魔法少女リリカルなのは ~黒衣の魔導剣士~   作:夜神

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乙女達の宴 ~閉幕~

 予想していた展開とはいえ、あまりにも直球の物言いに私となのはは固まってしまう。

 でもそれは仕方ないと思う。だって私はショウのことが好きというか大好きなわけで。しかもそれは子供の頃からで年々想いも募っているし。

 このことはなのははともかく。周囲には気づかれてるんだろうなとは思ってた。

 なのはの気持ちに関しても六課が解散になった頃からなのはもショウのこと……とは思う機会は割とあったし。多分六課で1年一緒に仕事したことで自分の気持ちを自覚できたんだろう。それ自体は鈍感なところがあるなのはにとっては良いこと……好きになった相手が一緒じゃなければ。

 はやてに関しては昔度々指摘されてそのときは否定してたけど、好きなんだろうなって感じだったし。今はもう隠そうとしないあたり……今後はやては本気でショウにアタックするつもりなんだろう。

 そう分かってても……ショウのことが好きだって直球で言われると私は恥ずかしいと思うし、恋敵が親友だということを再認識させられると思うところもある。それでもショウのことは渡したくはないんだけど……

 

「は……ははははやてちゃん、きゅ、急に何言ってるの!?」

「何が急にや。ちゃんと前置きはしとったやろ……なあフェイトちゃん?」

 

 え、ここで私に振るの!?

 話の内容的に私もなのはみたいに慌てるところだと思うんだけど。こうなるんじゃないかって予想出来てたからなのはよりも冷静さは残っているけど。

 

「えええっと、その、あの……!?」

 

 ごめんなさい。冷静な私も居るのは確かだけど、慌てている私も確かに居るみたいです。多分表面上はなのはと同じくらい慌ててるんだろうし、なのはよりも冷静だとか言ったの訂正します。

 

「まあええ……それじゃあ話を進めるで」

「ちょっ、ちょっと待って!」

「何やなのはちゃん?」

「そ、その……何でこういう話になってるのかな」

「何でって……そんなのなのはちゃんとフェイトちゃんがショウくんのことを好きやからに決まっとるやないか」

 

 何か微妙にはやての顔が険しい。

 まあはやても覚悟を決めてこの話題を持ち出したんだろうし、この話題から逃げようとしているなのはに思うところがあるんだろうけど。なのはって人のことになると一生懸命だけど、自分のこと……特にこの手のことになるとヘタレだったりするし。ヘタレなのは私も同じだけど……

 

「わ、私はやてちゃんにショウくんのことが好きって言ったことないよね。いくら友達だからってか、勝手に人の気持ちを決めるのは良くないと思うんだけど」

「ほぅ……ということは、なのはちゃんはショウくんのことが好きじゃないんやな?」

「それは……その……好きじゃないわけじゃないけど、別に好きってわけでも」

 

 顔を赤くしながらモジモジするなのはの姿は実に可愛らしい。普段こういう姿を見せないから余計にそう思えるんだと思う。

 でも……何だかこれまでの自分を見ているようで思うところもあるんだよね。

 この手の話題になったら私も必死に誤魔化してたりしてたし。絶対好きなくせに否定する人を見てると苛立ってくる気持ちが分かるかも……エイミィやアルフも私に対してこんな気持ちを抱いてたりしてたのかな。

 まああのふたりはそんなんだから未だに進展しないんだってはっきりと言ってきたこともあるんだけど。ハハハ……本当に私ってヘタレだよね。もう何年片想いしてるんだって感じだし……。

 

「ふーん……ならええよ。この話は私とフェイトちゃんだけでやるからなのはちゃんは適当にお酒でも飲んで待っといて」

「え……」

「何やその顔は……なのはちゃんは別にショウくんのこと好きやないんやろ?」

「だからそれは…………その、好きじゃないとは言ってないわけで。でもその……というか、大体話を進み方が一方的過ぎるよ!」

「どこが一方的なんや。ちゃんと話聞いて進めとるやないか」

「聞いてないよ。だって……フェイトちゃんがショウくんのこと好きだって決めつけてるし!」

 

