刀使ト修羅   作:ひのきの棒

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第260話

 

実家の内部を探索しながら、

(あれから何日経過したんだろう……)

長い間、暗闇の中を彷徨うと時間感覚が狂ってしまうらしい。

「二人は大丈夫なんだろうか」

周りを眺めながら、ポツリと呟く。

可奈美と百鬼丸、ふたりと離れてからどれ程経過したのか分からない。

ふと、姫和は反芻する。

 

――――そう、あの時からだ。

 

 

百鬼丸の胴体を小烏丸の刃で貫き、五段階目の迅移によって隠世に追放する。……そして、自身(姫和)も共に消えるハズだった。

……だから、最後に姫和は意を決して少年の頭に自らの顔を近寄せる。

『お前を孤独にはしない。私も共に深層へ行く』

そう囁いた。

(あの時の奴の顔、おかしかったな)

ふっ、と思わず姫和の口元が綻ぶ。

『おま、急に何言ってるんだよ!!』

目を瞠って、驚愕した様子の百鬼丸は、神を宿した異質な存在ではなく……一緒に旅をした時の少年のままの表情を浮かべていた。

誰も巻き込まない最善の方法で――いや、違う。

内心で姫和は自らに反駁した。

(そうじゃない。私が刀使で使命を果たす為にやったワケじゃないんだ……ただ、奴を孤独にさせたくなかったんだ)

姫和は、不意に右手の拳を強く握った。

(……だが結局のところアイツは全部、お見通しだったんだな)

あの時……百鬼丸を隠世に追放する間際に、姫和と共に《迅移》で付いてきた少女……衛藤可奈美。

彼女に向け、姫和は苦笑いを漏らしながら、

『可奈美すまん。お前に嘘をついた――』本音を告白する寸前だった。

『――知ってたよ。姫和ちゃんの気持ち』

間髪を入れず、可奈美が言った。

『新陰流において、突きは死の太刀。二太刀目はない最後の剣!!』

明るく真直ぐな声と目で、百鬼丸を真正面から見据える可奈美。

『……全部、姫和ちゃんに背負わせない。そう約束したんだ。だからね、姫和ちゃんも世界も全部はあげられないよ』

百鬼丸の中にいるタギツヒメに語るように囁く。

『だからね……私の人生を半分あげるよ』

その一言に姫和は驚愕した。

『可奈美っ!』

『半分持つって約束したでしょ?』

可奈美は、いたずらっ子のように小さく舌を出して笑う。

『――まったく、お前という奴は』

呆れてモノも言えない。そう言葉を続けるハズだったのに、なぜだか姫和は言葉が詰まった。

しかし、姫和と同じかそれ以上に驚きを隠せずにいた百鬼丸は、

『なんでお前ら二人はそうやって……』

首を横に振って信じられない、と言いたげな困惑具合だった。

『――――ねぇ、百鬼丸さん。私たち三人って不思議な縁で結ばれてると思わない?』

『……縁?』

『うん、私はそう思うんだ。ね、姫和ちゃん』

話を振られた姫和は、呆れたように微笑し、

『そうだな。だが、腐れ縁だ』

と、憎まれ口を叩く。

そのやり取りが懐かしく、百鬼丸も釣られて笑みを零す。

『……縁、そうか縁か』

だからね、と可奈美は言葉を続ける。

『行こうよ。三人で世界の……時空の果てまで』

まるで旅行するような口調で可奈美が言った。

『ああ。』

姫和も肯く。

どうやら、気持ちは同じだったらしい。

 

「「はぁあああああああああああああああああああああああ!!」」

 

ふたりの揃った掛け声と共に、迅移によってトップスピードだった状態から更なる加速が始まり、百鬼丸の肉体は隠世の深層まで到達させる事に成功した。

 

 

 

「可奈美、最初から私の考えに気が付いていたんだな」

広く畳の敷き詰められた部屋の中央で立ち止まった姫和は、俯き加減に声を震わせた。

「馬鹿者っ、荷物を持つとはそういう事だったのか――」

人生を半分あげる……自らの命を対価にしてでも姫和を助けたいと思ったのだろう。

なぜ、そんなにまでしてくれるのだろう。

姫和は、己の鈍感さに改めて気が付き、肩を小刻みに震わせた。

「せめてもう一度だけ可奈美に会いたい」

後悔の波が止めどなく心を襲う。

「会って今度こそ――」

謝りたい。いや、感謝したいのだ。十条姫和という一人の人間として、衛藤可奈美という少女と向き合いたい。

光る粒が畳の上に数滴、零れた。

 

『――あの、』

姫和の背後から声がした。

 

「ッ、誰だ!」

物凄い剣幕で姫和は叫ぶ。

敵かもしれない。

そう思い、咄嗟に背後を振り返ると――――

「かあさん?」

自然と、姫和の口から懐かしい呼び名が洩れていた。

 




後日、加筆します。

あと、アンケート回答ありがとうございました。

まさか同票だったので、困りました。


そこで、現時点では本作はアニメラストまで描く事に決めました。

後日譚については、パスワード投稿にしようかな? と現時点では考えております。

何かご意見などございましたら、お伝え下されば幸いです。では

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