刀使ト修羅   作:ひのきの棒

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本編と関係ありません。思いつきです。二三日で消します。悪ふざけ回です。


閑話休題、休日の一日。その1

 皆さんはご存知だろうか? 

 この世には二つの種類の人間がいることを。

 ひとつは富める者であり、今ひとつは貧しき者である。持つものと持たざるもの。両者の間には隔絶とした差があるのだッッッ!!

 

 

 ――即ち、この世は不条理であるのだと!!

 

 「手放しタピオカ」という単語をご存知であろうか? 巷で話題のタピオカミルクティーなる飲料物を女性の胸部に乗せて飲む。ただそれだけの行為である。

 だが、これには問題がひとつだけあった。

 

 「貧乳」には不可能である、という現実。

 

 

 ああ、無情!!

 

 1

 『現在、若い女性を中心に話題のタピオカミルクティーの有名店をご紹介いたします。本日お邪魔するのは……』

 

 鎌府女学院の食堂で、テレビ画面から放映されていた情報番組。広い食堂には少年一人の気配しかない。

 

 刀使とは本来、選ばれた少女にしか出来ない存在である。従って刀使を育成する学校の殆どは女子生徒で占められていた。ここ、鎌倉に所在を有する鎌府女学院もそのひとつであり、関東圏を管理する最大規模の学校である。

 

 しかし女学院――とは言い条、例外的に立ち入りを許された「少年」がいた。

 彼、百鬼丸十四歳である。

 

 

 暇を持て余す彼は朝食を食堂で摂り、ひたすらテレビを見ていた。

 

 画面には店舗の外まで連なる行列から映し出され、場面が切り替わり褐色の液体の底に沈殿する球形の粒粒とした透明な物体を撮影していた。

  

 何気なくそれを見て一言、

 「ほ~ん、タピオカか。蛙の卵みたいだなぁ……」

 鼻をほじりながら画面を眺める少年……百鬼丸がいう。彼は、荒魂を退治できる例外的な存在であり、かつ、その能力は計り知れない。その彼は今、椅子で船こぎをして、テーブルに足を乗せていた。誠に行儀が悪い。

 長い黒髪の間から、気だるげな眼差しで画面に映る飲料物とそれを話題にする人々の様子を見ていた。

 

 テレビのスピーカー以外は音がない。

 

 そもそも食堂には人が居ない。休日であり、当番の刀使以外は各々自由にしているのだろう。

 

 (まぁ、平和が一番なんじゃろうなぁ……。)

 

 肩を緩く落とし、息を抜く。久々の休暇というのも良いものだと思った。現在の時刻は午前九時。窓際から注ぐ陽光が穏やかで、気分が安らぐ。

 百鬼丸は、珍しく暇を持て余していた。昨日の荒魂を大規模に狩り尽くした影響であろう。

 

 番組はさらに続いていた。

 『え~、このタピオカミルクティーなんですが、現在SNSを中心に話題になっている〝手放しタピオカ〟という方法をちょっとご紹介いたしますね!』

 若い女性レポーターは、明るくはしゃぎながら豊かに揺れる「胸部」を強調して、そこにプラスチックボトルを置き、太いストローで啜る。

 

 ゴクリ……。

 

 百鬼丸は、やましい視線を送りながら手近にあったチャンネルの音量ボタンを容赦なく上げる。鼻息が荒い。

 

 「ムムム、これはまずい。非常にまずい事態だ。こんなモラルの崩壊したような内容絶対にクレームがくるだろうなぁ、ムムム……。しっかりこの眼で焼き付けないとイカンなぁ、ムムム」

 難しい顔をしながら百鬼丸は目を血走らせて、食入いるように凝視する。

 

 そういえば、以前「突発性巨乳恐怖症候群」に襲われていた彼だったが、益子薫のペットである荒魂「ねね」と共に、巨乳への恐怖症を和らげたことがある。

 ――従って、現在はその反動で巨乳そのものに、意識が集中するのだ!

