バカ正直な少年と空に憧れる少年   作:針金はやて

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4章 臨海学校
038 乙女のお誘い(インヴィテーション・フォル・ア・デート!)


 学年別トーナメントが終わるとIS学園は学期末テスト期間に突入、皆今まで以上に真面目に勉学に勤しんでいた。

 そしてテスト最終日、最後のテストを終えたクラスは「終わった~」と安堵しながら倒れる者、「あの問題の答えこれ?」と周りに聞き安心する者、恐らくミスしたのか頭を抱えた者と三者三様であった。

 

 勿論、1年1組も例外ではない。一夏は先ほどのテストの難問ぷりに己の机に突っ伏して頭を抱えていた。

 

「なんなんだよあの問題の答え、なんで一つの式に未知数2つも出てくるんだよ…逆算しても選択肢の中に答えないしよー」

「よー一夏ー、大問2の2の答え何になった?あれ答え出んかったんだが」

 

 そんな一夏の許に葵がやってくる。だが、残念ながら聞かれた問題は一夏がわからなかったところである。

 

「あ、葵~!お前もか~!」

「そっちも出なかったか…」

「あら?お二人はどこがわからなかったのですの?」

「お、セシリア、ここ解けたか?」

 

 一夏に問題を見せられるとセシリアは「少々お待ちくださいな」といい自分の問題用紙を確認する。しっかりと残された計算跡から導き出された答え、それは、

 

「そこ4番になりましたわ」

「マジで!?」

「どうやって出したの!?」

「ええ、このようにして導き出しますわ」

 

 セシリアに計算跡を見せてもらい、順番に追っていく。なるほど、確かにこれなら4番だ、と納得する直前に一夏は致命的なミスに気が付く。

 

「なあセシリア、ここまでいたπはなんで消えたんだ?」

「え、ちょ、ちょっとお待ちくださいまし」

 

セシリアは慌てて自分の計算跡を追うと確かに突然消えていた。今度はπを入れて電卓に打ち込み出てきた値は選択肢から消え去った。

 

「わたくし、やらかしましたわ…」

「ああ、どんまい…」

「しょうがないさ、あるある…」

 

 自信があっただけに大きなショックを受けたセシリア、見事に膝から崩れ落ちた。その様子に今度はシャルロットとラウラが問題用紙片手に近づく。

 

「やあ一夏、葵、セシリア、テストどうだった?」

「どうしたんだセシリア、こんなところで膝ついたりして」

「ふふ、ラウラさん…わたくしは己に敗北しましたわ…」

「いやね、ここの問題わかんねーなーって話してたらさ…」

「計算ミスがわかってね…」

「ああうん、それはつらいね…実は僕もそこやらかしちゃってて…」

「お前らもそこか、それは2番だ。ここが180°と0°になるからな」

 

そう言ってラウラは自らの問題用紙を見せる。三人はこの計算そのものには納得したが、今度はなぜその角度と言い切れるのかが分からずいた。

 

「なあ、なんでそこ180°と0°なんだよ」

「ああ、それはだな ーー」

「最大と最小だからだ」

「お、箒」

 

ラウラの解説を奪い、割って入ったのは箒。だがその表情は浮かなかったが、そのことに一番早く気がついたのは一夏であった。

 

「どうしたんだ浮かない顔して」

「ああ、少し聞きたいのだが大問2の2の答え何になったんだ?私の答えは幾度も確認したが選択肢になかったんだが」

 

 その言葉に各々の問題用紙をペラペラとめくり、一夏から順に答えを挙げていった。

 

「俺は1だったな」

「え、俺5番」

「わたくしは4番でしたわ」

「僕は2番になったけど」

「私は6だ」

「あーそこ、3になったわね。え、なんで全員バラバラなの」

 

しれっと混ざる鈴をに構わず一同頭を抱えパニックに陥る。

「なんで誰一人として被らないのだ」だの「なんでぇ?」などと悲鳴をあげてると、今度はひょこひょこと本音がやってくる。そして問題を一瞥すると、

 