 な、なのは……確かにはやての言い方は決めつけてるかもしれないけど、でも事実だから間違いじゃないんだよ。

 というか……今の言い方からしてなのはって私がショウのこと好きだって考えてないよね。慌ててるから鈍くなってるだけかもしれないけど……でも多分私の気持ちに関しては、昔からの知り合いなら誰でも知ってる気がする。だって私って分かりやすい反応しちゃうタイプだし……自分じゃどうにもできないことでもあるんだけど。

 

「いやいやいや、どこからどう見てもフェイトちゃんはショウくんラブやろ!?」

「はははやて、そういうことあんまり大きな声で言わないでよ!?」

「事実やないか!」

「はやてちゃん、そんな風にフェイトちゃんを追い込むのは卑怯だよ。フェイトちゃんはそういうことさせると何も言えなくなるんだから!」

 

 確かに勢い良く来られるとそのまま押し切られちゃったりするけど……今回においてははやてよりもなのはにそれをされている気分かな。善意で言ってくれてるのは分かるんだけど……

 

「それは否定せんけど、今回ばかりはどう考えても私の言い分が正しいやろ。フェイトちゃんはショウくんラブや!」

「ライクかもしれないじゃん!」

「このアンポンタン! なのはちゃんはこの十数年、フェイトちゃんの何を見てきたんや!」

 

 感情が高ぶったはやてはその内に秘めた気持ちをぶつけるように勢い良くテーブルを叩いた。

 そこにははやてが作ってくれた料理だけでなく、飲みかけのお酒もある。強い振動を与えればどうなるか説明する必要はないよね……どうにかギリギリのところでキャッチ出来たから被害は出てないけど。

 

「何をって色んなところを見てきたよ。優しいところとか、恥ずかしがり屋なところとか!」

「な、なのは……とりあえず落ち着こ。お酒とかもあるんだし、こぼしたら大変だから」

「そうやったらフェイトちゃんがショウくんに対して好意持ってるんは分かるやろ!」

「はやても落ち着こ。あまり騒ぐと近所の人の迷惑になるし。ね?」

「「フェイトちゃんは黙ってて!」」

 

 えー……私のこと話してるのに何でそうなるの?

 今話してるのって私がショウのことを好きかどうかってことだよね。それって私が答えればすぐに解決する話だと思うんだけど。

 かといって今の私がどうこう言っても止まりそうにないし……いや逃げちゃダメだ。

 今ここでふたりを止められるのは私しかいないし、今日は云わば本音をぶつけ合うために用意された席。お酒の力だって借りれる状況だし、ショウのことだけは誰にも譲りたくない。……よし!

 

「あぁもう、なのはちゃんと話してても埒が明かん。フェイトちゃんとだけ話すからちょっと黙っといて」

「な……それはこっちのセリフだよ。何でもかんでも分かってる感じで勝手に決めつけてさ。そんなだからショウくんから呆れた顔ばかりされるんだよ」

「何でそこでショウくんが出てくるんや。というか、そう見えるんはなのはちゃんが鈍感やから理解出来てないだけやろ。仕事できるんに人のそういうところには疎いからショウくんから仕事中毒とか言われるんや」

「仕事中毒なのはそっちも……!」

「あぁもう、いい加減にして!」

 

 最大限怒気の混じった声を発すると、なのはとはやては動きを止めた。恐る恐るこちらに視線を移してくるふたりをよそに……私は飲みかけだったお酒を一気に飲み干す。

 

「……さっきから聞いてれば、何で私に関する話をしてるのに私に黙れって言うのかな。それにどんどん本筋から離れてただの悪口の言い合いになっていくし」

「えっと、それは……はやてちゃんが」

「ちょっ、どっちかと言えばなのはちゃんが悪いやろ!」

「どっちが悪いじゃなくてどっちも悪いの! ただ悪口を言いたいだけなら私のいない場所でやって。聞いてて不愉快だから!」

 

 私にここまで言われると予想してなかったのか、なのはとはやては身体を小さくさせながら一度顔を見合わせた後……申し訳なさそうに謝ってきた。

 その姿を見ていると少し言い過ぎたような気持ちにもなるけど……ううん、さっきのふたりの言動を考えると仕方がないことだよね。話はまだ続くんだろうし、心を強く持っとかないと。