 

 腕組みをして、百鬼丸は眉間に深い皺を刻む。

 

 

 

 「ふぁ~あ、ねみぃ~」

 と、食堂の入口から人の気配がした。

 眠たげな声音で、目を擦る一際に小柄な人影。薄桃色の髪色をツインテールに束ねた少女、益子薫である。

 喉が渇いて、食堂のウォーターサーバーまで水を取りにきたようだ。

 

 「ヴッッツ!!」

 口と鼻から色んな液体を勢いよく噴出した百鬼丸。

 テレビ画面に夢中で、まったく人の気配を察知できなかったのだ! 南無三。

 

 「「あ……」」

 と、薫は途中で立ち止まった。百鬼丸と視線が交錯する。

 大音量で垂れ流される、胸部の豊かな女性の上に乗っかるタピオカミルクティー。

 「ねねーー」

 薫の肩に載っていた茶色い生き物、荒魂である〝ねね〟が百鬼丸のもとまで駆け寄った。この「ねね」もまた、胸部の豊かな女性に異常な興味を示す。

 

 走り去るペットを無視して、薫はジト目で百鬼丸を睨めつける。

 「おい、お前。朝っぱらからなにを見てるんだ。しかも大音量で」

 薫の冷ややかな非難の声に百鬼丸はプイッ、と顔を逸らして明後日の方向に頭を回す。

 

 「ちがう。これはおれの仕業じゃない。なんか勝手にこうなった」

 

 「ああ、なるほどな。あるある……って、んなわけあるか馬鹿野郎! この食堂にお前しかいないのになんでそーなんだよ! しかもチャンネルお前のすぐ近くにあるじゃねーか!」

 息を巻いて薫は突っ込む。状況証拠だけでギルティだ。

 

 「ちがう。ちがう。全然違う。……うん、なんか勝手に、その、あの……」

 段々と言い訳が苦しくなったように、冷や汗が百鬼丸の顔に流れる。

 

 あくまで否定の姿勢を貫こうとする百鬼丸少年の頑張りに折れたように薫は「はぁ~」と小さい溜息をこぼした。

 

 「なんだお前。本当はエレンみたいに胸がバインバインな女が好きなのか?」

 呆れたように言う。エレン――とは、薫のパートナーである金髪碧眼のハーフ、古波蔵エレンの事を指していた。

 彼女のバストは恐らく現役刀使の中でも一二を争うのではないだろうか、と噂されている。

 

 しかし、百鬼丸は頭を元の位置に戻し、

 「違う。ねね師匠との修行の成果だからだ! な、師匠!」

 と、百鬼丸の腕で頬ずりをしていたねねに視線を落とす。ねねはただ、「ねね?」と不思議そうに首を傾げる。

 

 「ったく、お前らは本当に馬鹿なんだな」

 と、文句をつけた。

 

 言いながら、薫は百鬼丸の対面の椅子に移動して腰を下ろす。

 そのまま、テーブルに細腕で肘を落ち着け頬杖をつく。

 「なぁ、黙ってて欲しいか?」

 悪巧みをする時特有の、意地の悪い顔つきでニヤニヤ笑いながら百鬼丸に問いかける。

 「ムグッ」と、呻き百鬼丸は素早く首を上下に振る。

 「へっ。最初からそーして素直に言えばよかったんだよ。オレは今日非番だから一日中寝てようと思ってたが、予定変更だ。おい、百鬼丸」

 

 「む?」

 片眉を上げて、薫を一瞥する。

 

 「せっかくだ。他に空いてる刀使の連中に連絡して、どこかに食べ歩きするぞ」と、提案した。ニヤニヤの意地悪い笑顔がさらに凶悪になったような邪悪な表情だった。

 

 

 「――ブフッ、な、なぜだ! おれは今からパチンコパチスロして競馬して酒を飲む予定なんだ! 大忙しなんだぞ!」

 

 「悉くクズの一日じゃねーか! 却下だ却下! それともなにか? さっきのお前の行動を色んな奴にバラされたいのか?」

 

 鋭い薫の視線に、思わず百鬼丸はブンブンブンと首を横に振る。

 

 「――よし、じゃあ決まりだ。他に予定の空いてる奴らは……」

 

 携帯端末を取り出し、連絡先の一覧をタップしていた。

 

 (なぜだ、なぜこうなる!?)

 漢百鬼丸、彼は心の中で泣いていた! 大号泣である! 博打を禁止され、飲酒を禁止され、最早彼には楽しみがなくなったのである! 

 

 

 

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