魔法少女リリカルなのは ~黒衣の魔導剣士~   作:夜神

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第17話 「エースオブエースの天敵?」

 ヘリへの一撃を防いだ後、俺はなのはとフェイトと共に追撃戦を行ったが、結果から言えば逃げられてしまった。

 レリックの片方も奪われてしまい、あまり好ましくない結果のように思えた。が、機転を利かせたフォワード達のおかげで奪われたのはケースだけだったことが分かり、最良とは言えないが少なくともプラスの結果で終了した。

 保護した少女は聖王教会の方に預けられたこともあって、なのはがシグナムと一緒に彼女の様子を見に行っている。会った時から気に掛けている様子だったので、何か思うところがあるかもしれない。一方俺はというと、今はフェイトと共に部隊長室ではやてと話している。

 

「臨時査察って……機動六課に?」

「うん……どうも地上本部にそういう動きがあるみたいなんよ」

「おいおい、地上本部の査察は厳しいって有名だぞ」

 

 ただでさえ、この部隊は能力限定で誤魔化しているとはいえ、オーバーSランクが複数存在していたり……と、色々とツッコミどころが満載な部隊だ。

 また後見人がクロノにカリム、リンディさんといった海や聖王教会の人間なだけに地上の人間はより私情を持ち込みかねない。それらをはやても理解しているらしく、深いため息を吐いている。

 

「はやて、分かってるとは思うけど今配置やシフト変更命令が出たりしたら……正直致命的だよ」

「うーん……何とか乗り切らな」

「乗り切るね……そのための対策を練るに当たって確認しておきたいことがあるんだが、六課が作られた本当の理由って何だ?」

 

 はやてが過去の経験から理想の自分の部隊を作りたいということは知っている。しかし、普通に考えれば能力限定を用いてまで緊急時には過剰戦力とも呼べそうなこの部隊を作る理由はないはずだ。

 

「あはは……そやね、まあええタイミングかな。今日聖王教会本部、カリムのところに報告に行くんよ。クロノくんも来る」

「え、クロノも?」

「そうや。やからふたりはなのはちゃんと一緒についてきてくれるかな? そこでまとめて話すから」

 

 はやてのその言葉にフェイトは肯定の返事をしたが、俺は声を発することが出来なかった。

 プライベートなもので集まるならば俺が出席するのも問題はないだろうが、仕事としてとなると俺はフェイト達と違って隊長職に就いているわけではない。そのため、その場に居合わせるのは場違いのような気がしてしまったのだ。

 

「ショウ、どうかした?」

「いや……その、何だ。……俺はお前達と違って隊長とかじゃないんだが、一緒に行って大丈夫なのか?」

「当たり前やろ。確かにショウくんは隊長って呼び名はないけど、役割としてはロングアーチの副隊長みたいなものやないか」

 

 そのような言われ方をすると妙なプレッシャーを感じるが、まあ悪い気分にはならない。

 ただロングアーチは基本的に後方支援が目的であり、はやての補佐はグリフィスが行っている。俺は一応ロングアーチの所属ではあるが、現場に出て戦うことが主なのでフォワード達に近い立場のように思ってしまう。故に副隊長ではないような……。

 

「まあいいや……お前がついてこいって言うなら行くしかないだろうし」

「そこは行くだけでええとこやろ。相変わらずの言い回しするなぁ」

「まあまあ、ショウも悪気があって今みたいな言い方してるわけじゃないし。それに今みたいなところがショウらしさって言えるかもしれないわけで……えっと、何でそんなににやけてるのかな?」

「別に何でもあらへんよ。ただフェイトちゃんはショウくんのことよく分かってるなと思っただけや」

「――っ、はやてだってそれくらい知ってるでしょ!」

 

 それなりにシリアスな雰囲気だったのに一瞬で崩壊してしまった。まあ暗い空気で話すよりはマシかもしれない……が、もう学生ではないのだからこの手の話は本人のいないところでやってもらいたいものだ。下手に反応すれば誤解が誤解を生みかねない年齢になっているのだから。

 フェイトも話題を変えようと思ったのか、単純に今後のためになのはの現在地を知っておきたかったのか、彼女に通信を繋ぐ。通信が繋がるのと同時に聞こえてきたのは、全く予想していなかった子供の泣き声だった。

