ナイトローグの再評価を目指す話   作:erif tellab

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Leave all behind (現世からのサヨナラ的な)


ナイトローグ的なベストマッチの相手

 織斑先生の説教から解放された俺は、一夏の誘いもあって昼食を共にしようと屋上へ移動した。階段を駆け上がり、屋上への扉を開く。するとそこには、大勢の人たちが待ち構えていた。

  まず見つけたのは篠ノ之さん、鈴音さん、オルコットさんの三名。次に京水、谷本さん、鏡さん、のほほんさんの四名。最後に男性のシャルル・デュノアさん。かなりの大所帯だ。

 その中でも、わなわなと震えていた篠ノ之さんが一夏に向けて大声を出す。

 

「また人が増えたぞ! どういう事だ、一夏!」

 

「どういう事って、皆でワイワイした方が楽しいだろ。なぁ、弦人?」

 

  流れ作業のように俺へ話を振る一夏。純粋な眼差しをしている辺り、どうやら正気だな。篠ノ之さんたちにとっては、余計な人がいない方が恋敵たちとの競争に集中できるというのに。

 

「私たちは遠慮したんだけどね……」

 

「織斑くんが日室くんも呼ぶって言ったから」

 

「スタンバってたわ!」

 

 ふと視線を横にずらせば、谷本さんと鏡さん、京水からそんな返事をもらう。一夏の奴、なんか攻略がごり押し以外だと難しすぎるだろ。面倒な。

 しかし、こうなったからには仕方ないので、そのまま昼食を取る事にした。デュノアさんは少々居たたまれないような表情をしながらも、場の空気を少しでも盛り上げるためか俺に話し掛ける。

 

「へぇー。弦人ってお弁当自分で用意してるの?」

 

「うん。最初は鏡さんに作ってもらってたんだけど、もらいっぱなしは悪いし。今はおかずの交換とかに落ち着いた」

 

「私は別に構わなかったんだけどね。あ、ハンバーグ食べる?」

 

「よし、じゃあこっちはガチのだし巻き卵を……」

 

 そうして鏡さんと弁当の具を交換する。彼女が渡してきたのは一口サイズのハンバーグに対し、俺が出すのは焦げ目なし・白身なしのだし巻き卵だ。

 次の瞬間にはハンバーグを口にする。冷たくなっているが、美味しさは別に損なわれていない。冷たくても美味しいのが弁当の良いところだ。いつもは食堂の定食で済ませている谷本さんやのほほんさんも、今日は珍しく弁当を持ってきていた。二人のは小さくて可愛らしい。

 その一方で京水は、さりげなく俺にご飯を食べさせようとしていた。これはいつもの事なので、華麗にかわして自分の分の弁当に集中する。京水はムッとなったが、すぐに機嫌を直して話を切り出す。

 

「ところで弦人ちゃん。織斑先生に怒られたにしては、解放されたのが早くないかしら?」

 

「いや、怒られたって言うか……怒ってたのは間違いなかったんだ。ただ、織斑先生に『弁明は?』って聞かれたから“ナイトローグとして当然の事をしました”って答えると……無言で頭に出席簿を落とされただけだった。あと、反省文の用紙を押しつけられた」

 

「あら? 織斑先生にしては珍しいわね?」

 

「驚き呆れたんじゃない? 俺、問題児だから」

 

「とうとう認めちゃったよ」

 

 最後に谷本さんから突っ込まれた。ノリの良さでは俺とかなり仲良しな京水はニコニコと微笑み、谷本さんと鏡さんは苦笑する。のほほんさんは、モグモグとご飯を食べていた。

 

「一夏、今日は唐揚げを作ってきたのだが……」

 

「私は酢豚よ!」

 

「わたくしも、今日は腕によりをかけてきましたわ!」

 

 その傍らでは、篠ノ之さん以下二名が一夏に弁当を差し出す。一夏はそれらを順々に食べていった。のほほんさんもちゃっかり、篠ノ之さんから唐揚げをもらっている。

 瞬間、どこからともなく洗剤の香りが微かに漂ってきた。いきなりの事に訝しんだ俺は辺りを見回すが、それらしいものは特に見当たらない。

 

「一夏さん、どうぞ。サンドイッチです」

 

「おっ、セシリアのも美味そうだな」

 

