「敵の名前はね、アルレオルス=イザードという」
「有名人なのか?」
ステイルは頷き、
「かの名高き『パラケルスス』の末裔だ。おい、聞き覚えは?」
アンクはつまらなそうに、
「封印された後で現れた奴なんで最近漁った情報程度しか知らんが…随分と御大層な錬金術師だったそうだな」
「そうだ。そして子孫の彼だが、元はローマ正教の錬金術師だったんだけど、三年ほど前にローマ正教を裏切り、今ではフリーの身さ」
「なるほどな…俺の記憶ではローマ正教は裏切り者を嫌っていたな。隠れ蓑に、このそうそう手を出せない『学園都市』に潜り込んだわけだ」
「まったく、だからこうやってコソコソ動く羽目になったんだ」
「ま、それはいいとして…これからどうする?」
「まずは隠し部屋からあたっていこうか。図面からして、十七箇所あるうち、一番近い食堂の脇口からだね」
「んでも、そんなにあやしいところはなさそうだけど…」
「あやしいところはない…ね」
当麻の言葉を復唱するようにステイルは言う。
「何でもないさ。実際専門家の僕が見ても怪しいところは見当たらない。怪しいところなんて何にも見当たらないさ。専門家の僕がキチンと見ているのにね」
と、言いつつ、釈然としない顔でビルを見つめる。
「もったいぶらずに言ったらどうだ。役立たず」
「怪しくないが危険だと言っているんだ!」
再び喧嘩する2人。
「おいおい、落ち着けって。今回の俺達の目的は救出だろ?」
「…そうだった、殺しじゃない。まぁ、僕としてはこのビルをまるまる燃やすほうが楽なんだけどね」
「無能な上に使い勝手が悪いな。汎用性がないとはいつかリストラ対象だ」
さらりと怖いことを言ったつもりがアンクに言い返される。
当麻は呆れながら
「…それで?作戦か何かあるのか?」
「そんなものはないさ」
流石にそれを聞いた当麻は
「ふざ、テメェ本当にこのまま突っ込む気か!?ようはテロリストが立てこもってるビルに正面から突撃するようなもんだろ!!安物のアクション映画だって一つや二つ、敵を欺く作戦ぐらい練ってるもんだろうが!」
「ふむ、まぁ身体にナイフで『神隠し』を刻めば、気配を絶つことぐらいはできるだろうけどね」
「じゃあ、それやれよ!痛いのヤダけど!」
「…たとえ気配を消して、透明人間になっても『ザコが魔術を使った』魔力だけは、ごまかしようがない」
「…はい?」
アンクの当麻はポカンと口をあける。
「簡単にいえば、赤絵の具一色の絵画があったとする。赤絵の具はあのビル内に充満している標的の魔力だ。この赤一色の中に雑魚の青絵の具を塗りつければどうなる?黄色でも一緒だ」
当麻は納得して頷く。
「なるほど。つまり、お前ら魔術を使えば、敵はお前らの魔力を感じ取る。気配を消しても、それは変わらないってことか」
「そういうことさ」
「…つまり、アレか?お前らは歩く発信機デスか?」
『お前よりマシだ』
「なんで!?」
「お前の…
「そう。君の右手はいわば魔法の消しゴムさ。自分の絵画がどんどん虫食いされていけば、誰だって気づくだろう?僕は力を使わないければ、感知されないけどね」
「俺も腕を戻さなければ感知されんな。少なくともこの体は人間だからな」
「…じゃあ何か?俺達は3人とも腰から発信機をぶら下げて、何の策も持たずにテロリスト満載ビルん中に正面からお邪魔するってか?」
「そのために君がいる。蜂の巣になりたくなければ、死ぬ気で右手を前にするかオーズになれ」
「ふざ…!思いっきり他人事だな!?テメェのつけが全部こっちに回ってるだけじゃねぇか!」
「あっはっはっ。これは面白いことを言う。錬金術師(あんな)相手の策など、『世界』を斬り裂き、聖人を下したオーズとしての力と、聖(セント)ジョージの竜の一撃すら防いだ君の右手があれば、大戦力さ。大体こっちに頼られても困る。魔女狩りの王(イノケンティウス)もあの子を守るために使っているし、今回の手持ちは炎剣一つしかないんでね」
「うわーっ!コイツ本当にに何にも考えてねーっ!」
「この餓鬼…!?元々丸投げするつもりだったな!」
「ほら、何をしているんだい?もう着いたよ。さっさと入ろう」
ムカつく相手に一矢向かえる事が出来るステイルがせかすように二人に言う。
そして、三人は、戦場へと足を踏み入れた。
『ソレ』はエレベーターの入ってすぐに
まるで、人型のロボット…というよりかは、西洋の騎士のようなものだった。
ソレを西洋風のロボットと言いたい。
ソレから流れている赤黒い液体を、オイルと答えたい。
だが…
大型肉食獣に喰い千切られたような体からはなんの言い訳も聞かなかった。
「何だよ…これ…」
当麻は力なく呟いた。
「ソレはただの死体だよ…と、いいたいが、状況が酷すぎるな」
ステイルは無残な死体をマジマジ見る。
「施術鎧により、加護と天矢のレプリカ…おそらくローマ正教の一三騎士団だろう。裏切り者の首を取りにきたは良いけど、その様子じゃ全滅みたいだね。全く、騎士団はイギリス清教の十八番だというのに、下手に盗作するからそういう事になるんだが…それよりも、一体何に襲われたんだ?合成獣(キメラ)ででもいるのか?」
「メズールのヤミーだな」
当麻とステイルがアンクの言葉に振り向いた瞬間、
「あいつのヤミーなら…こうなる」
バシャバシャッ…
『!?』
バシャァァァァァンッ!
