完結したら清書しようかな!?
36㎞沖合上空、高度9kmの地点に砲撃戦用パッケージ『パンツァー・カノニーア』を装備したシュヴァルツェア・レーゲンの4門のレールカノンが球状のエネルギーバリアを纏い胎児のように蹲る福音を射程に捉える。このパッケージは通常時1門しか装備されていないレールカノンより大口径の物をを左右に2門ずつ、追加で下がった機動力を補うために大型物理シールドを4枚増設した砲戦パッケージである。
本来は反動を抑える為に地上での運用が望まれるが、遮蔽物が何もない空中で使用するためにラウラは足場として空中にAICを敷き、
「よし、捉えた。いつでもいいぞ葵!」
「了解。―――作戦開始」
葵の号令と同時に超音速で撃ち出された砲弾は数秒後、福音に直撃し大爆発を起こした。
「全弾命中。続けて砲撃を行う!」
4門のレールカノンの射撃タイミングをずらし絶え間なく砲弾の嵐を浴びせるが、福音はそれらを軽々しく避け、時に撃ち落としながらシュヴァルツェア・レーゲンとの距離をぐんぐん縮める。
(接近まで3000…2000…くっ、予想よりも速い!)
あっという間に距離が1000メートルを切ると福音は急加速を行い、その左手を伸ばし格闘戦に移ろうとする。
―避けられない!
しかしラウラは、にやりと口元を歪めた。
それはピンチだからでも、恐怖故でもない。
「――シャルロット!!」
「させないよ!」
伸ばした腕は突如目の前に現れたオレンジ色の機体の大きな盾に阻まれ弾かれる。直後、福音は爆発に包まれた。
その正体はリヴァイヴ専用防御パッケージ『ガーデン・カーテン』内蔵の光学迷彩装置『トランスペアレント』とステルスモードを併用した、シャルロット考案の
この『トランスペアレント』は可視光線や赤外線をはじめとする電磁波を偏向させる電磁場層を展開し自機の姿を背後の景色にカモフラージュさせる装置である。これを展開されると対象物の光の反射が行われないため周囲からは視認できず、電磁波も反射されないため電子的な捜索も困難となる。
一方で展開中は電磁場層を維持するために移動ができず、消費エネルギーも他のエネルギー兵装と比べても多い。加えて音は消すことができないという欠点もある。
手にするのは実体盾とエネルギーシールドが交互に2層ずつ重なった、パッケージ名に相応しい前面をすっぽりと覆える大型の盾。シャルロットのは一番外側にリアクティブアーマーを追加した特別仕様となっている。
爆発に驚いた福音は後退しようとするが、8本の蒼い光があらゆる方向への移動を封じる。一瞬の硬直、爆煙が晴れる前だがその隙を
「はああああああ!!」
爆煙の中から
「逃がさないっての!!」
福音の左手に巻き付けられた甲龍の
更に間髪入れず三人に銀翼を広げて無数の光弾を浴びせ、反撃を開始する。
咄嗟に前に出たシャルロットが盾を構えて二人を弾雨から防ぐが、三人はその火力は予め頭に叩き込んでいたスペックデータよりも高いことに動揺していた。
「これが主兵装の『
「なんという火力だ…!」
「暫くは耐えられるけど…これじゃあ何度も持たないよ!」
「盾が溶ける前に墜とす、セシリア!」
「勿論ですわ!」
その一声で上空から蒼の弾丸がバイザーに撃ち込まれた。認識外からの一撃に福音の攻撃の手が緩む。追撃に後方から8本の蒼い光と下からの射撃、そして左右に分かれたシャルロットと鈴による至近距離から二丁のショットガンと赤い炎に包まれた衝撃砲が福音に襲いかかる。
距離を取ったラウラも砲撃を再開し、全方位から集中砲火が福音の足を止める。シールドを展開させて反撃を許さずにじわじわとSEを消耗させるが、痺れを切らした福音は両翼に取り付けられていたブースターを切り離した。
