とある欲望の幻想破壊《イマジンブレイカー》   作:歌音

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第1章・第2話/禁書目録

(なんなんだ!コイツは!)

 

突然、目の前の人間が変化し、暴虐な程の魔力のようなものを迸らせている。

 

ほんの1分前まで、一撃で消し炭に出来る存在だと思っていた。

 

しかし、そいつは自分の炎剣を消し去り、あまつさえ変化したのだ。

 

「お、お前は一体…まさか魔術師なのか!?」

 

「いいや…俺は魔術師じゃない」

 

「まさか、この学園都市(まち)の能力者か!?」

 

「LEVEL0の劣等生だよ」

 

「じゃあ、なんなんだお前は!?」

 

「俺は上条当麻…そして、今のこの姿は『オーズ』」

 

緑の瞳はステイルをまっすぐに見て、

 

「仮面ライダーオーズだ」

 

ステイルはあわてる。

 

(くっ、何者なのかわからないが、目の前の化け物は遥かに自分を上回っている。神裂すらも遥かに…!?)

 

ステイルは既に『切り札』を出す事にした。

 

「ふんっ…おい、当麻。ちょっと相手にしていろ」

 

「お、おい。アンク…」

 

 

「…世界を構築するが大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ」

 

アンクが突然どこか行こうとしたのが気になっていると、ステイルの声が聞こえる。

 

「それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり」

 

(な、なんだ?)

 

「それは穏やかな幸福満たすと同時に、冷たき闇を滅する凍える不幸なり。その名は炎、その役は剣。顕現せよ、わが身を喰らいて力と為せ…」

 

ステイルの修道服の胸元が大きく膨らんだ瞬間、内側からの力でボタンが弾けとんだ。

 

ゴォォォォォォォォォッ!

 

現れたのは巨大な炎の塊…しかし、それは、ただの炎の塊ではなかった。

 

真紅に燃え盛る炎の中で、重油のような黒くドロドロしたモノが存在し、人間の形をしていた。

 

「『魔女狩りの王(イノケンティウス)』!」

 

『必ず殺す』の意味を与えられた炎の巨人。

 

「うわぁ…すげぇ」

 

「お前が何者かわからないが…焼き尽くせば関係ない!お前はここで殺す!」

 

襲いかかる炎の巨人。しかし、オーズは…

 

「邪魔」

 

と右手を振るう。

 

ボン!!

 

まるでそれが当然のように炎の巨神は消え、オーズがステイルに突っ込もうすると…

 

 

ビュルルル!

 

 

 

炎が再生する。

 

 

「どわぁぁぁ!」

 

超感覚と超反応でオーズはそれを交わす。

 

オーズはそのまま数歩下がる。

 

四方八方から戻ってきた炎の飛沫が空中で寄り集まり、再び人の形を作り上げた。

 

「おいおい…おかしいな。完璧に『破壊』したんだけどな…?」

 

炎が襲う!その度にオーズは『右手』で『魔女狩りの王』を消滅させるが、再び復活する。

 

それを何度か繰り返すが、

 

「あちち!あち!くそ!『右手』もちゃんと変身しとくんだった!『炎』は効かなくても、感じる『熱』がやばい!」

 

オーズは『魔女狩りの王』の攻撃を避けながら、考える。

 

(なんで『破壊』できないんだ?あの娘の『歩く教会』とかいうのもちゃんと破壊できたのに…)

 

炎の巨人の攻撃を交わす。

 

(3000度か…この姿で直接突っ込んで、火傷ですむのかすまないのか…)

 

ジリリリリリリリ!!

 

『!?』

 

火災報知機の音が突然鳴り響き、一秒も待たずにスプリンクラーが雨を撒き散らす。

 

オーズの後ろにあるエレベータの到着音が鳴ると、エレベーターが開く。

 

「やっぱり火災報知機を弄ってやがった。まったく…誤作動のように見せるのに手間取った」

 

「アンク?」

 

「『ルーン』…」

 

アンクはステイルに聞こえるように声を出す。

 

「確か『神秘』『秘密』を指し示す二四の文字だったか?ゲルマンとかいう人間民族が使っていた魔術言語で、英語の原点」

 

アンクは笑いながら話す。

 

