脳内卓で逝くクトゥルフ神話TRPG   作:河影 御月

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異形の紋様:導入5

201×年8月1日、16:00

 

写真や新聞、本とCDがところ狭しと並べられた棚に囲まれた部屋の中、ヘッドホンをつけて音楽を聴きながらメモを読んでいる人物がいた。

 

彼女は回帰百々華。

 

フリーのジャーナリストをしている。

 

やがて音楽の再生が終わったのか、ヘッドホンを頭から外して机に置くと満足そうに息を吐き出す。

 

「ふう、やはり音楽はいいですね。些細な利益を求めて潰し合う御馬鹿さん達(ネタ共)のわめき声よりも断然に美しい。...と、言ってもあのわめき声が絶望の断末魔に変わる瞬間は非常に滑稽で、...それでいて興奮するものがありますね。.........ああ、想像してたらゾクゾクしてきました。今度はどんな人ネタを絶望のドン底に叩き落としましょうか?ふふ、ふふふふふふ♡」

 

彼女が少々アブナイ思考をしていると、部屋に備え付けてある仕事用の固定電話がなる。

 

「おや、どちら様でございましょうか?」

 

そう言って彼女は受話器をとる。

 

「はーい、コチラおはようから翌おはようまであなた(ネタ)を見つめる回帰百々華でございます。」

 

「おう、回帰、久しぶりだな。俺だよ、俺。」

 

声を聞いた百々華はほんの少し考えたあと、口元に薄い笑みを浮かべながら返答する。

 

「おや、この前吊し上げた(ネタにした)政治家ですか?また懲りずにナンパですか?それが原因で悪い話などが芋づる式に出てきて豚箱に放り込まれたのをお忘れですか?」

 

「全然ちげーよ!烏刈(うがる)山田烏刈(やまだうがる)だよ!お前、分かって言ってるだろ!一応かつての同僚だぞ!」

 

彼は山田烏刈。

 

百々華の知り合いであり、百々華がかつて勤めていた週刊誌『バビロニア』出版社の同僚である。

 

「ええ、もちろん。そうでなければからかう必要もないでしょう?」

 

「このやろうっ!......まあいい、今回はこんな無駄話をするために電話をしたわけじゃないんだ、とりあえず話を聞け。...お前に正式な依頼を持ってきた。」

 

「依頼、でございますか?」

 

「ああ、単刀直入に言うと、今回新しくオープンするショッピングモールの『裏』を暴いてきてほしい。」

 

「ショッピングモールの『裏』、でございますか?...抽象的過ぎてよくわかりませんね。詳しい情報がなければ依頼を受ける気はさらさらございませんが...」

 

「そう言うと思って情報を集めてきたぞ。今から伝えるからよーく聞きな。」

 

そう言うと烏刈は以下の情報を教えてくれる。

 

 

 

『ショッピングモール「アルス・パウリナ」について②

 

・冬木市の隣町であるY市、その海沿いのS岬にあった「商売の神が祀られていた祠」を取り壊して建てられた巨大ショッピングモール。

 

・元々は1950年頃にS岬で発達した闇市を根底とした商店街が存在しており、当時住んでいた住民の大半がショッピングモール建設を反対していた。

 

・特に商店街を管理していた「S岬商業団体」はショッピングモール建設に猛反対し、建設が決定するまで大規模なデモを繰り返していた。

 

・しかしデモは全て1日で鎮圧され、テレビでも細々としか報道されず、死傷者まで出た数々のデモは企業側が全てお金で揉み消したという噂まである。

 

・社長の「剣菱勝」は表では敏腕経営者を装っているが、裏ではヤのつく自由業と繋がっているという噂もあり、デモ鎮圧の時も彼らの力を借りたという噂もある。

 

・さらに最近は暴力団の力を利用して白昼堂々と麻薬密売や、人身売買等を行っているという噂まであるがそれらが事実だという証拠は一切無い。

 

・不思議なことに、これだけ謎が多いにもかかわらず、剣菱勝やショッピングモールについて調べている、調べていたジャーナリストは「一人もいない」。

 

・さらに「アルス・パウリナ」は善良で素晴らしい企業であり、上で述べたような黒い噂は表向きには「存在しない」。』

 

 

 

「これらの情報は剣菱社長の秘書による内部告発らしいんだ。お前にはこれらの情報が本当のことなのか調べてきてほしいのさ。ちなみにこれ、うちバビロニアの社長直々のご指名依頼だから断れないと思うぞ。あ、ギル社長曰く『報酬はそれなりに弾んでやる。死ぬ気で働け、根なし草。』、とのことだ。」

 

「......報酬額は?」

 

「400万円。持って帰ってきた情報に応じて追加報酬もあるらしいぞ。」

 

 

 

 

PL5「(........うん、嫌な予感しかしない。)」

 

クソ怪しくても依頼は受けてもらうぞ。

...さて、以上のことを踏まえて君は3回だけ探索行動をとることができるぞ。何をする?

 

PL5「(KP、まだ烏刈と電話は繋がってるのよね?)」

 

うん、繋がっているね。

 

PL5「(だったら烏刈に、「『剣菱社長の秘書による内部告発』という情報の出所に直接連絡したい」、と言うわ。)」

 

(ほほう、なるほどね...

要するに他の情報を得るための手段が欲しいってことか。)

 

OK、ならば言いくるめか説得だな。

 

 

 

 説得(60)→86 失敗!

