とある欲望の幻想破壊《イマジンブレイカー》   作:歌音

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第三章・第6話/少女の願い

上条当麻とアンクを囮にした後、ステイル=マグヌスは警戒心を最大限に持ち、慎重に進んでいた。

 

彼がいつも以上に警戒している理由は勿論、『ヤミー』の存在だ。

 

そこでステイルは取り出した『発見機』を見る。

 

イギリス清教が鴻上ファウンデーション…いや、鴻上光世との大交渉の結果で手に入れた『発見機』はセルメダルに反応する。

 

セルメダル…『欲望』という人間のもっとも強いチカラを具象化したモノ。

 

それ一枚一枚が魔力の塊のようなもので、ステイルもそれを大体は感じることができる。

 

しかし、今回は別だ。

 

このビル全体に強力な魔力の塊が無数に存在する。

 

先程生徒の体から出てきたピラニア型のヤミーが出てきた状況を見て、おそらくこの『三沢塾』の生徒一人一人に一匹ずつ…いくらステイルでもそんな状況で『(ほんたい)』を見つけることは難しい。

 

「まったく…鴻上光世は何を考えているんだ」

 

ステイルは鴻上光世を思い出す。

 

鴻上光世…世界経済を牛耳る超弩級巨大企業の頂点。その影響力は絶大で、誰も彼においそれと手出しできない。

 

表向きの企業や政治結社、そして『絶対悪の教会(ネセサリウス)』を含めた魔術結社ですらも、彼に少しでも反攻の意思を示せば、母体やパトロンごと潰される。

 

現に、最大主教もちょっと文句を言っただけでイギリスを大恐慌にさせられそうになった。

 

ステイル本人も鴻上光世と目の前にして、その威圧感にたじろいた。

 

そう、別の次元とはいえ自分はあの男に敵わない事(・・・・・・・・・・・・)を叩きこまれた。

 

(奴はセルメダルなんて言うバカげた代物を集めて何をしようとしている?それに『欲望王(オーズ)』だ。今の欲望王がお気楽な奴とは言え、それを味方につけようなどという発想は馬鹿げている。火にガソリンどこか核爆弾を放り込むようなものだぞ。しかし…ヤミーか)

 

ステイルの今回の任務では『ヤミー』の存在がかなり大きい。

 

上条当麻に話したように『吸血殺し』も目的だが、『ヤミー』の存在を確認した時、ステイルにはもう一つの任務が与えられた。

 

《一枚でも多くの『セルメダル』の回収》

 

『セルメダル』…人間の持つ最も強大な欲望ちからを具現化したそれを使えるのは何も欲望王オーズや鴻上ファウンデーションの専売特許ではない。

 

メダル一枚が強力な魔術の『増幅器』なのだ。

 

『セルメダル』一枚で魔術の効果を数倍までに増幅させることができる。

 

未確認だが『超能力』にも有効だという情報がある。

 

(『標的』と一緒に宝の山がある…問題はヤミーだ。先ほどのヤミーの耐久力から、一体一体に強力な術式で相手にしなければならない)

 

チャリ…

 

(なら…増幅(ブースト)するまでだ)

 

さっきのヤミーを退治した時、自分の攻撃で零れ落ちたメダルを数枚回収した。

 

これで力を威力を増大させた炎剣で屠り、回収していけばいい。

 

(袋一杯に詰め込んで…ん?)

 

通路の向こうからあからさまな足音が聞こえてくるのをステイルの耳は掴む。

 

その足音はまるでこれから奇襲する相手の家のドアにノックしているかのような、大胆かつ不敵、絶対の自信、圧勝の確信を匂わせる『宣戦布告』にして『勝利宣言』だった。

 

「自然、『魔魚』を使い、力を流出させれば、どこに潜んでようが誘き出せると思っていたが…」

 

足音は止まらない。

 

「当然、侵入者は三人だったはずだが…他の二人はどうした、現然、貴様の使い魔どもは『魔魚』に呑まれたのか?」

 

「呑まれてくれれば本気で大助かりだ」

 

ステイルは歌うように言った。

 

「あの程度でくたばってくれるならもう僕が始末をつけている。それと、いくら僕でも『魔王』を使い魔(ファミリア)にはできないよ」

 

足音は、ステイルから10メートルほど離れた通路の先でピタリと止まった。

 

その足音の正体…髪をを緑色に強引に染め上げ、白いスーツを着た2mに届く細身の男…

 

年齢としは18…アウレオルス=イザードだった。

 

「それで…戦闘向きでないお前が僕を招き寄せるなんて、その自信は何十の魔道具(マジックアイテム)の代わりにいるヤミーの御蔭かい?いつから骨董屋(キュリオディーラー)がいつから魚屋(フィッシュモンガー)になったんだい?」

 

「全然…魚屋でも構わない」

 

チャリンチャリンチャリン…

 

