「はふ~幸せなんだよ」
銀髪のシスターは丼を置く。
7軒目の本格中華店『チャオズ』の『グレート天津飯』の3杯目を食べ終えた。
「おかわりなんだよ!」
「あいっやー!」
店主の悲痛の声が響いた。
チャリンチャリーン…
「ふっ…もっと喰え。喰って貯め込め」
アンクはそう呟くと再び、ツールフォンを操作する。
「なるほど、本当にコレは面白いな」
アンクは笑いながら感心する。
「知った時には驚いたが、こんな小さなものでとんでもない量の情報が得られるとは…飛びまわる必要がないな。しかし…」
『A国、またもや圧力戦争!』
『アフリカ諸国でまた内乱』
『旧ソビエト諸国、未だ安定せず。紛争の可能性も』
「発達してもやってることは同じ…どうしようもないな、人間は」
あきれ返っているアンクのその姿を…
「………」
ライドベンダーに乗った後藤が見ていた。
「大変だよ里中くん」
鴻上はPCのモニタを見て感心している。
「このアンクというグリード…一筋縄ではいかない」
席を立ち、オーブンに向かう。
「彼がオーズと離れるかどうかで、我々も今後の動きを考えなければいけない」
オーブンの様子をみる鴻上。
「選択肢がかなりありますが?」
そんな里中の言葉に、
「ひとつだよ?」
鴻上はさぞ当たり前に
「私たちの選ぶ道はひとーつ!」
「はぁ~…」
当麻は溜息を吐く。
美琴には『お願いだから一人にしてくれ』と言って別れた。
「…どうすればいいんだよ」
当麻は沈んでいる。
そう、今日の出来事は全て当麻の人生観に絶望を与えるものが多かった。
極めつけは、
『どうしてお前が人間の味方をする?』
アンクのヒトコトだ。
「…俺…どうすればいいんだよ…」
当麻はアンクに言われた事を思い返していた。
今日は…いや、この間のオトシブミヤミーの時からだ。
『人間』を救う価値はあるのか?
正直、アンクと出会ってから、今まで考えもしなかったことを考えてしまう。
今度の事でそれは大きく浮き彫りとなった。
「俺は…どういう気持ちでいままでいたんだ…?」
溜息と一緒に弱音がでた。
「上条ちゃん?」
「!?」
突然声をかけられる。
声をかけたのは…
アンクは集中して、ツールフォンを操作し、『面白い情報』を見ている。
「いけ~アクセル!」
「まけるなブレイド!」
「ん?」
自分より少し離れたベンチで子供達が、某ヒーローが戦うカードゲームの携帯ゲーム版を遊んでいる。
手にはアイスを持っていて、とても無邪気だ。
アンクは子供を睨みつけると、
シュンッ…
「!?」
近くにいた大人が子供に近づく。
「坊や?大丈夫かい、坊や!?」
自分の目の前で倒れた子供は無反応だ。
その向こうで
「ああ!俺のアイスがない!?」
「僕のも!?」
子供達は自分のアイスを探す。
ガバッ!
「!?」
突然子供は起き上がり、すぐさまツールフォンを再び操作し始めた。
向こうの子供達は残念そうにその場から去っていった。
老人はいぶかしんで離れたが、学生服を着た少女がやってきて、
ゴンッ!
