ナイトローグの再評価を目指す話   作:erif tellab

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ブロス兄弟の変身音はリモコンの方が好きです。ピポピポパーポーの電子音がたまらない。


ナイトローグとリモートコントロールギア君

 

  その日の朝、俺は小型テレビをつけながら支度を整えていた。時刻としては六時前。のほほんさんは例の如く、目覚まし時計が鳴り響くまですやすやと眠っている。

  普段はテレビは見ずにさっさと支度を済ませるのだが、今日に限っては虫の知らせなのだろうか。とにかく、テレビのニュース番組を見ずにはいられなかった。

  そして、なにやら大きな事件が生中継されているのに気づく。どうやら、大雨の影響で堤防が決壊し、とある地域が大洪水に見舞われているようだった。その辺りは住宅が密集しているため、消防や自衛隊のヘリが総出で民間人の救助に出ている。また、ISも出動していた。

  しかし、氾濫した水位は二階建て一軒家を容易く飲み込むほどで、救助のアプローチ方法は空からしかない。IS込みでも短時間で全ての人を助けるのが不可能なのは、目に見えていた。

 

 ――助けて! ナイトローグ!――

 

  その時、誰かが俺の脳内に直接語り掛けてきたような気がした。一瞬、幻覚だと疑ってしまうが、よくよく考えれば大洪水は見過ごせてはおけない事態。俺が理想的なナイトローグを目指すナイトローグである限り、助けに行かないのはナイトローグのポリシーに反していた。

  まさか、入学して二ヶ月も経たずに学園に抜け出す事になるとは思いも寄らなかった。だが仕方ない。織斑先生に許可を取りに行こうとしても、現地の人に任せろと言われるのが関の山。一々規則に縛られて、人助けができるものかよ。

  俺は一人の学生である前にナイトローグである。以前は社会のしがらみに縛られず、好き放題に人助けや慈善活動をしてきた。躊躇うなんて今さらだ。

  それでも何も言わないで外出するのは後で恐ろしくなるので、書き置きだけはしておく。主に織斑先生宛に。

  とっとと制服を着た俺は、大急ぎで学生寮の外に出る。周りに人がいない事を確認すると、おもむろにバットフルボトルをトランスチームガンにセットする。

 

《Bat》

 

「蒸血」

 

《Mist match!》

 

《Bat. Ba, Bat. Fire!》

 

 さぁ、人命救助の始まりだ……!

 

 ※

 

  朝の六時頃からIS学園に出勤しているのは、ほとんどが早番の教師や事務員たちだ。こんなに朝早くから多忙になる事などほぼあり得ないので、当番の人数は少ない。

  そんな中、真耶に叩き起こされた千冬は大急ぎでスーツに着替えた後、問い合わせが続発している事務室をスルーして職員室へ急行する。すると、室内に設置されている液晶テレビからとんでもない放送を目にする。

 

『見てください! ナイトローグです! ナイトローグが消防や自衛隊の人命救助を手伝っています! コウモリの翼を生やして飛んでいます! お年寄りや子どもを抱えてヘリに送っています!』

 

  そんなニュースの生中継を目撃した千冬は天を仰ぎ、真耶は敢えなく言葉を失う。他の教員たちは、事務室から度々寄越される電話に応対している。

  その時、職員室に本音が飛び込んできた。肩で息をつきながら、一枚の紙を片手に千冬の姿を探す。

 

「はぁ……はぁ……織斑先生! 織斑先生はいますか!?」

 

「……どうした、布仏」

 

「あの、ヒムロンがこんな書き置きを!」

 

  本音から書き置きの手紙を静かに受け取った千冬は、おもむろにそれを読む。内容は次の通りだ。

 

『○○県○○市にて大洪水が起きているようなので、人助けしに行ってきます。もちろん、霧ワープで。俺を探すのは大洪水が収まった後にしてくれると幸いです。 日室弦人』

 

  刹那、千冬は手紙をクシャクシャに握り潰した。

 

 ※

 

  早速現地へと到着した俺は多忙に追われていた。堤防が決壊したのが早朝という事もあって、多くの人が家の中に閉じ込められている。水位が高いせいで、二階へと避難している人ばかりだ。

  どうして事前に避難指示が出されなかったのかが気になるが、今はその事を考えている場合ではない。一秒でも早く民間人を助けて、安全な場所へと避難させなければ。

  IS学園の実技の時間などで散々飛んでいたおかげで、ナイトローグの飛行可能時間はとんでもなく上がっている。慣れが一番の要因だろうか。少しの時間だけ羽休めを挟めばすぐに飛べるので、余分なタイムロスはほとんどない。

 

「そこのナイトローグ! 誰の許可があってここにいるの!?」

 

  次の一軒家の屋根の上に降りて、二階の窓にノックをする。すぐさま窓を住民に開けてもらうと、そこには一組の夫婦と子どもたちの四人家族がいた。

 