「当麻。その炎に攻撃しても効果はないぜ。『ルーンの刻印』を消さないかぎり、何度でも蘇る」

 

「じゃあ、どうすればいいんだ?」

 

「だからホレ」

 

アンクは手に持っているものを当麻とステイル=マグナスに見せる。

 

「横着するからだガキ。昔の魔術師はちゃんと時間かけて刻んでいたぞ」

 

と水に塗れた、『ルーン』の描かれたコピー用紙を見せる。

 

「なぁる」

 

そう、ステイルはコピーしたルーン文字で『魔女狩りの王』を出していたのだ。

 

「これで俺達の勝ちだ」

 

「は、はは。あははははははは!すごいよ、ボクちゃん!君って戦闘センスの天才だね!だけど経験が足りないかな」

 

その言葉にアンクがさらにイラっとする。

 

いったい『どれだけ経験の差があると思っているんだ』と、青筋を立てる。

 

「コピー用紙ってのはトイレットペーパーじゃないんだよ。たかが水にぬれた程度で、完全に溶けてしまうほど弱くはないのさ!『魔女狩りの王』!こいつらを殺せ!」

 

その腕を振り回して、

 

「当麻」

 

「あいさ」

 

オーズは右手で軽く『魔女狩りの王』をハタく。

 

ずぼんオーズの右手に触れた炎の巨神は、消えた。

 

「な!?」

 

ステイル=マグナスは驚愕する。

 

吹き飛ばされた『魔女狩りの王(イノケンティウス)』が復活しない。

 

「馬鹿な!なぜ、何故!僕の『ルーン』はまだ死んでいないのに…ッ!」

 

アンクは本当に気づかなかったのか?という呆れた顔をしながら

 

「当麻。このモノを知らないヤツに教えてやれ」

 

「コピー用紙は破れなくっても…水に濡れりゃインクは落ちちまうんじゃねーか?」

 

流石に一つ残らず潰す(水浸しにする)事はできなかったらしく、もぞもぞと動く『魔女狩りの王(イノケンティウス)』の破片。

 

しかし、降り続くスプリンクラーの水があたっていくたびに小さくなっていく。

 

「い、のけんてぃうす……『魔女狩りの王(イノケンティウス)』!」

 

ステイルは叫び続ける。

 

「で、こいつをどうするんだ?後腐れなく殺すか?」

 

「んなわきゃないだろ。ただ…」

 

オーズはステイルに近づいていく。

 

「い、の…けんてぃうす…イノケンティウス、魔女狩りの王(イノケンティウス)!」

 

ステイルは叫び続けるが、世界は何も変化しない。

 

『欲望の王』が近づいてくる!

 

「はっ!」

 

それに気づいたステイルは

 

「灰は灰に、塵は塵に。吸血殺しの紅十字!」

 

頭を切り替えたが、すでに遅かった。

 

「とりあえず…拳骨な」

 

ゴチンッ!

 

こうしてステイルの意識は火花と共に真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

当麻とアンクが帰ってくると、消防車が来ていた。

 

「どうしたんすか?まさか火事?」

 

「あっ、ここの寮の子かい?いやぁ~、僕達もそう思ってきたんだけどどうやら誤作動を起こしたみたいなんだ」

 

「へぇ、そんな事もあるんすね」

 

「君達はこんな時間までどこに行ってたんだい?」

 

と消防員が聞き返すと、

 

「えっ、と…弟が遊びに来てるんでちょっと案内してたら夢中になりまして…なっ、アッくん」

 

「うん。楽しかったねお兄ちゃん」

 

にっこり笑う『弟』。

 

(せ、世界一の嘘つきめ!)