「がっ!?」
突然子供に拳骨をお見舞いした。
「あ・ん・た・は…子供からアイス
「ちっ、見てやがったのか電気娘」
アンクはうざったそうに御坂美琴を睨む。
「まったく、目を離すとすぐこれね」
「なんでお前がここにくる。当麻は?」
「…アイツなら一人で考えたいって…」
「ふぅん…まぁいい。お前といると俺としても心地がいいからな」
「どういうことよ…?」
「お前は『欲望』が渦巻いている。近くでみていると心地いい」
その言葉に、美琴はアンクに問う。
「ねぇ…私の『欲望』って?」
「お前の欲望…『強くなりたい』とドン底から願っているだろう。それが俺には結構心地いい」
アンクは嘲笑う。
「お前は人間に絶望しかかってるな?何が原因かは知らないが、その為にお前は『力』を持つ俺と当麻…いや、最初は当麻のようだったが今はオーズにか?付きまとうんだろ?」
「くっ…!?」
全てを見透かされていて、美琴は何も言えない。
「さてと…」
アンクは立ち上がる。
「どこいくのよ」
「そろそろ貯まり時だ」
「はい、上条ちゃん。ここは先生がおごっちゃいます」
「あ、ありがとうございます」
当麻は小萌から缶ジュースを受け取り、礼を言う。
当麻は自分の今の気持ちを悟られるのが嫌で、
「小萌先生はなんでここに?」
と当たり障りの無いことを聞いた。
「あ、実はそこの不動産屋さんの帰りなんです」
小萌はマンション専門の不動産屋を指差す。
「少し…2LDKくらいのマンションに引っ越そうと思いまして」
「ご結婚もなされてないのにどうしたんですか?」
「実は、子供をふたりばかり育てる事になりました」
「…はい?」
小萌の発言に当麻は止まる。
(子供をふたり育てる?子どもが子供を?」
「上条ちゃん。今ものすごく失礼な事考えていますね」
小萌は頬をふくらませる。
「まあ、上条ちゃんなら大丈夫ですか。実はですね、学校が終わった後、訳ありの子供がふたり私を尋ねに来たんです」
小萌の話では子供達は『神様がこの人を尋ねろって…お金ならあるから…助けてよぉ…』と泣きながら来たそうだ。
(アンクの野郎!小萌先生の所にいけっていったのか!?確かに…『御節介』の塊みたな人だからな)
「可愛らしい男の子と女の子で…で、色々事情がありそうなんで私が育てる事にしました」
「簡単だなオイ!?」
「失礼な!これでも色々考えましたよ!」
憤慨する小萌。
「で、そのお金で新しいマンション借りるのか。子供の世話って、結構清潔な場所がいるからなぁ」
「…?何言ってるんですか上条ちゃん。子供達が持ってきたお金は遣いませんよ」
「はい?」
「あれは子供達が独り立ちする時に渡すつもりです」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ小萌先生。じゃあ、マンションの頭金とか家賃とか食費とかは…」
「大丈夫です。これでも実は結構貯金あります」
いったい幾つなんだこのロリ教師と思いながら、当麻は…
「先生はなんでその子達を引き取るんだ?」
聞いた。聞いてしまった。
数十分後、当麻は食堂街に着ていた。
急いでたんで、ライドベンダーを小萌先生の目の前で変形させて驚かせてしまったが、そんな暇はなかった。
(後ろから『こら~!無免許運転はダメ~!』という声が聞こえた)
そして、そこには…
「アンク…御坂…」
「答えは出たのか、当麻。時間だ、俺はコレをすっかりマスターした」
当麻は迷いなく、まっすぐにアンクを見て、
「答えは前と同じだ」
はっきりと、
「俺はお前の道具にはならない」
答えた。
「アンタ…」
「…たくっ!」
「じゃあ、アンクの答えも決まりだね」
『!?』
「カザリ…」
突如、アンクの背後からカザリが出てきた。
「君はオーズなんか捨てて、僕と組む」
「…そうなるな」
「オーズ。お前はここで消えろ」
「くっ…」
「と、当麻!逃げて!」
美琴は同様して、名前で呼んでしまう。
(あ、アタシらなんかじゃコイツに勝てない…こんな化物に…)
当麻は『グローブを外し』、臨戦態勢を取る。
「なにやってるの…?まぁ、いいか」
カザリは頭をかくと、一直線に当麻に…
「はぁっ!」
襲って!
「がぁぁっ!」
一瞬何が起こったかわからなかった。
カザリがセルメダルをまき散らしながら吹っ飛んだ。
「は、はぁ、がぁ…あ、あんく…お前…!?」
そう、カザリを攻撃したのはアンク。
右手のパンチ一発で、カザリにダメージを食らわした。
(私の
今は子供のなりでも
(こいつも…力を持った化物!?)
