「よろしくお願いいたします」
「お願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。・・・お手柔らかに」
「いやそれこちらの台詞なんですけど・・・」
「あ、あははは・・・・」
「それでは、開始!」
「《デュエル》!」
「うおおおおおお!!」
「行きます!」
試合開始と同時にオレは《ドレッドノート》を取り出しながら後ろに飛び、一夏君は山田先生との一気に距離を詰めようとし、山田先生は銃を二丁取り出して後ろに飛んでいった。ただ、先生は初っ端からのフェイントに驚いてくれたがすぐに状況把握して、一夏君に照準を合わせた。撃たせるものか!
「一夏!左から突っ込め!」
「了解!」
一夏君には距離を詰めてもらいこちらを狙わせないようにしてもらう。が、それだと一夏君を落とされおしまいだ。だからオレが一夏君を狙わせないようにする。右に飛びながら《ドレッドノート》をセミオート射撃モードにして撃つ。昨日黒夜を見たなら《ドレッドノート》の仕様も知っているはず。だから先生は絶対に避ける。今回はそれを利用して一夏君を撃たせない。まあそんなことしたらただの持久戦になるだけだけど。勝つためには一夏君の零落白夜による一撃を確実に入れること。・・・なんか無理そうだけど、やるだけやるか!
「っ!そう来ますか!なら!」
山田先生もまた、右に飛びながら今度はこっちに銃を向ける。これでお互い常に正面に来た。やべえ、逃げらんねえ・・・
「させるかー!」
一夏君の死角からの一撃!流石の先生も躱せず右手の銃を斬られてしまう。けどすぐにそれを一夏君に捨て、左手の銃でオレに撃ってきた。直撃コース・・・避けて見せろよ!
左肩のスラスターを噴かせて先生の射線上に入らないようにしてこちらの射線上に先生をいれようとする。先生もまた体を右に傾けて回避運動しつつ、オレの射線上に入らないようにしながら自分の射線上に入れ、尚且つ下からの奇襲に気をつけながら時には一夏君に向けて撃つ。こんな、見てる側からしたら地味なことを15分近く続けてる。しかもオレと山田先生は沈黙、アリーナには一夏君の「うおおおおお!」とか「うりゃあああああ!」といった叫び声しか聞こえない。にしても先生は全然疲れてなさそうだな・・・オレもう疲れたんだけど・・・
因みに、織斑先生からシャルルさんへの罰は「山田先生が使っているIS、ラファール・リヴァイヴの解説をしろ」だったみたいだが、オレ達がこんなに長く続くとは思っていなかったらしく解説が終わった後は実況をさせていた。最初は聞いていたんだけどね?段々恥ずかしくなってきたし集中できないから聞くのやめた。一回弾に当たったし。
さて、オレ達は右に回転しているわけだが、正確に言えば上にも上がっている。そしてアリーナには普段は透明で見えないがISの技術を転用した物理&エネルギーバリアーが張られている。つまり上に行くには限りがあるのだ。このままだといつかぶつかる。その時が、今、ついに来てしまった。オレから。
「ぐはっ!」
「ようやく足が止まりましたね!氷鉋君!」
すぐに右肩のスラスターを噴かせるが、時すでに遅し。時間にして2秒もなかったはずなのに、待っていたのは弾丸の嵐。連続でバースト射撃をしたのか!こんなの避けられるわけないだろ!すぐさま《ハイペリオン》を取り出して
「きゃあ!」
わーお!オレの正面にあった弾丸は全て消し飛び、4つあるリヴァイヴのスラスター・シールドのうち1つを破壊できた。山田先生もバランスを崩した。チャンスは今しかない!
「一夏!墜とせ!」
「零落白夜!」
「やらせません!」
「なっ!」
一夏君の足も使った下段からの振り上げ(技名忘れた)、それを体を傾けてギリギリで回避、同時に白式に足をつけ、その手にはグレネードランチャーを取り出していた。そしてがら空きの胸に発射&離脱。更に追加で3発発射。くそ!あれだと一夏君は避けられない!けど先生の注意は完全に一夏君に向いている・・・どうするべきか・・・ええい、こうなったら!