 

「そうか。弟思いのお兄さんだ。もう異常が無い事は確認したから入っても大丈夫だよ。それじゃあ」

 

「はい、ご苦労様です」

 

と、消防員の人に挨拶をして、2人はマンションに入っていった。

 

「しかし…あそこまでするか?」

 

「いいんだよ。どうせ仲間が何人かいるから回収するだろ」

 

当麻とアンクは少し外に出ていた。

 

《BATTA》のジャンプ力を利用して、ちょっと離れた公園の木にステイル=マグナスを捨ててあったボロ布団で簀巻きにして、吊るしてきたのだ。

 

「そういえば、お前アイツの頭触ってたな?何をしたんだよ?」

 

「ああ、あいつの『ルーン文字』の知識を全部を手に入れた。人間にしては中々のほうじゃないないのか?ルーン24文字と、あのガキが創った6文字をな。知識を奪うってのも楽しいものだな」

 

魔術師の命ともいえる生涯の研究成果を全て掻っ攫って、アンクは笑っていた。

 

「ひでぇ…」

 

当麻は呆れたようにつぶやく。

 

(しかし…)

 

アンクには一つだけ疑問があった。

 

(知識しか興味ないから気にもしなかったが…)

 

奪い取る時に偶然少し触れた魔術師の『思い出』…

 

(なんであの小娘と笑ってるんだ?『魔女狩りの王』をあの小娘の為に生み出しただと?一体どうなってるんだ…全部『読んで』おけばよかったか?)

 

家のドアの前に着く。

 

ドアにはインデックスが勝手に出ないように、壁に箒を当てて、ドアを閉じていた。

 

「まあいい。さってと、アイスだアイス」

 

「ふ~、チョコは貰いますよ」

 

「ふん、俺も機嫌がいいからな。特別に分けてやろう」

 

「ありがたき幸せで涙がでますよ、この俺様野郎」

 

と箒を外し、ドアを開ける。

 

「ただいま」

 

「あ~、おかえりなんだよ。も~、閉じ込めるなんて酷いよ」

 

インデックスがぷんぷん怒って居間に座っていた。

 

「すまんすまん。まあ、こっちも何事もなく終わりましたよ」

 

「お客さんどんな人だったの」

 

「俺の昔なじみの訳ありニーハオだった」

 

「なにそれ?」

 

いったいどんなのだ?とインデックスが思っていると、

 

「…それよりも小娘」

 

アンクが闇の底から響いてくるような声を出す。

 

「そのテーブルの上にあるものは何だ…」

 

そう、テーブルの上には…某高級メーカーのアイスの容器が大量にある…カラッポで。

 

アンクは無言のまま台所に行き、冷蔵庫の冷凍庫部を開ける。

 

見事に、綺麗に、カラッポだった…

 

アンクが再びインデックスをみると

 

「けぷっこ」

 

満足そうな顔をして、これ見よがしにゲップした。

 

この日、のちに幾度と無く起こる(いくさ)…『第1次上条家アイス大戦』が勃発した。

 

上条当麻曰く…

 

「魔術師の方が何百倍マシだった」

 

 

 

 

 

「いい様ですね。ステイル」

 

「ふふっ、神裂。申し訳ないけど降ろ…ゆ、揺するのはやめてくれぇぇぇ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと…これで大丈夫だ」

 

「本当にこんなんでいけんのか?」

 

当麻はラミネート加工したルーン文字の描かれた紙を扉の周りにはっつけていた。

 

「ああ、これで完全に認識が阻害できる。この扉を見つけたくても見つけられないというわけだ。第一、効果は昨日の炎魔人でわかっているだろ」

 

アンクは昨日ステイル=マグヌスの頭から読み取ったルーン文字の知識を駆使して、認識阻害の結界を作り上げていた。

 

「しっかし、昨日盗ったモンよくすぐ使えるな」

 

「俺を俺の目の前にいる馬鹿と一緒にするなよ。これでも知能は人間より高いと自負している」

 

「…すかさず上条さんを馬鹿にするのやめてくれませんか?」

 

当麻は溜息を吐きながら、これからの行動を考える。

 

「…アンク。『ヤミー』の気配は?」

 

「今の所ないな。まあ、あいつらも今の状況を観察中なんだろう。なんせ、800年で結構変わっているからな」

 

「なんとかこの『学園都市(まち)』に入った人間のデータが手に入ればな…」

 

「ん~、結構厳重だからなアレ」

 

「まあ、考えてもしょうがない。対策を練るぞ。おい」

 

ちゃりん

 

「おっと…」

 

当麻はアンクの投げたモノを左手でキャッチする。

 

「いいのかよ?」

 

それは『鷹』『虎』『飛蝗』の3枚のコアメダルだ。

 

「どんな魔術師が来るのかわからん。オーズになれば負けはしないが…普段のお前は『忌々しい能力』を持っている以外、タダの人間だからな」

 