 そのやり取りを目にしたのは偶然だった。バスケットに納められている大量のサンドイッチと、一夏がセシリアから受け取った一つのサンドイッチ。鼻を利かしてみれば、サンドイッチの方から洗剤の香りがしてきたような気がする。

 そんなバカな事があるものかと、自分で思う。しかし一度疑ってしまうと、頭から離れなくなる。なので、試しに俺はこの場にいる全員に確かめてみた。

 

「……なぁ? なんだか洗剤の匂いしない?」

 

「え? そうかなぁ?」

 

 真っ先に答えるのはデュノアさん。だが時すでに遅く、一夏はサンドイッチを頬張った後だった。顔が青くなり、これを見ていたのほほんさんが彼の名を呼ぶ。

 

「オリムー? 顔青いよ?」

 

 一夏は何も答えない。顔を青ざめさせたまま、強迫観念に駆られたような雰囲気で咀嚼を続けて、飲み込む。気がつくと、俺以外の人も様子が急変した彼を見守っていた。

 それから一夏はオルコットさんと向き合う。

 

「セシリア」

 

「は、はい? なんでしょうか?」

 

「……洗剤」

 

 彼の言葉はそこまでだった。気を失った一夏はそのまま後ろへと倒れ込む。手にはサンドイッチを固く持っていたままだった。

 

「ど、毒殺だぁぁぁ!? スタァァァァク!!」

 

「日室さん!? 人聞きの悪い事をおっしゃらないでくれませんか! わたくしはただ、洗剤を入れただけで……」

 

「洗剤!? アンタ、洗剤なんて使ったの!?」

 

 オルコットさんのカミングアウトを耳にした鈴音さんが、たちまち彼女へと掴み掛かる。オルコットさんはアタフタしながら、見当違いな言い訳を続ける。

 

「え? 洗剤は使いませんの!?」

 

「大バカね! 使う訳ないじゃない!」

 

「そ、そんなぁ……!」

 

 鈴音さんにそう断言されたオルコットさんは愕然し、大きく肩を落とす。この間にも篠ノ之さんが一夏を呼び掛けていたが、目覚める兆しが感じられなかった。

 

「一夏? 死ぬんじゃない! 一夏ぁぁぁ!」

 

 この後、急いで彼を医務室へと運ぶ事になったのだが、起きた彼は一時間前後の記憶を綺麗さっぱり失っていた。俺はお前を、女の子のメシマズ料理を懸命に食べてあげる勇者だと称えよう。

 ちなみに、京水がオルコットさんに料理を教える事になったのはオマケの話だ。ついでに己の恋愛論も説いていたが、直球で好意を伝える戦法は恥ずかしくて無理だったそうだ。

 

 ※

 

 今月中に開催されるISバトル学年別トーナメントがタッグ形式へと変更されたため、ベストマッチな相方探しに誰もが奔走していた。その中でも一夏、デュノアさんを相方にしたがる人が多くを占めていて、競争率はとんでもなく跳ね上がっていた。篠ノ之さんたちの健闘を祈る。

 俺の場合? 審議の結果、じゃんけんで京水が勝ち残ったのですぐに決定した。専用機を持っている人と組むのが優勝の前提だと思うが、相棒が京水ならベターなチョイスだと思われる。せっかくナイトローグの勝ち星を荒稼ぎできるチャンスだ。とことん勝ちに行く。

 優勝の障害となるのは、まず専用機持ち全員であるのは確か。ドイツから転入してきたボーデヴィッヒさんも含めて、敵の戦力は五。ISコアが世界で合わせて五百個未満なのにどうして一年でこんなに数が集中しているんだ。

 だが、事前に相手のISの特徴はあらかた知っているので、恐るるに足りず。一夏の頼みで訓練に時々付き合っていた甲斐があった。加えて、ナイトローグの開運フォームがあれば万全だ。

 なんだ、行けるじゃないか。勝算が十分にあるじゃないか。良いだろう。トーナメント当日こそ、ナイトローグの戦闘力最低の風潮を払拭させる時だ。わくわくが止まらない。

 

 しかし、放課後の半ばになるまで俺は知らなかった。まさか、オルコットさんと鈴音さんがボーデヴィッヒさん相手に私闘騒ぎを起こして、逆にぼこぼこにされてしまうなんて。

 