「ナイトローグだぁー!」

 

  中でも一番幼い子が俺を見つけるや否や、喜びの声を上げる。キラキラとした視線がとても眩しい。

 

「すみません、ナイトローグさん! 子どもたちを先にお願いします!」

 

「わかりました! お二人もすぐに助けますから!」

 

  子ども二人を纏めて抱えた俺は、再び羽ばたく準備をする。最初からハイスピードで飛ばせば子どもたちの負担が大きくなるので、ゆっくり慎重に気をつけなければ。

  また、俺がガンガン救助したおかげでヘリの中も、救命ボートの上も近くにいるものは満員だ。このまま直に避難所へ連れていった方が、もしかしたら早いかもしれない。

 

「ナイトローグ! さっきから話聞いてる!? 無断でしょ? 政府どころか市の要請もなしに無断で出動してきたんでしょ!?」

 

「あっ、そちらの方。この子たちの両親がまだ残っているので、良ければ手を貸してくれませんか?」

 

「……あぁ、もう! 話は後にすればいいんでしょ!」

 

  ついでに打鉄を纏った女性が都合良く近くを訪れていたので、俺は彼女に手伝ってもらうように頭を下げる。彼女は渋々としながらも、この子たちの両親も抱えてきた。

  そう、話は後回しにしてくれれば大いに助かる。これでも織斑先生の雷が怖すぎて、内心ではとてもビクビクしているのだ。今はとにかく、救助活動に専念して恐怖心を誤魔化したい。

  トントン拍子で避難所へ到着し、家族たちを下に降ろす。彼らはしきりに抱き合い、俺たちへ何度も感謝の言葉を告げる。キリの良いところで俺たちはその場を立ち去り、活動場所へと戻ろうとする。

  その時だった。避難所の出入口付近にそいつの姿を見つけたのは。そいつは俺たちと同じように家族をここまで運んできたようで、小さな子とお別れの挨拶をしていた。

 

「ありがとうね、お兄ちゃん! ……お兄ちゃんで合ってる?」

 

「おう、じゃあな。お兄ちゃんで構わねぇ」

 

  左右非対称にボディデザインに、左半身は歯車の形をした水色の装甲が張られている。右半身は首から下が武骨な雰囲気を醸し出しており、顔は右のリモコンみたいなパーツと左の歯車みたいなパーツに別れている。

  間違いない。アイツは……アイツは……。

 

「リモコンブロス君!? リモコンブロス君じゃないか!」

 

「へ? げぇっ、ナイトローグ!? え、何で? 名前バレしてんの何で!?」

 

  俺に突然呼ばれたリモコンブロス君は激しく動揺する。この様子からして、自分の名前を誰にも名乗っていないパターンらしい。

  しまった。いくらリモコンブロス君の事を知っているからと言って、それは余りにも一方的すぎていた。ついつい迂闊な真似をしてしまった自分を愚かに感じる。

  彼は西都の最終兵器とは別人。精神的動揺を与えないとクローズチャージに勝てなかった最終兵器とは違う。全くの赤の他人。仮面ライダーと自称しておいてマトモな活躍もせず、株が大赤字の彼とは到底似つかない存在。これをしっかり念頭に入れておかなければ。

  この間にもリモコンブロス君は俺に駆け寄り、逃げられないように肩を掴んで問い詰めてくる。

 

「おい、どういう事だ? どうして俺の名前を知ってる? どこで知った? どこで知ったぁ!?」

 

「お、落ち着いてリモコンブロス君! こんなにも取り乱すなんてらしくないじゃないか、リモコンブロス君!」

 

「いや、俺としてはまるっきり初対面なんだけど! そんな言われ方されるぐらいにお前と交流なんてないんだけど!」

 

「ごめんね、リモコンブロス君! 悪気はなかったんだ! まさか名前を呼ぶだけでこんなにも怒られるなんて思いもよらなかったんだ! 本当にごめん、リモコンブロス君!」

 

「リモコンブロス君しつこい! 何そのデモキンを正義くんって呼ぶ感じは!? てかリモコンブロスって呼ぶなぁ! もう周りにバレバレじゃねーかぁぁぁ!!」

 

「静かにしなさい!!」

 

  すると、打鉄の人から一際大きな怒声が上げられた。びっくりした俺とリモコンブロス君は、自ずとだんまりになる。

 

「……喧嘩するのは後。私だって聞きたい事が山ほどあるんだから。ほら、救助に戻るよ!」

 

「「い、イエッサー!」」

 

  何故か彼女に指揮下に組み込まれる事になった俺たちは、すごすごと彼女の後を付いていった。その際、リモコンブロス君が腰に二基の歯車スラスターを出して飛んでいたのには、思わず目を見開いた。