切り離された2機ブースターは閉じていた翼を広げ、先端の銃身を伸ばすと全長1m程の戦闘機に変形、上空のセシリアに向かって垂直に飛翔する。だがその姿は、一同の目にはシルバリオ・ゴスペルとして映っていた。
「福音が分裂!?そんなはずは――キャッ!」
「セシリア!?後から現れた奴はなんなのよ!」
「装備項目にそんなものはなかったぞ!」
「なら
「いや、もしかして……ラウラ、イージスパック展開して!」
「了解!総員、チャンネル305を開け!視界を共有する!」
訝しんだシャルロットの指示に従い、ラウラは砲戦パッケージの上からイージスパックのレドームを展開。シュヴァルツェア・レーゲンを介して見たその姿にシャルロットは「やっぱりね」と呟いた。
「識別が『
「アクティブ・ステルス…こちらのレーダーをジャミングしたという訳ですわね!」
「それにしてもこいつ、速い!」
ファントムと呼ばれる2機の戦闘機は、1機はセシリアの後ろにつきドックファイトを始め、もう1機はミサイルと共に福音との間に入りシャルロットと鈴を引き剥がそうとする。
「アメリカめ、無人機にこのようなものまで付けて…一体何を考えているんだ」
「ええい!うっとおしいわね!先にこいつを――」
「待って、鈴!」
「しまった!?」
回避運動を迫られる攻撃に業を煮やした鈴が砲門をファントムに向けた瞬間、福音は全方向にエネルギー弾を放ち、全スラスターを開いて強行突破を図る。
「鈴!僕の後ろに!」
「助かったわ、シャルロット!けど福音が…!」
目論みは成功し、ファントムと置き土産に対処している一瞬の間に福音は大きく離れ、既に追いつかない距離まで離れていた。
「箒!フェイズ3、4、5飛ばして6!皆はファントムを頼む!」
「こっちは任せろ!」
「絶対に逃がすものかああああ!!!」
葵の指示により宙から現れた紅い機体が流星の如く福音へと襲いかかる。光学迷彩を解除した紅椿による展開装甲を全て加速に使用した強襲は福音の軌道を大きく逸らし急降下させる。
「このまま海面に叩きつけてやる!」
離れようと暴れる福音を力ずくで抑え、ペダルを踏む足に更に力を入れて加速する。
「箒!離れろ!」
「なっ…!」
だが高度2km付近で福音は砲門を広げ、自らダメージを負うのも顧みず至近距離で撃ち放つ。
現在、先の戦闘を踏まえ紅椿は展開装甲による自動防御の設定を切っている。それは防御を仲間に任せられるからこそだが、この至近距離では意味をなさない。
(だからといって、逃げるものか!)
箒の意志に応えるように左足の展開装甲がクローに変形、福音の足に噛みつくとグルンと一回転。福音を蹴り上げるように投げ飛ばした。
「葵!」
「ああ!」
投げた先に用意されていたのは48発のミサイル。着弾と同時に黒い閃光が飛び込み、その手に握られた大剣を大きく振りかぶる。しかし福音はシルバー・ベルでミサイルを撃ち落とし、振るう速度に合わせてPIC制御だけで刃との距離を保ったまま回避、葵の背中を取り砲門を向ける。
「そんな動きも出来るのかISって!?」
ISの可能性に驚きつつもスラスターを噴かせインメルマンターンで福音と強引に向き直り、大剣の腹を盾にしシルバー・ベルを防ぎながら距離を詰める。
「初めて使ったが便利だな大剣!箒、同時に攻めるぞ!」
「ああ!」
あっという間に葵の距離に、更に反対側から箒が両手に刀を持ち加速し、二人同時に福音に斬りかかる。3方向からの斬撃、回避したさきには黒夜のティアーズの攻撃が当たるように配置してある。
(獲った!福音に逃げられない!)
