西暦勇者娘   作:ムネ・タイラー

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気づいたら2週間が経っていたというオチ


災厄の日 2

移動しながらボクは自身の状態を考察していた。

 

(なるほど、ね)

 

身体を動かし能力を把握する。そして、判ったことが幾つかあった。

 

まず、今のボクは勇者になった時と同じような状態ということ。神の力を保有している状態だ。どうしてこうなったのかは判らないけどまあ、願ったり叶ったりだから良しとしよう。

……しかし、同時に問題も浮上した。

身体能力の向上が勇者よりもだいぶ劣っている。それこそ、雲泥の差だ。

勇者の時は最悪、武器が無くても身体能力の高さによる体術のゴリ押しが可能だったけど、それが確実に出来ない。体が壊れる。

 

仮に一体を倒そうとしても時間が掛かるし、今のままじゃ間合いを詰めきる前に囲まれて終わりだ。それに精霊バリアや装束を纏ってないから防御力は皆無。一発かじられたりでもしたらジ・エンド。

 

だから、今まで"余裕"で勝てていたからって勝てるとは思わない方がいいだろう。

銀や東郷、犬吠埼姉妹辺りが同じ立場に置かれたら、勘違いしそうだな。

 

……そういえば、すっかり忘れていたけど友奈たちは無事なんだろうか?ちょっと、心配になってきた。

携帯にも繋がらないし、困った。

とりあえず、無事だということを祈るしかない。

今はボク自身の問題に集中しよう。

 

それで、結論から言えば少なくとも、不意討ちを喰らわない限り星屑を振り切ることが可能だということをボクは確信した。

 

……しばらくして

 

(ああ、よかった……)

 

少女の姿を視界に捉えた。

ようやく、追い付けた。

喰われていなくてよかったと安心する。

幾らこちらの能力が上がっていて追いつく時間が短縮出来ても少女がバテてしまう可能性もあった。

だから少女が本当に生きようとしてくれていてよかった。

 

……いや、喜んでいる場合じゃないな。時間は一刻を争う。

少女も余裕はないはずだ。

タイミングを計って早くこんな所からオサラバしよう。

 

いち、ニの……今だ!

 

眼前の星屑を飛び越え、その先に居る少女を抱き上げる。

そして、持てる限りの力を出して、一気に星屑たちを引き離した。

ふぅ、上手くいった。

後ろをチラリと観るが星屑の影はもうない。一先ず、安心した。

 

「は、離れて……!」

 

走っているのにも関わらず混乱しているのか、少女がボクの腕の中で暴れだした。当然といえば当然の反応か。

多分、星屑に襲われてしまったと思い込んでしまっているのだろう。

けれど、その行動はボクにとって……悲しいかな邪魔でしかない。

 

「落ち着け」

 

「ひっ!?」

 

「死にたくないなら、暴れないでくれる?棄てるよ?」

 

軽い殺気を放つと少女は萎縮して暴れるのをやめる。

素直でよろしい。

安心は出来ても安全ではないからな、ここ。

それに、こっちも命が掛かっているからね。少女を助けたいという思いもあるけど、同時に死にたくないという気持ちもあるのだ。

考えが矛盾していることは判ってる。けど、これが勇者としての特権だからね、仕方ない。

 

少女は助けた。さて、これからどうしようか?

 

「……………」

 

現在地を確認したいけど、ボクよりも詳しいはずの少女がこんな状態では無理そうだ。

何処か、落ち着けることが出来る安全な場所を探さないとな。

 

「……あれは?」

 

走り続けていると遠目で人を先導しながら星屑を切り伏してる少女のような存在が見えた。

神樹が無くなっても神性を帯びた武器は無くならない。銃器関連は結構、船などの資材として消滅しちゃったけど、昔から受け継がれた『生太刀』や『天ノ逆手』などは文化財として保管されている。

このことを知っているのは、ボクを含め大赦に所属している人間と防人という勇者として選ばれなかった少女たちだけだ。

つまり大方、戦闘経験を積んでいる防人の誰かが武器を調達してきて、大赦の指示に従って人々を避難させていると推測できた。よし、助かった。

なら、ボクがとれる行動は一つ。

星屑相手は防人の少女に任せて避難場所に逃げ込もう。

……決して、臆病とかじゃないよ?

下手に武器を取り上げて防人の子が死んじゃったら大変だからね。

 

「こっちです、皆さん」

 

何か、懐かしい声が聴こえたような気がする。まあ、いいか。

 

……そうして、ボクは人々が入っていく神社へとたどり着いた。

 

 

 

***

 

 

 

中に入ると人々は疲れたのか、地面に座り込んでいた。

無理もないか。ボクも少し疲れた。休みたい……けど。

 

「……もう、大丈夫だよ?」

 

「…………」

 

安全になったから、下ろしたんだけど少女がボクの袖を掴んで離さない。

恐怖体験の連続による、精神面の不安定。

少女をこんな状態にしたのはボクの責任でもあるか。

手っ取り早くあんな手段を取るんじゃなかった。ちょっと、後悔。どうにかして、立ち直らさせないとな。

 

「あっ……」

 

刀を持った、少女が神社の中へと入ってきた。終わったのか。

とりあえず、これからのことを相談したい。けどまずは、お礼を言わなきゃ。ボクは少女を連れ、彼女の前に顔を出す。

 

「殿ご苦労様。さっきは助かったよ。ありがーー」

 

ボクは喋るのを途中で止まってしまう。どうして居るんだ?

ここに居るのがおかしい人がそこに居た。ここは、神世紀だろ?

何で、何でボクの目の前に、西暦の勇者である乃木若葉さんがいるんだ?

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