ナイトローグの再評価を目指す話   作:erif tellab

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少なくともベルトがないと仮面ライダーに分類されない風潮。ザビーやドレイク、サソードに謝るべき。いや、自称したもん勝ちかな?


ナイトローグのお面がバージョンアップしました

  本日より、ナイトローグのお面は普通の仮面へとバージョンアップした。素材はヘルメットであるので、防御力はそれなりにある。視界の問題はISに使う資材をちょいちょいと費やし、万全の状態を保たせている。普通では真似できない芸当だ。

  早朝に起きた俺は早速仮面を被り、色々と支度を済ませてから部屋を出る。その前に目覚めし時計を手にして、まだベッドの中に潜っているのほほんさんの顔の隣に置いておく。

 

「それじゃ、のほほんさん。ちゃんと一人で起きてくださいよ」

 

「う~ん。むにゃむにゃ……」

 

  返事なのか寝言なのか判別がつかないが、心地好さげに惰眠を貪るのほほんさんを尻目に外出する。時刻は六時前。まだ食堂は朝食の準備ができていないので、暇潰しと再評価のためにホウキを手にする。

  そのまま寮の玄関に移動し、掃き掃除を敢行。次に外回りまでやっていると、陸上部の朝練なのだろうか。体育着姿で走り込みをしている鏡さんと遭遇した。

 

「わっ!? もしかして日室くん?」

 

「うん。おはよう、鏡さん」

 

「おはよう。ていうか、お面が進化してるよね」

 

「バージョンアップしたのはつい昨日なんだ。これで織斑先生の出席簿にも耐えられる」

 

「あはは、まだ懲りてないんだ……。それじゃ、また後でね!」

 

「うん。それじゃ」

 

  ほんの少し会話を交わして、鏡さんは走り込みへと戻っていく。俺も走り込みは最近しているが、時間帯はいつも放課後だ。前回まではお面を被って呼吸量を制限させて肺活量を鍛えるアホな訓練をしていたが、今日辺りは外してみようかな。

  七時頃になると朝食が食べられる時間帯となるので、俺はそそくさと食堂に向かっていく。まだ人はおらず、貸し切りの雰囲気が楽しめる。

  食事中は流石に仮面は外しておく。俺が箸をつっついている数分後には、出入口から先生方が数名入ってきた。中には織斑先生の姿が見受けられないので、ほっと胸を撫で下ろす。お互いに目があっては、「おはようございます」と軽く挨拶した。

 

「ごちそうさまでした」

 

  食後は、とっとと仮面を被り直して食堂から出ていく。だがその時、運悪くも織斑先生と鉢合わせてしまった。

 

「日室」

 

  無理やり彼女の横を通り過ぎようとすれば、あっさりと呼び止められる。ここで無視して逃げるのは愚かな行動なので、大人しく対応するしかない。

 

「はい、なんでしょうか」

 

「授業中は仮面を外しておけよ。でないとグラウンドを十周走らせるぞ」

 

「確かグラウンドって一周五キロでしたよね? なら多分余裕です。ウェルカム」

 

「よろしい。ならば追加で百周だ」

 

「すみません。授業中は外しています」

 

「わかればいい」

 

  織斑先生から鬼のようなお言葉が出た瞬間、俺は思いっきり頭を低くして答える。いくらハザードレベル3以上の無人島育ちでも、五百キロは無謀であった。

  それから織斑先生と別れた後は、カバンとかを持って教室に一番乗りで到着。自分の席に荷物を置いた上で、新たに雑巾とバットフルボトルを用意する。これからやるのは窓拭きだ。

  無論、優先するべきは色々と難しい外側である。バットフルボトル片手に壁の上に立った俺は、黙々と窓ガラスを綺麗に拭いていく。

  すると、教室の中から一人の女子が声を上げた。

 

「なんかシュールだ!?」

 

「あっ。おはよう、谷本さん」

 

「うん、おはよう。とにかくいつにも増しておかしな事してるよね。何この窓拭きの新スタイル?」

 

  今日も谷本さんのツッコミは衰える事を知らない。さらりと通常の会話と織り混ぜる高等なテクニックだ。

 

「バットフルボトルの特性は前にも説明したよな?」

 

「うん。コウモリの真似が大体できるって」

 