「お前は昔っから疑い深かったが…復活しても同じだな」
「俺と当麻が示し合わせて裏を描くんじゃないかと、ウロウロ嗅ぎまわってたろ」
「くっ」
「最近の人間の道具だ。黙ってても情報が集まる。お前の行動は全部見られてたんだよ。人間に」
「まさか…通信系の魔術も禍遣いも使わずに…人間がそんな事を…!?」
「変わったんだ。俺達が封印されている間にな」
アンクはカザリを睨みつけ、
「疑い深いグリードはその疑いから裏切る…メダルを狙う。バカでも面倒でも、人間のほうがまだましだな」
「お、お前…!?」
カザリが立ち上り、アンクに再び襲いかかる。
「はぁっ!」
アンクは再びカザリを殴り飛ばし、
「当麻!」
当麻にコアメダルを投げる。
当麻は『左手』で、オーズドライバーを腰にセットする。
『左手』でメダルをセットして、『左手』でオースキャナーを持ち、
キィンキィンキィィィンッ!
「変身!」
《TAKA!》《TORA!》《BATTA!》《TA・TO・BA!TATOBA!TA・TO・BA!》
「はぁぁぁぁぁっ!」
カザリが変身したオーズを襲う!
オーズはしっかりと『右手』に用意しておいた『黒い布』を右手に巻いて立ち向かう。
オーズとカザリの戦いが始まるが、
「ぐぁっ!」
カザリの攻撃は
「ゲホッ!」
オーズを一方的に苦しめる。
「がぁぁぁぁっ!」
「ちょっと!全く相手にならないじゃない!」
「当麻!コッチにしてみろ!」
アンクはカマキリ・コアをオーズに投げる。
「よしっ!」
オーズは素早くトラ・コアをカマキリ・コアに変える。
ガキィンッ
「うわっ!」
その間も攻撃は続くが、素早くオースキャナーを取り、
キィンキィンキィィィンッ!
《TAKA!》《KAMAKIRI!》《BATTA!》
「でた!《タカキリバ》!」
「なんだそれ?」
「あのフォームの名前よ」
「ネーミングセンスってヤツが…最悪だな電気娘」
タカキリバでオーズは立ち向かう。最初は戦えたが、しかし、
「ふんっ」
少し間合いを取って、カザリは爪を砥ぐと…
「はっ!」
黄色い竜巻を発生させて、
「ぐあっぁぁっ!」
オーズを吹き飛ばた。
「コアメダル…返してもらうよ」
ゆうゆうとオーズに近づくカザリ。
「当麻!死んでもとられるな!」
「死んでもって…無茶言うなよ!」
オーズは左手の黒い布を外し、そのままカザリに刃を向けて飛びかかる。
カザリも飛び上がり、爪を出す。
打ち合いは!
ガキンっ!
「う、がぁぁぁ!」
オーラングサークルの『蟷螂の紋章』に傷が浮かび!
キィィィィィンッ!
オーズドライバーからカマキリ・コアがはじけ飛び、変身が解ける。
「くそっ!」
アンクはすぐに本体で向かうが!
「ふんっ!」
すんでのところでカザリに奪われた。
「ウヴァのコアか…ふふっ…」
「やっぱ人間を選んだのは失敗か!?」
アンクが少し後悔する。
「僕のメダルも返して…ぐっ!」
突如、カザリの体に異変が起こる。
上半身が、黒く染まり、
ヴァキィィィィィンッ!
「な、なにっ!」
セルメダルがはじけ飛んで、カザリの上半身も『曖昧』になった。
「く、くく、やってやりましたよ。さすが上条さん」
当麻の左手には…黄色いコアメダルが、『3枚』もあった。
「僕の…!?」
「『右手』で表面をはじいて、中身を左手で取ってやった」
そう、カザリは気にしてもいなかったが…オーズの『右手』は変身していなかった。まるで元から右手のパーツがなかったように!