 

「それで……何ではやては急にこんな話をしようと思ったの?」

「それはその……私達ってショウくんのこと好きなのに互いに遠慮してるというか、まだ相手は踏み込めてないから大丈夫って考えがあるんやないかなって。そんなんじゃ一向に進展せんというか、一歩踏み出す覚悟が出来ない気がして……」

 

 まあそうだよね。

 今はやてが言ったことは私も思ってたことではあるし……自分以外もそう思ってたと思うと安心する一方で今後のことを考えると不安にもなるけど。今日を境にこれまでの均衡が崩れることになるわけだから……こう考えるあたり私ってヘタレなんだろうなぁ。

 

「あのさ……はやてちゃんってそんなに遠慮してる? 割とショウくんにちょっかい出してるように思うんだけど」

「ちょっかいって言い方やめてくれへん? 確かにはたから見たらそう見える時もあるやろうけど、私とショウくんの昔ながらのスキンシップなんや。せめてアピールと言ってほしいんやけど」

「アピールって……嫌そうな顔ばかりされるアピールなんて意味あるの?」

「あはは……なのはちゃんだってショウくんとはケンカばかりしとる気がするんやけど? よく意地悪だのなんだの言ってた気がするし。よくケンカするってことは相性が良くないんやないの?」

「そ、それは……実際ショウくんは私に対して厳しいというか意地悪なだけだし!」

 

 確かにショウは意地悪な言い回しをすることもあるけど……なのはの場合、なのはにも問題があると思うのは私だけなのかな。ショウが言うことって割と的を得てるというか事実なことも多いし。それになのはの受け取り方も悪い方ばかりな気がするし……

 というか、またふたりがケンカ腰になってきてる気がする。話す内容が内容だけにぶつかるのも仕方がないとは思うけど、意味のない言い合いはしてほしくないし聞きたくもない。一緒にヒートアップしたらこんなことも考えないんだろうけど。

 

「それに……私はヴィヴィオのことで相談しないといけないことも多いし」

「うわぁ……そこで娘を引き合いに出すとか」

「し、仕方ないじゃん! せ、籍とか入れたわけじゃないけど前からショウくんはヴィヴィオのパパみたいなものだし。ショウくん自分はパパじゃないって言ってるけど、なんだかんだでパパみたいなことしてるし。ヴィヴィオも今も昔と変わらずショウくんのことをパパと慕ってるわけで……」

 

 なのはは親子3人で過ごす未来でも想像しているのか、照れたように顔を赤らめている。

 その姿は共通の相手を好きになっていなければ可愛らしく思えたのだろう。だけど現実は私だけでなくはやてもショウのことが好きなわけで。言わずもがな今のなのはを見て内心がざわついている。

 

「フェイトちゃん……もう私達の知る純粋で真っ直ぐやったなのはちゃんはおらんのかもしれんなぁ」

「そうだね……まあなのはも大人になったんだよ」

「相変わらずフェイトちゃんは優しいな。素直に汚い大人って言ってもええんやで」

「ちょっとはやてちゃん、お酒が入ってるのは分かるけどもう少し言葉を選ぶべきじゃないかな。大体流れからして言わなくても分かることなんだし! というか、はやてちゃんは本当は私のこと嫌いなのかな!」

「別に嫌いやないよ。むしろ好きやし、大切な友達と思ってるで」

「はやてちゃん……」

 

 すんなりとした言葉になのはは驚きの顔を浮かべた後、少し言い過ぎてしまったと思ったのか申し訳なさそうな顔をする。その直後、はやては普段話すのと変わらない態度で……

 

