「まあ、土台無理な話だな」
姫神の懇願をアンクは簡単に否定した。
「アンク…」
「当麻、言葉で誤魔化そうとするなよ。失った命ってのは戻らない。確かに一時的に生き返らせたように見せかける事はできるが…それこそ、無駄だ。命ってのは…」
- それだけ、でかいんだよ -
当麻は驚く。
自身のパートナーであるアンクの表情が普段と違う事に…
「いいか。似非巫女…お前が殺したという吸血鬼共は『欲望』を叶えたんだ」
「………」
「確かにお前の『血』が原因で吸血鬼共は死んだんだろうよ。しかしな…」
この場にいる当麻だけが気付いている。
「聞く限りじゃお前は吸血鬼の事を知るくらいの時を過ごしたんだろう?その間、お前に対しての吸血衝動を抑えられたという事は、それからも抑えられたんだろうな…」
アンクは
「そして、欲望を叶えたんだ」
「だからって…!?」
「少なくとも!」
姫神の否定をアンクは止める。
「そいつらにとっては『命』をかけるくらいの『欲望』だった!吸った瞬間!この世界を…」
-『味わった』んだよ!-
「う、うう…」
「アンク…言い過ぎだ」
「ふん、知るか」
普段とは違うアンクを見て当麻は考える。
この
でも、それだけじゃない気がする。
(いつか…こいつの『
と思いながら、姫神に声をかける。
「姫神。俺には吸血鬼達を生き返らす事は出来ない。ただ知り合いにそっち方面に詳しい奴がいる。とりあえず姫神の『血』をどうにかする方法を聞きだすよ」
「…どうして?」
「ん?」
「…。疑問。どうして私を助けてくれるの?」
姫神のその言葉に上条当麻は迷いなく、
「人を助けるのに、理由なんてあるか」
その言葉を聞いた時、姫神は目を丸くした。
自分でも忘れていた誕生日プレゼントをもらったような、そんな顔だった。
「魔王様ってへんだね」
「魔王はそろそろやめてくれ」
「あなた、変身?してた。でも、あれって…」
「あれは、『オーズ』だよ。ちょっとこいつに協力してるんだ」
とアンクを見る。
「…オーズ…仮面ライダー、オーズ?」
当麻は少し、びっくりした。
「仮面ライダーって…知ってるのか?」
「うん、よくテレビ見てた」
当麻は少し照れくさくなり、
「仮面ライダー…か。じゃあ、がんばるか」
と小さく呟き、
「ところで姫神。あのピラニアの事を知らないか?」
「あの魚?」
姫神が懐を探り、取り出したのは
「セルメダル!?」
「お前それをどこで!?」
「アウレオルスが願いを叶える為の重要な『魔法メダル』って言ってた。これで使い魔を作って、大量にメダルを手に入れれば、私とアウレオルスの願いが叶うって」
「………」
「アウレオルスには助けたい人がいるって。けど、自分一人の力じゃどうあがいてもダメだって。最初は吸血鬼の力を使おうとしたけど、このメダルが大量にあれば叶うって。だから私はアウレオルスを助ける為に、ピラニア達を育ててる。誰かを助ける為に協力する」
当麻はセルメダルを見て、アンクを見る。
そして…当麻は、
「それは、ダメだ」
「え?」
「もし、アウレオルス=イザードがお前の言う通りの人間だとしたら…かろうじて人の道を歩く人間だとしたら…ヤミーを使わせるわけにはいかない…」
そう、一人…知っている。
鴻上光世…正直、彼の事を当麻にとっては半信半疑だ。
復活した記憶と今まで変身して戦ったこの力を感じて…当麻は思う。
この力を積極的に使う彼は、いったい何なのだろうか?
