魔法少女リリカルなのはINNOCENT ~漆黒の剣士~   作:夜神

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第6話 「コミュルーム」

 合流した後、フェイトを先頭にしてT&Hの5階へと向かった。昨日はオープン初日だったために解放されていたのはシミュレーションルームだけだったが、ブレイブデュエルを楽しむための部屋はひとつではない。

 

「T&Hの5階、ここがその……」

 

 フェイトが説明を始めると、遠くからこちらに向かってくる足音が耳に届いた。迫ってくる気配とこれまでの経験からある人物が俺の脳裏に浮かぶ。

 

「フェイト……来るぞ」

「え?」

「フェイト!」

 

 俺の言葉に首を傾げた次の瞬間、フェイトは黒髪の女性に思いっきり抱きつかれた。彼女が驚きによって身体を震わせたのは言うまでもないだろう。

 

「学校は大丈夫だった? 帰り道で変な人に会わなかった? あなたは大人しいから母さん心配で心配で……」

 

 この人は今日も親バカ全開だな……というか、ある意味あなたが変な人なのではないか?

 と、フェイトの顔を触りながら一気に言葉を投げかけるプレシアさんに対して思ってしまったのは普通のことだろう。彼女と初対面である高町達は、予想外の展開に呆気に取られてしまっているが。

 

「あ、あの……母さん大丈夫。なのはたちと一緒だったから……それにショウさんもいたし」

「え……?」

 

 プレシアさんの視線がフェイトからこちらへと移る。彼女の表情を見た限り、今ようやく俺達の存在に気が付いたようだ。

 子供のことを心配するのは分かるが、この街は治安が悪いわけではない。むしろ良いほうに入るだろう。それなのにここまで心配するとは……過干渉・過保護は子供の成長に対して良くないと思うのだが。

 それに今はまだしも、中学生くらいになれば性格の良いフェイトでも反抗期になってもおかしくない。今のままでは、その時期を迎えてしまったらこの人は立ち直れないほどのダメージを負うのではないだろうか。

 

「ようこそT&Hへ、フェイトの母で店長のプレシアよ。今日は何をお求めかしら?」

 

 場の雰囲気や高町達の表情から察するに、彼女達は今きっとこう思ったに違いない。な……なかったことにした!? と。

 プレシアさん本人は問題なさそうだが、娘であるフェイトの顔は夕日のように真っ赤になってしまっている。プレシアさんのような母親、というよりは親バカの一面を他人に見られるのは恥ずかしいものだろう。彼女の反応は当然だと言える。

 

「プレシア……急に消えたと思ったら」

「なのは達困ってるよ~」

 

 テスタロッサ親子に対して思考していると、新たにふたりの足音が聞こえてきた。ひとりはフェイトそっくりの高町達とも面識のある少女。もうひとりは子供のことになると仕事を投げ捨ててしまうプレシアさんとは違ってしっかりとしている女性だ。

 

「はじめまして、ようこそ当店へ。プレシアと同じく店長のリンディよ。よろしくね」

「やっほー、みんな~」

「ア、アリシアぁ」

 

 プレシアさんは、人目があると理解しているはずなのにフェイトに続いてアリシアに抱きついた。長女は次女よりも慣れがあるようで「はいはい」と軽い反応をするだけ。体格に差があるせいか少々苦しそうではあるが。

 ――にしても……プレシアさんを相手するアリシアは面倒臭そうに見えなくもないが決して邪険に扱わないよな。人のことをからかってきたり、変な甘え方をしてくる彼女に対して多々思うところはあったが……この部分だけは尊敬できるかもしれない。俺があの立場だったら多分軽くでも拒絶の言葉を発しているだろうから。

 立ち話もなんだということで俺達は《コミュルーム》と呼ばれる部屋へと移動した。

 ブレイブデュエルはどうしても順番待ちになってしまうため、この部屋は自分の順番が回ってくるまでの時間潰しとして利用する部屋だ。そこにある軽食コーナーに俺達はそれぞれドリンクを持って座っている。

 

「おふたりで経営なさっているんですね」

「この店、雰囲気とか凄く良い店だと思います」

「あら、ありがとう。これからも気軽に遊びに来てちょうだい」

「娘達共々よろしくお願いするわ」

 

