シュヴァルツェア・レーゲンによる援護射撃が降り注ぐなか一夏と箒は福音と、他の4人はファントムと交戦していた。
「分かっていたけど、やっぱこいつら速い!」
「手を緩めないでください鈴さん!」
「分かってるって!!」
2機のファントムの追尾を紙一重で避け続けながら最高速度で飛び回るセシリア、その後を鈴が衝撃砲の連射で追い回す。1機がブルー・ティアーズの真後ろについた瞬間、セシリアはレーザーライフルの砲身を持ちながら減速。ファントムの軌道上に構え、ライフルと引き換えに撃墜する。
もう1機は
「よしっ!」
「やりましたわね!」
「葵!シャルロット!そっちは!?」
「だめ、もうすぐ弾切れ!」
一方シャルロットは高速で迫るファントムの攻撃を躱しつつ、弾切れになったライフルを次々と交換しながら飛んでいた。だが実弾武器主体のシャルロットはこれまでの戦いでその多くを使い果たしたため次第に弾幕が薄くなっていき、すぐに弾切れとなった。直後、これまで回避行動に徹していたファントムは針路を反転、真っ直ぐにシャルロットへ突撃しながらビーム砲による反撃が始まる。
シールドでガードしつつ近接ブレードを取り出して反撃の準備を整えたその時、更に上空から2本のブレードがファントムの胴体を貫いた。
「こっちはもう終わる!」
そう宣言するやいなや葵は急降下しながらミサイルコンテナを投棄。黒夜の背を追いかけるファントムが2つのコンテナを回避した直後、コンテナの蓋が開き中に残ったミサイルがすべて撃ちだされる。回避運動を始めるファントムをハイパーセンサーで確認すると機体を反転、レールガンを構えると同時に引き金を引き、その胴体に1撃で穴を開けた。
「よし、これで邪魔者は片付いたな」
「ありがとう葵、助かったよ」
「気にするな。それよりもまだ武器は残ってる?セシリアも」
「僕に残ってるのはシールドと近接ブレード、あとスナイパーライフルだね」
「わたくしにはまだいつものレーザーライフルが残っていますわ」
『葵、もうすぐ砲弾が切れる。一夏たちへの援護射撃が無くなるぞ』
白式と紅椿と福音の三機が織りなす攻防を5人は離れた場所から眺めながらオープン・チャンネルで報告をする。SEが満タンでも無策に近づいたら負ける相手だと分かってはいるが、できることが何かないかと歯がゆい思いをしていた。
『…弾切れだ。どうする、葵』
「っ!」
『くっ!こいつまた動きが良くなった!?』
『油断するな一夏!こうなったら手が付けられないぐらい速いぞ!』
『わかってるって!』
(何か…何か無力化する手段は……!!)
オープンチャンネル越しに聞こえる緊迫した二人の声に、葵の思考がぐるぐると回る。まだ使えるもの、福音の武装、環境………様々なものを考えるが有効打が何一つ浮かばずにいた。
そうこうしていると福音が白式と紅椿の上を取り、追いかけながらエネルギー翼を広げる。
『またあの翼か!一度逃げるぞ箒!』
『一夏!?』
『勝てないから逃げるんじゃない、勝つために逃げるんだ!今俺たちがやられるわけにはいかないんだ!!』
『っ!!』
白式が紅椿の手を引いた直後、二人の後ろで爆発、巨大な水柱が立つ。ぐんぐんと加速する白式を追いかけるように放たれるエネルギー弾が次々に水柱を作り出す。
(海水に触れると爆発で水柱ができる……実弾はライデンフロスト現象で弾かれた……となるとあの翼はっ!)