そういってアンクは部屋に入ると…

 

「な…!?」

 

リビングに座るインデックスの手を見て、

 

「お前!いい加減にしろよ!」

 

「へっへ〜ん!富める者よ、貧しき者に与えよなんだよ!アイスの独り占めはいけないんだよ」

 

「ふざけるな、この暴食シスター!」

 

「なんだよ、この欲張りヤンキー!」

 

小規模ながらも『第2次上条家アイス大戦』が勃発した。

 

 

 

 

 

 

 

昨夜オーズと戦ったステイル=マグヌスともう1人の魔術師・神裂火織はあるビルの特別応接室にいた。

 

周りには私設部隊らしき黒尽くめの兵士達が銃火器を持ってたっている。

 

「お待たせいたしました」

 

ドアが開き一人の女性が入ってくる。

 

女性はポケットからリモコンを取り出すと、応接室の巨大なモニターが移りだす。

 

『やあ、初めまして。ステイル=マグヌス君と神裂火織君!』

 

モニターに移った人物はテンションの高い大声で挨拶をする。

 

『まずは私と君達との出会いに…』

 

クラッカーを激しく鳴らした。

 

(この男が…『世界を牛耳る男』)

 

(鴻上ファウンデーション会長…鴻上光生)

 

「なぜ僕達を呼んだんだい?鴻上光…」

 

ガチャチャチャチャチャチャッ!

 

突如、ステイルだけに大量の銃火器が向けられた。

 

パンパンパンッ!

 

「うわっ!」

 

足元にも威嚇射撃を撃たれる。

 

「何をなされるのですか鴻上会長!?」

 

あまりの行動に神裂は鴻上に尋ねる。

 

『すまないすまない。彼が私に対する態度がどうも部下達の気を触ったようだ。君達、下がりたまえ』

 

鴻上の一言で、素早く全てを解除する兵士達。

 

一糸乱れぬとはまさにこのことだった。

 

『すまないね、ステイル=マグヌス君。『魔術』を『使えなくて』不安だろうが、我慢してくれたまえ』

 

「くっ」

 

そう、このビルに入ってから、魔術が全く使えない。原因は…まったくの不明だ。

 

「確かに、いつもの礼儀を知らない彼にはいい薬でした。鴻上会長。こちらの無礼をお詫びします」

 

「か、神裂。酷くないかい?」

 

「事実を言ったまでです。ところで鴻上会長…」

 

神裂は一息置いて、

 

「私達に一体何のようですか?」

 

そう、イギリス清教…いや、正確には2人が所属している『必要悪の教会(ネセサリウス)』と敵対している鴻上ファウンデーションがどうして2人をこの場に呼んだのかだ。

 

『勘違いしないでくれたまえ。別に私は君達『必要悪の教会(ネセサリウス)』に敵対しているわけではないよ。ただ、君達の上司が正当な対価を払わず、『寄付』という形で寄越せと無茶を言ったから契約しなかっただけで、別に敵対しているわけじゃない。もし望むなら資金でも資材でも回す手配をしよう』

 

鴻上は笑顔で、

 

『今君達が追っている『禁書目録』全ての閲覧許可と引き換えにね』

 

『!?』

 

その言葉に2人は戦闘体勢を取りかけるが、

 

ガチャチャチャッ!

 

再び、重厚が向けられる。しかもどういう原理かわからないが、バリアのようなモノも施された。

 

『まあまあ、別に私は『禁書目録(カノジョ)』を君達から横取りしようというだけではない。我が社の誇るべき『天才』達が彼女の持つ10万3000冊の魔術書に興味を持ち、知識『欲』を満たしたいのは確かだが…我が社はタダの『善良な一般企業』だ。契約をちゃんとしたい時は、『彼女』に交渉するよ』

 

鴻上は笑っている。

 

『君達を呼んだのは2つ!まずは、コレを見てくれたまえ、里中君』

 

すると女性…里中がなぜかプレゼント風に装飾されている箱を一つ持ってきた。

 

里中が箱を開け、中身がわかる。

 

中身はたった1枚の『メダル』…しかし、そのメダルを見て、2人は驚く。

 

「な、なんだい、このコインは…?」

 

