刀使ト修羅   作:ひのきの棒

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ごめんなさい、再び時系列は高速道での闘いへと戻ってます。あとで時系列を直しますのでご容赦下さい。


第91話

「クク……そうか、衛藤可奈美――これも宿命なのだな」十臓は俯き加減に呟いた。幾星霜も待ちに待った、柳生新陰流の天才と直接対峙する……。

 外道に堕ちるのも悪くないな。こんな運命ならば、バテレンの神の祝福とすら思える。俺は仏に嫌われているからな。」

 一二〇キロで走行する隣りの車両に声をかける。

「秀光、ここで百鬼丸と決着をつけてもいいのだろう? 気が変わったんだ」

 

 唐突な申し出に驚いた秀光だったが、結局頷いた。

 「分かった。アイツは今後の計画の障害になる。始末してほしい」

 

 その言葉を持っていたかのように、十臓はキャリアカーから首都高の防音障壁へと跳んだ。

 

 

 1

 

 

 とある中華飯店。

 

 店のTVモニターには午後五時のワイドショーニュース番組が放送されていた。

 『えーっ、ただいま入りました速報です。現在、東名及び首都高にて甚大な被害が発生している模様。えー、繰り返します。現在……』

 女性アナウンサーの冷静さを取り繕うような逼迫した声音が続く。

 『現在、上下ともに通行止めとなっております。また、死傷者ですが、一二六名。いまだ被害状況は把握しきれておりません。引き続きの情報にご注意下さい……また、これから帰宅ラッシュとなりますが、首都高は使用不可となっております……』

 

 緊急事態のようだった。

 スポーツ新聞で贔屓の球団の記事を眺めていた店主は、チラりと目を上げ画面を一瞥する。

 

 「はぁ……明の野郎、この件にも出動するのかねぇ」

 ボヤきながら、店主は珍しくこの時間に人影のない店内を見回す。恐らくこの事件の影響だろう。会社帰りのサラリーマンはおろか、部活帰りの学生の姿もない。

 

 「いやはや、参ったね……」

 ツルり、と禿げた頭を一撫でする。

 

 女性アナウンサーから話しを引き継いだ男性司会が、甲高い声でコメンテーターに話題を振る。

 

 『いやぁ~、しかし今年は大規模な災害……言い換えれば、人災が多いですね。なんでも話しによると、この高速道の爆破事故なども、人間、というより着ぐるみのようなおかしな格好をした人影と、警察車両の上に映し出された人影が原因だとの情報も入っていますが……』

 

 『―――――そういえば』

 

 と、中年の女性コメンテーターがややヒステリック気味に割り込んだ。

 

 『つい最近、刀剣類管理局でもこのような問題を発生させましたね。今、画面に映し出されている映像を見た限りでも、人間技ではないでしょう? やはり〝荒魂〟関連じゃないですか?』

 

 恰幅のよい男性コメンテーターは、よく日焼けした肌で、神経質そうな目を更に細め、唸る。

 『最近は刀剣類管理局局長、折神紫氏の責任問題となっている〝廃棄〟問題もありますしねぇ……まぁ、確かに刀使というのはこの社会では重要です。ですが、彼女たちはまだ学生。その彼女たちを統率する行政側の職務怠慢がひどい。なにより、国会にも来ない。代理の折神朱音氏も可哀想だ。それに、今仰られたように、これは――荒魂に関連していると言っていいでしょう』

 

 司会の男が、すかさず口を挟む。

 

 『ええ、もしこれが……刀剣類管理局や特別祭祀機動隊の案件であるならば、最早世間からの非難はピークに達しますね。彼女たちはよく市民生活を守ってくれていますが……こうも問題が多いと、一度組織を解体するという可能性も……』

 

 

 

そう言いながら司会は「では、一度街の声を聞いてみましょう」と街頭インタビューへと映像を切り替えた。

 

 

 モザイクのかかった老若男女が次々とインタビューに答えている。

 

 『正直、荒魂だのなんだのって関東じゃ安心して眠れないよ』

 

 『子供がいる身としては、一刻も早くこんな事態を収束させてほしいですね……』

 

 『はぁ? 刀使? 俺よくわかんねぇーや、パスパス』

 

 『おいおい、しっかりしてくれよォ! こっちは血税払ってんだよ。まったくいい加減にして欲しいねぇ!! 二〇年前だって結局さぁ、行政側が……』

 

