とある欲望の幻想破壊《イマジンブレイカー》   作:歌音

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序章・第4話/バケモノは嘲笑う

「まったく上条ちゃんは仕方ないですね〜」

 

上条当麻の担任教師・月詠小萌は酒の力で少し気分よく、帰路についていた。

 

「この調子じゃ夏休みは補習ざんま〜い…」

 

普通は落ち込む所なのにどこか楽しそうだ。

 

そして、彼女の後ろには…

 

「へぶっ!?」

 

いきなり、頭をつかまれ、

 

「へぶぶぶっ」

 

何かをされたが…

 

「はれ?何ですか今の…まっ、いっか♪」

 

とまた上機嫌に歩いていった。

 

その後に残っていたのは…一本の『腕』だった。

 

「これで、『知識』は整ったな。まったく、800年の間にそこそこやるようになったじゃないか」

 

『腕』…『アンク』は宙を飛び、『学園都市』を見る。

 

「科学技術か…魔術師どもは如何しているんだか。まあ、あんな『碌な力も持たないくせに、思い上がった人間』は滅んだかもな」

 

『学園都市』を見ながらアンクは考える。

 

「…ツールフォン…欲しいな…」

 

アンクは記憶と知識を読み取った何人かの頭の中にあった最新型携帯ツールを思い浮かべる。

 

「あれがあれば調べるの楽だなー。当麻のバカに買わせるかー、でも腕もう一本いるなー」

 

詰まる所、アンクは今、『体』が欲しいのだ。

 

しかし、現代社会を知るにつれて、それがかなり難しい。

 

戸籍制度というモノがあり、例え体を奪っても、ほんのちょっとした事でばれて体を手放さなければならない。

 

「あ〜、どっかにいなくなっても表沙汰にできない体があればいいんだが…って、ん?」

 

アンクはある『声』に気づく。

 

「…これは…?」

 

 

 

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(このよにすくいなんてない…)

 

暗くもなく、明るくもない部屋で、少年は悟る。

 

悟ってしまっていた。

 

(せいぎのみかたなんていない…)

 

全身に繋がれた計測機の配線、投薬装置…

 

少年は『実験動物』だった。

 

一定時間の度に、少年に投薬され、その脳波、身体の微弱な反応を観測している。

 

違法行為(それ以前の問題)である人体実験…ここの研究者達も、最初は忌避間を持っていたが、少年のお陰で得られる成果に負け、少年を既に『人間』と思わず有益な『動物』と思うことにしていた。

 

(あくの…あくのそしきだけがあるんだ…)

 

もうどれだけたっただろう。

 

両親に捨てられてから…

 

研究所に連れて来られてから…

 

同じ境遇の2人に会ってから…

 

こんな状態にされてから…

 

少年は自由も光も奪われて随分経つが、凄いことに…残念なことに…意識は狂っていなかった。

 

少年は、自分の次はあの2人としっていて、自分みたいにしたくない為、狂わないよう、精神を保っていた。

 

幸か不幸か…少年はそれができるほど…心が強かった。

 

 

 

そして…『運命』は、暴虐にやって来た。

 

「おい」

 

少年は素直に驚いた。

 

何も聞こえないはずの自分に聴こえたのだ。

 

「何を驚いている」

 

少年は声のする方へ振り向く。

 

そこには…

 

「よぉ」

 

真っ赤な鳥のバケモノがいた。

 

「なんだ…夢か…」

 

自分に聴こえるはずがない。

 

自分に見えるはずがない。

 

自分が喋れるはずがない。

 

全部…奪われた。

 

「なに、バケモノさん。僕を食べにきたの?」

 

それなら自分は喜んで食べられる。

 

少なくとも悪夢が…終わるのだから…

 

「なぁに、ちょっと欲しいものがあってな。それより小僧。程よく濁った『欲望』を持っているな」

 

バケモノは笑う。

 

「タダで頂いてもいいんだが、『メダル』の補充をしたかったところだ。一度しか言わん。良く聞け」

 

バケモノは、

 

「お前の『欲望(ねがい)』を言え。どんな『欲望(ねがい)』でも叶えてやろう。お前の代償は…お前自身だ」

 

古来より、人間を闇に叩き落とした言葉。

 

そして、バケモノは本来はぐらかす所をはっきりといった。

 

しかし…少年はその言葉を聞いた瞬間…まるで堰を切ったように涙を流し、『欲望(ねがい)』を泣き叫んだ。

 

心の底からの『欲望(ねがい)』を…

 

チャリン…チャリン…チャリィィィン…

 

泣き叫ぶ事に、『メダル』が少年から溢れだす。

 

バケモノはにやにや笑いながら、

 

「いいだろう…お前の『欲望(ねがい)』…聞いたぞ」

 

 

 

その日一つの研究所が破壊され、学園都市の暗闇に葬られた。

 

 

 

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「う〜、あっち〜。夏休み補習か〜」

 

上条当麻は大量の宿題が入った鞄を重い足取りで、帰宅していた。

 

「あ〜、不幸だ…」

 

「ちょっと」

 

「どうにかならんもんですかねぇ〜、あの『バカ』も帰ってきてないし〜」

 

「ちょっと!?」

 

「俺の不幸は留めなく膨らんでい…」

 

「無視するなぁ!」

 

バヒュッ!