「…信じられないほどの絶大な魔力を秘めています」

 

『ふむ、魔術の専門家にはそれは『魔力』と感じるかね』

 

「ん?確かに魔力…」

 

『違う。それはもっと純粋な『欲望(モノ)』だ』

 

すると、里中は箱を持って出て行く。

 

『ありがとう。君達のような人間の分野ではどういう風に感じるのか確認したかった。そしてもう一つ!』

 

相変わらずハイテンションの鴻上に2人はタジタジだが、先程より警戒心は増している。

 

あんな『モノ』を持っているのだから…

 

『あまり『学園都市(このまち)』で被害を出さないでくれたまえ。君達が何かすると、都市のお金がどれだけかかると想っているのかね』

 

鴻上がやれやれといった顔をする。

 

『私は学園統括理事長と懇意でね。『学園都市(このまち)』が壊れる事に耐えられない』

 

首を振る鴻上。もっとも多額の寄付のかわりに『優先的』に技術を取り入れさせてもらっているためだ。

 

『と、いうわけで。昨日ステイル=マグナス君の戦いで破損したモノ、そして君達がこれから『学園都市』で破損したものは全て…私が君達の教主に請求書を送ることにした』

 

ブッ!

 

この言葉に2人は噴出した。

 

『もちろん、支払わない場合はどんな手段を用いても裁判を起こさせてもらうよ。『必要悪の教会』がまさかこんな事で表舞台に出ることになるかもしれないね』

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

『因みにステイル君』

 

鴻上の言葉に里中は1枚の封筒を、銀盆に載せて持ってきた。

 

『君の昨日の被害だ』

 

ステイルは震えながら封筒を取り、中身を確認した瞬間顎が外れそうになった。

 

0の数が見た事無い数字になっている。

 

『ちゃんと£に直しているから安心したまえ』

 

何を安心しろというのだ。

 

「わ、わかりました。都市に被害を出さないよう気をつけます」

 

『そうしてくれたまえ。後、これは老婆心だが…彼には手を出さないほうがいい』

 

それを聞いて二人の顔色が変わる。

 

「それはどういうことですか?」

 

『君達は聞いた事は無いかね?』

 

「?」

 

『800年前にこの世を飲み込もうとした『欲望(グリード)』と『欲望王(オーズ)』を?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから!アイスの事はチャラにしてやるから『魔道書』を何冊か読ませろといっているだろう!」

 

「全然釣り合ってないよ!それに魔道書って言うのは、危ないんだよ。そこに書かれてる異なる常識『異常識』に、違える法則『異法則』…そういう『違う世界』って、善悪の前に『この世界』にとっては有毒なんだよ!『違う世界』の知識を知った人間の脳は、それだけで破壊されてしまうんだよ!」

 

「そ、そうなのか?」

 

インデックスの言葉に当麻は驚く。

 

「…私は宗教防壁で脳と心を守ってるし、人間を超えようとする魔術師は自ら常識(限界)を超え、発狂する(たどりつく)事を望んでる。けど、宗教感の薄い普通の日本人なら…」

 

「ふ、ふぅん…」

 

当麻がビビるが…ふと考えてしまう。

 

この少女は10万3000冊もの魔道書…それも見たら発狂するようなものを一字一句正確に頭につめるというのはどれだけ大変だろか?

 

なのに…この少女は一度も苦痛を訴えない。

 

それが…当麻には辛かった。

 

「知りたい?」

 

少女は言う。

 

その声はいつもより静かで、それが一層彼女の気持ちを表していた。

 

「顔に出てるんだよ、マヌケ」

 

(そ、そんなに顔に出てたのか?)

 

「私の抱えてる事情(モノ)、ホントに知りたい?」

 

インデックスはもう一度言った。

 

そんな言葉に当麻は自分でも信じられないくらいの優しさを纏った声で、答えた。

 

「なんていうか、それじゃこっちが神父さんみてーだな」

 

当麻は笑う。

 

「今更迷うなよ、こちとらとっくに覚悟できてんだ。テメェの抱えてるもん、全部聞いてやるよ」

 

 

アンクは当麻が覚悟を決めていた事を知っている。

 

『地獄の底から引きずり出してやる』

 

アンクは溜息を吐いて、自分はツイていないと感じていた。

 