 

 概して、インタビュー内容は刀使を含む刀剣類管理局への厳しい意見で占められていた。

 

 

 映像が終わると、喧々諤々とコメンテーターたちが喋っていた。

 

 『やはり、特別祭祀機動隊にあんな武装をさせる事がマズいんですよ、自明の理です! 国内法では警察権のみの……』

 

 『理解不能です。そもそも、警視庁の組織の一部としてですね……、いえ、ですから軍隊ではない、我が国では軍隊は〝ない〟んです。えっ? はぁ~、だから』

 

 終始このような平行線のやり取りが続けられていた。

 

 

 2

 

 此花寿々花は、管理病棟の一画に設けられた運動施設で柔軟体操の後、軽い運動を済ませていた。たまたま、室内に設置されていたTV画面からの騒音に柳眉を顰める。

 

 「はぁ……まったく、実情を知らない方々はお気楽なコトで」

 醒めた眼差しでワイドショーを一瞥する。

 

 本来、四か月前を含めても重大な事件事故というのは未然に防げるものなどないのだ。全て事後処理をせざるを得ない。また、初期段階では情報が錯綜し、正しい情報から対処を導き出すというのが難しい。

 

 うっすらと、スポーツスウェットが汗ばむ。

 

 軽く頭を振って、タオルを取ると額の汗を拭う。

 

 

 ガチャリ、と扉を開く音がした。

 『あの~、お久しぶりです』

 聞き覚えのある少女の声だった。意識を向けると、橋本双葉が鎌府の制服を身に付けながら、軽い会釈をして入室してきた。

 

 「あら、お久しぶりですわね。どうかされましたの?」

 

 「ええ、丁度あの番組見てたんですね」

 双葉が指さしたのは、件のワイドショーだった。

 

 嫌悪混じりに首を巡らせた寿々花は、

 「ええ……それがなにか?」

 と、訊いた。

 

 「あの高速道で戦っているのって……ウチのにいさんなんです」気まずそうに、双葉はため息をつく。

 

 その様子はまるで、真希や結芽の後始末を任された嘗ての自分(寿々花)の苦悩に重なった。それゆえ、「ふふっ、そうですの……」と軽く噴出した。

 

 「なっ、どうして笑うんですか、ひどいです……」

 

 「あら、ごめんなさい。ですが、わたくしも貴女同様に色々と面倒をかける方々に囲まれていましたので、つい思い出しただけですわ。――それより、何か御用があって此方に来たのではなくて?」

 

 『それはボクが説明するよ……』

 双葉の背後から凛々しい声がした。

 

 「えっ……!?」

 

 聞き覚えのある声に、寿々花は色めきだった。

 

 

 「……久しぶり、かな?」

 

 親衛隊第一席、獅童真希。

 

 一見して中性的な顔立ちの彼女だが、今の表情は疲れの伴う顔色だった。

 

 「どうされたんですの? 急に……」

 

 

 「キミに話したいことがあるんだ。……数時間前まで留置所、というか専用の個室に居たんだ。それでも開放されてから真っ先にキミに会いたくてね」

 

 「わたくしに会いたくて……? っ、ゴホン!」

 珍しく、狼狽える寿々花の様子に萌えながら、双葉は忍び笑いを漏らす。

 

 「ええっと、今起こっている事件も含めて綾小路の不穏な動きについて……此花さんの母校ですよね?」

 

 不穏なワードに耳ざとく表情を切り替え、頷く。

 

 「……ええ、ぜひお聞かせ下さいません?」

 

 

 

 3

 

 「ボクがひとりで旅をしていた頃……、というよりも研究室を襲った奴を含めてもいい。率直にいおう。いまの綾小路は危ない。あの学校では今、おかしな連中を匿っている。それに現在消息不明の筈だった高津学長の姿も確認されている。この四か月、荒魂だけじゃなく別次元の異形な生命体が各地に姿を表しているんだ」

 

 真希が、努めて冷静に説明する。

 

 寿々花、真希、双葉は病棟の休憩室にある小さなテーブルを囲み、自販機のジュースに口をつける。

 

 一見、少女たちらしい何気ない光景だった。しかしその内容は、重い。

 

 

 いま、この世界を襲う勢力――その中枢に位置する綾小路武芸学舎。かつて通っていた伝統ある母校が現在、騒乱の渦中にあるのだという。

 

