001 お前の頭は飾りか?
IS、それは世界を変えたパワードスーツ。正式名称「インフィニット・ストラトス」。これは宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツ・・・なのだが、現在は宇宙進出よりも飛行パワード・スーツとして軍事転用が始まり、気づけばスポーツになっていたりする。
「げえっ、関羽!?」
「誰が三国志の英雄か、馬鹿者。・・・・・
「あの、順番は?」
「やれ」
「ア、ハイ」
敢えて言わせてもらおう・・・どうしてこうなった・・・!?
オレはテレビで初めてISを見たとき、興奮した。だって、空飛ぶんだぜ?宇宙行けるんだぜ?その時の興奮は何とも言えず、ただ「これに憧れない奴はどうかしている」と思ったほどだ。そして、いつかISに乗りたい、と思った。だがその夢もすぐに消えた。なぜなら、ISは女性にしか反応しなかったからだ。男のオレに使うことは不可能と分かった時の絶望もまた、なんとも言えなかった。そして、いつか男でも使えるISを作りたいと思った。
そんなこんなで10年経ったが、夢は消えてなかった。受験は成功、最短でISを開発している倉持技研へ行くことができる、男も入れるIS専門高校に合格したのだ。一方ニュースでは世界初の男性IS操縦者について取り上げられていた。「まあオレには関係ないな」って思いつつ、羨ましいと思っている自分もいた。
そしてある日、街に必要品を買いに行ったとき、ISが展示されていた。興味本位で触れたら、動いた。今考えるとなんで中身入っているんだよ、って思うんだが、あの後スーツを着た人たちに連れていかれ、あれよこれよと言う感じにいろんな場所に行き(そのいろんなにあの倉持技研にも行った)、IS学園行きの手続きが終わり、気が付いたら4月になって、入学式、そして今はSHR、出席番号順で自己紹介しろよーってなって、ISを動かせる男性操縦者の「織斑一夏」の所になって・・・なんでオレもせねばならんのだ。オレは「お」でも「か」でもなく「ひ」だぞ!?
いや、今はこんなことをしている場合じゃない。あの音からして絶対に痛い出席簿の攻撃だけは逃れねば・・・!大丈夫、こんなこともあろうかと自己紹介の練習はしてある。うん、やるしかない。
「
うん、なんか違和感を感じるが、大丈夫かな・・・?祈るしかないな・・・
「よし、座れ。・・・・さて、諸君、私が織斑千冬だ。私の言うことには・・・・・・」
大丈夫でした。・・・ってあれ?織斑千冬って
その後もなんやかんやで自己紹介が終わり、授業になった。
入学当日にいきなり授業って何ですかね・・・いやまあ理屈は分かるけどさあ・・・
「ーーーであるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要でありーーー」
授業は山田先生による教科書の読み上げ。うん内容が5回は読んだことがある内容だから気になるところがほとんどない。最初を除いてだけどな。
「織斑君、なにか分からないところはありますか?」
「あ、えっと・・・・・」
「分からないところがあれば何でも聞いてくださいね。なにせ私は先生ですから」
「先生!」
「はい、織斑くん!」
「ほとんど全部わかりません」
「え・・・・・。ぜ、全部ですか・・・?」
「え、えっと・・・・・。織斑くん以外で現段階で分からないって人はどれくらいいますか?氷鉋くんとかは大丈夫ですか?」
なんか織斑一夏が「おまえも仲間だよな!?」って目で訴えてくるんですけど・・・すまんな、オレは内容は理解しているんだよ。
「はい。大丈夫です。ただ質問があります」
「な、なんでしょうか・・・?」
「ISは宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツって最初に言っていましたが、ISを使った宇宙での作業とか宇宙開発とか聞いたことがありません。なぜですか?」
オレが長年疑問に思っていたこと。それはどんな本や参考書にも『ISは宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツ』と書かれていることだ。そのくせそういうニュースは聞いたことない。もしかしたら裏で・・・というのもあるが、そういう人たちがやるのは軍事関係だろう。つまり、宇宙用であるISは宇宙で使われてない。うん、言い直した意味ないな