 

 

 

 

 

「十字教なんて元は一つなのに旧教(カトリック)新教(プロテスタント)、ローマ正教、ロシア成教、イギリス清教、ネストリウス派、アタナシウス派、グノーシス派。どうしてこんなに分かれちゃったんだと思う?」

 

「なんでだアンク?」

 

「…『政治』を混ぜたからだ」

 

とうとう自分に振ってきた当麻に呆れながらもアンクが答えると、インデックスはうなずいた。

 

「うん、それでいいんだよ。分裂し、対立し、争い合って…ついには同じ神様を信じる人でさえ『敵』になって。私たちは同じ神様を信じながら、バラバラの道を歩くことになった」

 

「昔からそうだが、人間は愚かだな。まっ、そのお陰で俺達は助かっている」

 

当麻も思う。

 

人というのはそういうものだ。

 

それぞれに考えを…欲望を持っているのだから、全てが同じというのはありえない。

 

「…交流を失った私達は、それぞれが独自の進化を遂げて『個性』を手に入れたの。国の様子とか風土とか…それぞれの事情に対して、変化していったんだよ」

 

インデックスは小さく息を吐いて続ける。

 

「ローマ正教は『世界の管理と運営』を、ロシア成教は『非現実(オカルト)の検閲と削除』を。そして私の所属するイギリス清教は…」

 

インデックスはわずかに言葉を詰まらせた。

 

「イギリスは魔術の国だから」

 

「そういえばあの国は結構盛んだったな…まだあったのか?」

 

まるでそれが苦い思い出のように続けた。

 

「…イギリス清教は魔女狩りや異端狩り、宗教裁判…そういう『対魔術士』用の文化・技術が異常に発達したんだよ」

 

首都ロンドンには今でも魔術結社を名乗る『株式会社』がいくつもあるし、書類上だけの幽霊会社ならその一〇倍以上存在する。

 

元々は『街に潜む悪い魔術士』から市民を守るためであったはずの試行錯誤がいつしか極めすぎて『虐殺・処刑の文化』に発展したらしい。

 

「イギリス清教にはね、特別な部署があるんだよ」

 

インデックスは自らの罪を告白するように、そっと言った。

 

「魔術師を討つために、魔術を調べ上げて対抗策を練る。必要悪の教会(ネセサリウス)

 

「ネセ…サリウス?」

 

「なるほどな。なかなか効率的な考えじゃないか。敵を知らなければ敵の攻撃を防げないってわけだ」

 

「だけど、汚れた敵を理解すれば心が汚れ、汚れた敵に触れれば、体が汚れる。だから『汚れ』を一手に引き受ける『必要悪の教会(ネセサリウス)』が生まれた。そして、その最たるものが…」

 

「…10万3000冊ってか」

 

「うん」

 

インデックスは小さくうなずいた。

 

「魔術って言うのは式みたいなモノだから。上手に逆算すれば、相手の『攻撃』を中和させることができるの…世界中の魔術を知れば、世界中の魔術を中和させることができるから。だから私は10万3000冊が…」

 

「叩き込まれた、か」

 

コクリと頷くインデックス。

 

「けど、魔道書なんてヤバいモン、場所が分かってんなら読まずに燃やしちまえば良いじゃねーか。魔道書を呼んで学ぶヤツがいる限り、魔術師は無限に増え続けるんだろ?」

 

「この単純バカが…重要なのは『本』じゃなくて『中身』だ。原典(オリジナル)を消しても、それを知っている魔術師(ヤツ)が他の奴らに伝え聞かせたら意味がない」

 

「うんその通りだよ。そういう人間は魔術士じゃなくて魔導士って言うんだけどね」

 

インデックスは苦笑しながら、

 

「魔道書はあくまで教科書(テキスト)だから…それを読み取っただけでは魔術師とは呼べない。そこから自分なりのアレンジを加え、新たな魔術を生み出してこその魔術師なんだよ」

 

「まあ、性質の悪いコンピューターウィルスのようなもんだ。元を消したとしても、コピーはどんどん他へ行き渡っていく。しかも常に変異するウィルスするから、完全に消滅させるには、解析して常にワクチンを作り続けるしかない」

 

「…それに、さっきも言ったけど。魔道書は危険だから」

 