 

『うぇぇぇ~ん!』

『あぁほら泣かない、泣かないで』

『えっと、ほらお姉ちゃん達と一緒に遊ぼう』

 

 何事かと思ったが、映像を見る限りなのはに保護したあの少女がしがみついている姿を見て状況を理解する。

 経緯までは分からないが、どうやらなのははあの少女に懐かれてしまったらしい。それで六課に連れてきてしまったのだろう。しかし、これからはやて達と共になのはは出かけなければならない。なのでフォワード達に面倒を見てもらおうとしたのだが……。

 

『やだぁぁッ! 行っちゃやだぁぁぁッ!』

 

 なのは以外に頼れるというか心を許せる存在がいないあの子に現在進行形で駄々をこねられ、なのはを含めあの場にいるメンツは手も足も出ないという状況なのだろう。

 俺達は顔を見合わせながら笑みをこぼし、なのは達だけでは事態が収拾しないと思い彼女達の元へ移動を始めた。

 

「……ん? 八神部隊長にフェイトさん、それにショウさんも」

「あはは、エースオブエースにも勝てへん相手がおるようやね」

 

 末っ子で育児の経験もないなのはがあの子に勝てないのはある意味仕方がないだろう。まあ口ではなく念話で俺達に助けを求めてくるあたり、冷静さは失っていないようだが。

 

「とりあえず……スバルとキャロ、お前らは落ち着いて少し離れてろ。今のあの子にはかえって逆効果だ」

 

 俺には弟や妹はいないが、ヴィータといった妹分の相手は昔からしていたし、幼い頃のエリオの相手もしていた。またハラオウン家と親しくしているため、たまにカレルとリエラ……クロノとエイミィの間に生まれた双子の兄妹の面倒を見たりしている。

 そのため、フェイトには劣るがそれなりに子供の扱いは分かっている。……まあただ俺の場合、自分から行くというよりは、あちらから近づいて来ることのほうが多いのだが。子供は何だかんだで好奇心の塊なので、こちらから行かなくてもあちらから来ることが多かったりするのだ。

 

「こんにちわ、この子はあなたのお友達?」

「え?」

「ヴィヴィオ、こちらフェイトさん。なのはさんの大事なお友達」

 

 フェイトは床に落ちていたウサギのぬいぐるみをしゃがんで拾い、目の高さをヴィヴィオという少女に合わせたまま会話していく。それと平行してこの場にいる全員に聞こえるように念話でなのはに話しかけ、これまでの経緯を聞いた。

 

『とりあえず病院から連れて帰ってきたんだけど、何か離れてくれないの』

『ふふ、懐かれちゃったのかな』

『それでフォワード達に相手してもらおうと思ったんだけど……』

 

 結果的に言ってしまえば全滅だったと……実に予想通りの展開だ。まあスバルやティアナに下の子はいないし、エリオ達は年齢で言えばまだ面倒を見てもらう側だからな。それに経験もないだろうし、ヴィヴィオって子の相手ができないのは仕方がない。

 状況を完全に理解したフェイトは、これまでに培った経験を活かしてヴィヴィオを説得していく。

 

「ヴィヴィオはなのはさんと一緒に居たいの?」

「……うん」

「そっか、でもなのはさんはこれから大事な御用でお出かけしないといけないの。ヴィヴィオが我が侭言うから困っちゃってるよ。この子も」

「ぅ……」

「ヴィヴィオは別になのはさんを困らせたいわけじゃないんだよね?」

 

 説得するフェイトを見て、フォワード達は彼女にどこか達人のような雰囲気を感じ取ったように見える。エリオやキャロがフェイトのことに詳しいこともあってか、子供の扱いに慣れている理由は理解できたようだ。

 余談になるが、エリオとキャロの顔が赤くなっている。おそらくフェイトが子供慣れしている理由の中に過去の彼らが入っているからだろう。

 

「だから良い子で待ってよ、ね?」

「…………うん」

「ありがとねヴィヴィオ、ちょっとお出かけしてくるだけだから」

「……うん」

 

