ、そうなん。まぁ、ええわ。とりあえず、歩こ」
そして歩き始めるふたりのあかね。その姿はどこからどう見ても珍妙だった。
ギラギラと照りつける太陽。永遠のように続く砂漠。
「はぁ・・・ほんまにこの世界に原因なんかあるんやろか・・・」
「さぁ?ようわからんわ」
「わからんのかいっ!」
自分に突っ込むのに不思議な感覚を覚えながら、あかねは、マジマジともう一人の自分を見つめた。
どこからどう見てもウチ。身長も、笑った時の顔も一緒。
━━もし、ウチとこいつが入れ替わったら、みんな気づくやろうか?
そんなことをぼんやりと考える。
「みんな、気づかんと思うで」
その言葉にはっとして、あかねは隣を歩いていたもう一人を見つめた。
「え・・・?」
「いや、だって、うちらこんなにそっくりなんやもん。誰も気が付かんでも不思議やあらへんやろ?」
その言葉に心臓がぎゅっと掴まれたかのようにいたくなる。
「そ、そんなわけあらへん。みゆきたちは気づいてくれるはずや・・・」
「そーか?ウチにはあの子達はあんたのことなんか興味持っ取らんと思うけど」
━━は?
「みゆきたちが欲しいのは、いつも明るくて運動神経が良くて、程よく突っ込んでくれるけど、本当は優しい女の子。その個性を持っていれば誰でもええんとちゃうん?」
「そんなことない!みゆきたちはちゃんと・・・」
「うちを見てくれてる?ホンマにそう思う?あんたの個性なんて所詮、大量生産可能のテンプレートな特性やん」
━━テンプレート?大量生産?
頭が疑問符でいっぱいになってももうひとりのあかねは話し続ける。
「運動神経がええ、ツッコミ属性、関西っ子、頭が悪い。あんた、他に個性あるん?」
ある。と言おうとしてもあかねの口は固く閉ざされ震えている。
「ないやろ?なぁ、あんたなんか所詮、そんなもんや。これぐらいの個性ならあんたの換えなんていくらでもおるねん。」
喉の奥がひゅっと鳴った。いつのまにか、あかねはあかねに迫っていた。
「あんたがいなくなっても誰も困らへん。そーやろ?キュアサニー?」
真っ青な顔で滝のような汗を流すあかね。もう1人のあかねの顔はいつのまにか無表情で、あかねに迫っていた。
「あんたがおらんでもプリキュアは続けられるしな?そーやろ?」
「あ・・・あ・・・」
そのまま、日野あかねこと、キュアサニーはバタりともう1人に倒れ込んだ。
もう1人のあかねの口は弧を描き、橙の瞳はランランと赤く怪しく輝いていた。