 大人達ときちんと話す月村にバニングスの存在は驚きであるが、つい目線は幸せそうにドリンクを飲んでいる高町とアリシアに行ってしまう。

 高町は純粋で良い子だからあれだけど、アリシアもこうしてれば可愛げのある子供なんだけどな。口にしたら中途半端に怒るだろうけど。

 

「フェイトちゃんとアリシアちゃんはやっぱり姉妹さんだったんだね」

「当ったり~」

「私とアリシアは似てるから分かりやすいよね」

 

 確かにこのふたりの外見はパッと見で姉妹だと分かるほど似た部分が多い。

 それにしても……高町の言い方から察するにフェイトが上でアリシアが下だと思っているんだろうな。まあフェイトのほうが背が高いし落ち着いているから無理もないけど。

 

「ふたりともお店の手伝いしてて偉いというか凄いよね。特にアリシアちゃん」

 

 月村の言葉にアリシアはきょとんとした顔を浮かべ、疑問の声を発する。どうやら彼女は月村が言いたいことを理解していないらしい。

 

「私達よりも小さいのに偉いな~ってみんなで話してたのよ」

「……あのさ、みんなは4年生だよね?」

「うん、そうだよ」

「わたし……6年生なんだけど」

 

 告げられた真実にフェイトを除いた4年生達の顔は驚愕で染まり、しばしの沈黙が流れる。これから来るであろう出来事に備えて俺は静かに両耳を塞いだ。それとほぼ同時に少女達から大声が上がり、アリシアは涙を浮かべながらフェイトに寄りかかる。

 

「また間違われた……」

「しょ、しょうがないよアリシア……」

「それっ! それだよフェイト!」

 

 泣き顔から一変して力強い声を発したアリシアにフェイトは戸惑いを見せている。彼女の心境が理解できてしまうあたり、俺もそれなりにアリシアの相手をしているということか。

 

「何で最近お姉ちゃんって呼んでくれないの。そうすれば間違われないのに!」

「そ、それは……みんなの前だと……何か恥ずかしいし」

 

 もじもじしながら小声で呟くフェイトにアリシアは頬を膨らませ、『対フェイト用ひみつへ~き』と書かれた一枚の紙を取り出した。それを見たフェイトの顔に動揺の色が現れる。

 

「私のお姉ちゃん――1年B組フェイト・テスタロッサ。私にはアリシアという大好きなお姉ちゃんがいます。お姉ちゃんは私と違って明るくて元気で……」

「わっ、わっ、わっ!? 何でそれをお姉ちゃんが!?」

 

 何でって、それはどう考えてもプレシアさんが渡したからに決まってるだろう。ふたりのやりとりを見ながら恍惚とした顔を浮かべているし、紙に小さくだが『by母』と書いてある。

 フェイト、こんな姉と母親を持って大変だとは思うが強く生きろ。愚痴くらいならいつでも聞いてやるから。まあ優しい性格の彼女がアリシア達の愚痴を言うとは考えにくいが。

 

「アリシア、そのへんでやめてやれよ」

「むぅ……ショウは何かフェイトには甘いよね。わたしには厳しいというか冷たいのに」

 

 年上に対して平然と呼び捨て……これはいいとしても、理由もなくからかったりしてくる奴を甘やかせというのは無理な話だろう。それに

 

「そんな風に膨れるから余計に子供っぽく見えて姉だって思われないんだろ」

「もう、ショウは大人気ないよ。年下をいじめて楽しいの!」

「いや、俺と君ってそんなに離れてないから。それに普段君って俺のこといじめてるよ?」

「え? いじめてないよ?」

 

 やる側とやられる側で認識にズレがあるからいじめってなくならないんだろうな。まあ俺とアリシアの場合、世間で問題視されるようないじめじゃないけど。

 内心でやれやれ……と思っていると、くすくすと笑い声が聞こえてきた。俺とアリシアのやりとりがおかしかったのか4年生達が笑っている。個人的に笑うほどおかしい光景とは思わないのだが。

 

「みんな、何で笑ってるの?」

「いやね、ケンカしているように見えて……」

「ふたりって仲が良いんだなって思って」

 

 その言葉に俺とアリシアは顔を見合わせる。

 俺がアリシアと仲が良い? 好感度で言えばアリシアよりもフェイトや高町達のほうが上なのだが。会話する回数は積極的に話しかけてくるアリシアが一番ではあるが。

 