 涙を浮かべてはいるが、ヴィヴィオという子は大人しくなのはの帰りを待つことにしたようだ。

 それにしても……報告では人造魔導師の素体の可能性が高いと聞いていたが、フェイトの言うことを理解できたあたり、この子は知識や言語がはっきりし過ぎているように思える。まだ確定ではないだろうが、普通に考えて人工授精児ではこうはいかない。

 しかし、この子に元になった人物の記憶があれば別だ。だがそれはあの計画……プロジェクトFが続いていることを意味する。フェイトやエリオが変に思い詰めなければいいが……。

 それに、仮にこの子が記憶転写型のクローンだとして……いったい何のために生み出されたのだろう。死んでしまった子供の代わり……、そのように考えたいところだが、レリックを所持していたとなると別の可能性の方が高そうだ。

 視線をヴィヴィオに戻すと視線が重なった。偶々目が合っただけなのかとも思ったが、彼女の瞳は真っ直ぐこちらに向けられたまま動こうとしない。

 

「ヴィヴィオ? ……あの人が気になるの?」

「うん」

「そっか。あの人もね、フェイトさんと同じでなのはさんの大事なお友達でショウさんって言うんだよ」

 

 ヴィヴィオは一度なのはを見た後、再びこちらに視線を向ける。

 子供は好奇心旺盛ではあるが、先ほどまで泣きじゃくっていた子が急に他人に興味を持つとは考えにくい。

 また俺は一度も話しかけていないし、普通あの子くらいの子からすれば長身の男性は怖い存在に感じる可能性が高い。どうして俺に興味を示しているのだろうか?

 と考えても答えが出るはずもないため、俺はヴィヴィオにゆっくりと近づく。怖がってなのはの後ろにでも隠れるかと思ったが、そんな素振りは一切見せなかった。そのため俺は彼女と目の高さが同じになるように屈む。

 

「どうした?」

「……一緒」

「ん?」

「帰って来るまで……一緒」

 

 ぼそぼそとした言葉だったが、どうやらヴィヴィオはなのはが帰ってくるまで一緒に居てほしいと言っているようだ。彼女の方からこちらに近づいて制服を手に掴むのが何よりの証拠だろう。

 ――こいつは困ったな。

 自分から一緒に居てほしいと言ってくれている以上、俺がヴィヴィオの面倒を見るのが最善なのだろう。しかし、俺もなのは達と一緒に聖王教会の方へ行かなければならない。

 これを伝えるとまた泣いてしまいでそうではあるが……優先順位で考えると、この子よりも聖王教会のほうが上だ。素直に言うしかないだろう。

 

「ごめんなヴィヴィオ、一緒に居てやりたいのは山々なんだが……俺もなのはさんと一緒に出かけないといけないんだ」

「ぇ……うぅ」

「大丈夫、ここに戻ってくる。帰ってきたらちゃんと顔を出すから、それまで良い子に待っててくれ」

 

 あやすように頭を撫でながら頼んでみると、小さくではあるが「うん」と返してくれた。俺は笑いながらありがとうと言ってからもう一度頭を撫でながら立ち上がる。

 

『……お前らのその顔は何だ? スバル、答えろ』

『えっ、えぇぇぇッ私ですか!? えっと、その、あのですね……ショウさんって子供の扱い慣れてるんだなあっと思いまして』

『あのな……俺は昔からヴィータやリインの相手をしてきたし、フェイトの家とは付き合いが長い。フェイトの甥っ子達の世話もたまに手伝ってるし、ある程度慣れがあるのは当たり前だろ』

 

 言い終わってから思ったが、ヴィータの名前を出すのは不味かっただろうか。彼女はフォワード達からすれば頼れる隊長のひとりなのだから。それに子供扱いしたことを伝えられると、間違いなく後で噛み付いてくるに違いない。

 ……別に嘘を付いてるわけじゃないし、ヴィータも強くは言えないはずだ。深く考えずにいよう。

 

「さてと、じゃあ私達はそろそろ出発だからみんなヴィヴィオのことお願いね」

「「は、はい!」」「ががが頑張ります!」「……努力します」

「あはは……あまり気負わないでね。固くなっちゃうとあの子も緊張しちゃうだろうから」

「そうだな……今の返事を聞く限り、面倒はライトニングが見てスターズはライトニングの分まで仕事した方がいいかもしれないが」

 

 

 

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