「まあ、コアをとれたのは偶然だけどな」
「ぼ、僕のコアを…いや!」
カザリは目を剥く。
「その『右手」は…なんだ!?」
当麻の右手を睨みつけ、問いかける。
「上出来だ。バカのくせに知恵を回したじゃないか…」
当麻の左手からコアメダルを取って、
「二度とするな。ヒヤヒヤする」
と当麻に小声で言った。
「くそ…!?」
カザリは何とか立ち上がる。
(このままじゃ不利だ!…あの、あの『右手』の正体を確かめなきゃ!」
「アンク…いつか後悔するよ」
そのまま、ふらふらな足取りで、カザリは逃げていった。
「アンタ大丈夫!?」
心配して近づいてきた美琴に
「おいおい、『当麻』からまた『アンタ』か?」
「なっ…」
真っ赤になる美琴。だが、
「おい、もうそろそろだぞ。こい!」
アンクは当麻を無理やり立たせ、食堂街に向かった。
食堂街…少女は12軒目にして、とうとう満腹になり、店の外にでた。
「ふぅ~、満腹なんだ…」
彼女の体中からセルメダルが溢れ…
「よ…」
そのまま包まれ、肥満体な猫の怪人…『ネコヤミー』となった。
「ね、ねえ!あの子ヤミーの中に!?」
ネコヤミーはその場で暴れだす。
「早くしないと『
「そうだな。ところでだ当麻」
アンクは再び嘲笑うように、問いかける。
「あれを見ろ、まさに『欲望』に取り込まれたってとこだ。あの醜さが人間の本性だよ。もう一度聞くぞ…人間に助ける価値があるのか?」
美琴はその言葉にまた心を打ちのめされる。
しかし、
(どうして…なんでアンタはそんな真っ直ぐこの『化物』を見ることができるの?)
当麻は揺らがなかった。
「…人の価値は…俺が決めることじゃない」
当麻は小萌との事を思い出す。
「え?」
「訳ありなんだろ。施設なり何なり預ければいいじゃないか。自分にとんでもない被害をうけるかもしれない。なんで、わざわざ…」
当麻の真剣な顔に、何かを感じ取ったのか、小萌は
「駄目ですよ上条ちゃん。そう思っちゃダメです。考えてみてください」
小萌は自分の掌を広げて、当麻に見せる。
「私のこのちっちゃな手でも、伸ばして、掴んで、握ってあげれば、助けられる人がいる…」
小萌はニッコリ笑って、
「なら頑張るしかないじゃないですか」
「アンク。確かにお前の言った通り、人間は醜いよ。他のヤツに酷い事をして、自分の為に人を陥れて、命や自由まで奪って欲望を叶える。でもな…!」
当麻は迷いのない目でアンクを見る。
その目を美琴も見る。
「周りに笑われて、バカにされて、自分がボロボロになってまで人を助けて、
その瞳を美琴は忘れない。
「同じ人間だ!」
忘れることができない!
「俺はこれからも人を助ける為に戦う!例えそれで…」
当麻は『右手』を向けて、アンクを睨む。
「お前を倒すことになってもな!」
その言葉にアンクは笑い、『
「ふん、バカが…やってみろ。できたら、褒めてやる!」
ここに、本当に奇妙な関係が、真に完成した!
アンクの右手からコアメダルを出現させて、当麻に渡す。
当麻は素早く、オーズドライバーにコアメダルをセットして、
キィンキィンキィィィンッ!
「変身!」
《TAKA!》《TORA!》《BATTA!》《TA・TO・BA!TATOBA!TA・TO・BA!》
(絶対に…助けてみせる!)
そのまま、オーズはメダジャリバーを構えて、ネコヤミーに立ち向かう。
「てりゃっ!」
オーズはメダジャリバーを振り切ったが、
ぼよょょんっ
「うなっ?」
もう一度斬りかかる。が…
ぼよょょんっ
「…だぁぁぁぁっ!デブキャラを地で行きやがって!斬れねぇ!」
「当麻!もっと深く斬り込め!そうすれば斬れるだろうが!」
そう、オーズは今手加減していた。それは…
「バカ言うな!中の女の子斬っちまったらどうすんだバカ!」
「バカが人をバカと言うなこの野郎!」
「んだとぉ、バカバカバカバカ言いや『ぼよょょょっ!』ぎゃふっ!」
間抜けな音と共にふっ飛ばされるオーズ。
ネコヤミーの豚腹アタックは間抜けな音だが威力はあった。
「まったくバカねアイツは…ホント間抜けだわ」
美琴は何か振り切った顔をして、
「斬ってだめなら、打撃系よ!」
「なぁる…せりゃっ!」
パンチ!…ぼよょょんっ
キック!…ぼよょょんっ
「…駄目だァァァァァッ『ぼよょょょっ!』がふっ!」
もう一発猫豚腹アタック。
「あれでも駄目なのか…」
自分のレールガンはヤミーには多少有効だ…でも、ヤミーの体内に取り込まれている少女の事を考えると迂闊には撃てない。
「どうすれば…」
「いや、電撃娘。お前はいいことを言った」
「え?」
「当麻!」
アンクは一枚のコアメダルを取り出す。
「こいつを使え!」
チャリィィィィィィィィィンッ!