「でも恋愛面の誤魔化すところとか、言い逃れようとするところは嫌いやな。あと急に妄動し始めてひとりニヤニヤするところとか嫌いや。見てて不愉快やし」

「――っ……私ははやてちゃんのそういうところが大嫌いだよ! 大体妄想くらい好きにさせてよ。別に迷惑掛けてないんだし!」

「迷惑なら掛けとるやろ。同じ相手好きになっとるんやし、目の前でされたら癪に障るに決まっとるやん!」

「妄想なんてはやてちゃんだってするじゃん! というか、そっちは本人が目の前に居たらこれ見よがしに腕に抱き着いたりするくせに。そっちの方が迷惑だよ!」

「だったらそっちも抱き着けばええやん」

「そそそそういうのはちゃんと段階を踏んでからというか……あぁもう、はやてちゃんはもう少し遠慮というか慎みを持つべきだよ!」

「慎みばかりじゃ進展せんやん。それにせっかく女の武器として使えるもんがあるんやから使わなそんやろ」

「使っても進展しないくせに……」

「何やてこの貧乳!」

「ひ、貧乳……? なのは貧乳じゃないし! 人並みにはあるんだから。デタラメ言わないでくれるおチビさん!」

「誰がチビ――っ!? ……え、えっとフェイトちゃん?」

 

 うん? どうしたのかなはやて?

 私は別に持ってた缶を勢い良くテーブルに置いただけだよ。何でそんなことしたのかって? あはは……そんなの決まってるじゃん。

 さっき注意したばかりなのにふたりとも熱くなって悪口の言い合いするからだよ。それを聞く私はちっとも面白くないし、大好きな人も話に出たりするからさらに面白くないよね。

 

「その不愉快な話ってまだ続くのかな?」

「えっと、その……」

「まあ話題が話題だからケンカになるのも分かるけど、私達はもう大人なんだよ。もう少しまともな話し合い出来るんじゃないかな? 私としてはこの前ショウと一緒に出掛けた、みたいな話を聞く方がまだマシなんだけど」

 

 私達がただの同級生で同窓会とかで出会って飲んでるとかならまだ分かるけど、私達って十数年の付き合いのある友達だよね?

 それで今後のためにこれまで触れてこなかった話題に今日手を出したんだよね?

 ならちゃんとお互いが先に進めるように話そうよ。私の考えてること間違ってるかな?

 そう続けるとなのはとはやては項垂れながら間違っていませんと返事をしてきた。これでようやく話が進みそうだ。まったく……お酒飲んでないとやってられないよね私の立ち位置。ふたりのやりとり見てると癪に障ること多いし。

 

「な、なのはちゃん……何か今日のフェイトちゃん怖いんやけど?」

「そ、そうだね。でも、ほら……普段優しい人が怒ると怖いって言うし。フェイトちゃんっていつも優しいから……」

「ふたりとも何こそこそ話してるのかな?」

「「な、何でもないです!」」

 

 何でもないのに何で敬礼してるのかな?

 別にさっきみたいに問い詰めるように言ったわけじゃないんだけど。出来るだけ笑顔を心がけて言ったつもりだし……もしかしてあのときのなのはみたいになってたのかな。それだったら……気を付けよう。あんな怖い笑顔を浮かべる人にはなりたくないし。

 

「えっと……ふたりに任せるとまたケンカしそうだから私が進めさせてもらうね。色々と話が逸れたけど、今日話し合う内容は私達の今後……ショ、ショウとの今後についてでいいんだよね?」

「そうやな。このままやと特に進展することなく気が付けば見知らぬ誰かに奪われて私達の恋が終わる……なんて未来になる可能性もゼロやないし」

「さ、さすがにそういうのはないんじゃないかな。ショウくんってそんなに人と仲良くなるの早い方じゃないし……付き合うにしても私達の知っている誰かだよ。多分……」

 

 なのは……そこはもう少し力強く断言しようよ。

 確かに可能性としては否定できない話ではあるけど、ショウとの付き合いの長さを考えれば私達は最も彼のことを知ってる人間のひとりなんだろうし。……自分で言ってて恥ずかしくなってくるけど。

 

「私もそう思う……せやけど、ショウくんは案外モテるのも事実や」

「まあ……一見取っ付きにくそうに見えるけど、話せばそうでもないからね。子供の頃は人と話したくなさそうな雰囲気があったりもしたけど、今はそういうのもなくなってるし」

「それに……冷たいこと言ったりもすることもあるけど優しいから」

 