「つまり、世界一人身事故の起こらない窓拭きを今やっている。ナイトローグに変身した方がずっと安全だけど」

 

「いや、いくら壁も歩けるからって……山田先生に見つかったらびっくりされちゃうよ? それこそ、口から心臓が飛び出る勢いで」

 

  谷本さんにそう言われて、窓拭き最中の俺を目撃する山田先生の姿を想像してみる。確かに、あの頼りなさげな先生にとっては心臓と悪い事この上ないだろう。

  止まっていた手を再度動かし、ペースアップさせる。谷本さんの言う事には一理ある。織斑先生は普通にスルーしてくれるだろうが、山田先生の場合はどうしてもスルー力に期待できない。

 

「それは……そうだな。じゃあ早く終わらせるか」

 

「うん、そうした方がいいよ」

 

  そうして俺と谷本さんはお互いに相槌を打つ。窓拭きも八時をちょうど迎えた頃には終了し、次はフローリングワイバーで天井を拭く。逆立ちしたまま直接拭いた方が早いが、頭に血が溜まって苦しくなるのでオススメできない。

  次第に教室へ入ってくる女子の数が増え、SHMの時間が刻一刻と迫る。天井拭きは十分程度で終わらせ、テキパキと掃除用具を片付ける。その最中にも周囲の視線が俺に突き刺さってくるが、仮面がどうしても気になるようだ。まぁ、ほんのサプライズだと思ってほしい。

 

「おはよう、弦人。……ん? なんかお面が変わってないか?」

 

  遂には一夏とも遭遇する。仮面をまじまじと見つめる彼の表情は、なんだか間抜けだった。

 

「バージョンアップした。つい昨日の話」

 

「そう! ワタシも手伝ったのよ!」

 

  仮面について説明すると突然、視界の中に京水がひょっこりと飛び出してくる。本当にいつの間にか登場してくるよ、この子は。

  次に京水は俺の後ろに立ち、仮面に両手を添える。特に細かな操作をしていないが、ちょっと工夫をした触り方をする事で仮面後頭部がしゅっと開放される。G3などの仮面を意識したハイテク仕様だ。

  京水が仮面を手にした後、一部始終を静かに見ていた一夏は途端に興奮し始めた。

 

「おおっ!? なんかそれカッケェな! すっげぇ!」

 

「こいつのロマンがわかるようだな。同志よ」

 

「ああ!」

 

  共感を得た俺たちはガッシリと握手を交わす。やはり、男のロマンは男同士でないとわかり合えないからな。京水は例外。

 

「ねぇねぇ、一夏ちゃんもコレ被ってみる?」

 

「え? いいのか、泉さん!?」

 

「どうぞどうぞ! 良いわよね、弦人ちゃん!」

 

「もちろん!」

 

  俺が快く許可を出すや否や、仮面を京水から受け取った一夏は早速被る。それと同時に後頭部が自動で閉じる音は、いつ聞いても気持ち良かった。

 

「織斑くん、おはよー! ……あれぇ?」

 

  ふと横から女子が一夏に挨拶をするが、俺と彼を交互に見比べながら、鳩が豆鉄砲を食らったような顔になる。完全に困惑しきっているのが丸わかりだった。

  当の一夏は仮面を被ったまま、女子に言葉を返す。しかし、こうして客観的に見てみると、首から下のスーツまで揃えないと少々物寂しい気がするな。追加で今度作ってみるか。

 

「ナイトローグの仮面だってよ。弦人と泉さんが作ったって。コスプレっぽいのに視界が被ってない時と全然変わってないんだ」

 

「へ、へぇー。そうなんだ……」

 

「それよりもさ! 転校生の話聞いた? 隣の二組だって。しかも中国の代表候補生らしいよ」

 

「転校生? この時期にか?」

 

  もう一人の女子から情報をもらった一夏もといナイトローグは、きょとんと首を傾げる。

  まだ四月なのに一年生の転校? 正しくは転入の間違いだろうか。伝言形式の噂話に尾ひれがついているみたいだ。

 

「一夏。今のお前に女子を気にする余裕があるのか? 来月にはクラス対抗戦があるだろう。あと仮面を外せ。見ていて恥ずかしい」

 