アンクの投げたメダルをオーズはキャッチし、
「新しいメダルか…ええとっ、脚かな」
オーズはバッタ・コアを取り外し、新しいメダルを入れて、
「頼むぜ!」
オースキャナーで力を読み取る。
《TAKA!》《TORA!》《CHEETAH!》
力の紋章が宙に現れ、オーズに力が漲る。
光が収まると、『鷹』の頭、『虎』の鎧、そして…
「チーターの足か…よっし!」
オーズは構えて、
「ダッシュッ!…て、マジィッ!」
ギギギギギィィィィィッ!
「!?」
美琴は一瞬目を疑う。
オーズが消えたと確認する暇も無く、ネコヤミーの背後に現れたのだ。
今の構えと、地面を擦る音から、単純に『走った』だけとわかった…ただ、それだけで、常識を超えた。
まるで自分と同部屋の黒子が使うテレポートのように消えたのだ!
(も、目視できないって!?ど、どんだけの速さで走ってんのよ!)
「よぉ~し、この脚なら…」
オーズはチーターレッグに力を流す。
「はぁっ!」
ガッ!
オーズが再び消え、次に現れた時にはネコヤミーに取り付いていた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ドガドガドガドガドガドガドガドガドガッ!
そのまま連続蹴りを放つ。
その蹴りは見たまんまの猫キック。
本来なら笑えるところだが…一発一発が笑える威力ではなかった。
チャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリン…
一発一発ごとにセルメダルが落ちていく。
「ふん。あのバカにしては考えるな」
セルメダルが落ちていくと…意識を失っている少女の姿が見えた。
(絶対に助けてやる…!)
『私のこのちっちゃな手でも、伸ばして、掴んで、握ってあげれば、助けられる人がいる…』
(そうだよな…!)
オーズはネコヤミーから離れ、そのまま薄くなったところから手を突っ込む。
『なら頑張るしかないじゃないですか』
(手伸ばさずに、助けようともしなかったら…)
少女を掴む!
(きっと俺は…後悔する!だから…)
「だから…絶対に助けてやる!」
そのまま少女を引きずり出した。
大量のセルメダルがさら大量に落ちた。
「ぎゃにゃぁぁぁぁぁぁっ!」
宿主が引きずり出され、ネコヤミーはもがいている。
オーズは下がって、店舗の影に、
「よかった…無事そうだな。でも、バケモノに取り込まれてて寝るなんて図太いやつだな」
少女の無事を確認すると、オーズは再びネコヤミーに向かった。
「んにゃ…」
その直後に少女が目を覚ました事も知らずに…
「んん~…うわっ!なんか悪魔みたいなの同士が戦ってる!こ、こんなとこにいたら『追手』きちゃうかも…逃げなきゃ…」
その場から逃げていった。
「また怪物騒ぎですの!?」
緊急の連絡があり、駆けつけた
「あれが怪物…それに…」
同じく一緒にいた初春飾利。どこか感激したように
「本物!本物の『仮面ライダー』です!」
「う、初春!?なぜその名前を知っていますの?私は黒いパワードスーツを着た人物としか報告をしてませんのに!?」
「え?もしかして白井さん…『仮面ライダー』を知らないんですか!?」
「…もしかして有名ですの?あの方?」
「違いますよ。特撮ヒーローです」
「とくさつ…ああ、子供向けの…でも、なんでお姉さまもあなたもあの方をその『仮面ライダー』に当てはめるのですの?」
「だ、だって…」
あの姿、あの顔…それもそっくりだったが、何より…
「この間、あの人…ええと」
「オーズ…お姉さまはオーズと言ってましたわ」
「白井さんを助けてくれたんですよね」
「ええ、気絶していた私を助けてくれたと、お姉さまは…」
「じゃあ、確実です」
「どういうことですの?」
初春は確信を持って、
「どんな時でも助けてくれるヒーロー…それが、仮面ライダーです」
そういった。
「仮面ライダー…オーズ…何者ですの?」
「どういうことじゃん!?」
と、化け物の出現の要請で、現場に駆けつけていた
しかし、いざ現場に到着してみると、鴻上ファウンデーション私設部隊が道をふさいでいた。
「なぜ通さないじゃん!なぜ邪魔をするじゃん!」
ライドベンダーズの隊長である後藤は無表情で黄泉川を抑えている。
「あれの管轄は我がライドベンダーズの管轄だ。
「何を言って…戦ってるのは一人じゃん!」
少し離れている場所で闘いっているのは黒いパワードスーツらしきものを着ている人物だけだった。
「あれだけ充分だからだ。ここは通らないでもらおう。君達は非難誘導に専念するように」
「ふざ…」
「なお、これは…」
後藤はシステムツールを取り出す。
そしてディスプレイには、
「学園統括理事長の厳命でもある。これ以上逆らった場合の君達の拘束権も許可されている」
「!?」
「さあ、わかったら己の役割に専念しろ」
「さてと、一気に決めますか…」
オーズはメダジャリバーにセルメダルをセットする。
《Triple Scanning Charge!》
オーズはチーターレッグで何度か蹴りつけて、
「お前の『|欲望(げんそう)』…破壊してやる!」
メダジャリバーを振り切った。
再び、世界は切断される。
次元を斬る…そんな常識外れた攻撃に、
「ギャニャァァァァァッ!」
ドガァァァァァァンッ!
