バカ正直な少年と空に憧れる少年   作:針金はやて

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032 準備 ~一夏編~

「シュヴァルツェア・レーゲンの『AIC』・・・白式での対策、か・・・」

 

一夏は暇さえあればラウラへの対抗手段を考えていた。というのも、葵が寝ている間の出来事だが、一夏はラウラと戦っていた。試合はラウラのワンサイドゲーム、まるで歯が立たなかった。勿論地が違うのもあるが、一番の要因は『AIC』の存在だった。逆を言えば『AIC』の対策ができればもっといい勝負になったのではないかと一夏は思った。

 

ちなみに、完全に余談だが鈴とセシリアはこのときにダメージランクCの大怪我を喰らったが、助けに来てくれた一夏に鈴は惚れ直し、セシリアは惚れた。堕ちたとも言う。・・・恋せよ乙女!

 

さて、それは置いとき、鈴とセシリアと前に話し合ったときにラウラの『AIC』はPICを利用したエネルギー兵器だとわかった。それならば零落白夜で斬ることができる。しかし実際は止められた。腕を止めたからだ。一夏は自分の攻撃は読みやすいと分かったが、ならどうするかというところで詰まっていた。アイディアは浮かんでいるが、実行するのが難しいのだ。1つ目は読みにくい攻撃をすること。2つ目は読まれても意味がない攻撃をすること。

 

一夏はこれ以上まともなアイディアが浮かばない自分を恨んだ。なんて想像力に乏しいのだ、と。ふと、窓の外で射撃練習中の人をみていい考えが浮かんだ。

 

「あっ、斬るんじゃなくて刺せばよくね?」

 

ってかなんでこれ最初に浮かばなかったんだ、普通これが最初に出てくるはずだろ、とか言ってはいけない。

 

「白式でやるなら突きだよな」

 

白式には雪片弐型というブレードのみ。突きを選ぶのは当然だ。が、一夏はここで重要なことに気がついた。

 

「けど俺突き、習ってないや・・・」

 

一夏は小学生の間、剣道はしていた。だが一夏の習っていた篠ノ之流剣術は剣道ではない。完全に修めればモップでも箒でも木ベラでも人を殺せる剣術だ。そんな剣術で、最も殺傷力の高い「突き技」を小学生に教えるだろうか?いや、教えない。だが一夏にとってそれは今必要なのだ。せめて形だけでも習おうと思い、いつも剣道場にいるであろう箒に会いに行くことにした。

 

 

 

剣道場を覗いて見ると箒は剣道場の隅で座禅を組んでいた。そして直ぐ側には緋宵(あけよい)がおいてある。不用意に近づくと斬られそうだ。そのせいで周りから距離を置かれている。だが一夏は関係なしにズンズンと傍による。

 

「箒、少しいいか?」

「・・・なんだ一夏」ギロリ

 

(うおっ・・・箒機嫌悪いな・・・けどここで引くわけにはいかないぜ!)

 

一夏は箒が機嫌が悪いことは分かったが突きを教えて貰うまで引かない覚悟を決めた。一方箒はと言うと-

 

(一夏が来たっ!?わ、私に会いに・・・?や、やったぁ~・・・こんなに嬉しいことはない・・・)

 

-すごく喜んでいた。ただし内面の方は。

 

「箒、頼む。俺に篠ノ之流剣術での突き技を教えてくれ!」

「い、一夏!?顔を上げろ!!なんのつもりだ!?」

 

突如一夏は土下座を繰り出した!突然のことに箒を含め周りの人々が何事かと怪しむ。

 

「頼む、箒。俺に突きを教えてくれ!!」

「か、顔を上げろ一夏!?」

「箒がはいというまで絶対にあげない!だから頼む、俺に突き技を教えてくれ!!」

「分かった!教えるから顔を上げてくれー!?」

 

一夏の土下座にあっさり折れる箒。一夏からしたらこの程度で済むならプライドなど投げ捨てる(というか投げ捨てた)が、箒からしたらいきなり好きな人が自分に土下座をするなど異常だった。けど真面目な箒は土下座をやめさせる為に取り付けた約束を先に果たすことにした。

 

「・・・分かった。一番簡単なのを教える。それでもいいか?」

「ああ!ありがとう箒!!」

 

嬉しそうには笑う一夏に、つい恥ずかしくて顔をそらす箒。深呼吸をして無理やり高まる心拍を抑えこみ、気持ちを切り替える。

 

「一夏、よく見ていろ」

「ああ・・・!」

 

ゴクリ・・・

 

一夏は箒の出す〈圧〉に押されるも、しっかり目に焼き付けようとする。自然と喉が鳴っていた。

 

 

箒がそっと緋宵を腰に挿し、抜刀する。そして左足を出しながら腰を深く落とし、緋宵を持つ右腕は刃を上にして弓を引くかの如く真っ直ぐと後ろに引き、左手は剣先に近い峰に添える。

 

「・・・ハッ!」

 

-ブンッ!

