実家の内部を探索しながら、
(あれから何日経過したんだろう……)
長い間、暗闇の中を彷徨うと時間感覚が狂ってしまうらしい。
「二人は大丈夫なんだろうか」
周りを眺めながら、ポツリと呟く。
可奈美と百鬼丸、ふたりと離れてからどれ程経過したのか分からない。
ふと、姫和は反芻する。
――――そう、あの時からだ。
百鬼丸の胴体を小烏丸の刃で貫き、五段階目の迅移によって隠世に追放する。……そして、自身(姫和)も共に消えるハズだった。
……だから、最後に姫和は意を決して少年の頭に自らの顔を近寄せる。
『お前を孤独にはしない。私も共に深層へ行く』
そう囁いた。
(あの時の奴の顔、おかしかったな)
ふっ、と思わず姫和の口元が綻ぶ。
『おま、急に何言ってるんだよ!!』
目を瞠って、驚愕した様子の百鬼丸は、神を宿した異質な存在ではなく……一緒に旅をした時の少年のままの表情を浮かべていた。
誰も巻き込まない最善の方法で――いや、違う。
内心で姫和は自らに反駁した。
(そうじゃない。私が刀使で使命を果たす為にやったワケじゃないんだ……ただ、奴を孤独にさせたくなかったんだ)
姫和は、不意に右手の拳を強く握った。
(……だが結局のところアイツは全部、お見通しだったんだな)
あの時……百鬼丸を隠世に追放する間際に、姫和と共に《迅移》で付いてきた少女……衛藤可奈美。
彼女に向け、姫和は苦笑いを漏らしながら、
『可奈美すまん。お前に嘘をついた――』本音を告白する寸前だった。
『――知ってたよ。姫和ちゃんの気持ち』
間髪を入れず、可奈美が言った。
『新陰流において、突きは死の太刀。二太刀目はない最後の剣!!』
明るく真直ぐな声と目で、百鬼丸を真正面から見据える可奈美。
『……全部、姫和ちゃんに背負わせない。そう約束したんだ。だからね、姫和ちゃんも世界も全部はあげられないよ』
百鬼丸の中にいるタギツヒメに語るように囁く。
『だからね……私の人生を半分あげるよ』
その一言に姫和は驚愕した。
『可奈美っ!』
『半分持つって約束したでしょ?』
可奈美は、いたずらっ子のように小さく舌を出して笑う。
『――まったく、お前という奴は』
呆れてモノも言えない。そう言葉を続けるハズだったのに、なぜだか姫和は言葉が詰まった。
しかし、姫和と同じかそれ以上に驚きを隠せずにいた百鬼丸は、
『なんでお前ら二人はそうやって……』
首を横に振って信じられない、と言いたげな困惑具合だった。
『――――ねぇ、百鬼丸さん。私たち三人って不思議な縁で結ばれてると思わない?』
『……縁?』
『うん、私はそう思うんだ。ね、姫和ちゃん』
話を振られた姫和は、呆れたように微笑し、
『そうだな。だが、腐れ縁だ』
と、憎まれ口を叩く。
そのやり取りが懐かしく、百鬼丸も釣られて笑みを零す。
『……縁、そうか縁か』
だからね、と可奈美は言葉を続ける。
『行こうよ。三人で世界の……時空の果てまで』
まるで旅行するような口調で可奈美が言った。
『ああ。』
姫和も肯く。
どうやら、気持ちは同じだったらしい。
「「はぁあああああああああああああああああああああああ!!」」
ふたりの揃った掛け声と共に、迅移によってトップスピードだった状態から更なる加速が始まり、百鬼丸の肉体は隠世の深層まで到達させる事に成功した。
◇
「可奈美、最初から私の考えに気が付いていたんだな」
広く畳の敷き詰められた部屋の中央で立ち止まった姫和は、俯き加減に声を震わせた。
「馬鹿者っ、荷物を持つとはそういう事だったのか――」
人生を半分あげる……自らの命を対価にしてでも姫和を助けたいと思ったのだろう。
なぜ、そんなにまでしてくれるのだろう。
姫和は、己の鈍感さに改めて気が付き、肩を小刻みに震わせた。
「せめてもう一度だけ可奈美に会いたい」
後悔の波が止めどなく心を襲う。
「会って今度こそ――」
謝りたい。いや、感謝したいのだ。十条姫和という一人の人間として、衛藤可奈美という少女と向き合いたい。
光る粒が畳の上に数滴、零れた。
『――あの、』
姫和の背後から声がした。
「ッ、誰だ!」
物凄い剣幕で姫和は叫ぶ。
敵かもしれない。
そう思い、咄嗟に背後を振り返ると――――
「かあさん?」
自然と、姫和の口から懐かしい呼び名が洩れていた。
後日、加筆します。
あと、アンケート回答ありがとうございました。
まさか同票だったので、困りました。
そこで、現時点では本作はアニメラストまで描く事に決めました。
後日譚については、パスワード投稿にしようかな? と現時点では考えております。
何かご意見などございましたら、お伝え下されば幸いです。では