次の瞬間、ガキン!という高い金属音が鳴り響く。
「「っ!?」」
箒の二刀を左腕で受け止め、葵の一閃を右手で受け止める。福音のとった行動は回避ではなく防御だった。刀から放たれるエネルギーに装甲を焼かれても逃げる様子が無いのは、今までと行動パターンが変わった事を示していた。
「この…!」
箒がこのまま焼き切ろうと握る刀に力を加えると、福音は両翼の砲門を二人に向ける。
「武器を捨てて離れろ!」
「「!!」」
ラウラの焦りが混じった声に箒は武器を手放し、葵は柄に取り付けられた引き金を引く。
「「うおおおおおお!!!」」
至近距離のシルバー・ベルを箒は体を反らして避けながら右腕の展開装甲がブレードを形成、掴もうとする福音の左手を避けて胴に叩きつける。
一方葵は先の引き金を引いたことで炸薬が破裂し大剣は内側から爆発、中に用意されていた刀を引き抜きながらシルバー・ベルを錐揉み回転で無理矢理避けて砲門を1つ切り落とす。
更に正面の箒が左腕の展開装甲もブレードにして突き刺そうとするが、福音の右腕を犠牲にした決死の抵抗で防がれる。しかし―
「今だ!!」
「墜ちろおお!!」
もう片方の砲門も切り落とすと、両手を封じられ身動きの取れない福音の背中に葵は叩きつけるように黒夜の左脛で蹴る。直後、取り付けられていた追加装甲が轟音と共に爆発。その威力は黒夜どころか福音越しの紅椿すら吹き飛ばす程の反動だった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「はぁ、はぁ、ふぅー……………ラウラ、そっちはどうだ!?」
呼吸を整えながら葵は爆発で吹き飛ばされた福音が頭から墜落する様子を確認しつつ、未だファントムと交戦中の四人に意識を向ける。
「ミサイルは枯らした!」
「あと少し、あと少しで!」
「いい加減…墜ちなさいよ!」
ラウラのレールガン、シャルロットの二丁のショットガン、鈴の衝撃砲の連射による包囲網をファントムはひらひらと隙間を縫うように避けながら飛んでいく。その時、一発の蒼い弾丸がファントムの進路を遮るように放たれる。
回避のため急制動をかけるファントム、一秒にも満たない刹那の静止時間に3人はそれぞれの方向から撃ち込み、一機目を撃破する。
「ナイスよセシリア!」
「今そちらの援護に向かう!」
続けて3人がセシリアとドッグファイトをしているファントムに銃口を向ける。だがセシリアは「問題ありませんわ!」と一蹴、インターセプターを取り出しファントムに投擲した。
「回避パターンは分かりましたわ。3発で落としますわよ」
続けて二発、インターセプターの横を通り抜けるように放たれる。真っ直ぐにセシリアを追いかけていたファントムはインターセプターの直撃を避けるために回避しようと傾くが、着弾の早い二発に気がつき上方へ逃げる。その一瞬の減速の間にセシリアはファントムの上を取り、宣言通り3発で撃ち落とした。
「ふぅ、やっと終わったね」
「ああ、我々の勝利だ」
「仇は討ったぞ、一夏」
「いや生きてるでしょうが、一夏」
「……?葵さん、どうかしたのですか?」
「いや……ちょっと気になることがあるんだ。鈴、シャルロット、一緒に来てくれ。福音の残骸を引き揚げる。念のためセシリアは上空待機、箒はラウラのとこで充電して」
「うむ、わかった」
「了解しましたわ」
箒とセシリアの短い返事に軽く頷くと葵は墜落地点に向かって降下、呼ばれた鈴とシャルロットもその後につづく。
「それで、気になることって?」
「もしかしたらなんだが、福音に人がいたかもしれない」
「「「『っ!?』」」」
その言葉にその場にいた全員とオープンチャンネルで聞いていた教師達に衝撃が走る。
「オレの勘違いならいいんだ。けど奴を蹴ったとき、なんとなくそんな気がして…」
「だとしたら早く引き上げないとマズいじゃない!」
「急ごう!」
鈴とシャルロットが加速し海面に近づいたその瞬間、海水が強烈な光の球によって吹き飛んだ。
「なんだ!?」
球状に蒸発した海はまるで時間が止まっているかのようにへこんだままだった。そしてその中心には、青白い光を纏った
「な、何が起きてるんだ…?」
「まずい、
しかし、警告は遅かった。
ラウラが叫んだ瞬間、福音はパッと弾かれたように起き上がり、青白いエネルギーバリアは衝撃となって各機に襲う。海上に立つその姿はどこか幻想的だが、各ISはそこに明確な敵意を感じ操縦者に警鐘を鳴らす。そしてゆっくりとラウラを見ると、次の瞬間肉薄していた。それは両手両足を用いた計4カ所同時着火による爆発的な