「あーそこ答え書いてなかったよね~」

「そうかそうか!やはりそうだったか!!」

 

 その言葉に箒はガバッと立ち上がり本音の手を取る。

 箒の声が響いたのか、この声を皮切りにであちこちから「どこどこ?どの問題?ああそこあたし3ばーん!」「いやいや1番だって」「ふふ、5番よ!」と各々の答えを挙げ始める。

尚この中に本音と箒と同じ答えの者はいなかった。

 

 クラスがなかなか騒がしくなったところで織斑先生が入り、クラスは一気に静まり返り各々の席に戻る。ちなみに鈴はそそくさと二組に戻った。

そんなクラスに織斑先生は驚いたような表情をする。

 

「どうしたお前ら、さっきまでのにぎやかさは」

「あっはははは…」「そんなことは…」「ないと思うんですけどね~?」

「まあいい、それよりもだ。先ほど連絡があったが先ほどのテストの大問2の2番は全員正解にするとのことだ。なんでも選択肢に正解の数値が用意されていなかったそうだ」

 

 この言葉にクラスは再び賑やかな声に溢れた。だが千冬が手元の出席簿を叩くことで静かにさせる。

 

「ええい騒ぐなやかましい、さて連絡事項だが、来週から校外特別実習期間となる。3日間だが学園を離れることになるから全員忘れ物するなよ。自由時間では羽根を外しすぎないように。ではSHRを終わる。学級委員、挨拶」

「起立!礼!」

 

 既に皆の意識は「海」に向いていた。

 

 

 ☆

 

 

「そうか、もう来週か」

「3泊4日の臨海学校、しかも初日は丸々自由行動なんて流石よね~」

 

 7月の校外実習―すなわち臨海学校なんだがここはIS学園、そんじょそこらの高校のとは内容が違う。この実習の目的はISの各種装備の試験運用とデータ取り、アリーナよりも広い場所で多少の被害(爆発とか)をものともしない海はいろいろ都合がいい。そして何より大事なのが、十代女子の士気が上がりやすい。IS学園としては最も大事なことなのだ。

 

 だが正直言うと不安なこともある。というのも、行事の度に何らかしらのトラブルに見舞われている気がする。いや気がするじゃないわ。思いっきり見舞われてるわ。けどせっかく皆が楽しみにしているんだ、そんな野暮なことは口にしない。

 とかなんとか考えていたら本音さんに顔を覗き込まれていた。

 

「どうしたのひがのん、深刻そうな顔して」

「いやさ、オレ最後に泳いだのが5年前だからまだ泳げるかなーって」

「だいじょーぶだって~」

「そうそう、そういうのは意外と体が覚えてるもんよ」

 

 にぱっと笑った本音さんが励まし、鈴さんが後押ししてくる。この心配は事実だからちょっとうれしい。小学5年の頃にプールの工事入ったけど卒業するまで完成しなかったし、中学はそもそもプールがなかったんだよね。

 

「そんなもんか」

「そんなもんよ」

「そんなもんだ~」

 

 そんなもんらしい。でもごめん、正直なこというと泳ぎたくない。というか水着買うのめんどくさい。ただまあ明日明後日は予定があって買いにいくタイミングはないから関係ないんだけどな。

 

「…んじゃあ明日10時に駅前でいいかな?」

「おう、わかった。葵とのほほんさんはどうするんだ?」

 

 やっべ、何も聞いとらんかった。えっとなんの話してたんだっけ…

 

「ごめんおりむ~、明日はひがのんとデートなんだ~」

「ちょっと本音さん!?」

 

 待って待って何言ってるのこの人!?明日明後日のは簪さんにここ空けといてと言われただけなんだが間違いなくデートとかの甘い奴じゃないんだ!