両肩に乗ってるキャノンをグレネードランチャーに向け、撃つ。すぐに気づかれ、グレネードランチャーを捨て距離を取られた。このまま体動かして一夏君に向かっているグレネードを3つとも破壊、撃つのを止めて先生に向きを変えるが間に合わなかった。もうスナイパーライフルを取り出して構えていたからだ。これ、もうどうしようにもないや。こうなったらオープンチャンネルを開いて降参と言おう。これ以上どうしようもない。
「負けました。降参します」
「ふう・・・危ないところでした」
・・・・え?終始押されていた気がするんですが?シールド一枚しか破壊してませんけど?なんて思っていたら織斑先生から通信回線が飛んできた。
『わかった、降りてこい』
やっと、終わった。地味に長く、辛く、地味な戦いがやっと終わった・・・。地面に着くとドッと疲れがやってきた。もう休みたいな・・・
「氷鉋、授業の資料としてはとてもいいサークルロンドだったぞ。それに私の予想だと3分で終わると思っていたが17分もよく持たせられたな。そこは褒める。が、最後のは織斑を見捨ててでもあれを真耶に撃てば勝てたはずだ。時には任せることも大事だぞ」
「はい!」
「織斑、お前はもっと頭を使え。そして技術を磨け。だが死角からの一撃は光るものがある。確実に当てられるようにしろ。いいな?」
「はい!」
「・・・とまあ教員の実力も分かってもらったはずだ。これからは敬意をもって接するように。特に、あだ名で教員を呼ぶとか論外だいいな?」
「「「はい!」」」
「専用機持ちは織斑、氷鉋、オルコット、デュノア、 凰だな。それでは8人グループに分かれて実習を行え!リーダーは専用機持ちがすること。機体は打鉄が3機、リヴァイブが2機だ。チームで相談して好きな方を持ってけ。早い者順だ」
そっからのみんなの行動は早かった。まるで、訓練された軍隊のように、もしくは獲物に群がる蟻のように、素早い動きで駆けつけた。・・・・・・そう、一夏君とシャルルさんに。いや、オレの所ゼロ人じゃないからそれだけでも嬉しいよ?けどなんかこう、形容し難い感覚というか、言葉にしにくい感情がこう・・・・ぐしゃって感じに出ている。別に嫉妬ではない。うん、やっぱオレって魅力ないんだな・・・・。知ってた。もう考えるのはやめよう。うん。あと本音さん、悲しくなってくるから慰めるのはやめて。
「はぁ~・・・・貴様ら!8人グループになれと言っただろ!!出席番号順でグループを組め!次もたつくようならば・・・そうだな、実習の的にでもなってもらうか。いや、ISのPICを切ってグラウンド50周させるか。まあいい、好きな方を選べ」
「「「ひっ」」」
うん、どちらもえげつない。オレなら両方お断りだ。
そこからの動きは早かった。みんな制裁を受けたくないから素早く移動して綺麗に8人グループが出来ていった。最初からしっかりしていれば希望する人のグループに入れたのにね。まあ仮にそうなったとして、オレの所には残り者しか来ないか。またの言い方を負け組ともいう。さて、そんな与太話は投げといて、オレのグループは四十院さんからはじまり長谷川さんまでだ。うん、広いね。そして圧倒的日本人率だね。一組は元々日本人率が高かったけどまさか「し」から「は」の間が全員日本人だなんて思ってなかったよ。
「それじゃあよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」×8
お、おお・・・他のチームと比べて圧倒的にテンションが低い!そして罪悪感が・・・!みんな、もっとやる気だそうぜ?ISに乗れるんだからよ?・・・・はじめるか。
「それじゃあ始めますが、打鉄とリヴァイブ、どちらがいいですか?3秒で決めてください。それじゃあいいですか?3、2、1、はい、決まりましたか?それじゃあ打鉄がいい人手を挙げて~」
えっと・・・?なんで誰も手を挙げないんだ?もしかしてみんなリヴァイヴがいいの?よし、念のため聞いてみるか。
「それじゃあリヴァイヴがいい人手を挙げて~」
あれ、誰も手を挙げてない!?やっぱ3秒は短かったか!?
「あー、せめてどっちかに手を挙げてくれませんか?もう一度聞きますが、打鉄がいい人、手を挙げて~」
よし、手が挙がった!・・・にーしーごー、5人か。5/8だから打鉄で決定だな。
「それじゃあ取ってくるので今のうちに順番を決めておいてください。戻ってきたときにまだ決まっていなかったら番号順になるので悪しからず」
なんか、みんなポカーンって顔してるけどどうしたんだろう?熱中症・・・ではないよな・・・日射病・・・でもないか。あ、もしかして寝不足なのか?でも違う気もするな・・・うーん・・・
戻ってきてカートから降ろし、いつでも始められるようにした。彼女らは未だ動きなし。・・・これもう番号順でよくね?
「これ順番決まっているの?」
「ねえひがのん、体調が悪いなら保健室行ってもいいんだよ?」
おいこらどういうことだ、本音さんや。それはオレがまるでおかしいとでも言っているようなもんじゃないか。はっ、そう言いたいのか!あんたは!