爆発に追いかけられている一夏と箒の姿に4人は気が気でなかった。シャルロットは盾を取り出し割り込むタイミングを伺い、セシリアはスコープで狙いを定める。ラウラは金色の瞳でその姿をとらえ続け、鈴はいまだ指示を出さない葵にしびれを切らした。
「ねえ!まだなの葵!アイツを止める方法!」
「二人が追い付かれたら僕が割り込むよ!セシリア、援護お願い!」
「もちろんですわ!」
「……いや、その必要はない」
ようやく沈黙を破った葵の声に一同の視線が集まる。
「たった今、思いついた。アイツを止める方法!」
◆
「「「海に突き落とす!?」」」
『そんな方法で本当に可能なのか?』
「あの羽の膨大な熱エネルギーで水蒸気爆発を起こし、福音の装甲を破壊する。絶対防御も万能じゃない、これなら瞬間的にバリアを突破できるし、残ったエネルギーでパイロット保護機能が働くはずだ」
『よし、任せろ!』
「一夏、一体何を!?」
短く返事をするなり一夏は体を反転、瞬く間に距離を詰めるとシールドでエネルギー弾をかき消しながら福音の腕を捕まえる。
「葵!今だ!!」
「!!わかった!!」
その言葉にすぐさま反応し葵は右腕のアンカーショットを投擲。アンカーが福音の左足を捉えると福音は、一夏の拘束を無理矢理引き剥がし、急加速でその場を離れる。
福音の圧倒的推力に黒夜の右腕がめきめきと軋む音をたてながら空を引きずられていると、鈴とラウラを抱えた一夏が横に並ぶ。そして3人がピンと張ったワイヤーを掴み引き寄せることで福音と拮抗状態に、すかさずラウラが逃げられないようにアンカーと福音をAICで固定する。
「葵!それよこしなさい!」
「ここは私と鈴で引き受ける!」
「頼んだ!……甲龍とレーゲンのパワーでも動きを止めるので精一杯か!」
「ならば直接押し込むしかあるまい、行くぞ一夏!」
「おう!」
「僕も行くよ、一夏!」
「ならばわたくしも!」
「いや、セシリアはこれを!」
順次福音の元に向かう一夏、箒、シャルロットの後を追おうとするセシリアに葵はバックパックからレールガンを取り外すと押しつけるように無理矢理持たせる。続けてバックパックを外すと絶対防御の範囲を変更、BT粒子を注ぎ始める。
「葵さん、この状況で一体何を?」
「こいつを圧縮してそいつで撃ち出す!あいつはパイロットを守るために絶対なにかするはずだ、そのタイミングで落とす!」
「ですが半端な威力では弾かれるだけですわ!」
「そのためのこいつだ!」
葵が力強く吼えると、アームやプロペラントタンクがぐしゃり潰されながら小さくなり、ISの指先サイズ程の鉄球へと姿を変える。
そしてできた鉄球をセシリアの右手にそっと持たせると、先程までと打って変わって落ち着いた、けれども真剣な声で続ける。
「運動エネルギーを大きくさせるなら弾速を上げるか弾の質量を増やすしかない。BT粒子での圧縮は体積が小さくなるが質量が変わらない。そしてレールガンなら―――」
「―――ライフルより速い、ですわね」
「そういうこと!ロングレンジからの狙撃はセシリアの得意分野だろ?」
「そこまで言われましたらこのセシリア・オルコット、引き受けない訳にはいきませんわね」
「タイミングは任せた!」
胸に手を当てながら言い切ると、よどみない動きで弾をレールガンに装填。セシリアの落ち着いた所作に葵はニッと笑うと、福音の元へ向かう。
「一夏、右腕を押さえてくれ!オレは左腕押さえる!」
「ああ、わかった!」
「足は僕が押さえるよ!」
「援護は私がやる!全力で行くぞ!」
福音が近づかれまいと暴れながら放つエネルギー弾を一夏と葵はそれぞれシールドでかき消しながら接近、シャルロットと箒も後に続き、3人で両手と両足を封じる。さらに後ろに付いた箒が白式のSEを回復させながら展開装甲を全開にすることで後押し、4機のパワーに押され下からも引っ張られた福音は徐々に高度が落ちていく。
しかしそのことに気がついたのか福音は攻撃を止め加速、攻撃に使っていたエネルギーを全てスラスターに回し再度拮抗状態となる。
「あと少しだというのに!」
「まだ抗うか!」
「負けるもんかよ!」
「……手はある、セシリア!!」
葵がセシリアの名を叫ぶと、身動きが取れない福音の動きが一瞬だけ止まる。咄嗟に広げた光の翼を撃ち抜き絶対防御が発動、それでも弾は止まらず、1秒に満たない時間だがSEを全て絶対防御にまわしたのだ。
「「うおおおおおおおおお!!!」」
その一瞬を見逃さず、一夏と葵は福音を全速力で海面へと突き落とした。直後光の翼が海水に触れ、急激に熱せられた海水が三機を襲う。だが葵の予想を裏切り福音の絶対防御は問題無く発動、エネルギーが切れるとアーマーが失われスーツだけの状態となった操縦者が現れる。慌てた葵は圧縮の要領で絶対防御の範囲を変更、黒夜の絶対防御で福音の操縦者を保護した。
「あ、危なかった……危機一髪だった……」
「葵でも推測を外すことあるんだな」
「そりゃあるさ、それもしょっちゅう」
「そうか?いままで全部予想の範疇、みたいなことが多かったからそんな感じしなかったけど」
軽口を叩きながら海から上がると、目の前に昇りきる直前の太陽が映る。
「なんとか目標通り昇る前に終わったな、葵」
「ああ……。やっと、終わったな」
一夏と葵は肩を並べると、軽く拳を合わせ、空を見る。
暗い夜が明け朱色の朝焼けが、この場の皆を優しく迎えていた。
とうとう50話達成しました!
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます!これからも頑張ります!
そしてようやくバトルパート終わった!楽しかったけどきつかった!
一夏君とのイチャイチャパートはここまで!(あったか?)
次回は4章の〆なので本音ちゃんとのイチャイチャパートを書きたいな!
なるはやで投稿したい所存です!!