インデックスは目を細めて言う。

 

写本(コピー)の処分でさえ、専門の異端審問官(インクジショナー)は両目を糸で縫って脳の『汚染』を防ぐ…それでも5年は洗礼を続けないと『毒』は抜け切らないけど。原典にいたっては人の精神では無理。世界中に散らばる10万3000冊は、どうしようもないからこそ『封印』するしか道がなかったんだよ」

 

「オイオイ…それじゃ売れ残った大量の核兵器じゃねぇか」

 

「的を得ているな。まっ、後先考えずに書くからだ」

 

おそらく書いた本人だって予想外だったに違いない。すると、上条が舌打ちした。

 

 

「それにしたって、魔術ってな『超能力者(おれたち)以外の普通の人間』なら誰でも使えるモンなんだろ?だったらあっという間に世界中に広まっちまうじゃねぇか」

 

「それは…平気。魔術結社の連中も、無闇に魔道書を外へは持ち出さないから」

 

「?何でだよ?連中にしたら、戦力(なかま)は大いに越したことねーだろ」

 

「…お前は本当に馬鹿だな」

 

「は?」

 

「『人間』は『仲間』か?」

 

アンクの言葉の深い意味をすぐに理解する当麻。

 

そして、かみ締めるように言う。

 

「大体分かってきた。つまり、アレか。連中はお前の頭ん中にある爆弾を手に入れたいって訳なんだな」

 

世界中にある10万3000冊の魔道書の原典(オリジナル)を一字一句完全に記憶した写本(コピー)の図書館。

 

それを手にするということは、つまり世界中の魔術を手に入れる、と同じことなのだ。

 

「…うん」

 

死にそうな声だった。

 

「10万3000冊は、全て使えば、世界の全てを例外なくねじ曲げることができる。私達は、それを魔神と呼んでるの」

 

(なんでだよ…)

 

当麻の頭に怒りが襲う。

 

アンクが顔をニヤニヤさせている。

 

(『人間』は…なんでこんなに醜いんだよ…)

 

「…ごめんね」

 

インデックスは申し訳なさそうに言う。

 

当麻はインデックスに近づき…パカン、と軽くおでこを叩いた。

 

「…ざけんなよテメェ。そんな大事な話、何で今まで黙ってやがった」

 

インデックスは何かとてつもない失敗をしたように両目を見開いて、唇が何かを呟こうと必死に動く。

 

「だって、信じてくれると思わなかったし、怖がらせたくなかったし、その…あの、きらわれたくなかったから…」

 

「…ナメた事言いやがって、人を勝手に値踏みしてんじゃねぇよ…アンク」

 

「あん?」

 

「正体を見せろ」

 

「まったく…本当にお前はお人よしだな。見てて飽きない」

 

「早くしろ」

 

「わかったわかった」

 

するとアンクの右腕が化物の右腕に変わる。

 

インデックスはそれに驚くが、さらにアンクは少年と離れて、宙に浮き、

 

「よぉ」

 

「ぎゃにゃっ!?」

 

スットンキョな声を上げるインデックス。

 

「ななななな何コレ!?」

 

「これがこいつの正体だ。なんでも800年ほど前に封印された『グリード』って奴らだ」

 

「よろしくな、小娘」

 

「う、嘘なんだよ!そんなわけあるはずないんだよ!」

 

インデックスは頭の中にある『知識』を引き出す。

 

「今でも魔術師や教会に語り継がれている全ての教会の兵士どころか『天使』や『聖人』を皆殺しにした『魔王の使い』がこんなアイス大好きっ子なわけないんだよ!」

 

「ふん…懐かしいな。あの頃は…体がちゃんとあったのに…」

 

インデックスの驚きをよそに、アンクが落ち込んでいく。

 

「ああ、いまは腕だけの存在だが、コアメダルが揃うと、世界を全部飲み込むらしいな。俺はこいつの他にも6体のグリードと戦うはめになっているんだ、不幸なことに…」

 

当麻はインデックスをみる。

 

「教会の秘密?10万3000冊の魔道書?確かにすげぇな、とんでもねー話だったし聞いた今でも信じらんねえような荒唐無稽なお話しだよ」

 

 

「だけどな…たった、それだけなんだろ?」

 