 

「ええ~じゃあ~ひがのんは私と一緒にお出かけするの、いやなの?」

「嫌、じゃないけど…」

「んじゃ~いいじゃーんーひがのんのけち~」

 

 けちとか言われても…こ、こういうのって段階を踏んでいくものではなくて…?

 

「あらあら、それはお邪魔するわけにはいきませんわね」

「いや、あの、明日のはそういうのじゃ」

「にしてもいつの間にそんな仲になってたんだね」

「えへへ~」

「えへへじゃないって!」

 

 セシリアさんにシャルロットさんまでめっちゃ微笑ましい顔してくる…この二人、さては分かっててわざと外堀埋めに来てるな?

 

 箒さんと鈴さんは「おおー」とか「やるじゃないの」とかいいながら拍手してる。こっちは―どうなんだろう、半分本気ってところかな?それと他の人達がなんだなんだと見てくるじゃあないか、とりあえずその手止めて欲しい。

 

 ラウラさんに至っては「どうやったんだ?」「何されたんだ?」とオレと本音さんの周りをぐるぐる周りながら行ったり来たりしてる。落ち着いて。

 

 もうダメだ、否定しても止まらないんだがこいつら。そう思っていたら一夏がオレの肩をポンと叩いた。一夏!そうだよな、お前なら分かってくれるよな!

 

「ごめんな葵、気が利かなくてよ」

「一夏、お前―」

 

 一夏の目、なんて真っ直ぐなんだチクショウ…あ、いや待て、なんとなく同情の感情が見える。さてはお前、過去にやられたな?

前言撤回、こいつ分かったうえでやりやがったな!

 

「べ、別にそんなんじゃないんだってばああああ!!」

 

 外野にはワケもわからずとりあえずパチパチと拍手され、友には外堀を埋められ…もう恥ずかしくていてもたってもいられず勢いだけで教室を飛び出す。

 

 ああもう!どうにでもなれ!

 

 

 ◆

 

 

 翌日、第1アリーナ・整備室―

 とりあえずISスーツに着替え、簪さんの作業スペースにて本音さんと待機…してるのだが、昨晩から明らかに本音さんの機嫌が悪い。

 うん、まあ、昨日のが原因だろうな、間違いない。そも今思えば否定することなく受け止めれば良かったじゃん。ああ、後悔先に立たず。

 

「ん、お待たせ。…なにかあった?」

 

 そんな気まずい雰囲気の中、簪さんが入ってくる。だがすぐに気がついたの言及された。痛いところを突かれ…いや待て、ここは先手を取ることでこの雰囲気を壊せ―

 

「べーつにー?どこぞの誰かさんが~?私と一緒なのが嫌みたいで~?」

「昨日は誠に申し訳ございませんでした。この埋め合わせはこれが終わり次第やらせて貰います。いえやらせてくださいお願いします!」

「……」

 

 もうここは素直に謝る、それしか無い。そんな思いで土下座をする。

 元を正せば本音さんが原因な気もしなくはないが、そんなことは関係無い。昨日はオレが逃げたせいで本音さんに恥をかかせたんだ、ここはできる限りの誠意を見せるしか無い。なんならそこにあるIS使って首落とされても文句は言えない。

 

…いでよ

「あ、あの、本音さん…?」

 

 え、待って聞き取れなかった、こわ。

 恐る恐る聞き返しながら顔を上げると目の前には、いつものにこにこした本音さん…ではなく半目の本音さんの顔、しゃがんで覗き込まれていた。こわい、いやいつもならかわいさが勝るんだきっと。

 

「約束、忘れないでよね」

「ハイ」

「…もう、いいかな?」

「かんちゃんごめん~それじゃーはじめよ~!」

 

 良かった、とりあえずいつものテンションになってくれた。後でどこか行きたい所ないか聞いておかないと…

 あ、そういえば今日はなんの為に呼び出されたんだろ。

 

「葵、黒夜をだして、あれ全部向こうまで持って行って…」

「分かった」

 

 とりあえず簪さんの言うとおりに従う。本音さんは既に打鉄に乗り込み、奥から大きな機材をよいしょよいしょと持ってきていた。そしてガラガラと崩れる音。

待ってあれ全部?全部運ぶの?顔に出ていたのか、簪さんはコクリと頷き「全部…」とつぶやく。

あー、これもしかしてあれですか、先々週の時みたいに外付けですかね。ありがたいけど、どうしてなんだろ。それ以前に全部載せるの?

