もう一人の『
いつかだろう…『世界』が灰色に視えるようになったのは…
いつかだろう…『世界』の味がしなくなったのは…
誰もが聞いたら、『僕』の挫折なんて取るに足りないものだと思うだろう…
『世界』には蟻よりもちっぽけに見えるだろう…
でも…僕にとっては…『世界の終わり』なんかより…
『
「…帰ったぞ」
複数の袋を持ち、『
『おかえり~』
部屋の奥から複数の声が聞こえる。統真は靴を脱いで、奥に向かう。
ガチャッ…
「買って来たぞ」
部屋の中心であるリビングでは大量の本があった。
歴史書から辞書に始まり、経済誌・科学誌・現代情勢誌…果ては漫画やファッション誌まである。
そんなリビングに本を読む3人の男女がいた。
「あ~、ありがと『ウヴァ』。僕のどれ?」
防止をかぶった白髪の少年『
「お前のはこれだ」
持っていた袋の一つを渡す。
「佐天ちゃんの言ってた最新機種…かなり高度で使いやすいみたいなんだ?」
「『ウヴァ』、私と『ガメル』のは?」
今度は歳不相応の大人っぽさを持った少女『
「ほらよ。まったく探すのに苦労したぞ」
「ありがと、欲しかったのよね、『ゲコ太』の携帯」
「どこがいいんだそんなもの」
「いいじゃない。ガメル」
「メズール…」
大きな体には似合わず、本で何かを組み立てていた『
「おいで、あなたのよ」
「わーい」
と立ち上がると、
バララララッ…
本が崩れる。
「お、俺の城がぁぁぁ」
「ほらほら泣かないの」
と愛琴が郷馬に寄って行った。
「まったく…人を何だと思ってるんだ」
統真は溜息を吐く。
「だってマトモな素性の人間って『ウヴァ』しかいないじゃん」
「そうよ。いいもの拾ったわね」
冬馬はバツが悪そうな顔をする。
そう、彼等は人間ではない。
彼等は『Greeed』…800年前『欲望』の塊である『コアメダル』から創り出され、現代に甦った『最強の存在』…だが、今はその力を失っている。
自分達にとって存在そのモノである『コアメダル』がそれぞれかけており、彼等は『完全復活』できないでいる。
彼等は『コアメダル』を取り戻す為に、人間社会に溶け込む事にし、人間の体を奪った。
「まあいい。それより」
神城統真…『ウヴァ』は手を出す。
『なに?』
「金だよ。結構したんだぞ」
3人はウヴァとは明後日の方向を向く。
「…おい、まさか…」
ウヴァはコメカミに青筋を浮かべる。
虎豹…『カザリ』は複数のレシートを出す。
「佐天ちゃんと初春ちゃんとのデート代」
愛琴…『メズール』は部屋の隅にあった袋を指す。
「私に似合う服」
郷馬…『ガメル』は食べていたものを持って、
「おかし…」
ここで一つの爆発が起こった。
「あいつら!人を使い走りにしやがって!」
公園で『黒豆コーラ』を炭酸とは思えない勢いで飲み、『灰色の世界』にウヴァは吠えた。
『き、君も苦労してるんだね』
「やかましい!」
突如、頭に響いた声にウヴァは怒鳴りつけた。
この声の主は『
実はウヴァは統真の意識をあえて残させている。
持ち主の体を乗っ取るという術は簡単だが、完全にその体を操作するには人間の『魂』を殺すか、その人間の全面的な協力が必要だ。
最初、ウヴァはこの統真の『魂』を殺そうとしたが、カザリとメズールの案を聞き、それに乗ることにした。その為、統真にはまだ意識がある。
「まったく、人間共も変わったな。昔は都合のいい時だけ使う忌み嫌っていた『禍使い』を造り出すなんてな」
『忌み嫌ってた?』
「ああ、人間ってのはな自分達には持っていない少数の人間を羨み、嫉妬して、そこから忌み嫌うもんだ。しかも世の中には『魔術師』がいた。禍使いなんて弱い上に約にも立たないもんだったな」
『この『学園都市』は超能力を開発して、強くする為の場所なんだ』
「ああ…確かに中には魔術師と戦える奴等がいるな。それに、随分と利用している。お前はどうだったんだ?」
『ほ、僕は…『レベル0』だから…』
統真は『超能力』に憧れてこの『学園都市』に来た。
彼は努力した。一生懸命、人の何倍も努力した…しかし、そんな彼に神様は何も与えなかった。
他の生徒に苛められ、先生からは見放された。
そして…ゼツボウしたのだ。
「ふん…」
「おい、こんな所にクズ城がいるぜ!」
突然後ろから乱暴な声が聞こえて来た。
ウヴァが振り向くと、そこには数人の少年がいた。
「何だこいつら?」
『ぼ、僕の…同級生…』