「そうですわ、一夏さん。クラス対抗戦に向けて、より実戦的な訓練をしましょう。相手ならこのわたくし、セシリア・オルコットが務めさせていただきますわ。今のところ専用機持ちのクラス代表は一組と四組だけですから、みっちりと訓練を積めば十分に勝てます。あ、できれば仮面は外していただきたいのですが……」

 

「箒、セシリア。俺、この仮面のカッコ良さを理解してもらえないのが悲しい」

 

  篠ノ之さんとオルコットさんに仮面を外せと言われた一夏は、大きく肩を落とす。俺も理解されなくて内心ガッカリとしている。

 

「その情報、古いよ!」

 

  突如、教室の入り口から誰かの大声が聞こえてきた。教室にいた人たち全員の注意がそちらに向き、その人物の姿を目にする。

  茶髪のツーサイドアップテールに、肩口を切り開いた改造制服。ドアにカッコ良くもたれている少女は、言葉を続けた。

 

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

 

「何やってんだよ、鈴。すげぇ似合わないぞ」

 

  しかし、一夏のその一言で雰囲気は台無しになる。鈴と呼ばれた少女は先ほどの気取った喋り方を大きく崩し、普通に反応する。

 

「んな!? アンタにも言われたくないわよ、ヘンテコなマスクを着けて!」

 

「弦人、聞いたか!? ナイトローグがバカにされたぞ!」

 

「ヘンテコ……」

 

  あんな真正面から言い放たれるのは初めてだった。ナイトローグをバカにしたのはとても許せないが、それよりも深く心が傷付く。ビルド本編がもたらした事実が、俺に重くのし掛かる。

  いや、ナイトローグのデザインはカッコいいはずなんだ。それでも戦闘力最低というレッテルがナイトローグのイメージを大きくマイナスへと振り切らせている。ヤバい、俺の中でナイトローグが朽ちていく。気持ちを沈ませていく。

  気が付けば黒板の前まで移動していた俺は、見事なまでの体育座りを決め込んでいた。顔を俯かせて、盛大に落ち込む。

 

「弦人ぉ!? 鈴、なんて事言うんだ!」

 

「知らないわよ! 私、そんなのに興味ないし!」

 

  その間にも二人は口論を始める。いや、いいんだ。俺が立ち直ればいいだけの話だから。

  それでも、早々な精神的復活はまだ叶いそうにない。ナイトローグがカッコいいなら、どうしてマッドローグと造形が被っているんだ? やっぱりスーツ改造? ナイトローグがスーツ改造されて、文字通りこの世から永遠におさらばされたの?

 

「まぁまぁヒムロン。元気出しなよ~」

 

「ヘンテコ……」

 

「意外と繊細なんだね。よしよし」

 

  後からやって来たのほほんさんと鏡さんに頭を撫でられる。手間を掛けさせてごめん、二人とも。気にしないでおくよ。

  その頃、京水はあの不届き物の前へと躍り出ていた。自分よりも頭一つ分だけ小さい相手を睨み付けて、俺の代わりに怒ってくれる。

 

「素人はお黙り! アンタなんかに弦人ちゃんの崇高なセンスはわからないわ!」

 

「誰よアンタ! 私は一夏と話してるの! これ見よがしに腕組んで胸を押し上げて、私への当て付けのつもり!?」

 

「あら、嫉妬? 嫉妬なのかしら? ふふーん」

 

「上等ぉ! 私にもその成長分を寄越しなさい!」

 

  だが、早くも話の主旨がナイトローグから胸の成長へと脱線していった。これが女子か……。

 

「おい」

 

「「なによ!?」」

 

  その時、不思議な事が起こった。いつの間にか、彼女たちの横に織斑先生が立っていたのだった。まるで審判者のように厳かな雰囲気を醸し出し、目だけで二人を沈黙させる。

 

「ち、千冬さん……」

 

「織斑先生と呼べ。もうすぐSHRの時間だ。自分のクラスに戻れ」

 

「は、はいっ!」

 

  そうして、あのにっくき少女は隣の二組へと走っていった。俺も悠長にはしていられない。織斑先生に怒られる前に、意地でも自分の席に戻らなければ。

  この後、阿吽の呼吸で一夏から仮面を返却してもらった。織斑先生の厳しさは弟が一番知っているためか、彼女が教室に入って以降の動きは非常にキビキビしていた。

 

 

 ※

 

 