「いやいや、オレは健康そのものだよ?さすがにWHOが提唱している健康には遠いけど。それじゃあはじめよう。順番は決まっていないようだから、四十院さんからお願いします」
「え!あ、はい!」
よじ登って、足入れて手を入れて背中を背面装甲に預けて、起動。第一挙動からの歩行、反転して元の位置に戻ってきた。
「はい、そこでストップ。それじゃあISを座らせてー」
「はい。・・・!」
あ、気づいてしまったか・・・。ISを立たせたまま降りると次の人はものすごく乗りにくい。だから座らせてから降りるのだが、これが結構怖い。なにせ足がISの中にあるから足から着地するには足を空中で前に出さないといけない。机の上に椅子を乗せて座り、足を椅子の下に入れた状態で飛び降りることと等しい、いえばわかりやすかもしれない。
「えい!」
「よっと。はい、四十院さんお疲れ様でした。次からは降りるときに目を開けてください。でないと危ないので。それじゃあ次の人ー」
「次は私だ」
勢いよく飛んできた四十院さんの脇下を捕まえ、くるっと半回転からの足から地面に置く。当の四十院さんは「何が起きたか分からない」という顔をしていた。・・・うん、頭からズシャっていく勢いで飛んでいたからね・・・あとせめて手は上じゃなくて前にしようよ・・・上にしたって意味ないじゃん・・・。さて、次は篠ノ之さんか
「乗れる?」
「ああ、このくらい問題ない。これくらい、な・・・」
・・・・あ、うん、そういうことか。一夏君と同じグループになれなくて落ち込んでいるのか。オレがグループリーダーでごめんよ。恨むなら織斑先生とみんなを恨んでくれ。
篠ノ之さんも無事終わった。あとは降りるだけだ。緊張してきた・・・。四十院さんはまだ手をつかむ位置が見えるから難しくはなかったが、篠ノ之さんは見えないから難易度が一気にあがった。やべえ、間違って掴んでしまったら殺される未来しか見えねえ・・・
そして、時は来た。篠ノ之さんのでっかいあれが大きく揺れて目線がそっちに行きそうになってしまう。落ち着け氷鉋葵、明鏡止水だ。明鏡止水の心境でいればいいんだ。そう、我が心、明鏡止水ーされど拳は烈火の如く・・・・って違う!それ処刑用BGMだ!殺してどうする!ってもう来てるんだった!よし、落ち着け、落ち着いていれば大丈夫なはずだ。・・・・・・・よし、キャッチ&プット。ふう、無事に成功してよかったぜ。でないとオレは明日、太陽すら見れないからな・・・ハハッ。
「はい、篠ノ之さんお疲れ様でした」
「あ、ああ。あー、その氷鉋、私のことは箒でいい。篠ノ之だと長いだろ」
あ、篠ノ之さんがデレた。なにこれかわいい。チクショウ、一夏め!こんな可愛い娘が幼馴染だなんて・・・!しかも一途だなんて・・・!ええ娘や!よし、少し悪戯・・・じゃなくて手伝いをしてあげよう!そしてオレはそれを眺めよう。
「OK、ありがとう箒さん。ああ、そうだ、あとで昼休みに一夏君を誘ってあげなよ。他の人たちは何とかしとくから」
「っ!あ、うん、その、知っているのか?私がお弁当を作ったこと・・・」
「調味料の香りがしている。朝ギリギリまで料理をしていた証拠だ」
「う、うう・・・」
「あとそろそろ次の人と交代しないと、時間がはみ出ちゃうから・・・・」
「あ、済まない!」
「はいそれじゃあ次の人ー」
そこから先も順調だった。乗って、動いて、座らせて、キャッチ&プット、乗せて・・・というものだった。本音さんの時もかなり神経使ったが何とかなった。うん、大きな丘が大きく揺れていて、かなり辛かった。特に目線とか、視線とが。
因みにオレのグループはサクサク進んだが、シャルルさんところは最初、「お願いします!」×8&お辞儀&握手という謎状態になっていてシャルルさんが困っていると、それを見かねたのか織斑先生が8人のお尻を出席簿で叩いていた。・・・一列だったから叩きやすかったのかな?そして滅茶苦茶痛そうだ。そのあとは一夏君の所だと1人目の人が降りるときに座らせるのを忘れていて、2人目を乗せるときにお姫様抱っこをして乗せていた。・・・すごいね君、付き合ってもいない女の子にそんなことできるなんて・・・オレには無理だな。あとその時全てのグループがうちを含め一夏君のグループを見ていて全然実習にならなかった。箒さんなんて、目線だけで殺せそうな視線を一夏君に送っていたよ・・・
して、今は授業終了、昼休みである。正確に言えば実習で使ったISをコンテナに入れて片づけている最中だけど。箒さんは一夏君にお昼を一緒に食べないかって誘って、一発OKを貰い、ものすごくニコニコしてる。オレはニヤニヤしてる。
「なあ葵」
「どうした一夏君や」
「お昼一緒に食べないか?」
「死ね」
あんなに可愛い娘が一生懸命、勇気を振り絞って誘ったというのに・・・貴様は・・・
「なんで!?」
「二人っきりで食ってこい。彼女は勇気を振り絞ってお前にその一言を言ったんだぞ」
「で、でも・・・」
「ほら、片づけ終わったならさっさと行った行った。それとも後ろから撃たなきゃ動けないのかな?」
「わ、わかったよ・・・」
スマン、二人っきりというのが嫌だからオレを誘おうと思ったのかもしれんがオレは一夏君の周りを応援することにしたから。ふふふ・・・
あ、鈴さんのこと忘れてた・・・・
大きく揺れる二つの大きな丘・・・