「まあ、わたしとショウの仲だからね!」

「どういう仲だよ」

「ショウくん……アリシアとはどういう関係なのかしら?」

「それは俺が聞きたいです」

 

 なぜ俺はテスタロッサ親子にここまで絡まれなければならないのだろうか。毎度のようにこうも絡まれると他の店に行きたくなって仕方がないのだが……。

 

「ハイハイ、ふたりともそこまでよ。今日はなのはちゃん達にお店を案内するんでしょ?」

「あ、そうだったそうだった」

「ご、ごめんねみんな……私のせいで何かおかしな方向に話が行っちゃって」

「謝らなくていいよフェイトちゃん。フェイトちゃんがお姉ちゃん子だったって知れたし」

 

 高町の言葉にフェイトの顔が赤く染まった。浮かべられている笑顔を見る限り、プレシアさんのように意図的に辱めようとしているわけではないようだが、それはそれで怒ったりできないために性質が悪い。

 店長であるリンディさんとプレシアさんは仕事に戻ることになり、高町達のことはテスタロッサ姉妹に任された。のだが、リンディさんは心配なのか全員のことを俺に頼んできた。

 店の中に変質者がいるとは思えないが、可能性で言えばゼロではない。そのためリンディさんに肯定の返事をすると、彼女は笑顔を浮かべて去って行った。

 

「そ、それじゃあ気を取り直して……この部屋《コミュルーム》について説明するね」

「BDシミュレーターはどうしても順番待ちになっちゃうでしょ。ここはその間に楽しんでもらう部屋なんだ」

「ということは、フェイトちゃんが言ってた部屋ってここだったんだ」

「その割に見た感じ普通の休憩所って感じじゃない? デパートのフードコートみたいな感じだけど」

「そうだね。自販機にテーブル……あっ、でも窓の方に何かあるかも」

 

 月村の発言にフェイトが説明しようとする素振りを見せたが、アリシアがそれを制止し順番に回りながら説明することになった。口だけの説明より実際に見ながらの説明の方が分かりやすいからだろう。

 まず最初に向かったのはブレイブデュエルのデッキ考案スペースだった。ここは装置にブレイブホルダーとデータカートリッジを挿し込むことで、デッキに入れるスキルカードを選んだりアバターのステータスを確認できる場所だ。

 次に向かったのは自販機と軽食コーナー。これといって説明する必要はない場所ではあるが、ここのカレーはある人物のレシピを元にこだわりのある逸品に仕上がっているらしい。俺はまだ食べていないが、ブレイブデュエル関係で考えると知り合いの顔が浮かんでくる。

 その間にも話は進み、カードローダーへと場所は移っていた。誰でも1日1枚新しいカードがもらえることになっており、バニングスが「何て太っ腹な……」と呟いていたが俺も同意見だ。小学生達はそれぞれカードローダーを使用し、新たなカードを手に入れる。

 

「ノーマル+ゲット!」

「あ、私も」

「私はスキルのカードだ」

 

 高町を除いてノーマル+のカードを手に入れたようだ。ということは、初期デッキに入っていたカードと合わせることで彼女達もストライカーチェンジが可能になったということになる。

 初期デッキについて説明しておくと、全員共通で4枚のカードが入っている。パーソナルカード以外はランダムであるため、高町のようにパーソナル1枚、N+カード1枚、スキルカード2枚というのはラッキーなパターンだ。セイクリッドのレアカラーだったことも含めて、彼女は何かしらに愛されているのかもしれない。

 最後の部分を除いた内容をアリシア達が高町達に説明すると、すぐさまバニングスが口を開いた。

 

「できるならさっそくあのカッコいいのに変身したいわね!」

「でもシミュレーターを使うなら順番待ちをしないといけないんじゃないかな?」

 

 月村が疑問の言葉を紡いだ後、「ふっ、ふっ、ふっ……」といった笑い声が起きた。視線を向けるとまぶたを下ろしているアリシアと両手でテーブルを指しているフェイトの姿があった。

 

「そこで活躍するのがこのテーブルさんです」

 

 アリシアの言葉に高町達は「え……コレが?」といった顔を浮かべた。まあ、このテーブルのことを知らないのだから当然だろう。

 個人的には、テーブルや高町達の反応よりもアリシアの浮かべていた『どや顔』のほうが気になった。別に大層な話でもなければ、彼女が作ったわけでもない。自慢げに言うようなことではないと思う。