 

「うおぉぉぉぉぉっ!危ねぇぇぇぇ!」

 

自分の頭のあった場所に綺麗な後ろ回し蹴りが通った。

 

その見事な蹴りを放った足の主は…御坂美琴だった。

 

「お、お前バカなんですか!?今のもしこの上条さんの頭があったらどうなってたか想像してみなさい!」

 

「吹っ飛んで潰れてたわね。惜しかったわ」

 

美琴は『チッ』と舌打ちする。

 

「惜しかった!?しかも舌打ち付!?」

 

「まあ、いいわ。あんたこんな所に1人で何してんのよ。あのマドハンドは?」

 

何事もなかったように話し始める美琴に溜息を吐きながら…

 

「アンクなら昨日の夜、『ちょっと出かけてくる』って言ったきり戻ってねぇよ」

 

「出かけた?あいつがなんで?」

 

「なんでも800年間で変った人間を調べに行くとか…」

 

「暴れないアイツ?」

 

「う〜ん、それは大丈夫だと思うぜ」

 

当麻は頭を掻く。

 

「いつも尊大な態度だけど、あいつはあいつでかなり切羽詰まった状況なんだよ。その証拠にあいつ自分から『ヤミー』作ってないだろ」

 

「…一枚も無駄に出来ない状況ってわけ?」

 

「そゆこと。まっ、その内フラッと帰って…」

 

「来たぜ」

 

その声に当麻と美琴は振り向く…が、

 

『…誰?』

 

振り向いた先にいたのは1人の少年。

 

小学校高学年ぐらいの年齢で、ボロボロの服を着ている。

 

顔立ちは整っていて、『美少年』といってもいい。

 

髪の色は『金髪』で、眼はギラギラしていた。

 

「まったくバカ共は…これでもわからんか?」

 

と小学生が右手を出す。

 

その右手は…

 

『あ、アンクッ!?』

 

真っ赤で化け物の腕だった。

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、ここはファミレス。

 

アンクの『この体の腹が減っているみたいだ。何か喰わせろ』の一言で、3人はここを選んだ。

 

アンクはメニューを眺めたが、

 

「おい、電気娘。このメニューの中で一番ガキが喜びそうなものを注文しろ」

 

「あっ、はい」

 

尊大な態度の子供に混乱している美琴はメニューにあった『DXお子様ランチ』を注文する。

 

「アンク…その体、どうしたんだ?」

 

「ああ、昨日手に入れた。まあ、この際体に文句は言えないからな。この体で妥協した」

 

淡々というアンクに当麻が激昂する。

 

「お前が人間を乗っ取れる事はわかった!だけど、その子の意思はどうする!?親だって…」

 

「そんなもん、この体にはない」

 

「…っな!?どういうことだよ」

 

「これは俺も昨日知った言葉なんだが…『チャイルドエラー』って知ってるか?」

 

『…!?』

 

それを聞いた当麻と美琴は愕然とする。

 

チャイルドエラー…学園都市における社会現象の一つ。

 

原則、入学した生徒が都市内に住居を持つ事となる学園都市の制度を利用し、入学費のみ払って子供を寮に入れ、その後に親が行方を眩ます行為。

 

学園都市に置き去りにされた子供達…

 

「どうやらこいつはその内の1人らしい」

 

「で、でもだからといって…!」

 

「こいつは俺に感謝してるぜ?」

 

アンクは笑いながら…嘲笑いながら、当麻に、

 

「『研究所』から解放してくれてありがとうってな」

 

「う、うそだろ」

 

絶句する当麻に

 

「…聞いたことあるわ。チャイルドエラーの保護制度を逆手に取り非人道的実験を行う…って」

 

口にする事すら、気色悪いといった口調で吐き出した。

 

「まさにその通りだ。人間を実験に使った方が、他の動物で実験するより、効率がよくてありがたいよな。人間としては」

 

当麻と美琴は気づいた…アンクが笑っているのは、自分達をバカにしているのではない。

 

そんなちっぽけな事じゃない…嘲笑っているのだ。『人間』自体を…!