『キシャァァァァァァァァァッ!』
一匹の巨大なピラニアが襲い掛かってきた。
「なっ!くそっ!」
ボウッ!
ステイルは炎剣を直撃させる!
『ギャガッ!』
しかし!
「バカな!」
十数枚のセルメダルを落とすが、弱りながらもまだ生きている巨大ピラニア、
(摂氏3000度の炎を直撃で受けて生きているだと!?)
「おりゃぁぁぁぁ!」
ドガッ!
当麻が『右手』で殴る。
するとピラニアヤミーがのたうちまわり、
『ギャ…ガ…』
ドガァァン!
小規模の爆発を起こし、『消滅』した。
「よっしゃっ!」
「何がだ!」
ゲシッ!
アンクは当麻を蹴りつける。
「何すんだよ!」
「メダルが『消滅』しちまっただろうが!このバカが!」
「しょうがねぇだろあの場合!」
ギャイギャイ騒ぐ二人をよそにステイルは内心穏やかではない。
(僕の炎剣の直撃が決定打にならないバケモノ…あれで只の雑魚だと!?グリードにヤミー…800年前に生まれたバケモノ…)
「しかし、少し面倒だな」
「何がだアンク?」
「メズールのヤミーはこれといった知能はない。しかし、力を持つ魔術師にヤミーの親だと、基本的な主従はメズールにあるとはいえ、ある程度操る事ができる」
「マジかよ!」
「お、おいちょっと待て!確か『深海の女王』のヤミーは『大量生産型』だと言っていたな!」
「ああ、だから一気に稼ぐチャンスだ。死にたくなければ気合いをいれろ」
二人は頭を抱えて、うずくまった。
「くそ…死体があっても、爆発しても気づかないなんてな」
当麻が毒づくと、ステイルが「ふむ」といいながら、タバコを揺らす。
「そういう結界なんだろうさ。コインにたとえるなら、表と裏だね。ここは『コインの表』の住人…何も知らない生徒たちは、『コインの裏』である魔術師の姿に気づくことができない。そして、『コインの裏』の住人…僕たち外敵は『コインの表』である何も知らない生徒たちに一切干渉することができない。みなよ」
ステイルは、エレベーターから出てきた少女を指差しす。
その少女は先程の爆発跡を、疑問にも思わず歩くように進んでいく。
「…………」
当麻は黙ってその光景を見る。
「ついでにいうなら…」
アンクはロビーを見まわす。
「建物そのものは、『コインの表』の方だ。俺達は自分の力でドア一つあけることができない。出入りの自動ドアも同じだ。くそっ!」
「結界…か」
小さくつぶやく当麻。直後、あることに気がついた。
「アンク。この結界は魔術何だろ?なら、俺の『右手』でなんとかならないのか?」
「バカにしちゃあ頭を働かせたな。しかし、それは無駄だ。おそらく『
「その上にヤミーかよ…」
当麻は爆発とともに消滅した鎧騎士を思い出す。
「なんであんな目に…」
「メズールのヤミーはこれといった知能はない。メダルが溜まれば大暴れしながらメズールの元に戻るくらいだ」
「おい、化け物」
ステイルはアンクを睨む。
「もうすでにヤミーは生まれている。これからの対処はどうすればいい」
「はっ、随分と焦ってるな。自分の一撃があんまり通用しなかったのが堪えたか?」
「摂氏3000度の炎と直撃して生きている存在など僕は知らない!言え!ヤミーはどこにいる!?」
「まあ、ここの主が『親』だろうな」
アンクは睨みつける。
「メズールのヤミーは大量に生まれるが成長に時間がかかる…が、お前の言っている通り強力な錬金術師で欲望が強ければ…」
アンクはニヤリと笑い、
「成長は早いかもな」
カツンカツンといわせながら、3人は階段を上がっていく。
まだ、2階を過ぎたばかりだというのに、もう体の疲労が溜まってきていた。
「どうやら、結界のせいみたいだね。このビルそのものは『コインの表』だから、『コインの裏』である僕たちが踏むことで、その反動が跳ね返ってくるといったところか」
と、ステイルは言うが、聞いているのは当麻だけだった。
「………」
(オーズに変身しているせいか?体力が上がってる)
アンクは、二人の十歩後ろで息を切らせながら、階段を上がっていた。
「アンク、大丈夫か」
「くそ…!この体、ここまで体力がないとはな!」
「仕方ねえだろ。小学生なんだし…ってお前、体力凄くなかった?」
以前凄い動きをしていたアンクを思い出す当麻。
「セルメダルを使えばな。だが、最近稼げてもいない上にメズールに使った分もあるのにこんな事で使えるか!」