「なっ…!?箒、離れ……ぐああっ!!」
「ラウラ!!くっ、よくも!!」
ラウラが咄嗟に箒を突き離すと福音はシュヴァルツェア・レーゲンを蹴り飛ばし、吹き飛んだ先に回り込んで姿勢制御にもがくラウラの腕を掴むと海面に向けて投げ飛ばした。
逆上した箒が怒りに任せて切りかかるが二刀を束ねた箒の一撃を福音は一刀ずつ指で挟んで受け止め、もう片方の手で易々と叩き折る。
「なっ……!?」
「箒、退避!!逃げろ!!」
- キィアアアアアアアアア!!! -
何が起きたのか理解できず呆然とする箒に葵が叫ぶが、その声を上書きするように福音から獣のような鳴き声が耳を劈く。
同時に、切断された福音の頭部から鳥が翼を広げるようにばっとエネルギーの翼が生え、動かぬ箒の両腕を掴み、そっと優しく包み込む。
「な、何を!?……ぐあああああああああああああ!!」
「箒!!」
刹那、箒の困惑した声は衝撃で悲鳴へと変わり、弾雨を零距離で受けた紅椿のSEがみるみるうちに消えていく。やがて絶対防御が発動したのを確認した福音はそっと翼を広げてその手を離すと、全身をズタズタにされた箒が海へと墜ちた。
「全機散開、距離を取って対応!あの翼には触れるな!」
「「「了解(ですわ)!」」」
葵の号令と共に三人は射撃武器に換装、福音の四方を囲み円軌道を描きながら一斉射撃を行い、ビーム、衝撃砲、ショットガン、ミサイル、レールガンに荷電粒子砲と様々な弾種が福音を襲う。片や福音は逃げること無くエネルギーの翼で自らを包むとやがて煙に覆われ目視で確認できなくなる。
「ちょっと!爆煙で見えないわよ!このまま続ける気!?」
「攻撃続行、このままニュートリノスキャンを行う!」
「そういうことなら!―――っ!?」
意気込むシャルロットが最後の1発を撃つと同時にショットガンを棄て、
煙の中から3発の光弾がシャルロットに向けて放たれる。咄嗟に身体をそらして1発目を避けたが、2発目3発目がウィングに当たりふらついたところで静止していた福音が急加速、シャルロットに近づくと箒と同じようにエネルギーの翼で包み込んだ。
「この……シャルロットを放しやがれっ!」
レールガンのトリガーを手放し左腕を福音に向けると、取り付けられていたハンドガトリングガンがズガガガガガガガガガ!!とけたたましい機械音と共に回転・発砲する。
このハンドガトリングガンは中距離牽制用としてIS学園整備科が作り上げた武装である。弾丸はラファール・リヴァイヴのクァッドガトリングのと同じものを使用、3本の砲身が専用弾倉に搭載された450発を3秒で撃ち尽くすという驚異の性能を有する。
だが弾全ては翼に接触すると同時に爆発、福音には1発も届ず弾切れになる。
「HE弾はだめか、ならAP弾ならどうだ」
空になった弾倉を捨て上から伸びたアームによって弾倉が取り付けられると、再び発砲。真っ直ぐに放たれた弾は接触後、明後日の方向へと飛び散った。何が起こったのか黒夜のハイパーセンサーで確認すると、葵は軽く舌打ちをした。
「弾頭が蒸発したことで弾かれた…ライデンフロスト現象か!仕方ない!」
SEの消費を抑えるため使用を控えていたドレッドノートを呼び出し、その引き金を引く。黒夜のSEと引き換えにドレッドノートの光弾はエネルギーの翼を突き抜け福音の装甲に当たる。驚いたような動作をしながら福音はシャルロットを捨て、正面から葵に急加速で攻撃を仕掛ける。
「ようやくこっちを向いたか!」
右手でドレッドノートを捨てながら左手で薙刀を抜刀、振り下ろしながら加速任せな福音の拳を柄で受け止める。衝撃で薙刀がしなり僅かに後退、それを好機とみたのか福音はさらなる追撃を畳み掛ける。
四肢のスラスターを吹かせながら蹴り、拳、拳、蹴り、拳と一撃が重い連続攻撃が浴びせられるが、葵は一手先を読んでいるかのように的確に防ぐ。そんな時、シャルロットから全員に1つのファイルが送られる。
「なんだ!?………これは!」
「そんな馬鹿なことって…!」
「そんな、ありえませんわ!」
『織斑先生!』
ファイルの中身は福音のスキャン結果。その結果が示す結論は、福音は有人機だった。
無人機として伝えたということはアメリカは福音のパイロットはいないものとして扱っていた事実に教師含めて一同が驚愕する。
『山田先生、至急日本政府に問い合わせを。お前達、人命は優先すべきだが目的は福音の撃墜だ。見誤るなよ』
「「「了解」」」
(織斑先生のことだから加減してやられるなってことだろうけど…こいつ強すぎて加減なんてできないっての!)