 自分が本当に言って欲しいことを言ってくれるし、ひとりになりたくない時は黙って傍に居てくれたりするから。

 それに……なんだかんだ言いながらも誰の相手でもするし、子供にはお菓子作ってくれたりするんだよね。気が付いたら自分よりもショウの方に懐いててあれな時もあるけど……それはショウの優しさをその子達が認めてるってことなわけで。

 私……子供の世話してる時に見せるショウの笑顔が好き。もっと詳しく言うなら頭を撫でてる時に優しい言葉を掛けてる時の笑顔が大好き。エリオ達やヴィヴィオとかにしか見せてくれないのが少し残念だったりもするけど……まあ私に向けられたら嬉しくて恥ずかしくて何もできなくなりそうだけど。

 

「フェイトちゃん、散々進行を邪魔してきた私が言うのもなんやけど……進行役を買って出たなら乙女モードはほどほどでお願いするで」

「べ、別にそこまで考え込んでないよ!? ……ごめんなさい」

「その素直さはフェイトちゃんのええところやな……性欲が強そうなところはまあショウくん次第やろうけど」

「な……きゅきゅ急に何言ってるの!?」

 

 せ、性欲って……たたた確かに私ももう子供じゃないし、そそそそういうのに興味がないかって言ったら嘘になるけど。でもこのタイミングで言うことじゃないよね!

 

「べ、別にそんなこと今考えてないから!」

「でも考える時はあるやろ?」

「そ、それは……ひ……人並みには」

「ふむ……フェイトちゃんの性格とさっき触った時の反応からして一般的な回数よりも上やろうな。具体的には月にやのうて週に……」

「ストップストップ! そういう話をするのが目的じゃないよね。私の……の回数とか関係ないよね!」

 

 何でそういう流れにするのかな。べ、別に下ネタを言うなとか言うつもりもないけど……お酒の席でそういうことを言われたことはあるし、気楽に話せる人間しかこの場にはいないわけだから。

 でも今日は私達の今後について話すのが目的であって……私達のそういうことを暴露するのが目的じゃないはずだよね。それぞれに恋人が出来たり家庭を持ってるなら分からなくもないけど……

 

「もう、そうやってはやてちゃんがふざけるから話が進まないんだよ」

「それについては謝るけど……やっぱり気になるやん。自分が人と比べるとどうかとか……これまでこの手の話はしてこんかったし」

「それは……そうだけど」

「ちなみになのはちゃんは週に何回しよるん?」

「それは……その…………って言わないからね!」

 

 顔を真っ赤にするなのはを見てはやては意地悪な笑みを浮かべる。

 これは私の推測だけど多分はやてはこう考えているんだと思う。してないじゃなくて言わないと言ったってことは……つまり回数は少ないのかもしれないけどヤッてはいるんだなと。

 

「え~なのはちゃんのケチ。ヴィヴィオに弟か妹が欲しいって言われて、その度にひとり妄想してモンモンとしてきてしとるくせに」

「な、何で知ってるの!? もしかしてヴィヴィオが言ったの?」

「え……あぁうんごめん。適当に言っただけや」

 

 その言葉になのはの顔はさらに真っ赤に染まり、それを見たはやては心底申し訳なさそうな顔を浮かべて再度謝った。

 まあそうだよね。友達のその手の事情を今の流れで聞いたら誰でもそうなるだろうし……というか、なのはもそういうことしてるんだ。大人にはなったけどそういうところはまだあれかなって思ったりもしてたけど、なのはももう大人なんだね。

 

「うぅ……死にたい」

「いやいや、これくらいのことでそんなこと言ったらダメやろ。その、女性だってそういう欲求はあるもんし。誰だってやってるやろうから……その本当にごめん。謝るから機嫌直してや」

「……じゃあはやてちゃんも答えて」

「え……」

「私やフェイトちゃんばっかり恥ずかしい思いをするのはフェアじゃないし、はやてちゃんも答えて。そしたら許してあげる」

 

 その気持ちは分からなくもないけど……話を進めた方がこのあとのことを考えると良かった気がする。

 だって絶対真面目な話が続くわけないだろうし。私も含めてなのは達もお酒を飲みながら話してるわけだから……酔い潰れて散らかしたまま寝る、なんてことにはならないようにしないと。

 

「え、いや、その……」

「答えるまで許さないから。ほら、さっさと答えた方が楽になるよ。というか……誰だってしてるって言ったんだからはやてちゃんもしてるんでしょ?」

「それは……えっと…………ます」

「うん? 聞こえないよ?」

「……あぁもう! しとる、してますよ。多いときは週に4回くらい!」

 

 回数まで言っちゃった!?