 

「葵…来週私の代わりにテストしてきて…」

「ん?、ああー、そういうことか。わかった、任せて」

 

 なるほど、恐らくは簪さんのISに積む装備なんだろうな、先に試してから積みたいからそのデータ取りしてくれってところか。

でもさ、多くない?さてこれまた顔に出ていたのか、簪さんが「私のだけじゃないよ…」と教えてくれた。何人分だよこれ

 

 

 とりあえず手を動かすこと30分、途中から簪さんも混ざり三人がかりで全ての試験機材をアリーナのグラウンドに並べる。ミサイルコンテナやブースター、大型ブレードやよく分からないのまでなどその数ざっと40、だが複数で1つというものがかなり多く、パーツ数だけなら総数100を超えている。

 

「今ので最後だけど、次どうする?」

「暫く休憩、今次の準備をしている…」

「いえ~い!きゅーけーだ~!」

 

 なんたって簪さんこんな量引き受けたんだろーなーと思いつつ椅子に座りながらぼーっとしていること数10分、アリーナに入ってくる4つの機影を黒夜のハイパーセンサーが捉えた。

しかしこの4人、皆ISに乗り込み巨大な箱を持っている。さっき言っていた準備というのがこれなのではと思い、「簪さん、あれ?」と指さし確認すると簪さんは慌てて立ち上がり、打鉄に乗り込んでアリーナへと駆けていった。更に本音さんも続いて行ったのでオレも追いかける。

 4人は先ほど並べた装備の前に箱を置くと、箱がバクンという音を立てながら上部が開く。ここに詰めろということらしい。

 ところでこの4人のうち、3人はラファール・リヴァイヴや打鉄などの学園のISだが1人は違う、専用機である。それも青だ。

 

「ごきげんよう、皆様」

「おはよ~せっし~!」

「おはよう、セシリアさん」

「初めまして、更識簪です。本日はご足労いただきありがとうございます。急なお願いにもかかわらずありがとうございます、オルコットさん」

「いえいえ、お気になさらないでください。改めて、セシリア・オルコットですわ。セシリアとお呼びくださいな。同じ1年同士、これから仲良くいたしましょう」

「でしたら是非私のことも簪と呼んでください。セシリアさん」

「了解しましたわ、簪さん」 

 

 自己紹介が終わると二人はIS越しに握手をする。いつもの様子はどこへやら、二人から溢れ出すお嬢様オーラ、見てる方が気圧されそうだ。

 

「先輩方、急に無茶苦茶なもの頼んでしまいすみません、ありがとうございます」

「なあに、かわいい後輩の為よ!」

「その代わりしっかりデータとってよね!」

「いやあ、なかなかいないんだよね~個人制作品を使ってくれる人!」

「「「よろしく氷鉋くん!」」」

「あ、精一杯やらせていただきます」

 

 とは言ったものの、黒夜の拡張領域(バススロット)は0である。直接付けるならともかく、こんな量の装備は一体どうするつもりなのだろうか。

なんて考えつつ箱に詰めていると、またまた顔に出ていたのか隣に来た簪さんが「大丈夫…私に考えがある」という。なら任せよう。

 

 

 尚7人がかりで試験機材を詰めているが、うまく詰められず苦戦し、蓋が閉まるようになったのは午後をまわり日がカンカンと照らす14時を過ぎた頃だった。




簪ちゃんって原作・アニメだとお嬢様感ないけどちゃんとお嬢様何だよなぁ…
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