「ぐっ!」
そうこうしているうちに福音の攻撃は次第に熾烈さを増し、ついに強力な一撃が正面から薙刀をへし折る。葵の口から切迫した声が漏れ、がら空きとなった胴に追い討ちをかける。
だが吸い込まれるように迫る拳を、葵は折られた薙刀をクロスさせて受け止めるのに同時に右足を蹴り上げ右脛の
「やりましたの!?」
「…いや、まだよ!!」
鈴が叫ぶと同時に黒煙の中から光弾が二人の間を通り抜ける。回避運動をしながら鈴が福音との距離を詰めていくと、海に向かっていく機影を1機見つける。チラリと見てみるとそれは墜落していく黒夜であった。
「こんっ…のぉ!!」
仲間を次々に墜とされ怒りを露わにした鈴は双天牙月を連結させ、ハイパーセンサーが示す誘導に従い煙に包まれた福音へと思いっきり振り降ろす。しかし刃が当たった感覚が無くどういうことかと再度センサーを確認していると、頭上から光弾が降り注ぐ。
「上!?…なっ!しまっ――」
バックパックや脚部スラスターが爆発し落下し始める甲龍、最後の抵抗として身体を捻り双天牙月を投擲する。だがそのとき、福音の姿に驚いた鈴は手が滑り、双天牙月はあらぬ方向へと飛んでいく。
「な…なんで無傷なのよ……」
「鈴さん!なんですの、この性能!?いくら軍用とはいえ、あまりにも異常な……っ!」
墜ちていく甲龍に更なる光弾を放つと、今度はセシリアに急接近する。速度は高機動パッケージを装備したブルー・ティアーズよりも福音の方が速いうえ、長い銃は近距離だと取り回しが悪い。インターセプターを取り出し近距離戦を挑もうとするが、眼前に迫る福音の圧倒的機動性に追いつかず一瞬で背中を取られる。
そしてエネルギーの翼に包まれると、反撃すらできずにセシリアは蒼海へと沈められた。
敵を全て沈め脅威を排除した福音はエネルギーの翼を消すと、スラスターを吹かせて戦域を離れ、一人宵闇に消えていく。
その姿を一人の紅が再起の準備をしながら海面から見つめていた。
「まだ掛かるのか?このままだと奴をまた逃がしてしまうぞ!」
「あと30秒は待て。その機体なら問題無い、すぐ追いつく」
「だが!」
「落ち着け、勝つためだ」
「うっ……」
「セシリア、大丈夫?」
海面に浮上したセシリアが見たのは、2本のケーブルに繋がれているが今にも飛び立とうとする箒とそれを抑えるラウラだった。近くには葵とシャルロットが何やら話し合っている。
呆然としているセシリアに後ろから鈴が心配そうな声色で話しかけた。
振り返ると、ISにダメージはあるものの大きな怪我をしている様子がない鈴にセシリアはほっと胸をなで下ろす。
「皆さん、ご無事でしたの?」
「見ての通り、全員無事よ。今はラウラと葵が持ってきたジェネレーターを全部紅椿に回している最中、私たちはその後よ」
「確かに、それが最善ですわね」
鈴の言葉に頷いたセシリアは葵とシャルロットに近づく。二人の顔はとても険しく、状況はよくないことが明白だった。
「葵さん、状況は如何でしょうか?」
「セシリアさん、無事で良かった。状況は……」
「最悪も最悪、だね」
「全員ぼろぼろだし、福音は有人機だし、なんか耐久力高いし、極めつけはあの翼!あのエネルギー密度ははっきし言って異常だよ。何ジュールあるんだよ」
「翼には実弾もビーム効かないから包まれると外側から攻撃が通らない。恐らく近接武器もダメだと思う」
「あれを唯一突破できたのは零落白夜だけなんだが…」
「葵が気を逸らすことができたとしてもさっきと同じように一人一人順番に対応して終わるだけだし、損傷具合からして全員長くは戦えない。う~ん、困ったね」
「大問題ですわね…」
一撃必殺を持つ白式と一夏がいない今、5人には決定打がない。仮に居たとしても零落白夜は有人機に対しては過剰火力なのもあり戦力にし辛いのでその他の方法で停止させるしかない。
「ラウラ、もういいだろう?このままでは――」
「まだ半分だが想定よりも距離が開いているな。…仕方ない、葵!」
顔を上げた葵にラウラは言葉を続ける。
「距離が開いた、箒を出す。いいな?」
「わかった。箒さん、時間稼ぎを頼む。SEの残量には気をつけて」
「ああ、任せてくれ」
その言葉と共に紅椿の展開装甲が開き、飛翔。箒が飛んだ後には
書き始めた時からずっとやりたかったことがようやくできました
長かったけどまだやりたいことは沢山あるのでまだまだ続きます
シャルロット優秀