 えっと、そのはやて……多分なのははそこまで言えとは思ってなかったと思うよ。してるかどうか聞ければいいくらいで。だってそうじゃないと今パニック起こしそうな顔するわけないし。

 

「えええっと……そ、そんなにしてるんだ。……一人暮らしでもないのにみんなにバレないの?」

「みんなが眠った後とか……入浴中とかにしとるから大丈夫のはずや。……声も出来るだけ我慢しとるし。……バレてる可能性はなくはないけど」

「ま、まあみんな言わないよね……そっか、はやてちゃんは4回も」

「勢いで言ってもうたけど回数を復唱するのやめてくれへん……超恥ずかしい」

「ご、ごめん……」

「……ちなみになのはちゃんは?」

「え、私!? それはその……2回くらいかな」

 

 はやてへの罪悪感でもあったのか、なのはまで回数を言ってしまった。

 流れ的にふたりの視線はこちらに向けられるわけで……え、私も言うの? 本当に言わないとダメ? 私何もしてないし、言うなんて一言も言ってないんだけど。

 

「……答えないとダメ?」

「いや強制はせんけど……」

「その……気になるかなって」

「……あぁもう、分かった。分かったよ、言えばいいんでしょ! ……平均……3回くらい」

「……多い時は?」

「…………5回とか」

 

 5……5回も。

 そう言いたそうな顔をなのはとはやては浮かべている。その顔を見て正直に答えたことを後悔した。というか、穴があったら今すぐ入りたい。恥ずかしくて死にそうだし……

 

「そ……そんな目で見なくてもいいでしょ! 私はなのは達と違って数ヶ月もここから離れることもあるし、その間ショウとは会えないんだから……その、あれこれ考えてるうちに悶々としちゃうこともあるし。仕方ないというか……あぁそうですよ、どうせ私はみんなの中で1番エッチだよ! 悪い!」

「い、いや悪いとか言わへんけど……というか、まず落ち着こ」

「そうそう、お酒でも飲んで」

 

 落ち着かせるためにお酒を勧めるのはどうかと思うんだけど……まああれこれと考える方が抜け出せなくなりそうだし、ここは大人しく飲むことにしよう。

 

「ちょっフェイトちゃん、そんな急に飲むのは身体に良くないで!?」

「大丈夫……そんなに弱くないから。というか……飲まないとやってられないし。とりあえず話を進めて」

「ま、まあそれが妥当やな……えっと、どこまで話したんやったっけ?」

「私に聞かれても……元々逸らしたのはやてちゃんだし。仕切り直してもいいんじゃない?」

「それもそうやな……では」

 

 はやては一度咳払いすると、先ほどまでとは違って少し真面目な雰囲気を醸し出しながら話し始める。

 

「今後の私達に関してやけど、今日のことがきっかけで自分以外の気持ちをはっきりしたはずや。あとはそれを知った上で今後どうしていくかってことになるんやけど……とりあえず言えることは遠慮はせんでええってことや」

「うん、これからのことは自己責任な部分になるし……まあ誰かがショウくんと付き合ったらギクシャクしちゃう時期も来るかもしれないけど」

「でも……前に進むために今日この話をしたんだもんね」

 

 このままじゃいつまでも先に進めずに時間だけが流れるだけかもしれないし。

 それにショウと付き合えるのはひとりだけなんだし、将来的なことを考えれば失恋してもまた恋をすることはあるはず。もう20歳を超えちゃってるし、切り替える時期は早めに来た方が今後のためだよね。今の恋を実らせたい気持ちが遥かに強いけど……

 

「……だけどはやてちゃん、何で急にこんな話をしようと思ったの? まあ前からしようとは思ってたんだろうし、別におかしいとまでは思わないけど」

「でもはやては突発にするタイプじゃないよね。何かきっかけでもあったの?」

「それは……まあ単純に言えば、ライバルはここにいるメンツだけやないってことや」

 