 

右足の蹴り。左足の踏み込み。そこに体の捻りを加えて突き出される右腕。そして真っ直ぐと進むためのライフリングのような左手。

 

時間にして一瞬、刀を全身で突き出す。動作としては「一番簡単」ということもありこれだけだ。箒が美人だからというのもあるだろう。だがそれ以上にそのシンプルさと剣筋の綺麗さに一夏はつい、見惚れてしまった。

 

(綺麗だな・・・ハッ!いかん、そうじゃないだろ俺!)

 

「すまん箒、もう一度頼む。もう一度見せてくれ!」

「む?・・・しょ、しょうがないにゃ・・・ゴホン、しょうがないないな!も、もう一度だけだぞ!よ、よく見ていろ!」

「お、おう!」

 

(しまった!?一夏の前で噛んでしまったぞ!?ああ、なんという失態だ!万死に値する!!)

(あの箒が噛んだ!?スゲえ可愛い・・・)

 

両者恥ずかしいのかお互い頬を染めながらも箒は再び突きの構えを、一夏は一挙一動を見逃さないように箒に意識を集中させる。

 

そして2人が深呼吸をして心を落ち着けた時・・・

 

箒が先程の突きを繰り出し、一夏は目を見開いた。

 

「どうだ?こう、スッとしてドンッと踏み込みシュッと出すんだ。・・・一夏?大丈夫か?」

「ああ!箒、ありがとう!」

「ひゃっ!?い、一夏・・・?て、手が・・・」

「この御礼はまた今度させてくれ!それじゃあ!」

 

(できる・・・!これならあいつに・・・ラウラに勝てる!早速白式で練習に-)

 

なにか閃いた一夏は早速練習してこようと慌ただしく剣道場からでる。それを見た箒が刀をすぐに鞘に収めて一夏の手を掴んだ。

 

「ま、待て一夏!」

「ん?なんだ、箒?」

「あ、あの・・・その・・・お、お礼というのは、い、今言っても良いか!?」

「い、良いけど今は無理だと思うぞ・・・?」

「良いんだ!トーナメントが終わってからでも!」

「分かった、ドーンと言ってくれ!なんでもやってやるぞ!」

「そ、そうか・・・!それじゃあ-」

 

どんとこい!とでも言わんばかりに力強く頷く一夏。そんな一夏を見て箒は安心したのか真っ直ぐ一夏の目を見る。

 

「一夏、もし私が学年別トーナメントで一夏に勝ったら・・・」

「おう」

「私と結婚前提で付き合ってくれ!それじゃあ一夏もがんばってくれ!じゃ、じゃあな!また今度な!」

「お・・・おう・・・?」

 

何を言われたのか理解できていない一夏は走り去っていく箒をただ呆然と見送ることしかできなかった。一方箒はというと・・・

 

(やった、やったあ!一夏に告白できたぞ!これなら絶対に理解してもらえる!勘違いで済ませないぞ一夏!!)

 

告白できたことに浮かれていた。確かに「結婚前提」ならば勘違いできまい。だが、同時に箒は「学年別トーナメントで一夏に勝ったら」とも言っている。そして箒は専用機は持っていない。よって一夏と結婚前提で付き合いたなら箒は訓練機で専用機(白式)に勝たなければならないのだ。が、箒はそのことに気がつくのはその日の夜のことだった。

 

 

 

 

(「結婚前提」ってことはあれだよな・・・間違いなく・・・えっ・・・ええええええ!?い、いや、今は目の前のことに集中しよう!うん、そうしよう!)

 

一夏の方はというと・・・こっちはこっちで喜びつつも混乱していた。だが今はラウラ戦に集中するために目をそらすことを決めた。

 

「行くぞ白式!!-よし!、やるぞ!えっと確かこうして・・・で、スッとしてドンッとしてシュッとするんだよな」

 

白式の右腕と雪片弐型をすばやく展開。早速箒の動きを真似てみることにした。

 

「・・・・フッ!・・・あれ?なんかちがうな?」

 

しかし一夏は自分の動きは箒の動きとは何かが、決定的に全く違うと感じた。

 

「いやでもなんか行ける気がする!」

 

そして同時に別のなにかを掴めそうな感じがした。箒に見せてもらったあの突き技・・・一夏はきっかけにはなったが今すぐにマスターすることはできない、ラウラ戦など更に無理だ、と判断した。勿論それは竹刀で練習したとしても、だ。だからすぐに白式で練習を始め、使えるものにしている。現に一夏はなにか(・・・)を掴めそうな感じがしているのだ。

 

「よし、もう一度!・・・違う、こんなにぶれたら当たらない!・・・・こうでもない!・・・・これでもない!・・・・・-!・・・・-!・・・・」

 

この日一夏の訓練は右手と雪片だけを使ったものだが、アリーナ開放時間ギリギリまで訓練を続けていた。

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