  そうして救助活動は午前九時過ぎまで続いた。リモコンブロス君の協力や自衛隊、消防の皆さん殿様連携がなければ、三時間足らずで終わらせるなんて無理だっただろう。残すは行方不明者の捜索だけだが、このタイミングでIS学園から帰ってこいとの通達がやって来たので断念。目の前にいる打鉄の人を振り切るならともかく、後々に織斑先生本人に追われると考えるとすんなり諦めがついた。熾烈な鬼ごっこをやるだけの気力は湧かない。

  それに、曲がりなりにも俺には帰る場所がある。いつまでも放浪するのは頂けない。リモコンブロス君も、これからどうするのかが気になる。

 

「ところでリモコンブロス君。君はどうするの?」

 

「ああ、俺? ええっとな……」

 

  そうやってリモコンブロスは数瞬、考え込む。それから両手をポンと叩くと、ネビュラスチームガンを素早く取り出して俺と打鉄の人に銃口を向ける。突然の事に打鉄の人は驚き、武器は出さないまでも咄嗟に身構えた。

 

「ちょっと!? やっぱり危害を加えるつもりなのね!?」

 

  彼女の必死の問いにリモコンブロス君は答えない。周りに緊張が走り、俺も気が気でなくなる。光弾を避ける自信があっても、俺がトランスチームガンを抜くより早く撃たれるのは確実。しかし、お互いに手を出すのは我慢して、じっと様子見するのに留めた。

  数秒後、リモコンブロス君は気だるげにネビュラスチームガンの銃口を上にした。次に恥ずかしそうな仕草をして、己の真意を告げる。

 

「冗談だ。悪かったな。それじゃーな」

 

  瞬間、ネビュラスチームガンの引き金を引いたリモコンブロス君は霧ワープを実行した。全身が霧の中へと隠され、晴れた先には忽然と姿を消している。

 

「空間転移!? ウソでしょ……!」

 

  対して打鉄の人は、愕然とした表情に包まれていた。口に手を当てて、まるで信じられないといった様子だ。

 

「……じゃあ、自分も失礼します」

 

「あっ!? ちょっと!?」

 

  俺は彼女の呼び止めを聞かず、リモコンブロス君と同じくそそくさと霧ワープする。行き場所は当然、IS学園だ。ただし彼とは違ってトランスチームガンは出さない。セントラルチムニーよりワープ用の黒い霧を発射する。

  そのまま校舎の玄関前に着いた俺は変身を解除。もうここまで来たら織斑先生に怒られるのは確実なので、学生寮へカバンを取りに行くついでにのんびりと歩く。これ以上の物怖じはしなかった。

  だが、まだ悪い事をした分の倍だけ良い事をこなしていないと感じたため、いっそのこと校庭を片っ端から清掃する事に決めた。一人だと時間がどうしても掛かってしまうが、ナイトローグに変身して作業効率を上げる事で解決。一度や二度の無断変身など、大して差はないだろう。気持ちは吹っ切れた。

  かくして更に一時間が経過し、校舎一階の外側の窓吹きが全て完了したところで背後に人の気配を察知する。振り返ってみれば、怒髪天を衝かせた織斑先生が仁王立ちしていた。彼女から放たれるプレッシャーは俺の足をすくませ、間接的に逃げられないようにする。加えて俺は彼女の姿に、火星を滅ぼさんと起動するパンドラタワーのおぞましい姿を垣間見た。

  もうダメだ。おしまいだ。俺がそう察した直後、織斑先生は固く閉じた口を重々しく動かす。

 

「日室。細かい話は昼休みにする。今は授業を大人しく受けろ」

 

「……はい」

 

  肯定の意志を示す他になかった。もちろん、昼休みを迎えれば彼女の怒りを一心に受ける事となる。

  ちなみに、今日から一年一組にフランスとドイツの転入生二人がやって来たのはここだけの話。一夏の奴、訳も分からずにドイツの人にビンタされたってよ。もう女難と呼ぶレベルべきではないな。

 

 

 

 





Q.エンジンってどういう特性なのだろうか……?

A.単純に考えて馬力が上がったりだと思います。リモコンはテレビの奴をイメージすれば良いかと。……理論上なら透明化以外にも消音、電源オンオフとかできるはず。


Q.リモコンブロス君の正体は?

A.IS世界の住民であるのは確かです。あっ、某最上さんではないですよ? あの人は例外。

Q.この世界について一言。

A.電王スタイル。すなわち、IFルートは存在せず未来は一つだけの世界。IFルートは文字通り消滅して最初からなかった事にされるが、イマジンの首領であり特異点でもあるカイのようなイレギュラーは時々ある。

つまり、イマジンたちはIFルート未来の元人間だったりする。横暴な奴ばかりなのは、完成したパーソナリティー剥き出しだから。多分。例外はデネブやテディ、キンタロス。それでも我の強い奴ばかりである。

それと、平行世界そのものは時の運行に関係なくちゃんと存在している。ディケイド理論。
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