(セルメダル…人間の『欲望』を結晶化させたメダルか)
つい先日、最大主教に見せられた数こそ少ないがイギリス清教が所有しているセルメダルは絶大な魔力を秘めていた。
(…こいつらに黙っているもうひとつの任務…『セルメダルの入手』。チャンスといえばチャンスか)
ステイルは何食わぬ顔で二人に話しかける。
「どうやら敵が自分の所にくるまでに、体力消費させる…まぁ、あの錬金術師が考えそうなこと、だろうね」
「ちっ…小賢しい事を。ん?待てよ」
アンクはいきなりツールフォンをとりだして、ディスプレイを操作して数秒後…
「俺だ」
「電話を叩くな、バカかお前は」
「お前…アイス食ってねぇだろうな」
「食ったのか!貴様食ったのか!」
「まぁいい…電話がつながるのか確認しただけだ。そういえば…この間操作していて気付いたんだが、魔術を操る者が電話を使うと、一分で一日寿命が縮むぞ」
そこで強引にアンクは電話を切る。
「どうやら電話は繋がるな。やれやれ…」
ツールフォンを操作してアンクは周りを見る。
「セルメダルは随分と溜まり続けているな」
「なに?」
「このビル全体が『巣』だ。錬金術師の欲望もそうだが…錬金術師が生徒どもになにかしているな」
アンクは当たりを見まわす。
「それと重なってどんどんヤミーが増えてやがる」
「まずいな…ん?」
みると目の前に…
「学生?」
三人が歩いている廊下に立ちふさがる学生の集団がいた。
「おかしい…『コインの表』の住人が『コインの裏』の僕達に反応するなんて」
生徒達は腕をゆっくり上げて、三人に指さすと…
バシャンッ!
『!?』
体からピラニアヤミーが飛び出してきた。
『うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』
上条がアンクを持ち上げ、ステイルと共に一気に走りだす。
「は、反則だ!あんなもの反則だ!?」
「なぜ逃げる
「あんな大量に相手できるか!」
言い合う二人をよそに当麻に担がれているアンクは
「ちっ…随分と頭が回るどころか、流石だな。多分ヤミーが取り付いている自覚があって、一人一匹ずつに『卵』状態のモノを体にいれる。ヤミーの強化もできて侵入者対策にもなる」
「感心してる場合か!なっ!前からも来たー!」
「階段…いくよ!」
「おっしゃっ!上下どっちに行く…」
ぽんっ
「え…?」
突如当麻とアンクの体が宙に浮く。
あまりの突然の事で当麻は理解できない。
アンクだけは
「き、貴様…!」
ステイルを凶悪に睨みつける。
そんな2人にステイルは
「バイバイ、化け物共♪」
楽しそうな声を笑顔で言って上の階段を駆け上がっていく。
「て、テメェェェェェェェェッ!」
ここで当麻は完璧に自分が担がれた事に気付いた。
あの男は自分を囮にする為にここまで連れてきたのだ。
ステイルは当麻とは違い、魔術を使用しない限り異常と感知されない。つまり、感知される自分を囮にすれば、うまくいけば苦労無く敵の元へ向かえるのだ。
そういえばステイルはこのビルにヤミーが存在する事を知っていた。
完璧に…二人は虚仮にされて、使い捨てられたのだ。
その証拠に迷いなくピラニアヤミーは当麻達を追いかける。
当麻はすぐに立ち上がり、
「くそっ!あの赤毛!絶対生き残って、一発殴る!アンク!」
「あのガキ…殺してやる…」
チャキッ…
アンクは三色のコアメダルをとりだして、
「当麻!ついでだメダルを稼げ!」
投げる!
「あいよ!手袋装着!」
当麻は黒の革手袋をはめて、コアメダルを受け取り、ベルトを着け、メダルを装填し、
「変身!」
《TAKA!》《TORA!》《BATTA!》《TA・TO・BA!TATOBA!TA・TO・BA!》
オーズ・タトバコンボに変身した。
オーズはトラ・クローを伸ばし、
「さあ、かかってこ…あれ?」
斬り裂こうとしたが…
「なんだこれは?」
ピラニアヤミーは空中で止まっていた。
「それが…」
突如ピラニアヤミーが道をあける。
道が開いた先、
「それがあなたの本当の姿なの、魔王様」
そこには、
「そんなに巫女さんの魅惑のボティが望みなの?」
当麻の目的である『
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ごめんなさい。