 夕方の医務室。大勢の女子から抜け出していった一夏とデュノアさんと擦れ違うようにして訪れた俺は、果物ナイフでリンゴを切っていた。さっと出せる見舞いの品がこれぐらいしかなかった。

 まだ相方探しをしている女子たちは、俺が既に京水と組んだ事を知っているため、もれなくスルーしてもらった。誰かが一夏とデュノアさんが組んだと言っていたのだが、果たして本当かどうか。

 適当に切り分けたリンゴの皮をウサギに模して皿に乗せる。爪楊枝も添えて目の前にいる二人に差し出す。

 

「どうぞ、オルコットさん。鈴音さん」

 

「怪我人の見舞いぐらいは仮面を外しなさいよ」

 

「これは失礼」

 

 鈴音さんの指摘にコクりと頷いた俺は、すぐにナイトローグの仮面を外す。確かに、変身状態でなければ仮面オンリーで見舞いに赴くとかどうかしている。

 彼女たちは二人して包帯を身体のあちこちに巻き、ベッドの上で安静にしている。一個のリンゴを俺も含めて三人前にしたのだから、食べ残される事はきっとないだろう。

 さて、リンゴがそれぞれの手に渡ったところで早速いただこう。まず、俺の分のウサギリンゴたちにはありったけの爪楊枝をぶっ刺す。ラビットタンクスパークリング絶対許さない。

 

「日室さん? それはちょっと、残酷すぎなのでは……?」

 

「え? いや全然。ウサギには個人的な恨みがあるだけです。あと戦車と炭酸飲料」

 

「はぁ……」

 

 ふと尋ねてきたオルコットさんだが、生返事に終わる。ラビットタンクスパークリング絶対許さない。

 この後、二人から事の経緯を詳しく聞かされた。半分が手持ちのISのダメージが大きすぎてトーナメントに出れず、一夏の争奪戦に遅れてしまう事による愚痴であるが。それと、ボーデヴィッヒさんに対しても恨み言をのたまっていた。

 

「それよりもさ、弦人って京水とペア組んだんだって? 割りと即決じゃない。あの子とどういう関係なのよ? どこまで進んだ?」

 

「あっ。わたくしも気になりますわ! 泉さんにはだいぶお世話になっていますもの」

 

 すると、二人からそんな事を聞かれてしまった。他人の恋愛模様がそんなにも気になるのだろう。やはりれっきとした女子である。

 とは言え、彼女たちが聞きたいような事は何一つない。強いて言うなら、気が合いすぎてめちゃくちゃ仲が良いだけだ。京水は相変わらず、ほぼ一方的に大好きアピールをしてくるが。

 

「特に……ないな」

 

「ハァ!? 嘘でしょ!?」

 

「ありえませんわ! あんなにも泉さんに抱き着かれておいて!」

 

 俺がそう答えると、二人に信じられないといった顔をされる。そんな事言われてもなぁ……。

 

「まずどうしてそうなったのかが身に覚えないしなぁ。いつの間にか、あんな調子の京水が当たり前になってるんだけど。俺からの返事とかはなぁなぁになってる感じ。不思議な事が起こった」

 

「で、アンタはどうするの? あの子の気持ちに答えるの? 答えないの?」

 

「うーん……別に悪く思ってないけど、ナイトローグと比べると本気で好きって言える自信が……」

 

「おいコラ。比較対象」

 

 瞬間、鈴音さんに軽く怒られる。失敬な。これでもナイトローグを愛しているのは真実だ。もちろん、男女の関係と切り離して考えるべきなのはわかっている。恋愛? 耳にしただけで会った事はないですね。知らない子です。

 

「まぁ、仮に付き合うとしても、もう少し時間と交流ときっかけが必要になるな。てか、なんか鈴音さん急かしてない?」

 

 ギクリ。鈴音さんが身体と表情を強張らせると同時に、そんな擬音が聞こえてきたような気がした。

 そして鈴音さんは、途端に下手くそな口笛を吹きながら何かを誤魔化す。目がせわしなく泳いでいて、なかなか見るに堪えない。

 

「い、いや? 別に~?」

 

「鈴さん? もしかして日室さんと泉さんをくっつけさせて、一夏さんを焦らせるなんていう杜撰な作戦ではありませんよね?」

 

「バレたか」

 