 はやては深刻そうな顔で大きなため息を吐く。彼女はここまで露骨に感情を出すということは、私が思う以上に私達の今後は波乱の可能性に満ち溢れているのかもしれない。

 

「え、そうなの? ……あぁでも、確かにシュテルやディアーチェはショウくんのこと好きそうだよね。シュテルは昔からショウくんにちょっかい出すことが多かったし、ディアーチェは気が合いそうなところあるから」

「王さまはああ見えて私と感性似とるからな。服の好みとかも似とるし……好きなタイプも同じやろうから十中八九好きなはずや。ただそれ以上に……」

「はやて……?」

「私としては……シュテルや王さまよりも最近はレヴィの方が怖くなってきとる」

 

 その言葉に私となのはは驚きを声を漏らす。

 

「レヴィ? レヴィってあのレヴィだよね?」

「そのレヴィで合っとるで」

「えっと……なら大丈夫なんじゃないかな。確かに昔からショウくんに抱き着いたりしてたけど……でも恋愛のことは分かってなさそうだし」

「うん。ショウも抱き着かれたからといって押し倒したりする人でもないし……大丈夫のような気がするんだけど?」

「私もそう思っとった……けどこの前、特別な好きってどういう気持ちなのか聞いてきたんや」

 

 特別な好き……つまりそれって

 

「も……もしかしてレヴィってショウのこと」

「好きやと思うで。……まあ今はまだ友達としてやろうけど。ただシュテルとかが今後のために異性意識を持たせようとしてるみたいやし、ショウくんに特別な想いを抱く可能性は十分にある」

「そ、そうなんだ……まあレヴィのことを考えると必要なことだとは思うけど」

「でも……」

「そうや。もしも特別な好きって意味を理解して、尚且つ今のまま行動出来るんやったら最強の恋敵になる。割とショウくんの家に泊まったりしてるらしいしな……借りシャツとか髪の毛乾かしてもらったりとかも」

 

 え……。

 た、確かに同じ職場で働くこともあるだろうし、夜遅くまで仕事してたら泊まっていくなんて流れになるのも分からなくはない。

 でも……だけど、これだけは言える。

 凄く羨ましいんだけど! 私なんてショウの家に行ったことは何度かあるけど、泊まったことはないし。ヴィヴィオは何度もお泊りしてるけど、それはヴィヴィオだから出来ることであって私じゃ無理だろうし。というか、借りシャツって……私だってショウの服とか着てみたいのに!

 ううん、もうショウの服とかに顔をうずめて匂いを嗅ぎたい。ショウの匂い……私好きだし。ベッドとかに寝られたら色々と満喫できるというか、脳内がフィーバーする気がするけど。

 それに髪の毛を乾かしてもらうって……私だってしてもらいたいよ。昔から髪の毛には気を遣ってるし、それはショウから褒めてもらえたから続けていることであって。まあそれがなくても少しでも綺麗に思われたいから気は遣うけど……。

 

「はやて……それ本当なの?」

「こんな嘘を吐いて私に何のメリットがあるんや? 本当のことやから言うとるし、今日この席を設けたんや」

「うぅ……正直フェイトちゃんやはやてちゃんと争うだけでも大変なのに。もう少しこのままでも大丈夫かなってもう思えないよ」

「だからこそ、私達は今後のことについて話し合わんといかんのや。どんな結果を迎えてもお互いが後悔せずにその結果を受け入れられるように……そんなわけで今日はとことん飲んで語り明かすで!」

 

 さすかに朝まで飲むのは厳しい気がするけど……でもこれまで溜め込んでたこともあるし、それくらいの気持ちで話した方がいいかもしれない。

 

「うん、分かった。今日は最後まで付き合うよ。なのはもそれでいいよね?」

「え……ま、まあ。片付けとか考えるとあれだけど、今日みたいに話せる機会も多くはないだろうし。……うん、とことん飲んで話そう!」

「よし、決まりや! それじゃもう一度……乾杯!」

「「乾杯!」」

 

 

 

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