ネコヤミーは断末魔の悲鳴と共に爆発した。
チャリンチャリン…
「よくやった当麻!さあ電気娘!拾え!拾え!」
「ちょっと、分け前寄越せっていってんでしょ!」
「お前が持ってってなんになる」
「あのバイクに乗るためよ!」
「無免許運転するな!」
と言い合いながらメダルを拾う二人。
「そうだ、あの娘…あれ?」
オーズが振り向いたが、すでに少女がいなかった。
「き、消えた…」
「どこいったんだろうなあの子」
周囲の
分かれる時に美琴が
「私もちょっと色々考えてみるわ。じゃね」
と何か思いついたような事を言っていた。
「ふん。大方、化け物がいるのを見て、逃げてったんだろう」
「それだといいんだけどよ」
当麻は少女の無事を考えながら帰路につくことにした。
「おい、アイス食いたい」
「駄目です。一日に何個も食べるとおなか壊します」
といっていると、
『ん?』
2人を遮る様に高級車が止まっていた。
「なんだありゃあ、邪魔だな」
「まったくだ」
すると、高級車から1人の女性が降りてきた。
かなりの美人だ。
「初めまして。里中と申します」
「あ、ども。初めまして」
突然そう言われて、当麻は頭を下げる。
女性…里中は車の後部座席の扉を開けて、ディスプレイを取り出す。
『?』
2人はさらに疑問を浮かべていると、ディスプレイの画像が動き出した。
向こうには1人のエプロンを着けた壮年の男性がいた。
手にはケーキ用具を持っている。
『…やあ、上条当麻君。そしてグリードの一人アンク君だったね。初めまして』
「え!?」
「なんだ?」
いきなり自分達の名前を言われて驚いた二人。
「な、あんたは一体…」
『まあまあ、そんな事より私と君達との出会いに…』
パァーンッ!
『!?』
突然男はクラッカーを鳴らした。
『人と人の出会いとは何かが誕生する前触れでもある。それは一体何か…そしてそのために作る私のケーキはどれほどの…』
男は楽しそうに手際良くケーキを作りながら話す。
『期待で胸が膨らまないかい?』
『………』
「では、改めて…こちらは鴻上ファウンデーションの会長、鴻上光生」
「あの世界的規模の大会社の…!?まじか!」
「それから…」
里中はディスプレイを一端置いて、後部座席から箱を取り出す。
「これはつまらないものですが」
といって箱を開ける…中には、
「あ、それ。あのロボットだ」
『上条君』
「は、はい!?」
『どうかね?私からの誕生日プレゼントである『メダジャリバー』は?』
「え?」
『作ったのはいいが、計算上の威力を全く出してくれなかった。しかし、君が…オーズが使うと、計算の数百倍ものパワーを出した!まさか次元断裂を可能とするとは!我が社としてもデータがとれて嬉しいよ!』
「も、もしかして、あの剣をくれたのは…ええと…鴻上会長さんがくれたんですか?」
『いかにも、気に入ってくれたかね?』
「はい。お陰で助かってます」
「おい、馬鹿と話すのはもういいだろう…」
アンクは『会長』を睨らむ。
「お前か。人間の癖にメダルを集めてるのは」
『そう!実は今日は商談を持ってきた』
「…商談?」
アンクは怪訝な顔をする。
『君達は我が社のライドベンダーにカンドロイドを使用してどうだったかね。役立つだろう?』
『会長』はケーキを作りながら喋る。
『これからも我々はオーズに協力する。バイクや武器などの『学園都市』にも提供していない貴重で強力な装備を優先的に提供する。その代わり…』
「その代わり?」
『これからヤミーを倒した時のメダルが提供して欲しい』
「な、なんだと!?」
アンクの顔が怒りを覚える。
「メダルの分け前をよこせといってるのか貴様?」
『そう、実際『メダジャリバー』に『ライドベンダー』、『カンドロイド』は役に立っているだろう。単純な取引だよ』
「ふざけるな!」
『なぁに、全部とは言わない。回収した分のほんの…70%ほどだよ』
「くそが…」
「お、おい!アンク!」
アンクは右腕を戻し、里中に襲い掛かろうとするが、
ババシュッ!