 

「こいつは特に実験しやすく、『動けなくした』らしいな。抵抗や逃亡をされないよう自由に動けないようにすれば、まさにうってつけだ」

 

アンクの嘲笑う声に2人は何も言えない…言える事じゃない。

 

そう、この少年にした行為は亜種族である存在に嘲笑われても、『同じ人間の自分達』は言い返せない事だった。

 

「まあ代金はちゃんと払ったぜ。俺の力を使って、他のヤツを助けたいってたからな。大暴れしてやった」

 

「…!今朝のニュースでやっていた研究所の爆発事故…!あんたが!?」

 

「爆発事故で片付けたのか?まあ、『右腕』一本じゃ殴り壊すしかなかったからな。右腕一本でも体があれば多少は暴れられる」

 

「他の子達は…!?」

 

「ん?ああ。他に2人ほど居たんだがな。研究所の小型金庫にあった『金』を握らせて、『ここにいけ』と地図と人間の顔を書いてやった。昨日人間の『頭』を探っていたら、その中にかなりの『御節介』がいたんでな。今頃その人間の所にいってるんじゃないか?」

 

 

 

 

 

 

その頃、月詠小萌は大金を持って、泣きながら『助けてください!お金ならあります!』と2人の子供に言われていた。

 

 

 

 

 

 

「俺はこいつに代価を払った。だからこの体は俺のモノだ」

 

「そ、それは、ないだろ…」

 

「言っておくが…こいつは『体を動かせ』ないんだぜ。簡単にいったが、ただ歩けないだけじゃない」

 

アンクは水を飲んで言う。

 

「手も動かせなけりゃ、口は喰う事も喋る事もできない。眼だって視力は働いてなかったな。お前らで言う所の殆どの部分が『植物状態』ってヤツだ。今動けているのは俺のお陰だ」

 

それを聞いた二人は呆然としていた。

 

ただの高校生と中学生だった2人には衝撃的過ぎる現実だ。

 

呆然としていると、

 

「お待たせしました。『DXお子様ランチ』です」

 

「おっ、来た来た。まったく人間に取り付くと不便だなっと」

 

アンクの前に置かれたのは、ハンバーグ・エビフライがあるいかにも子供が好きそうなものばかりのものだった。

 

デザートにプリンまである。

 

アンクはおもむろにそれを食べ始める。

 

「まったく、おい。後で昨日のアイスとかいうの喰わせろよ」

 

はぐはぐ、と熱いハンバーグを食べる。

 

ポロ…、ポロ…

 

「あ、あんく…?」

 

「ん?なんだ?」

 

「なんで…泣いてるのよ」

 

そう、目の前の子供が泣いていた。

 

顔こそ泣き顔ではないが…涙を流していた。

 

「泣いてるのは俺じゃない。この『体』のほうだ」

 

アンクは泣きながら喰べる。

 

「さっき代価の願いを聞いたっていっただろ。俺の頭の中でこのガキの意識があるんだよ。まあ、持ち主だしな影響は強いから『こいつ』も味を感じてるし…うるさい」

 

「どうした?」

 

アンクは鬱陶しそうに、

 

「さっきから頭の中で五月蝿いんだよ」

 

『ありがとう!』

 

『とってもおいしい!』

 

『こんなに美味しいもの…食べたの…記憶に無いよ…!』

 

『ありがとう…本当にありがとう『神様』!』

 

「飯喰う度にこれか…勘弁してくれ」

 

『グリード』の自分が『神様』扱いされてうんざりしている。

 

その話を聴いた瞬間、当麻は何とも言えない悲痛な表情をし、美琴は同じ表情をしながら、『DXアイスパフェ』を注文した。

 

 

 

 

 

 

 

「あー、美味かった」

 

アンクはアイスを食べ終わると、一息吐いた。

 

「これが…アイスか…」

 

「昨日も喰ったじゃないか」

 

当麻の言葉にアンクはトボケて

 

「人間の価値はメダルを生み出す事と、アイスを造った事だな」

 

「そんな限定的な意味で生きてないですよ」

 

「さてと、流石にこの格好じゃいろいろ不便だ。服を買いに行くぞ」

 

「え?」

 

「当たり前だろ、こんな服じゃ目立つ。俺が完全復活するまで人間に溶け込まなきゃな」

 

ボロボロの自分の格好を指してアンクは言う。

 

「あ、あの実は…」

 

「ん?ああ、そうか。お前金が悲しいほどに無かったな。ほれ」

 

トンッ…

 

「………」

 

当麻は沈黙した。だが、表情は絶叫していた。

 

「こ、ここここ、あ、あああアンクさん!?これはいったい!?」

 

「小型の金庫があったといっただろう。緊急用のモノだったらしくて、あまり無かった上に他のガキ共に殆どやったが一束だけ持ってきた」

 

札束…まさか自分の人生で見れるとは思っていなかった。

 

「おい、電気娘。今すぐセンスのいい服屋に連れて行け」

 

「…あんた?なんか人間くさくなってない?」

 

尊大な態度よりもそっちの方が美琴は気になった。

 

「ん?昨日一晩、結構な数の人間の頭の中を『読み取った』。その中にはこの街の研究者や教師もいたんで、知識の方も万全だ」

 

「はぁ〜、しょうがないわね。あんたはともかく、『その子』はほっとけないし、いくわよ」

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