ナイトローグの再評価を目指す話   作:erif tellab

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ナイトローグがスーツ改造されてこの世に存在せず、文字通りのリストラを受けた説は提唱したくありません。


実技でテンション爆上げナイトローグ

 四月下旬。とうとうISの実技も始まり、テンション爆上げの俺はとっとと体育着に着替えて、集合場所である第三アリーナへ向かう。ちなみにISスーツも下に着ているが、これは念のためだ。織斑先生から訓練機に乗れと振られるかもしれないから。

  いやぁ、楽しみだ。実技においては自由にナイトローグに変身しても大体はお咎めなしだから、授業の始めから最後までナイトローグの姿で受けていられる。校則の抜け穴だ。いくら織斑先生でも、お堅い事はもう言えまい。

  今思えば長かった。一時はナイトローグのコスプレセットを用意して是が非でも再評価活動しようと躍起になっていたが、実技の時間があるなら必要なくなる。これが飴と鞭か。なかなか悪くないじゃないか。

 

「イヤッフッフー!」

 

  走ってはいけない廊下は校舎だけ。テンションが上がりまくった俺を止められるのは、この世で恐らく一人だけ。気分は最高だ。

  そしてダメ押しに、アリーナのグラウンドへ出た瞬間に変身しておく。アリーナ内なら特に何も問題はないはず。やったぜ。

 

《Bat》

 

「蒸血!」

 

《Mist match!》

 

《Bat. Ba,Bat. Fire!》

 

  グラウンドにはまだ誰もいない。どうやら俺が一番乗りのようだ。ダメだな、皆。ちゃんと五分前行動しておかないと。俺なんて一夏を更衣室で置き去りにしたんだぞ?

  その時、後ろから京水がやって来た。一足遅かったじゃないか。

 

「あら、弦人ちゃん! 早いのね!」

 

「お、京水じゃないか。二番手だな」

 

「ええ。弦人ちゃんが一番乗りになるような気がして。女の勘ね」

 

「ハッハッハ、面白い事を言う」

 

「ウソじゃないわ! 本当よ!」

 

  ムッとした京水は頬をプクリと膨らませ、己の不機嫌の具合を俺にとことん知らしめる。俺が一方的に知っているお方とは何の面影がないので、怒っていてもそこはかとなく可愛らしい。

 

「あー怒るな、怒るな。茶化して悪かったから。お詫びにハグでも何でもしてやるから」

 

「え!? 本当かしら!?」

 

「ああ、限度はあるけどな」

 

「やったわ! やったやった! やったわ!」

 

  そうやって俺がすぐさま謝ると京水はいきなり気を良くし、大はしゃぎで抱き着いてきた。飛び付かれた勢いで俺は少し後退り、京水を抱えたままゆったりとその場で回り始める。京水の足は完全に地から離れていた。

  すると、グラウンドの出入口の方から続々とやって来る足音と会話の声を拾う。三番目に到着したのは鏡さんだった。いやはや、陸上部に所属しているだけはあるな。

 

「あー! 泉さん、何やってるの!?」

 

「何ってわからないかしら? 抱き着いてるの」

 

「ずるいなー。ねぇ、日室くん。私にもやってくれないかなー?」

 

「え? 鏡さんも?」

 

「うん」

 

  てへへと笑いながら、おずおずと頷く鏡さん。京水に引き続き、積極的にアプローチしようとしているのが目に見える。

  そこまで考えて、俺は改めて冷静になった。テンションがおかしくなっていたとはいえ、仮にも女子を抱きかかえているのだ。なんて恥ずかしい事をしているのだろう。若さゆえの過ちだと気づくのだった。

 

「あ、待って弦人ちゃん。目が回ってきた。目が回ってきた。ねぇ聞いてる? 聞いてる? ちょっ、加速しないでぇ! いやぁぁぁん!!」

 

「えっと……やっぱり遠慮しとこうかな……」

 

「うん、わかった」

 

  人力絶叫マシーンをわざと披露すれば、自然とあちら側から折れてくれる。京水を解放した後は彼女だけでなく、回りすぎた俺も頭が少しクラクラした。

 