 思考を巡らせている間にアリシアはテーブルのスイッチを押したようで、テーブルは簡易シミュレーターに姿を変えていた。

 

「これこそ卓上でもブレイブデュエルを楽しめちゃう簡易シミュレーター、その名もエンタークン!」

「円卓……まんまね」

「そのまんま……だね」

「にゃはは」

 

 もっとさらっと説明していたならば、少女達は苦笑いしなかったのではないだろうか。しかし、根本的なことを言えば、このテーブルを開発した人物がもう少し商品らしい名前をつけていればよかっただけなのだろう。

 苦笑いを浮かべている高町達に気にすることなくテスタロッサ姉妹は説明を続け、バニングスと月村はエンタークンにブレイブホルダーをセットした。エンタークンの起動が完了すると、小さなアバター達が出現。ふたりの「リライズアップ!」という掛け声で姿を変える。

 

「あっ、服がすごく可愛くなってる」

「すずかのはプロフェッサータイプ。援護・索敵はもちろん、スキルの豊富さでは1番のタイプだね」

 

 氷の属性を持っていたからか、それともただの偶然か月村のアバターは青色を基調とした衣服だ。髪型も普段とは違ってポニーテールになっている。

 個人的な意見になるが、彼女は3人の中で最も冷静かつ気配りのできる性格をしていると思う。性格とアバターのタイプを考えると良い組み合わせだと言えるだろう。

 ただスキルが豊富ということはメリットであると同時にデメリットにもなりうる。複数の選択肢の中から状況に合わせて最善の手を選ぶのは容易なことではないのだ。それにレベルの高い対戦になれば最善の手は読まれやすい手であるため、さらに考える必要が出てくる。まあ今すぐ言うことではないが。

 

「すっごい、コレがあたしのアバター!?」

「アリサのはフェンサータイプだね。中・近距離向きでトリッキーな機動が最大の持ち味かな」

 

 バニングスのアバターのタイプは、手にしていたデバイスが剣型であったので何となく予想できていた。赤色を基調とした動きやすそうな衣服は彼女にとても合っていると思う。まあ月村の方も大人しいというか淑女的で彼女に良く合っているが。

 

「おぉ、アリサよかったね」

「え……何が?」

「それはね、そこにいるお兄さんはアリサと同じフェンサータイプなのですよ」

 

 バニングスだけでなく、少女達の視線がこちらに向いた。

 アリシア……人の許可もなくアバターのタイプをばらすなよ。そのへんの情報はゲームの勝敗にだって関わってくることなんだから。この子達に知られたところでさすがに本気でやったのなら負けることはないだろうけど。

 

「そうなんですか?」

「まあね」

「付け加えでもうひとつ、みんなは知らないだろうけどこのお兄さんはすっごいデュエリストなんだよ」

「あぁうん、確かロケテストに参加してたんだよね。フェイトちゃんみたいに全国で何位ってのはないらしいけど」

 

 月村の言葉にアリシアはきょとんとした顔を浮かべ、そのあとこちらの方に意味深な視線を向けてきた。これから彼女が何を言おうとしているのか予想できた俺は、そっと視線を外すのだった。

 

「ショウ、もう少しきちんと説明するべきだと思うなぁ」

「嘘は言ってないだろ」

「それは言ってないけど」

「えっと、どういうことなのかな?」

「そうよ、あたし達にも分かるように言ってほしいわね」

「簡単に言うと、このお兄さんはランキング戦に出てたなら全国で1番になっててもおかしくなかった実力者だってこと」

 

 刹那の沈黙。そして絶叫にも似た声が響いた。

 最初は疑問を抱いていたようだが、アリシアだけでなくフェイトも肯定したことによって少女達の顔からは疑問の色が消えていく。それと同時に輝いて見える瞳がこちらに向けられた。正直に言って、俺はこの手の目を向けられるのが苦手だ。

 

「そんなすごいこと何で黙ってたんですか」

「いや別に黙ってたわけじゃ……そもそも」

「ショウレベルの人間の謙遜はかえって相手に失礼だと思うなぁ」

 

 この小さな6年生は俺をヒーローか何かに仕立て上げたいのか。ロケテスト時に上位の実力があったとしても、すでにそのときから大分時間が経過しているんだぞ。今やれば順位の変動だって充分に起こりえるはずだ。

 