『!?』
銃声が鳴り響き、それがアンクの足元に襲う。
当麻とアンクは後ろを向く。
そこには自分達にメダジャリバーを持ってきた、後藤が立っていた。
「次は外さない」
「お前…」
「アンク止めろ!ここは抑えろ」
当麻はアンクを止める。そして当麻は鴻上を見る。
「鴻上会長…メダルを集めて何をするんだ?」
「それは…秘密だ」
「…そりゃそうだよな。でもな、俺でもあのメダルはやばいもんだってわかるんだけど…」
そう、当麻だって分かる…あのメダルはセルメダルでも…危険な存在なのだ。
『まあ、そうあわてる事はない。今日はほんの挨拶だよ。返事はまた今度でいい。その間に考えておいてくれないか。それでは』
「はい」
ディスプレイが消えて、里中は車に入れる。
そして、何も言わずに里中も後藤も去っていった。
「ふざけるなあの男…よりにもよって70だと!?」
寮の階段を登りながら、アンクは『会長』の文句を垂れ流していた。
「まあ、ボッテるよなぁ。でも剣どころか、こんなのも貰っちゃったしな」
当麻が貰った箱の中には『カンドロイド』が入っていた。しかも見た事無いヤツもある。
「ふん、まあいい。尻尾を捕まえてタダで使えるようにしてやる」
「おいおい、あまり無茶な事はするなよ。結構黒幕っぽいし…」
「くそっ…おい!今日はもう休むぞ。流石にもうこれ以上トラブルは起こらんだろ」
「そうだな。ま、結構色々あったし、ゆっくり休むか」
ガチャッ…
2人が部屋に入り、リビングに行くと、
「………」
「…当麻」
「…なんでしょうかアンクさん」
「すまん。俺はお前を…お前の不幸を舐めていた」
「お判り頂けてなによりです。あなたも中々の不幸でいらっしゃいますよ」
ベランダには布団のように白い…
「うう…お腹すいた…」
先程、自分が助けた銀髪の少女がいた。
「♪~♪♪~」
1人の少年が街並み歩いている。
楽しそうに周りを見ている。
(ふ~ん、ちゃんと見てみると…本当に文明レベルが発達している)
少年は『800年前』に無かったものを見る度に、『記憶』を見る。
(あれが自動車…へぇ、石油…?ああ、黒水の事か…それからできるガソリンで動いてるんだ。電気自動車?へぇ雷を人工的に作って…)
と、少年は色々と見て回った。
(う~ん、『この体』奪う時に、そこにいた『研究者』達の頭覗いたのがよかったな。お陰で色々わかる。しかし『科学』ねぇ…『錬金術』のちゃんとしたヤツか。昔は、本当に一握りしか『本物の錬金術師』はいなかったからね)
「おっ」
少年は脚を止める。
「あれが…『ゲーセン』か。面白そうだからあーそぼっと」
少年は大量の現金が入った財布をポンポンと叩く。
(紙幣・貨幣はちゃんとあるし…なくなったらまたどこかで調達…ん?)