ただ、わかる。
この『
「アンク…お前はどう思う?」
「ふん…」
アンクは不機嫌そうに
「あの赤毛の話と合わせてだが…吸血鬼への転化を趣旨替えして、もっと別の上位の存在になろうとしてるんだろ」
そう…
「グリードにか?」
「バカ抜かせ。セルメダルでグリードになれるか。せいぜいヤミーだよ。だが、頑丈さだけなら人間よりはマシかもな」
「いったい誰を助けるつもりなのか知らないが…止めなきゃな」
「間然。一体いかなる思考にて私の目的に異を唱えるか?」
当麻とアンクは同時に振り返る。
距離にて30m以上先にある直線通路の先。
3~4匹のピラニアヤミーが現れたかと思うと、それは一瞬でセルメダルに瓦解し、再構築され、一人の男となった。
「お前が…アウレオルス=イザードか?」
当麻は姫神を守る為に、姫神の前に出る。
「寛然。仔細ない。すぐにそちらへ向かおう」
当麻がたった一歩踏み出す前に、すでにアウレオルスは当麻と姫神の間を引き裂くように、30mの距離を詰めていた。
「な…!?」
目の前に突然現れたアウレオルスに、当麻の頭が理解を超えて体が凍る。
その足が速いのではなく、まるでいきなり空間を割って表れたようだ。
「当然、疑問は湧いて…「『
突如、アウレオルスに腕の化け物が襲った。
その一撃で、アウレオルスの体から、セルメダルが零れ落ちる。
「それを完成させるなんて、人間にしてはやるじゃないか。会得している奴を見るのは、お前で
「…『錬金術師ガラ』のことか?」
「ふん…なるほどな」
アンクはセルメダルを拾う。
「数百年単位でかかる呪文をここにいる2000人いる生徒で一斉詠唱し、さらにセルメダルによるブーストアップか…だがな、俺からみれば
「どういうことだ」
「運が良かったな当麻。とっとと、オーズに変身しろ!『
「グリードにオーズだと…!」
アウレオルスがあからさまに動揺する。
「偉大なる錬金術の中興の祖、『ガラ』の創造せし、世界を喰らう王…」
アンクは笑う。
とっさであったが、作戦は成功した。
そう、アンクは『黄金錬成』を知っていた。
かつて、アンクには妙な所で気の合う、グリードがいた。
いや、気の合うと言えばおかしな話だ。
何せ、『自分』を創った錬金術師だ。
『世紀の天才』
『至上の賢者』
『悪徳の図式』
その錬金術師の名は、『ガラ』。
奴は800年前の王すら利用して、自分の目的を果たす為に『コアメダル』を作り上げた。
結果…自身の体に適合する生物で『コアメダル』を作り上げ…『
ガラの研究の一つにあった、『黄金錬成』…
王の権力と財力を使い、その男はすぐに完成させた。
しかし…それはガラの求めるものではなかったので、すぐにガラの興味から消え失せたのだ。
ガラの目的は『世界』を『使役する事』ではなく…
『世界』を『飲み込む事』だからだ…
「納得。かの錬金術師が作り上げたモノだ…対策は万全ということか。ならば…早急に目的を果たそう」
というと、アウレオルスは再びメダルの塊となる。
「待ちやがれ!」
当麻は飛びかかるが、セルメダルはピラニアヤミーと変わり、泳ぐように上階に逃げて行った。
「くそ…逃げたか」
アンクは舌打ちをする。
「しかし…厄介な奴だな。ヤミーとは言え、完全に使役してやがる。『黄金錬成』なんて厄介なものを…」
「ん?俺とお前にはその『黄金錬成』は大丈夫なんだろ?」
「半々だ」
「え?」
アンクの言葉に当麻は目を丸くする。
「『黄金錬成』の利点であって弱点でもあるのは、『頭の中で思い描いたものを現実に引っ張り出す』事だ。800年前にそれを錬金術師に教わった。でだ…ああやって、ハッタリを少しでも疑問に思わせれば、直接的な攻撃はできない…はず?」
「おい!まったく確証がねぇぞ!」
「少なくとも、『死ね』の一言で死ぬ事はなくなったはず…武器を構築して攻撃する事はできるだろうがな」
「…最悪を回避してくれてありがとよ」
「そしてだ。良いニュースと悪いニュースがある…どっちから聞きたい」
と、アンクは当麻にいうが、
「じゃあ良いニュース。」
姫神が代わりに聞く。
「このビルには今、溢れんばかりのセルメダルがある。なんせ『2000人分』だ」
「おお!鴻上さんに頼んだら食費が困らないな!?」
「え?お金になるの?」
喰いつく当麻と姫神。
しかし、すぐに当麻は顔を真っ青にする。
「お、おいアンク…まさか、悪いニュースって…」
「わかるだろ?少なくとも2000体以上のヤミーがいるってことだ」