インデックスの両目は見開かれていた。

 

「見くびってんじゃねぇ、たかが10万3000冊を覚えた程度で気持ち悪いとか言うと思ってんのか!魔術師が向こうからやってきたらテメェを見捨ててさっさと逃げ出すとでも考えてたのか?ざっけんなよ。んな程度の覚悟ならハナからテメェを拾ったりしてねーんだよ!」

 

(こいつは、本当に馬鹿だな)

 

アンクはなんで当麻が腹を立てている事を知っている。

 

インデックスが自分に助けを求めてこなかったことに腹を立ててるのだ。

 

(まったく…)

 

「…ちったぁ俺を信用しやがれ。人を勝手に値踏みしてんじゃねーぞ。こちとら『悪魔』と戦う…」

 

当麻はインデックスに向かって、

 

「『魔王』様だ。大いに頼れ、頭でっかち」

 

(セルメダル一枚作れない価値の無い男だ…くそっ!)

 

ふぇ、と。いきなり、インデックスの目元にじわりと涙が浮かんだ。

 

まるで氷が溶けたように泣き出した。

 

 

 

 

イライラしながら雑居ビルの屋上でステイルは双眼鏡から目を離した。

 

「くそっ!どうして部屋にいけない!あそこの部屋のはずなのに!?あの悪魔め!」

 

禁書目録(インデックス)に同伴していた少年達の身元を探りました…」

 

欲望王(オーズ)か…!あの魔王め…!」

 

欲望王(オーズ)についてですが…情報は特に集まっていません。鴻上会長からの情報だけです」

 

「何だ!もしかしてあの魔王がただの高校生とでも言うつもりかい?」

 

ステイルはタバコのフィルターを潰して歯軋りをする。

 

「対峙したからわかる!あの魔王は!裁きの炎(イノケンティウス)を相手に手を抜いていた!ヤツは奥の手を使わず、僕を簡単に退けたんだ!」

 

「そうですね…むしろ問題なのは、彼が『ただのケンカっ早いダメ学生』という分類(カテゴリ)となっていることです」

 

「それで?あのクソガキについては?」

 

「それについては、少しばかりですが、手に入りました。あの子は『チャイルドエラー』と呼ばれる存在です」

 

「チャイルドエラー?」

 

「この学園都市の捨て子です。どうやらあの子は人体実験で『植物状態(さいあくのじょうたい)』になっているはずです」

 

「あのクソガキは僕の頭から『僕の全て』を読み取った。しかも使いこなしている!」

 

「どうやら鴻上会長の情報通り、あの子が『グリード』と見て間違いないでしょう」

 

「グリード…800年前、『魔王』と共に世界を飲み込もうとした『悪魔』ども…」

 

「はい、わずかに残っている当時の記録を調べるなら、存在した全ての『聖人』と『天使』が対抗したようですが…全滅です。封印された経緯も不明になっています」

 

「くそっ…!どうすれば…」

 

「敵戦力は強大、対してこちらの増援はナシ。最悪の展開ですね」

 

2人は勘違いをしている。

 

一つは当麻が変身するオーズの事を『グリードの親玉』だと考えていること。

 

そしてもう一つは他のグリードが戦力であると思っていることだ。

 

「最悪、記録に残っている2体、『昆王(こんおう)』と『海女王(かいおう)』が相手となります。あなたのルーンは防水性において致命的な欠点を指摘された、と聞いてますが」

 

「その点は補強済みだ。刻印(ルーン)はラミネート加工した…最後に確認したあのクソガキと同じ手なのが気に喰わない」

 

ステイルは歯軋りをして振るえる。

 

「今度は建物のみならず、周囲二キロに渡って結界を刻む…時間はかかるが、奴らも価値を知っている。彼女は無事のはずだ」

 

現実の魔術はゲームのようにはいかない。裏で相当な準備が要るのだ。

 

ステイルの炎も実際はもっと時間がかかってしまうものなのだ。

 

詰まる所、魔術戦とは先の読みあいだ。

 

相手の術式を読み、逆算し、攻撃するために術式を組み入れる。

 

「…僕達は…彼女を引き裂き続ける。でも…」

 

彼女の楽しそうな笑顔を止めたくないと、ステイルはタバコの火を消して、準備に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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