「あぁ、クラクラ……クラクラ……クラゲ姫……」

 

  この京水の発言は敢えて無視しておこう。

 

  そんなこんなでクラス全員が集まり、授業が始まる。一人だけナイトローグに変身している俺に周りから視線が集まったが、あの織斑先生にすら何も言われずに済んだので万々歳だ。トントン拍子に授業が進んでいく。

 

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、日室は前に出ろ。だがその前に……日室」

 

  と、思っていた昔の自分を殴りたくなる。スルーを決め込んでいた織斑先生から、まさかのタイミングで突っ込まれてしまった。

 

「はい、なんでしょうか」

 

「ナイトローグの再変身をしろ」

 

「え? それって二度手間じゃ――」

 

「いいからやれ」

 

「アッハイ」

 

  ああも語気を強くされてしまえば、素直に従わざるを得ない。そそくさと変身解除する。

 

「ルールル♪ ルルルルールル♪ ルルルルールールールールールルー♪」

 

「ようこそ、日室の部屋へ。今日のゲストはトランスチームガンとバットフルボトルです」

 

「ノリがそのまま徹○の部屋だ!?」

 

  歌う京水とともにナイトローグのプレゼンテーションをする俺に、今日も谷本さんのツッコミが冴え渡る。そして、俺と京水の頭に織斑先生の出席簿が炸裂した。

 

「いったぁい! 酷いわ、織斑先生!」

 

「誰がそこまでやれと言った。静かにできんのか」

 

  京水が抗議するものの、織斑先生の凄まじい剣幕に押し黙ってしまう。俺の出席簿の攻撃は痛かった。この人、教師よりも軍の教官の方が天職だと思う。

 

「ナイトローグを紹介するんじゃないんですか?」

 

「手短に済ませろと言っているんだ、この問題児ども」

 

  俺が質問すれば端的にそう返される。せっかくのナイトローグのアピールチャンスが半ば無駄になってがっかりだ。

  しかし、織斑先生を前にしているのなら、いつまでもくよくよしている暇はない。どうにか気持ちを切り替えて、ナイトローグへ再び変身する。

 

「全員、参考程度に見ておくように。日室のナイトローグは既存のISと欠け離れている完全なバリエーション仕様だ」

 

  その織斑先生の一言で、全員の意識が一気に俺へと集中する。この程度のプレッシャーなど何のこれしき。押し潰されたりはしない。

 

《Bat》

 

「蒸血」

 

《Mist match!》

 

《Bat. Ba,Bat. Fire! 》

 

  ヒューンと花火が飛び散る音を耳にしながら、俺はナイトローグの変身を果たす。生徒たちは「おおー」と感嘆の声を漏らし、一夏は「かっけぇぇぇ!!」と騒いでいた。やはり同士か。

  織斑先生の方を見てみれば、うむと一回頷くだけだった。次にオルコットさんと一夏の方へ見やり、彼らにもISを展開するように促す。

 

「織斑、オルコット。日室に続けてISを展開しろ」

 

  しかし、一秒も経たずにすんなりとブルー・ティアーズを纏ったオルコットさんとは対象的に、一夏は悪戦苦闘していた。

 

「何をしている、織斑。熟練者は展開に一秒も要らんぞ」

 

「ええっと、来い! 白式!」

 

  かくして、一夏も白式の展開に成功する。

 

「よし、三人とも試しに飛んでみせろ」

 

  織斑先生から指示が下りると、俺たちは一斉に飛び立った。二人がスラスターを吹かす中、俺はナイトローグ自慢の跳躍力でジャンプしてから翼を展開。跳躍時の勢いに乗って加速し、二人の後ろをぴったりと追従する。

  まぁ、流石に超音速飛行までは無理だろうけど。霧ワープがあるから要らないよな? 要らないな。

  ある程度の高度まで到達すると、一番先に静止していたオルコットさんに合わせて一夏と俺は止まる。

  随分と途中の頃から判明していたが、翼を生やした時のナイトローグはかなりの時間で浮遊できる。この性能の上がり具合は変身者のハザードレベルや技量に依存しているらしい。最初の頃は無人島から日本列島まで羽休みも挟んで到達するのが限界だったが、成長してみるものだ。