「え、えーとそれは・・・」
「氷鉋、考えるな。それはいくら考えても答えはお前も分かっているだろ?」
「はい、理解してます。ですが」
「ならそういうことだ」
山田先生が詰まったら織斑先生が答えるんですね。なるほどなるほど。にしても暴論だな。質問に対して知らなくていいってどこの軍隊だよ・・・
あ、ついでだしもう一個しちゃおう
「先生、それならば自分たちが宇宙に行く可能性はありますか?」
「・・・・さあな。世界がもう少し平和になったらできるんじゃないのか?」
「そうですか。ありがとうございます」
世界平和・・・ねえ・・・思ったより難しいな・・・
「あー、えっと続けますね?織斑くんは頑張って、ね?ね?」
「はい・・・」
その後は何事もなく1時間目が終わり、2時間目も終わった。
事件が起こったのは2時間目の休み時間だった。いや事件って程じゃないけどさ
次もこの教室だから座って入学式の前にコンビニで買ってきた「月刊誌 あいえす!」を読んでたらとある男子生徒がやってきた。いやまあこの学校オレ以外男子生徒って一人しかいないけどな。
「よお、葵」
うわぁ・・・初対面の人間ににこやかに笑いながら下の名前を呼び捨てで呼ぶとかないだろ普通・・・
「どうかしましたか?織斑一夏君?」
「一夏でいいぞ」
「それじゃあ織斑君」
「いや織斑って二人いるじゃん?だから一夏でいいよ」
「・・・それで一夏君」
「おう」
「なにしに来たんですか?今こっちは雑誌を読んでいたのに」
「あ・・・すまない、邪魔しに来たんじゃなくて男同士だから」
「仲良くしたい、というわけですか」
「ああ。凄いな、俺の心でも読んでいるのか?」
「いやそういうわけじゃなくて流れ的に。それじゃあ結論から言えばオレにそっちの趣味はありません。それと、入学前に渡された参考書、ちゃんと読むと面白いですよ。特に応用編とか、雑誌とかに載っていないことが色々ありますよ」
「お、おう。もしかして何回も読み返したのか・・・?」
「知っているところは1回見て終わりですけど、重要なところとか面白いところとかは最低5周はしてますね」
「す、すげーな・・・なあ、教えてく」
「あなたには篠ノ之さんがいるでしょ?女子と会話できるチャンスですよ?」
「あ、ああ、そうだな。なんか悪かった・・・」
篠ノ之さんとは篠ノ之菷さんのことだ。彼女はISの開発者、篠ノ之束さんの妹で織斑君の幼馴染だ。というか1時間目の休み時間に言ってた。スタイルいいし美形だし、織斑君のチャンスを潰すのは、可哀そうだろ?と言うか篠ノ之さん、睨むな、怖いぞ。マジで。
「ちょっと、よろしくて?」
「あ、もし分からないことがあればこの人に聞くといいよ。この人はオレよりISについて詳しいし」
「あら、分かっているじゃありませんの」
「そりゃあ、よくニュースや記事に出ていれば誰でも知っているでしょ」
今話しかけてきたのはイギリス代表候補生のセシリア・オルコットさん。イギリス人。よくインターネットニュースや週刊誌に載る。専用機は試作品である『ビット』と呼ばれる遠隔兵器を積んでいる「ブルーティアーズ」だ。いいなあ、ファ〇ネルとかドラ〇ーン遠隔操作系の装備ってカッコイイよな!憧れるよな!・・・・いいなあ、羨ましいなあ、やってみたいなあ・・・
「えっと、悪い、俺知らないんだけど、そんなに有名なのか?」
え・・・こいつマジで言っているのか?
「わたくしを知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!」
やっぱ怒ったよ!そりゃあ国民的アイドルに向かって「あんた誰?」って言っているようなもんだしな。まあオルコットさんは日本のではないけどな
「あ、質問いいか?」
「なんですの?」
「代表候補生って、何?」
「あ・・・・・・あなた、本気でおっしゃってますの!?」
「織斑君、冗談にしては流石にないだろ。ちょっとは考えろよ、字のごとく代表の、候補生だろ?」
「あ、なるほど!」
「そしてオルコットさんみたいに一部のエリートになった人は専用機が渡されるんだよ」
「おお!」
「そう!私はエリートなのですわ!」
「で、専用機って?」
「「「「「・・・・・・・・」」」」」
「・・・・・・・・この極東にはテレビが無いのかしら?」
「・・・・・・・なあ、お前の頭は飾りなのか?」
「え?」