少年達の反応と統真の反応から、こいつらが統真を虐めていた奴等だと判断したウヴァは
「丁度いい。『
ウヴァは笑って立ち上がり、リーダー格の少年の前にたった。
「な、なんだ、く、クズ城…」
いつもの雰囲気とはまったく違う統真に少年達は少したじろぐ。気のせいか…夏なのに寒気が走る。
「お前等、財布置いてどっかに行け。それから、これから俺に服従しろ」
「な、何バ…」
ウヴァはリーダー格の少年の胸倉を掴み、そのまま持ち上げた。
「ぎゃっ!?」
ウヴァは少年を掴み、持ち上げる。
「言った筈だぞ」
少年は体から体温がなくなっていく事を感じ、恐怖する。
感覚ではない。
服が『凍って』いるのだ。
「ふんっ!」
ウヴァはそのまま少年を他の少年達に投げつけた。
『ぎゃっ!』
少年達は目の前の『統真』に恐怖する。
睨まれただけで、生きている実感がわかない。
今まで『強者』だったのに『弱者』に成り下がった瞬間だった。
「で?俺はなんていった?」
「ちっ、シケてやがる。携帯代にもなりゃしねぇ」
ウヴァはカツアゲした金を見て、悪態をつく。財布は統真が五月蝿いので返した。
『き、君凄いんだね。モノを凍らせることもできるなんて』
統真は先ほどの能力に恐怖を感じながらもチカラを持つ者に純粋に…狂ったまでに憧れているモノの声でウヴァにいう。
ウヴァはそれを聞いてニヤリと笑う。
「アレは俺の力じゃない。『お前』の力だ」
『えっ…』
「お前の言う『超能力』を引き上げてやった…確か大規模な殺し合い…戦争に利用できる『レベル5』とやらぐらいにな。物を凍らせるんじゃない…」
『統真』の掌から、『氷』…そして次に『炎』、最後に『雷』が現れる。
『
「いいや、違う。能力は一つだ。今までレベル0に近い1くらいだったんで気付かなかったろうが…」
ウヴァは笑う。
「お前の能力は本当に特殊でな。相手に『右手』で触れる事によって、その人間の能力を読み取り、
まるでそれは…異能を無尽蔵に己のモノにできる『欲望』の塊のような能力。
「まあ、『
『ぼ、僕にそんな能力が…』
「で、だ。もし俺がお前の体を抜け出す時、このままのレベルを残すことが可能だ」
『え?』
「俺がコアメダルを集め終え、お前から出ていく時、お前を『レベル5』にすることができる」
『ぼ、僕が…レベル…5?レベル0の…僕が?』
「そうだ。貯蔵した
少しだけ忌々しく思う声をだして、その名を口にした。
『王…?僕が…』
それは絶対に手に入れることができないモノ…望んでも、焦がれても、統真にとって手にれられなかったもの…それが手に入ると言われた。
「実はなお前の意識を残しているのは、俺達の細胞でもあるセルメダルを最低限作る為だ。どうする?」
統真は『超能力』が欲しかった。
普通の人間にはない
求めて、焦がれて、必死になって、がむしゃらになって…統真にとって、それはどんなものより欲しいものだった。
統真はウヴァの言いたい事がわかった。
人間を裏切って微々たるモノだが、協力しろといっている。
人間を…裏切…
『わかった』
チャリィィィィン!
セルメダルの音が鳴り響く。
『僕は君に全面的に協力する。僕は力が欲しいと『
まったく迷いのない言葉。
チャリン!チャリン!チャリン!
どれだけ焦がれていたのだろうか…ウヴァの予想以上のセルメダルが生み出されていく。
『僕の体を好きに使ってくれ。僕の体を全て君に預ける』
心から求め焦がれた『
『だから…僕に超能力を…』
統真は気付いているのだろうか?その強い『欲望』は一時的にウヴァすらも凌駕し、一瞬だけ自分が体を取り戻し、
『くれ…!』
直視する事すら憚れる、欲望に塗れた笑みを浮かべていた事を…
それを『
生まれてから今まで感じていた『灰色の世界』に『色』が溢れ、光り輝く。
『こ、これは…』
まだ体の主導権はウヴァに戻っていない。
統真は自分から飲みかけの『黒豆コーラ』を飲み干す。
『ぐがっ…!なんだこの口の…『感覚』は!爆発か!』
「ははっ、炭酸だからね」
『タンサン?…しかし、これは…もしかして…『美味い』というのか?』
ウヴァは初めて感じる『味』に感嘆する。
「ああ、僕も忘れてたよ。これからは、君も…ウヴァもこれからもっと感じるよ」
統真は『右手』を握りしめていう。
「世界はこんなにも輝いていて!美味いんだ!」
闇に堕ちた少年の笑顔は…光り輝いていた。
もうひとりの『
アンクはアイス中毒。
ウヴァはコーラ中毒。