「!?」

 

その一言でアウレオルスの体が砕けていく。

 

「これで私の目的が果たせるのだから…」

 

砕けて落ちていくのは『セルメダル』。

 

そしてセルメダルが何枚か重なると、先程のピラニアヤミーとなった。

 

「おいおい…偽物だとは気付いてたけど、こりゃないだろ」

 

ステイルはメダルを一枚持つ。

 

「回り道は構わないけど…本気出さなきゃ魚の餌だ」

 

 

☆★☆★

 

 

「で、魔王様はなんでここにいるの。返答次第で魔法の杖(マジカルステッキ)からサンダーの魔法が飛ぶ」

 

「そりゃスタンガン埋め込んだ警棒だろうが」

 

姫神の『魔法の杖マジカルステッキ』を見てアンクが冷静に突っ込む。

 

「新素材」

 

「無駄なおもちゃだな…まあいい。俺達は目的のモノを手に入れた!今度はあのクソ赤毛のガキを葬るだけだ」

 

「不穏なこと言ってるんじゃありませんよアンクさん。まあ、一旦帰るか。目的の姫神も見つかったし」

 

それを聞いて姫神は目を開く。

 

「や、やっぱり、この豊満なヴァディを狙ってきたの、魔王様。居城に連れ帰ってあんなことやこんなことするつもり?」

 

「誰がだ!あんなこともこんなこともそんなこともしねぇ!」

 

当麻は少し息を落ちつけて、

 

「お前が閉じ込められてるって聞いたから来たんだよ。あとそれと聞きたい事があるしな」

 

「…なんで?」

 

「なんでって、お前はここに無理やり閉じ込められて…」

 

「ううん」

 

姫神は首を振る。

 

「勘違いしないでほしい。私も私の目的がある。それはここから抜け出すことではなく。ここでなければできない目的。違う。あの錬金術師がいなければ不可能な目的というのが正解」

 

「どういうことだ?小娘。確かお前はここで監禁されてたんじゃないのか?」

 

「それは『三沢塾(ここ)』が乗っ取られる前の話。もともと、私がここでどんな扱いをされていたか聞く?何のために建物のあちこちに隠し部屋があるのかとか。魔王様が望むような『あふんあふん』はされてないけど…」

 

「そうか?じゃあ、こないとこの魔王がそれをするぞ」

 

「お前ら…俺を何にしたいんだ!?それはきっと魔王じゃないだろ!」

 

姫神は落ち着いて

 

「あの錬金術師が来てからは。私はただここにいるだけ。外に出ないのは必要性を感じないだけ。不用意に結界ここから出れば。アレを呼び寄せるから」

 

伝説といわれる吸血殺し(ディープブラッド)の能力…

 

「じゃあ、何か?お前、吸血鬼とかっていう生き物に気づかれたくないから、無用な争いを避けてこんな処にずっと隠れているって言うのか?」

 

「……私の血は。それを倒すのみならず。甘い匂いでソレを招き寄せる。招き。集め。殺す。まるで極彩色の食虫植物のような一連の役割が。私の本質」

 

当麻は姫神の目を見る。それは冷たい雨に打たれたように寂しげだった。

 

「『吸血鬼』。どんな生き物か。知ってる?変わらない(・・・・・)。私達と。何も変わらない。泣いて。笑って。怒って。喜んで。誰かの為に笑い。誰かの為に行動できる。そんな人達。私の血は。そんな人達を殺す。理由はない。そこにいるから。例外なく。特例もなく。泣いて。笑って。怒って。喜んで。誰かの為に笑い。誰かの為に行動できる。そんな人達を。ただの一度の例外もなく…殺し尽してしまう」

 

姫神は寂しく、しかし、憎悪の瞳で当麻を見る。

 

「なんで私にこんな力を与えたの魔王様。私はもう。殺したくない。誰かを殺すぐらいなら。私は自分を殺して見せると決めたから。あなたは魔王。本当の魔王様。だから。お願い。私を。あげる。全部。あげる。全て捧げます。だから。」

 

泣きながら

 

「だから。私が。殺した。人を。助けて」

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんでこんなところにヤミーがいるの!?しかもこんなたくさん!」

 

インデックスは三沢塾に入った途端に出現したヤミーの群れに囲まれていた。

 

「ふむ、久しいな、といったところで君は覚えておらんか。必然、アウレオルス=イザードという何も聞き覚えはあるまい。否、それでこそ私としては僥倖と呼ばねばならんが」

 

インデックスは声のした方を向くと、大量のヤミーを従えて悠々と歩いてくる男…アウレオルス=イザードは、

 

「いや、覚えて居らんところで言わんわけにもいくまい。久しいな禁書目録インデックス。相も変わらず全てを忘れてくれているようで、私として変わらぬ君の姿がとても嬉しい」

 

柔らかい笑みで彼女に微笑んだ。

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