  スチームブレードを手にした素体カイザーが、プレススマッシュを滅多切りにする。某研究所の試験ルームで繰り広げられている戦いは、最後まで素体カイザーの優勢だった。

 

《エレキスチーム》

 

  ささっとバルブを回して刀身に電気を纏わせた素体カイザーは、迷わず一閃。胴体を容易く両断されたプレススマッシュはその場に崩れ落ち、パッと肉体を消滅させる。素体カイザーが相手にしていたのは、実体を持った模擬戦用ホログラム体であった。

  戦闘終了後、素体カイザーは両手をぶら下げて立ち止まる。返事はない。正真正銘、依然としてマシーンの状態である。

  戦闘の様子を別室でモニタリングしていた研究員たちは、大急ぎで戦闘データの解析とまとめ作業をおこなう。端末に繋がっているキーボードをタイピングする音が小気味よく鳴り響く。

  その中でチーフは、モニター越しに素体カイザーの姿を品定めする。そして、一番近くにいた研究員に話し掛けた。

 

「ふむ。リモコンブロスの方はどうしている?」

 

「現在、稼働率は八十パーセントを越えています。完成予定後のカイザーより性能を抑えているにしても、凄まじい成長速度です。ハザードレベルもぐんぐん伸びています。後は飛行ユニットのクラフトギアを搭載させれば、完成率は百パーセントとなります」

 

「そうか」

 

  そう言って頷いたチーフが片手間で手元の端末を操作する。その指示に従い、室内にある中央モニターの映像が切り替わる。

  そこには、左半身に水色の歯車型装甲を身につけた戦士が、大量のガーディアンや強化型スマッシュと必死に戦っていた。初期装備であるネビュラスチームガンの存在を忘れて、ほぼ肉弾戦で荒々しく挑んでいる。

  音声は流れてこない。あくまで戦いの様子を写し出すだけだ。それでも、敵を片っ端から殴り潰す痛々しさはひしひしと伝わってくる。

 

「クラフトギアの搭載の順番はどうしますか? 流石に閉鎖空間では試験内容の限界があります」

 

  一方で研究員は映像の結果以外に何の感慨も抱かず、淡々とチーフに質問した。彼は少しの間だけ顎を撫でて、答えを出す。

 

「カイザーを優先しろ。被験体も使って装着試験もおこなう」

 

「よろしいのですか?」

 

「ああ。そうだな……確か、IS学園の元用務員の奴がいたな? AIに従うだけで意識がなくとも、場所を知っていれば空間転移が可能になる。戦闘データの収集にはちょうど良い。時期は来月のクラス対抗戦がある日で構わないだろう」

 

  そこまで言って、チーフはニヤリとほくそ笑む。勝手な理由でIS学園に武力介入するなど国際問題に発展するが、そんなものは彼に関係ない。そもそも、国際問題になろうが下手人の所属さえわからなければ意味がない。

  こうして出撃予定を組まれた素体カイザーには、被撃墜時にネビュラスチームガンによる強制帰還を命令信号として刻ませておく。帰還方法はナイトローグの霧ワープと何ら変わらない。

  その際に装着者を置いてきぼりにする可能性があるが、ネビュラガスの特性により前後の記憶が失われる。浴びた時間と量に比例して記憶喪失の度合いは酷くなる。まず身柄を拘束されても、ペラペラと自分たちの事を話される心配はなかった。もしもの場合が起きても、その時は処分すればいい。

 

「さて、そろそろ間欠泉の定期点検だな」

 

  次にチーフは手元の端末へと本格的に集中する。端末の画面には監視カメラの映像が映されており、その中で真っ赤に光る泉がある方を注視する。

  ――否、正確には泉ではなかった。水は一滴もない。ただ単に穴から赤い光が灯され、そこからネビュラガスが溢れ出ている。穴の周囲は人が落ちないように壁で囲われ、厳重な管理下に置かれていた。




Q.クラフトギア?

A.飛べないカイザーはただのカイザー。飛べないブロスはただのブロス。飛べない豚はただの豚。一応コイツら、ISという分類なので。


Q.間欠泉? 赤い光? これって……

A.推して知るべし。


Q.被験者の調達方法は?

A.死刑囚優先、時々一般人。後者は嗅ぎ付けられた場合にのみ、拉致るついでにましましのネビュラガスで記憶を消す。ハザードレベル2未満ではない事を祈ってください。
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