 オルコットさんに容易く思惑を看破されてしまった鈴音さんは、テヘヘと笑って済ませる。オルコットさんはむすっとしながらも呆れていた。

 そうこうしている内にリンゴを食べ終えた俺は、そそくさと立ち上がる。二人がこんなに元気であれば心配はない。長居は無用に感じられた。

 

「それじゃオルコットさん、鈴音さん。また明日」

 

「ええ、ごきげんよう」

 

「うん、じゃあね」

 

 そうして俺は医務室から立ち去る。二人がトーナメント欠席する事に、なんだか素直に喜べない自分がいた。堂々と戦いたかって勝ちたかった思いがあるからかもしれない。現状、一番に気をつけたいのはボーデヴィッヒさんだな。気を引き締めよう。

 ……ところで京水って、入学するよりも前に俺とどこかで会っていたか?

 

 ※

 

「……」

 

「カガミン、まるでFXで有り金溶かした人のような顔してる~」

 

「こら本音。触れるんじゃないの」

 

 ナイトローグのタッグ枠争奪戦のジャンケンに負けたナギ、本音、谷本の三人は、のんびりと校庭のベンチの上に座っていた。爽やかな風が吹き、青空を漂う雲はたちまち移動していく。

 そして、結果的にナイトローグのベストマッチな相棒が京水に決定した事によるショックは、ナギが人一倍大きかった。心なしか表情がゼリーのようにグニャリとし、瞳が虚ろになっている。まさしく、本音が例えた通りの顔だ。

 現在のナイトローグのヒロインレースは、まずナイトローグが再評価活動に執心であるために混迷を極めている。一見して積極的でストレートなアプローチを仕掛けている京水が独走しているように見えるが、振り向いてもらえないのが実情だ。ちなみに、ナイトローグのヒロインという単語に違和感を覚えてはいけないのはここだけの話である。少なくとも二名の乙女が、明確な想いをナイトローグに抱いているのだから。

 虚空を見つめる先でナギが脳裏に甦らせるのは、ジャンケンを勝ち抜いて高笑いする京水の姿だ。その様子は彼女にとって非常に腹立たしい事であり、遂には己にのし掛かるショックを打ち消して怒りの感情を込み上げさせる。怒りとは心を動かす上で最もな原動力となり、疲れるという点を考慮しなければ行動の爆発力に長ける。

 次に思い出すのは、ナイトローグ……弦人との毎日の学校生活。お互いに作った弁当を一緒に食べたり、勉強を教えてもらったり、超次元サッカーに挑戦してみたり。二人きりになれる機会こそ恵まれていないものの、良い気分しかしなかった。

 それなのに、タッグという絶好の機会を京水が全てかっさらっていった。加えて、ジャンケンの敗北者たちを笑っていった。暴力で訴えようにもキン肉バスターを再現できる相手に勝てる自信がない上に、世間一般にも弦人にも嫌われる行為であるから憚られた。そもそも、穏便に解決するためのジャンケンでもある。

 

「……私、決めた。日室くんを後悔させる」

 

「「へ?」」

 

 次の瞬間、タッグトーナメントを本気で勝ち進める決意をしたナギの言葉に、本音と谷本は間の抜けた反応を返した。しかし、ナギは決して眉をしかめたりはしない。胸中にあるのは打倒京水と、弦人を振り向かせる事だけだった。

 

 

「ところでユッコ~。どうしてヒムロンとタッグ組もうと思ったの?」

 

「それは……まぁ、日室くんとなら優勝できそうかなーって。本音は?」

 

「ラングドシャで釣ろうとしたよ~。でも『賄賂は俺に通用しない』だって。食べられるだけ食べられちゃった」

 

「……」

 

「ナギ、落ち着いて。日室くんは犬や猫じゃないんだよ? だから目をキラーンとさせながら餌付けしに行っちゃダメ。あっこら、クラウチングスタート待ってぇぇ!!」

 

 

 

 




Q.AICってエレキスチームの電撃止められる?

A.わかりません。実体限定ならいいな……。


Q.AICならエボルにもワンチャン……?

A.ワープで逃げられるでしょう。


Q.ハードガーディアンってEOSより強くね? ガトリングにミサイルに、クローズのパンチを真正面から受け止められるだけの踏ん張りと強固な装甲。

A.EOS開発中の国連が可哀想なので言わないであげましょう。




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