  そのため、今ではこうして空中で昼寝するという荒業もできる。舞空術とは、男のロマンがくすぐられるな。

 

『日室! 空中で寝転がるな!』

 

  通信を通して、織斑先生のお叱りの言葉が飛んでくる。内海さんはビルドのラビットラビットハザードフォームの攻略データを仮面ライダーローグに送信していたのだ。オマケとして通信機能があっても何らおかしくはない。この回線はナイトローグの専用チャンネルだな。

  それから姿勢を直すと、隣から一夏にふと話し掛けられた。宙に漂う彼の姿は、まるで危なっかしい。

 

「飛ぶの未だに慣れないなぁ。なぁ、弦人。お前、どんな感じで空飛んでるんだ?」

 

「コウモリになる」

 

「悪い。聞いた俺がバカだった」

 

「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」

 

「そう言われてもなぁ……」

 

  オルコットさんの助け舟があっても、一夏はまだ頭を抱える。こいつには理論尽くしで説明するよりも、絵やイメージなどを交えて教えた方が良いのは既にわかっている。後でまたノートでも貸しておくか。

 

『織斑、オルコット、日室。急下降と完全停止をやってみせろ。目標は地表から十センチだ』

 

「了解です。では一夏さん、日室さん、お先に」

 

  そうこうしていると次の指示が入ってきた。先にオルコットさんが地上にぐんぐんと降りていき、やがて完全停止をおこなう。

  その次は俺が急下降した。翼で身体をくるまい、回転を付けながら槍の如く落下する。

 

  飛翔斬!! ただし誰にも当てない!!

 

「……次、織斑!」

 

  そうして俺も地上スレスレで完全静止を決めた矢先、翼を開くとそこに呆れ果てた表情をした織斑先生を見つけた。彼女は俺に何も言わず、一夏の方へ目を向ける。

  そんな訳で最後に一夏が急下降するのだが、勢いをつけすぎた彼は静止をミスして地面に大激突する。自動車よりもずっと重たいISが加速状態でまっ逆さまに落ちたのだ。彼が落ちたところにはクレーターが出来上がり、その中からもぞもぞと力なく起き上がる。絶対防御のおかげで無傷ではあった。

  一夏の醜態を見た女子たちの間からクスクスと笑い声が生まれる。地面から離れた彼は参った顔をしていた。

 

「織斑。授業が終わった後にクレーターを埋めておけよ」

 

「……はい」

 

  すかさず、織斑先生に冷たくそう告げられる一夏。こればかりは少し可哀想だったので、クレーターの埋め立ては俺も手伝った。ナイトローグの翼の操作は案外融通が利くので、翼をドーザー代わりにして頑張った。

 

「弦人ちゃん! 一夏ちゃん! ワタシも手伝うわ!」

 

「助かる!」

 

「泉さん……ありがとぉぉぉ!」

 

  それでもって、他に手伝ってくれた子といえば京水だけであった。三人で取り組めばクレーター埋め立てもあっという間に終わり、そのまま帰路につく。一夏が道中で「箒ぃ……セシリアぇ……」と恨み節を残していたのが非常に印象的だった。

  京水はあくまでも例外。埋め立ては力仕事だから仕方ないが、彼の心中を察する。そう言えば、オルコットさんの一夏に対する呼び方は名字から本名に変わっていたな。俺は未だに名字呼びだが……まぁ、いっか。

 

 

 




Q.超音速飛行状態での戦闘、ナイトローグには無理じゃね?

A.スマートブレインに頼んでジェットスライガーを作ってもらうしかありませんね。そもそも移動や逃走手段としては霧ワープで完結しているので、必要性は薄いですけど。


Q.最近、西都の最終兵器たちの影が薄いです。もしかして彼らもリストラされる運命なのでしょうか?

A.これも全部、大人の身勝手な理由でリストラされたゴールドスコーピオンってやつの仕業なんだ。おのれディケイド。おのれポルナレフ。


Q.もしもエボルが愛と平和のために戦っていたら?

A.なんでベルナージュたち火星人に肉体滅ぼされたん?
……みたいな感じ。
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