あと、すいません。この話を前・中・後編に分けさせてもらう事にしました。
「俺が、あんたの提督?」
その衝撃的な台詞に思わず耳を疑う。
もし、そうだとすればまずいことになった。
『提督』と『艦娘』と言うのは一筋縄ではいかない関係でできている。それは例えるとするなら『細い細い赤い糸』とでも言った感じだ。分かりにくい例えだと自分でも思うが、これが一番妥当な例えでもあるから仕方がない。
まぁ要するに、今目の前にいる少女と俺は切っても切れない関係ということだ。
「えぇ、貴方が私の提督です」
熊野は畳掛けるように言う。最早、逃げ場が見つからない。
何故なら彼女達、艦娘は自分達の提督を一目見るだけで自分の提督かどうか見極めることが出来るからだ。しかも、それは絶対だ。間違えることなんてない。
え?なんで俺がここまで知っているかって?
それはな、話せばちょっと長くなるが、俺の友人兼元仕事仲間の上田が仕事でとあるマフィアのボスを殺しに行った。上田はとても強く、その腕前はここら辺の警察が百人集っても殺せるほどだ。だから俺はすぐにでも戻ってくるだろうと思っていた。だが上田は何時まで経っても帰ってこないし、電話にも出ない。
俺は心配して、あちこち探したが、何も出なかった。
その後、あいつは五ヶ月後にその姿が見つかることになった。
結婚式案内状に入っていた写真で。
俺は当初あいつが結婚式をするなんてありえない。多分、敵か何かの策略によって利用されているんだ、と思った。だが、式場に行ってみると……。
策略もへったくれもなく本当に結婚しやがっていた。しかも艦娘らしき可愛い女の子と!なんて奴なんだ!
『人がせっかく心配しているのにお前という奴は‼』
当時の俺はあいつにそう言った。だが、あいつは待ってくれ、それは変な誤解だ!と言った後、訳を説明してくれた。
「鈴谷がな俺を離してくれなかったんだ。「離してくれ、離してくれ」と言ってもな。それにさ、お前も見ただろ?あいつの可愛さ。あんな娘に詰め寄られたら、俺はもう……駄目だよ」
その時は何言ってんだ、こいつ?と思っていたが、今は違う。身にしみてわかった、上田の言っていた事が。
「と言うことで、提督は今日からここに住んでくださいね」
熊野は俺にそう言うと、空になったカップに紅茶を注ぐ。こげ茶色の紅茶からはそこそこ高級そうな匂いがする。
「強制なんだな」
「えぇ、もちろん」
さも当然のように言う熊野。
別に彼女と絶対住みたくない、という訳ではないのだが俺もまた上田と同じく数年間、行方不明になると考えると、少し後ろめたさが出てくる。
「何か思い悩みのようですが」
俺の顔色を見て言うと、彼女の顔から優しい笑みが出てくる。恐らく、俺の不安や緊張を緩和しようという彼女なりの配慮だろう。
「この建物に居る時の提督の身の自由を認め、また客人としての身分を与えますので、安心して過ごしてください」
泣いている子供にかけるようなそっと優しい声で言う。
だが、これには彼女の心配が的外れではあるが、何処かしら安心感は与えさせようとしているようだ。
と、その時だった。廊下の方から数十はあるであろう足音がきこえてくる。
誰かと思って外を覗くことなんてしなくても分かる。
あれは……
そんな風に回想していると、入口から二人の女性と大勢のスーツ姿の男たちが入ってきた。だが、二人の女性に関しては後ろにいる男たちと大きく違っていた。
二人とも一丁前に眼帯をしているが、片方は黒い帽子を被っている緑色の髪の毛をした短髪で、もう一人は変な角のようなものを耳の方から出ていて、紫色の髪をしている長髪だ。この二人を一言で言うなら、今話題の中二病に近いものだ。
「おい、なんか俺達、馬鹿にされた気がするんだが」
「奇遇だな、私もだ」
二人は俺の気持ちをどうやらテレパシーで感じとったらしい。もしかして、そういう関係の人なのであろうか。
いや、そんなわけはない。多分、あの二人は……
「お前らは熊野の部下か」
その言葉を発した瞬間だった。二人のうちの紫色の髪の毛の方が俺に掴みかかる。そこには怒りとも言えるし、怯えとも言えるような顔をしていた。
「なんでテメェがボスの名前を、艦娘の名前を知っているんだ!そんなこと、並大抵の者が知っているような事じゃねぇ!」
なるほど、どうやら俺はこの組織の機密事項に触れてしまったらしい。まぁ、良く考えてみれば当然の話だ。ボスが艦娘だとしれば組織のボスを殺そうとするものにとっては、これ以上ありがたいものはない。聞いた話だと艦娘の中でも暗殺者として名を馳せる者も居ると聞く。そいつらに殺させようとすれば、まぁ、いくらボスが強かろうと殺されるのは目に見えている。
なぜって、そもそもこういう系のボスは自分の正体を隠さなければ、生きていけないのだ。
だから、今俺を掴みかかっているこいつは正しい。
「そこまでよ」
熊野は立ち上がって、俺の方に近寄っていく。当然、周囲はあわてふためく。
「何をやっているんだボス!」
「そうですよ、そいつはボスの事を知っています!ここはーー」
彼等の言葉を熊野は片手で制した。それはまさに王様、いやクイーンの風格であった。周囲は彼女の行動を見て、言葉をぷつりと切った。辺りはしんとなる。
「いいですか、彼は私にとって大切な存在です」
この台詞に周囲は騒然とする。波紋のように伝播していく。ほとんどの人は俺を見て呆然としているのみ。
しかし、二人の女性はどうやら気づいたらしい。驚きの表情を隠せずに「まさか」と言わんばかりの表情をしている。
「そうです二人とも、この方は私の
前編が一年以上前だったのに驚きました。