 

 

 

では、百々華は烏刈に連絡先を聞こうとしたが、烏刈に

 

「あっ、悪い。情報の元は教えられねぇんだ。すまねぇ...」

 

と言われて電話を切られてしまう。

 

 

PL5「(.........情報源を失ったのは痛いけど、とりあえず自分で調べるね。KP、剣菱勝について調べたいのだけど...)」

 

それなら図書館をどうぞ。

 

 

 

 図書館(60)→27 成功!

 

 

 

では、あなたは新聞やパソコンのサイトから以下の情報を手に入れる。

 

『剣菱勝について

・「(株)アルス・パウリナ」の経営者。年齢不詳の超イケメン。

 

・5年前に大企業の社長である父親「剣菱露満」の後を継ぎ、さらに企業を拡大している。

 

・経営者としての手腕はすさまじく、父親から継いだ企業を急速に拡大させただけではなく様々なジャンルに挑戦し、そのことごとくを成功させている。

 

・また彼の先々代、つまりは祖父にあたる「剣菱正太郎」は当初名家であったが、戦時中の法案により財閥が解体されたにも関わらず、終戦後に手持ちゼロから持ち前の経営センスで地元の闇市を取り仕切り、僅か一代で商業財閥にのしあがった天才であった。』

 

 

 

他にも情報はあったが、どれも剣菱の功績や一族を称えるものばかりであり烏刈の言っていた通り黒い噂は本当に無い。

 

 

ちなみに剣菱勝の立ち絵はこんな感じ。 つ「fateのソロモン」

 

 

PL5「(うん、企業名でなんとなく察してたわ...)」

 

行動はあと一回だけどどうする?

 

PL5「(そうね...じゃあ、内部告発をしたっていう剣菱社長の秘書について調べるわ。)」

 

OK。じゃあ図書館でどうぞ。

 

 

 

図書館(60)→51 成功!

 

 

 

........秘書についての情報はほとんど存在しない。

唯一(株)アルス・パウリナのホームページに名前と少々の経歴がポツンと書いてあるだけで顔写真すらない。

 

ちなみに名前は「水無月魔理沙」だ。

 

 

PL5「(...本当に他の情報はないのですか?)」

 

無いね。ブログやTwitterの類いもなく、ホームページ以外の剣菱の紹介文にも書かれていないな。

 

ちなみに秘書の経歴は「Y高校を卒業後、T大学に入学・卒業、そして『アルス・パウリナ』に入社。秘書として働いている。現在24歳。」としか書いていない。

 

PL5「(黒い噂が表面上一切無い社長と情報が無さすぎる秘書。...怪しすぎるわ。それにしてもなぜ秘書は社長の黒い噂を暴露するようなことを?)」

 

悩んでるところを悪いけど、時間を飛ばすよ。

 

 

 

さて、あなたは次の日にショッピングモールへと向かうわけですが、【何を持っていきますか?】

 

 

 

PL5「(持ち物は財布、携帯、音楽プレイヤー、スタンガン、ボイスレコーダー、カメラ、充電池、カメラバッテリーの換え、USBケーブル、催涙スプレー、メモ帳、消しゴム付きシャーペンでどう?)」

 

OKだよ。

 

では百々華はこれから行くショッピングモールに一抹の不安を覚えながら━━━しかしどこか内心でワクワクしながら━━━ショッピングモールへと向かっていった。

 

 

 

 

今回で導入は終了!

 

次回からいよいよ本編に入るよ。それでは次回をお楽しみに‼️

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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201×年8月2日、?:??  ???

 

暗く広い空間で、小さな光に照らされて影を伸ばす人物がいた。

 

 

「まだだ、まだ足りない...」

 

 

そう言うと、その人物は赤黒く染まった細長いナニかを放り投げる。

 

それはカランと軽い音をたてて床に落ちる。

 

よく見るとソレと同じようなモノが床一面にびっしりと積まれてある。

 

それらは人間の骨だった。

 

全てが血にまみれ、所々が砕けたそれらを常人が見れば狂気に蝕まれることだろう。

 

しかしその人物はそれらを見て恐怖するどころか、ニタニタと笑い始める。

 

 

「でももう少し、もう少しのはずなんだ。」

 

 

その人物はそう言うと手に持った一枚の古い紙を見つめる。

 

やがてその人物は紙を懐にしまうと、足元の骨を踏み砕きながら闇の中へと消えてゆく。

 

誰もいなくなった空間に灯っていた小さな光は、次の瞬間にひとつ残らずかき消え、空間は再び完全な闇に閉ざされたのだった。

 

 

 

to be continued...




太線で区切られた文章はPL達に伝えたり話したりしていないRPや茶番です。
俗にいうアナザーサイドという物なので気にしないでください。


NPCデータ
山田烏刈

性別:男性

職業:ジャーナリスト 出身:日本 年齢:27歳

週刊誌「バビロニア」の専属ジャーナリスト。
百々華とはフリー時代からの腐れ縁であり、元同僚。
百々華がネタに『真実と面白さ』を求めるタイプならば、彼はネタに『利益と継続読者』を求めるタイプなので百々華のことをあまり快く思っていない。
しかしなんやかんや言って根っこは善良なため、百々華の自由極まりない性格と行動をこっそりと心配している。
生粋の弄られキャラであり、今も昔も様々な人にいろんなことでからかわれている。

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