ここは港市。
平和な街……であった場所だ。
ここは今、昔と違って荒廃としている。
その原因は組織による戦いが起きたからだ。
ここに元から巣くっていたチンピラ連合軍と新たに来たマフィアの奴らがお互いの利権を求めて、ここを舞台として銃を取り、戦っていた。
俺はその抗争の激戦地に来ている。銃弾や爆弾が余裕に飛び交い、好きなだけ音を鳴らしていく。それは交響曲とも言えるし、この惨状を見たら、ゲルニカを思い浮かばせるかもしれない。
そんなところに俺は何をしに来たかと言えば、ずばり人を殺しに来たのだ。
そして、そのターゲットはさっき言ったマフィアのボスだ。
ここまで言えば誰しもが俺の職業に気づくかもしれない。俺の職業はフリーの暗殺者だ。今日はチンピラ連合軍の依頼で、マフィアのボスを殺すことになったのだ。
「ここか……」
俺はターゲットがいるビルを日光に遮られながら見る。
ビルは新しく建てられたばかりなのか、窓ガラスはピカピカになっていて、銃弾や爆弾による損壊は出ていない。
そして見た感じ十階以上あるように思える。
「行くか」
ロビーを通り抜け、組織から渡された変装服でこっそりこっそり中へと入っていく。
中はかなり明るく、構成員と思われる人達も拳銃などを持っているが、どこか明るさがある。さっきの港市の状況とは打って変わっている。もしかして、マフィアのボスはかなり明るい性格をしているのだろうか?
そんな事を思って、ボスがいるという最上階へと行くため、エレベーターに乗るのだった。
『ウィーン……コーン……十二階です』
その声と共にエレベーターは扉をゆっくりと開けた。構成員が和気あいあいとしていた一階と違って最上階は静けさがフロアを包み込んでいた。それにはどこか薄気味悪さを感じずにはいられない。
だが、今俺はここであの構成員達みたいに騒ぎ合いたいのではない。俺はここにいるそいつらのボスを殺しに来たのだ。
「行くか」
忍び足で気配を感じさせないように慎重に歩く。見つかったら、先制攻撃、もしくは仲間を呼ばれるかもしれない。暗殺にそれをされたら一貫の終わりだ。やるなら先制攻撃を仕掛け、かつ素早く、スマート殺さなくてはいけない。
慎重に慎重に一部屋ずつ見ていく。
中はもぬけの殻の状態になっている部屋が多い。思わず、こんな所に人が住んでいるのか?と思わせてしまう感じだ。
そう思いながら歩いていくと、とある一部屋からカチャリという食器の音が聞こえた。
見てみると、そこには一人の少女がいた。
茶色い髪を綺麗にポニーテールにしていて、服は学生服っぽいものを着ている。歳は俺と同い年ぐらいそうな少女。そんな彼女は一つの白い円卓の上で二人分のティーカップを置いて、その片方を飲んでいる。よく見てみると、もう一つの方にも湯気が出ている。椅子ももう一つある。まるで、さっきまで誰かといたみたいだ。しかし俺は知っている。このフロアには彼女以外誰もいないことを……。
もうお気づきだろう。俺のターゲットであるマフィアのボスは彼女だ。つまり俺はあの娘を俺はこの腰にひっかけている銃で射殺するのだ。
「よし」
腰にある銃に手を伸ばす。そして手に銃の感触が伝わると同時に俺はそれを素早く手に取り、銃弾を入れる。黄金色の銃弾が黒い銃にガシャと小さく音を立てて入る。
準備はできた。よし!
次の瞬間、俺は角から少女のデコにあたるところへ向け、照準を合わせると同時に発砲した。
「やったか!?」
俺は部屋を見る。彼女は……生きていた。
どうやら直前になって座っていた椅子を倒し、避けたのだ。
「チッ!」
俺は銃弾を続けて彼女に浴びせようとするのだが、彼女はそれを素早く避けていき徐々に俺の方へと近づいていく。そして弾が切れ、俺が逃げながら銃に銃弾を装填しようとした時だった。
彼女は猛スピードでこっちへ来て俺の背中に一発パンチを入れてきた。
「ガッ!?」
驚きと共に意識を失っていく。失敗だ、大失敗だ。俺は殺される。マフィアのボスである彼女に……。だが、それも悪くなかったかもな……。そう思い、意識を失っていく直前、
「あら?……もしかして貴方は……」
少女は何かを呟いていた。
重い目蓋が徐々に開いていく。
一番初めに見たのはマフィアのボスである少女だった。
「あら、意識が戻りましたか」
「え?なんでお前が……」
そう思い、腰に引っ掛けていた銃を手に取り、銃弾を……補充できなかった。いつも銃弾のケースを入れていたズボンのポケットからケースが無くなったのだ。
「お探しはこれかしら?」
そう言って取り出したのは俺が探していた銃弾のケースがそこにあった。
「あっ!」
そう俺が叫ぶと同時にケースと銃弾はバキッと悲鳴を上げて、少女の手の中で粉々になった。
「こんなものは提督には要りませんわよ。さぁ、紅茶が冷めないうちにいただきましょう」
少女はそう言って俺に紅茶を差し出した。見ると、それはさっきあった紅茶だった。この時に気づいたのだが、俺の身体はさっき空いていた椅子の上に座らされている。
これに思わず俺はゾッとした。まるで俺自身が来るのが分かっているかのようだ。俺は少女に訊ねる。
「お前、もしかして俺が来るのを知っていたのか?」
この質問に少女は一瞬だけ目を丸くし、やがて一笑し、
「提督。私は占い師とかじゃありませんわよ」
と言った。
だが俺は少女のある言葉に耳を疑った。
「ちょっと待て。お前がさっきから言っている『提督』はひょっとして俺の事か!?」
この質問に少女は何を今更、と言いたそうな顔をして、「えぇ」と肯定する。それに加え、
「むしろ、あなたの他に誰がいるんですか?」
と、呆れながら紅茶を一口飲む。その姿は上品さが出ており、さながら、お嬢様だった。そこに太陽の日光による光と影により、もとから白色の綺麗な肌が日陰になっているとはいえ、ほんの少しホタルのようにきらめいていた。そんな姿に思わず心臓が少しドキッとした。
そんな俺に気づいているのかいないのか、少女は小悪魔っぽい笑みを浮かべ、言う。
「今更ながらですが自己紹介しますわ。私は最上型の四番艦『熊野』ですわ。よろしくお願いします、提督」
また分けてしまってすいません。