 「……看過できませんわね」

 ワインレッドの毛先を指先で弄びながら、呟く。

 

 「ああ、ボクもそう思う。舞草の密偵の情報が正しいならば、綾小路では〝近衛隊〟という組織が編成されているらしい」

 

 「近衛隊? まぁ、随分と大仰なお名前ですこと。それで?」

 先を促す寿々花。

 

 しかしこれ以上は詳しく分からない、とでもいうように真希が首を振る。

 

 「あの~」

 おずおずと、先程まで黙っていた双葉が口を開く。

 

 「……? どうされましたの?」

 

 「その綾小路の内実に詳しい密偵の話しですと、以前……四か月前のショッピングモールを襲った事件対応を行った綾小路の刀使が中心だと」

 

 四か月前、埼玉と東京の中間に位置する巨大民間施設を襲った殺戮事件。その現場対応を主導した双葉は無論、救援に行けなかった親衛隊の二人も表情が硬くなる。

 

 「ますます厄介な事になりましたわね。それに肝心の守る対象というのは……?」

 

 「間違いなく、タギツヒメです。現在、紫様に憑依していたタギツヒメが三柱に別れ、そのうちのひと柱となっています」

 

 「なるほど……状況は芳しくないどころか、以前より悪化していますわね。なんとなくですが、双葉さんのお兄様である百鬼丸さんが今戦っている状況がぼんやりと理解できましたわ」

 

 バラバラの話しから推測し、結論を導き出した寿々花。

 

 その理知的な雰囲気が、やはり親衛隊一番の知恵者として謳われるだけのことはある、と双葉は感嘆した。

 

 「はは……さすがだね寿々花は。ボクは今でも頭が混乱して……今まで償いのために全国を行脚していたのだけどね……」

 

 「そうでしょうか? それはそれで真希さんらしい行動で良いと思いますが?」

 

 

 勝手にイチャイチャしようとする雰囲気の二人を察した双葉が「ゴホン」と大きく咳払いして、話しを戻す。

 

 「……それで、なんですが。綾小路への潜入をする計画があるんです。まさかにいさんが今高速道で闘うとか思ってませんでしたが……大量に刀使が辞める事態になっている現状、潜入は難しくないと思ってます………それで、誠に不本意なんですが……綾小路の生徒に案内を……」

 

 「残念ですが、わたくしは親衛隊の期間が長くてお役に立てそうにありませんが……?」

 

 「あ、いえ……寿々花さんには計画のアドバイスなんかを求めてまして……道案内自体は……南の島に飛ばされていたクッッッッソ変態刀使をですね……あ、汚い言葉失礼しました」

 

 「「……?」」

 

 真希と寿々花は顔を見合わせた。

 

 

 と、双葉のスカートから携帯の音が鳴る。

 

 

 「……はい、もしもし。えっ、今ここどこかって? チッ、病棟の休憩室ですが。は? 塩対応可愛い? ……黙ってはやくこい」

 

 ピッ、と通話を切った双葉は珍しく冷淡な態度だった。

 

 

 「え~っと、協力してくれる人間にその態度はいいのかい?」真希が苦笑いを浮かべる。

 

 

 「あっ、はい。コイツは基本これくらいで大丈夫です!」

 

 「…………それで、その協力してくれる人物のお名前は?」

 

 チッ、チッ、チッ、と舌打ちを連続して双葉は頭を抱える。

 

 「山城由依……です、最低の変態です! セクハラ女です! にいさんといい勝負します!! 最悪です!!」

 

 

 と、タイミングがある意味最高の状態だった。

 

 『んん~っっ、美少女たちの香しい呼吸と体臭が満ちているぅ~っ、最高っっ!!』

 

 明らかに場違いの絶叫が遠くの廊下から聞こえてきた。

 

 双葉の表情は、絶望に陥った人のソレであった。

 

 

 「「…………。」」

 

 真希と寿々花は、再び顔を見合わせながらこれから来るであろう厄介な難事を思った。概ね、面倒くさい方向へと自体は進んでいるのだ、と。

 

 

 




今期はみにとじと「どろろ」が同時に放送していて個人的にとても嬉しいです! でも、妖怪の数が12って……まあ、妥当なんですかね。途中のサメとか亀みたいなの謎退治が無くなるんですかねぇ……。
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