「そういえば……昨日乱入してきた子がショウさんに借りを返すとか言ってたような」

「多分だけど、個人戦だけで言えば大抵の人がショウに借りがあると思うよ。勝敗が五分五分だったのは全国1位さんくらいじゃないかな?」

「あたし達って何気に凄い人と知り合ってたのね」

「うん。でもそれって良いことだよね。特にアリサちゃんは教えてもらえること多いだろうし」

 

 尊敬と期待に満ちたバニングスの瞳が再度こちらに向く。無意識の内に後退りしていたが、バニングスはこちらが下がった分だけ接近してきたため距離に変化はない。ずけずけと近づいて来ない辺り、俺のことも考えてくれているように思える。

 

「アバターの話をしてたんじゃないの? まあボクのが1番カッコいいけど」

 

 突如聞こえた第3者の声に俺達の視線は自然と引き付けられた。視界に映ったのは、青色の長髪をツインテールにしている俺と同じ天央中学校の制服を着た少女。大盛りのカレーを食べているが、個人的にはスプーンをきちんと持てていないことのほうが気になる。余談になるが、俺は彼女の知り合いとクラスが同じだ。

 

「レヴィ!? どうしてここに……」

「あ……へいと」

「フェ・イ・ト!」

「へいと?」

「だから……フェイトだってば」

 

 きちんと名前を言わない……もしかすると言えないレヴィにフェイトは肩を落とした。やりとりを見た限り、会う度に同じようなやりとりをしているのにも関わらず『へいと』と呼ばれているのだろう。

 まあレヴィは親しい人間をあだ名で呼ぶところがあるからな。フェイトに対する呼び方もそれの類なのかもしれない。あとでフェイトに教えておくか。

 

「お久しぶりだねレヴィ。今日は何しに来たの?」

「ん~っとね……ごちそうさまでした。高町なにょはってのに会いに来たんだけど……」

 

 口に含んでいたドリンクを飲み込もうとしていた俺は、レヴィの間違いに思わず噴き出しそうなった。周囲に少女達がいる手前、どうにか我慢することが出来たが盛大にむせる。

 

「高町なのはだよ、な・の・は!」

「なにょ……何でもいいや」

「良くないよ!? というか、みんなして笑うなんてひどい!」

 

 笑っては悪いと思うが、『へいと』と比べると破壊力が段違い過ぎる。そもそも付き合いの長いバニングスや月村が笑っているのだから、笑うのを我慢しろというのは無理な注文だろう。本気で悪いとは思うが……。

 

「あれ? ショウだ。何してるの?」

 

 とレヴィは尋ねてきた。尋ねるまでもなくブレイブデュエル関係だと普通は分かるはずだが。

 いや、そんなことはどうでもいい。なぜこいつは人目があるのにも関わらず抱きついてくる。人目がなかった良いというわけでもないが……なんて考えている場合でもない。

 

「ん? ショウが泣いてる……いったい何が」

「お前の間違いのせいでむせたんだ。というか離れろよ」

「うーん、別にいいじゃん。ボクとショウの仲なんだし」

 

 どういう仲だ、と言いたいところではあるが……叔母が知り合いだったこともあって、レヴィを含めた4人とは前からの知り合いなんだよな。頻繁に顔を合わせるようになったのはブレイブデュエルが本格的に始動してからだけど。

 

「良くない」

「何で? ボクはショウと一緒にいたいし遊びたいけど……ショウはボクと一緒にいたり、遊んだりするの嫌なの?」

「いや、嫌とかじゃなくて……」

 

 俺が言いたいのは距離感を保って接してほしい、ということだ。幼児や小学校低学年の子供が抱きつくのならば微笑ましい光景に見えるだろうが、現状はそんな光景には見えていないだろう。その証拠に高町達の顔は驚愕で染まっている。

 

「ちょっとレヴィ、色仕掛けでショウを誘惑するなんて卑怯だよ!」

「色……ねぇショウ、アリシアは何を言ってるの?」

「まあ簡単に言うと、さっさと離れろってことかな」

「そっか」

「……理解したのなら離れろよ。お前、俺じゃなくて高町に用があってきたんだろ?」

「はっ!? そうだった」

 

 俺から離れたレヴィは、人差し指で高町の方を指しながら口を開く。

 

「ヴィーたんをやっつけたっていう実力、このボクにも見せてもらおうか!」

「え……ええぇぇぇぇッ!?」

 

 

 

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