「いいから付き合えよ」
「どうせ暇なんだろ」
ゲームセンターの横の路地で不良4,5人に2人の女子中学生が囲まれている。
1人は長髪に花のついた髪飾りをつけた少女と、もう1人は頭に本当に花を乗せた少女。
「…離してください」
「どきなさいっていってんのよ」
「おいおい、そんな事いわねぇでよ」
「俺達と楽しく遊ぼうぜ」
下劣な声に2人は身震いをする。
この目の前の不良共がいっている『遊ぼう』が何かわかるからだ。
「やっ、こら、離せ」
「佐天さん!?」
「いいからこ…がっ!」
バシッ!
いきなり誰かが少女を掴んでいた不良の手を叩き…
「ぶぉっ!」
ドガッ!
蹴りをかました。
「こんにちわ」
その張本人は2人の少女に明るく声をかける。
「あ、あなた…なに?」
「ん~、可愛い女の子はいつの時代になってもいいね」
「は、はぁ…」
と状況を無視して暢気だ。
「テメェ!いきなり…」
「うるさい。どっかいけ」
とまるで蠅でも追い払うかのように、少年が手を仰ぐと、
ブワッ!
『うわぁぁぁぁぁぁっ!』
黄色い竜巻が不良達を吹っ飛ばした。
「て、テメェ…能力…ひっ!」
不良の1人が言い返そうとすると、動きが止まる。
他の不良も一緒だ。
少年が横目で不良達を見ている…ただ、それだけで不良達は『
「う、うわぁぁぁぁぁぁっ!」
一目散に逃げ出した。
「まったく…可愛い子を乱暴に扱うなんて駄目だよね」
「あ、あの…ありがとうございます」
「すごい能力者なんですね」
「あっ、うん…」
(そうか…この街じゃ『禍使い』が普通にいるんだった)
「丁度いいや…」
「え?」
「ううん、なんでもないよ。君達は?」
「あっ、私『初春飾利』です。どうもありがとうございました」
「私は『佐天涙子』です。助けてくれてありがとね」
「………」
少年は一瞬ポカンとする。
(あちゃー。嘘でしょ。僕と同じ名前じゃん…えっと)
「僕の名前は『
「ふ~ん、随分とバカで面白い実験してるのね。2万人殺して1人なんて笑えるわね」
少女は笑いながらそう呟く。
「まあ、いいわ。お陰で体は手に入ったし…ちょっとちんちくりんだけど」
少女は鏡を見る。
髪の色こそ黒くなっているが…少女の顔立ちは『学園都市第3位』と全く同じ顔をしていた。
違うのは、その表情がどこか色っぽく、妖艶だった。
「さてと、私に合う服でも買いに行きましょうか」
「…『メズール』」
「あら?」
突如後ろに現れた巨体の男。背が高く、顔立ちも整っている。
「どうしたの『それ』?」
「『カザリ』と一緒に取って来た…なんか白い服着てたヤツ…」
「中々いいセンスじゃない。素敵よ『ガメル』」
「♪」
『メズール』と呼んだ少女に褒められて『ガメル』は喜ぶ。
「これ、美味しい。『メズール』食べる?」
と、持っていた駄菓子を差し出す。
「ありがとう。でも『メズール』じゃ駄目ね…」
んー、と『メズール』は暫く考えて、
「…よし。私は『
「わーい」
潰れたクラブ…そこで今1人の少年が首をつろうとしていた。
「ど、どうせ俺なんて…LEVEL0だし…生きてたって…」
少年は真剣に努力し、『超能力』を求めたが、『超能力』を手に入れられなかった。
その真剣さを同級生に馬鹿にされ、イジメられこの選択を選んだ。
今まさに椅子を蹴ろうとした瞬間。
「いらなさそうだな。貰うぞ」
「え?」
声のした方に振り向いた。
「ふん、まあ、マシか…」
ボサボサだった髪をオールバックにして、奥のロッカーから見つけた緑のジャケットを着てカウンター席に座り、物色したまだ飲める酒をラッパ飲みで煽る。
「本当に都合がいい。『学校』とやらに通えば少しは人間がどうなったのか、わかるだろう。結構、不愉快だがな」
その表情はさっきの少年とは程遠い、ワイルドで凶悪な表情だった。
「そして…俺のコアメダル。見つけ出してやる」
ふと、ズボンの中にあった財布を見てみる。
「…『
序章/『幻想を破壊する右手』と『欲望を求める右手』 完
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